3 「経済センサス-活動調査」の実施について
ここまで述べてきました「経済センサス-基礎調査」は、事業所の捕捉に重点を置いた調査でしたが、来年2月に実施される「経済センサス-活動調査」は、経理項目の把握に重点を置いた調査であり、売上や経費等の内容にまで踏み込んだものとなります。
- ・調査期日
- 平成24年2月1日
- ・対 象
- 全国すべての民営事業所(農林漁家、家事サービス業等を除く。)
- ・調査事項
- 経営組織、事業所の開設時期、従業者数、事業所の主な事業内容、売上及び費用の金額、事業別売上金額 等
- ・法的根拠
- 統計法(平成19年法律第53号)に基づく基幹統計
- ・そ の 他
- 「活動調査」の実施により工業統計等、一部の大規模調査が中止又は廃止
「活動調査」は、我が国全産業の経済活動の実態を知ることができる唯一の調査であり、その結果には大きな期待が寄せられていますが、今回が初めての調査であり、イメージがつかみにくいといったところもあると思います。そこで、ここでは調査結果の利用ということに主眼を置いて、具体的にお示ししたいと思います。
- (1)経営判断の基礎として
- 「経済センサス-活動調査」はすべての産業の売上と費用を明らかにします。例えば、製造業の場合であればどのようになるかについて、過去の工業統計調査のデータを基に説明します。図7-1は、製造業の業種別製造品出荷額等の構成比を表したものです。また、各業種の従業者数も調査対象となっていますので、これを併せて活用すれば従業者1人当たりの製造品出荷額等(図7-2)がわかります。さらに製造品出荷額等から原材料費等の費用を差し引けば付加価値額(図7-3)が算出できます。調査項目である費用の内訳には、給与総額もあるので、従業者1人当たりの現金給与総額(図7-4)も算出できるなど、様々なことがわかります。
- このように製造業については、これまでも工業統計調査の結果から把握は可能でしたが、他の産業については把握できませんでした。「活動調査」はこれを可能とし、しかも全国のみならず都道府県・市町村別にも経済活動の実態を明らかにすることができるので、新規の出店を計画する際、営業戦略を練り上げる際、経営指針を策定する際などに、大変有益な資料となります。
図7-1 県内製造業の業種別製造品出荷等構成比

図7-2 県内製造業の業種別1人当たり製造品出荷額等

図7-3 県内製造業の業種別付加価値額構成比

図7-4 県内製造業の業種別1人当たり現金給与総額
出典:「平成21年富山県の工業」
- (2)各産業固有の事業活動の把握
- 「経済センサス-活動調査」では、売上や費用等、全産業共通の調査事項に加え、各産業の多様な経済活動の実態を的確に把握するという観点から、それぞれの産業固有の活動内容について、事業内容に応じた産業別の調査票を配布して調査を行います。
- 例えば、製造業では、製造品の出荷額及び在庫額、主要原材料名、工業用地(図8-1)及び工業用水(図8-2)等、卸売・小売業では、売場面積、営業時間、年間商品回転率等、サービス産業では、映画館の年間入場者数・公開映画本数や結婚式の年間取扱件数等、産業ごとにそれぞれの特殊性を反映した調査項目が設けられており、調査票は産業別に24種類に及びます。
- 下図は製造業の例ですが、他の産業も同様に「活動調査」の結果を基にきめ細かな産業分析が可能となります。
図8-1 県内製造業の業種別工業用地面積構成比

