特集

黒部市の観光施策について

〜大自然のシンフォニー 文化・交流のまち 黒部〜
黒部市産業経済部商工観光課

1 はじめに


黒部峡谷 欅平

 黒部市は、神秘の海富山湾から標高2,903mの白馬鑓ヶ岳まで、面積427.96km2、人口4万3千人、日本の秘境として知られる黒部峡谷とその雄大な自然を望む湯の街宇奈月温泉、そして「名水の里黒部」として黒部川の偉大なる恩恵に育まれた、国内外に誇れる自然環境と観光資源を有する都市です。

 黒部峡谷は、北アルプス中央部の鷲羽岳に源を発し、長さ86km、標高差3,000mを流れ下る黒部川の上・中流域に、切り立った深いV字峡を形成する大峡谷です。そこに電源開発のための工事用資材の運搬に敷設されたのがトロッコ電車の愛称で親しまれている黒部峡谷鉄道で、現在では年間約45万人の観光客が訪れます。

 また、黒部峡谷鉄道の入口には富山県を代表する温泉地「宇奈月温泉」があります。その源泉は約7km上流の黒薙(くろなぎ)温泉で、泉温は88度と高く、1日3,000トンの湯量は、北陸随一を誇ります。また泉質は弱アルカリ性単純泉、透明度は日本有数で “美肌の湯”として知られています。

 さらに、下流域は、愛本橋を扇頂に富山湾まで13.5km、扇頂角60度の典型的な臨海扇状地です。扇状地の扇端に位置する生地(いくじ)地区には、環境省が選定した全国名水百選(昭和60年選定)に選ばれている黒部川扇状地湧水群があり、この湧水は「清水(しょうず)」と呼ばれ地域住民が管理する共同洗い場が点在し、住民のコミュニケーションの場としてなくてはならないものとなっています。

 この豊富に恵まれた水が、農業、工業、特産品などのものづくりに利用されるとともに、地域住民や観光客に潤いを与えてくれます。

2 黒部市における観光客の動向

 近年、観光旅行のニーズは非常に多様化しており、「グループ・ファミリー」「体験型」「癒し」「健康」といったように旅行の形態や目的に変化が見られるようになりました。

 団体旅行が多くの割合を占めている黒部峡谷鉄道や宇奈月温泉は、この観光客ニーズの変化を受け入込客数は年々減少傾向がみられます。平成22年の黒部峡谷鉄道の乗客数は、446千人となり、5年前の平成17年と比較すると43千人減で、同様に宇奈月温泉の入込客数も337千人で108千人の減となりました。

黒部峡谷鉄道・宇奈月温泉 入込客数

(黒部市商工観光課)

3 黒部市の取り組む観光

 黒部市は、山・川・海を一体とした観光が可能であり、富山県を代表する観光地である黒部峡谷や宇奈月温泉を核にしながら、黒部川扇状地や富山湾の豊かな食材、清冽な湧水群など、山から海までの豊かな自然資源を連携させた滞在型観光を目指しています。

 また、平成21年度より、県東部地域の滑川市、魚津市、黒部市、入善町、朝日町の3市2町で組織する「富山湾・黒部峡谷・越中にいかわ観光圏」を立ち上げ、広域連携を行うことで2泊3日以上の滞在型観光に対応できるよう、それぞれの観光地の魅力を高める取り組みをしています。

 ここでは、黒部市が今力を入れている取り組みについて3つご紹介したいと思います。

(1)生地まち歩き


清水(しょうず)の共同洗い場

 黒部川扇状地湧水群のある生地地区では、清水(しょうず)と呼ばれる湧水の共同洗い場が10か所あり、その清水の味はそれぞれに違うと言われます。

 ありのままの自然と暮らし、そこで生まれたものづくりの文化を訪ねるまち歩きを導いてくれるのは、地元のことを知りつくしたボランティアガイドです。清水めぐり、かまぼこ工場や昆布の加工場、漁業資料館などを黒部弁で案内してくれます。

 このボランティアガイドは、平成13年に発足し、これまでの9年間で約5万人のお客様をご案内しています。

(2)産業観光


YKKセンターパーク

 ファスナーやアルミサッシで世界的にも有名なYKK株式会社では、黒部事業所の一部を産業観光施設「YKKセンターパーク」として平成21年4月より一般公開をしています。

 世界71の国と地域で事業を展開しているYKKグループの歴史や技術を紹介する展示館や、黒部川扇状地の森の再生を目指す「ふるさとの森」などがあります。

 また、予約をすれば、広大な敷地の工場を専用バスで巡るファクトリーツアーやファスナーの手作り体験を行うこともできます。

 今後は、YKKセンターパークを核とした、産業観光の着地型商品の確立を目指していきます。

(3)インバウンド

 平成21年7月、訪日中国人向け個人観光ビザの発給条件が大幅に緩和されたことを受け、中国からのインバウンド(海外から日本へ来る観光客)が注目を集めています。

 黒部市としても、中国を中心としたアジアからの観光客には大変注目しており、平成21年7月に遼寧省大連市から教育旅行の誘致を行いました。


大連市からの教育旅行

 大連市は、企業進出しているYKK株式会社をはじめ、民間団体の交流が長年続いている都市です。黒部市では、訪日観光の流れを作るべく、教育旅行の誘致事業を始め、平成20年度は新型インフルエンザの問題で残念ながら実現されませんでしたが、平成21年7月に31名の教育旅行を誘致し、黒部市の観光、地元高校生との交流を楽しんでいただきました。

 このような誘致事業は、まず実績を作ることが非常に重要で、大連市の旅行会社との信頼を築くことが今後のインバウンド施策につながるものと考えています。

 平成22年11月には、黒部・宇奈月温泉観光協会が大連市に連絡事務所を開設し、さらには、同月に大連市の大手旅行会社の日本では初めての支店となる富山支店が、黒部市に設置されたところです。

4 今後の課題

 4年後に迫った北陸新幹線の開業に向け、いよいよ今秋(平成23年11月)には、駅舎が着工となる予定であり、黒部市は県東部の玄関口として地域活性化の中核を担うことになります。

 その大きな転換期を見据え、平成23年4月に黒部・宇奈月観光協会は、観光にかかわるすべての事業者、団体、さらには地元住民も加え、連携・結集し、黒部市の観光戦略・推進の司令塔としての役割を担い、観光協会から観光局へ組織強化を図ります。

 黒部市としても、観光局と連携を図り、今後はホームページ・パンフレット等の多言語化や、着地型旅行商品の開発・販売ができる主体性を持ったワンストップ窓口など、観光客を受け入れる態勢づくりを推進していくことが課題と考えます。

〜黒部市からのお知らせ〜

宇奈月温泉は今年88周年(米寿)、黒部峡谷鉄道株式会社は設立40周年です。

ぜひ黒部市へお越しください!

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とやま経済月報
平成23年2月号