図8-2 県内製造業の業種別工業用水使用量構成比
出典:「平成21年富山県の工業」
- (3)産業構造の変化に応じた経済活動の把握
- 我が国の産業構造は、経済活動の変化に伴い第一次産業から第二次産業、第二次産業から第三次産業(いわゆるサービス産業)へと比重が移っており、特に近年では、サービス産業がGDPベースで約7割、就業者ベースで約3分の2を占めるに至っています。
- これに対して、これまでの各産業における統計の整備状況をみますと、第一次産業(農林業センサス、漁業センサスなど)と第二次産業(工業統計など)については比較的充実しているのに対して、近年ウェイトが高まっている第三次産業の統計は十分でない面があります。
- 具体的には、総務省では「サービス業基本調査」を、経済産業省では「特定サービス産業実態調査」を実施していますが、サービス産業全体からみればその調査対象は一部にとどまっているため、サービス産業の全体像を明らかにするものとはなっていません。そのためGDP関連統計や産業連関表の精度上の制約の一因となっています。
- すべての産業を調査対象とする「経済センサス-活動調査」は、「経済センサス-基礎調査」の結果に加え、その後の変化等については、登記簿情報など様々な行政情報を基に事業所を捕捉することとしています。したがって、この調査は、常に新しい産業を取り込んで、産業構造の変化など、我が国経済の全体像を的確に映し出すことができます。
- なお、近年、インターネット等により自宅やマンションの一室を利用して業務を行うSOHO(Small Office Home Officeの略)等、統計調査員の目視だけでは捕捉することが困難な事業所・企業が増加していますが、これら新しい形態の産業についても行政情報等の活用により捕捉し調査されることとなっています。
- (4)GDPなど統計の精度の向上
- 「経済センサス-活動調査」の結果を活用すれば様々な統計の精度が格段に向上します。例えば、経済指標として最も注目を集めるGDPです。これは、我が国の政策決定に重大な影響を与える統計であり、行政関係機関はもとより民間も含め最も広く利用される経済統計です。経済の実態を映す鏡となるGDPは、経済行動における意思決定の判断指標として、その重要性は年々増しています。ところが、現在、GDPの基礎資料として用いられている各産業統計は、調査の時点、周期、調査対象の捉え方が異なることから、それぞれの結果をGDPに反映させる際に、多くの推計上の調整が行われています。
- しかし、全産業のデータを同じ期日、同じ基準で統一的に集める「活動調査」は、統計ごとに実施年度や調査期日が異なるということがありません。これまでのように時点修正のための推計や統計数値がない業種(サービス産業の一部)を補うための推計を行う必要がなくなることから、GDPの精度が飛躍的に向上することとなります。
- 集計作業も、データを各府省庁から集める必要がなくなることに加え、数値の算出は推計ではなく実数を基に計算する部分が格段に増えることから、作業は迅速化され、早期の結果公表が可能となります。
- また、本県においても、「活動調査」の結果を基に、より精度の高い県民経済計算や地域産業連関表の数値が得られるようになります。
- (5)事業所へのご理解とご協力
- 統計は調査対象の皆様のご協力あればこそのものであり、統計調査に対する理解と協力を得るためには、簡素で効率的かつ効果的な調査の実施が重要となっています。とくに大規模統計調査が重複して実施される場合は、事業所の皆様の事務負担が増大するため、統計の正確性の確保にも重大な影響を与えることが懸念されます。
- 全産業の経済活動を把握できる「経済センサス-活動調査」の創設により以下の既存大規模統計調査が廃止又は中止となりました。

- 廃止された統計調査
・「事業所・企業統計調査」
・「サービス業基本調査」
・「本邦鉱業のすう勢調査」

- 中止された統計調査
・「平成21年商業統計調査」
・「平成23年工業統計調査」
・「平成23年特定サービス産業実態調査」
また、事業所の皆様の負担が軽減されるよう、 「経済センサス-基礎調査」でご記入いただいた調査事項については、調査票にあらかじめ印字、 行政情報により得られる情報を活用し調査項目を簡素化、 支社等を有する企業については、インターネットでの回答や本社での一括記入も可能とするなど、調査が効率的、円滑に実施されるよう様々な工夫が施されています。
「活動調査」は、これまでにない画期的な調査として国内外から注目を集めています。加えて、今回の調査は、我が国の経済活動に対する東日本大震災の影響を産業別、地域別に把握し、今後の復興に向けての貴重なデータを提供する大変重要な役割も担うこととなります。
現在、県においては、この調査が正確かつ円滑に実施されるよう国、市町村等と緊密に連携をとりながら、調査に向けて、調査の周知広報に努めるとともに、全力をあげて準備に取り組んでいます。
事業所・企業の皆様におかれましては、この調査の趣旨、そして必要性を十分にご理解いただき、調査の回答について格段のご配慮を賜りますようお願い申し上げます。
どうぞよろしくお願いいたします。
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