特集

富山県統計調査条例の改正について

統計調査課

1 はじめに

日々刻々と変化する社会、その状態をさまざまな角度からとらえ、わかりやすく数字で示しているのが統計です。

統計は「社会の健康診断」とも言われています。健康診断で具合の悪いところが見つかれば早めに治療することができますし、その効果を確認しながら健康管理を行っていくことも可能です。行政が社会の変化をいち早くとらえ、住民のニーズに対応した施策をより効果的・効率的に推進していく上でも、統計は欠くことのできない存在なのです。

公的機関が作成する統計が、行政だけでなく、個人や事業者の方々にもより使いやすいものになるよう、我が国の統計に関する基本法である統計法が19年5月に抜本的に改正されました。

これを受け、富山県が行う統計調査について定めている「富山県統計調査条例」についても、新統計法の理念を踏まえ、調査で得られた情報の有効活用を進めるとともに秘密保護の強化を図るべく全面的に見直しを行いました。

本稿では、平成21年3月25日に改正され、統計法同様、本年4月1日から施行されている県統計調査条例の概要について、紹介します。

2 県統計調査とは

統計の作成を目的として県が個人又は団体に事実の報告を求めることにより行う調査です。(第2条)

例えば、毎月の出生、死亡、転出入の状況を調べ、毎月1日現在の県人口を推計する「人口移動調査」、県内の外国人登録者数を把握する「外国人登録者数調査」、鉱工業の生産活動及び在庫を調査し、毎月の指数を作成するための「鉱工業生産指数及び在庫指数作成調査」などがあります。

なお、次のような調査は、県統計調査には該当しません。

区   分 実  施  例
1統計作成を目的としない調査 県登山届出条例に基づく届出状況報告
感染症法に基づく医師から県への届出
2世論調査などの意識調査  県政世論調査
男女共同参画社会に関する意識調査
3県の組織内部で行う調査 県庁内での省資源・ごみ減量化への取組状況調査
本庁が行う出先機関の許認可件数の調査
4国などから委託された調査 国勢調査、工業統計調査
5統計法が適用されない調査 県警察が行う調査
−参考− 統計法による統計調査の区分

統計法上の統計調査は次表のように区分されます。このうち、県統計調査はに該当し、総務大臣への事前届出が必要となります。

国勢調査など国が行う統計調査には、統計法が適用されます。

区   分 説   明 旧法との関係
国が行う
統計調査
基幹統計調査 基幹統計(公的統計の中核をなすものとして重要性が特に高い統計。国勢統計、国民経済計算、総務大臣が指定するもの)の作成を目的とする統計調査 指定統計調査
一般統計調査 基幹統計調査以外の統計調査 承認統計調査
届出統計調査
地方公共団体又は独立行政法人等が行う統計調査 届出統計調査 都道府県、指定都市、日本銀行が行う統計調査 届出統計調査
- 上記以外の地方公共団体・独立行政法人等が行う統計調査

3 県基幹統計調査

県統計調査のうち特に重要なものを県基幹統計調査として指定します。(第3条)

県基幹統計調査には、次の規定が適用され、違反者には罰則が課されます。

1報告義務

県は、県基幹統計調査のために必要な事項について、個人又は団体に対し報告を求めることができる。報告を求められた者は、これを拒み、又は虚偽の報告をしてはならない。(第4条)

2立入検査等

県は、正確な報告を求めるため必要があると認めるときは、資料の提出を求めたり、立入検査等をすることができる。(第6条)

1かたり調査の禁止

県基幹統計調査と誤認させることにより、個人、団体から情報を取得してはならない。(第7条)

4 調査票情報の有効活用

同じような統計調査を何度も実施して、県民の皆様に過度の負担をおかけすることのないよう、調査によって得られた情報(調査票情報)を県庁内や市町村等で、有効に活用できるようにしました。

1調査票情報の二次利用

県庁内の機関が、統計の作成又は統計的研究、統計を作成するための調査に係る名簿を作成する場合には、県統計調査によって得られた調査票情報を利用することができることとしました。(第9条)

2調査票情報の提供

県は、次の場合には、国や市町村等に県統計調査により取得した調査票情報を提供することができることとしました。(第10条)

区   分 調査票情報を提供することができる相手 規   則
統計の作成又は統計を作成するための調査に係る名簿を作成する場合 国の行政機関、その他地方公共団体その他これに準ずる者 調査票情報の有効利用は、調査に対する県民の信頼が確保されてはじめて成り立つものであることから、「その他これらに準ずる者」は、保有する個人情報等の保護について行政機関と同等の取扱いを受ける法人としました。(統計法に同じ)
  • 独立行政法人
  • 株式会社日本政策金融公庫、国立大学法人、日本銀行ほか11法人
  • 会計検査院、地方独立行政法人、地方住宅供給公社、地方道路公社、土地開発公社

(規則第6条)

統計の作成等 上記の者が行う統計の作成等と同等の公益性を有する統計の作成等を行う者 公的機関と委託又は共同研究の関係に入り、統計の作成等を行う場合としました。

(規則第7条)

5 秘密保護の強化(罰則)

統計調査の有効利用を進めようとすると、一方で情報漏洩のリスクが高まる恐れがあります。

調査票情報には、多くの個人情報が含まれていることから、その秘密は厳重に守らなければなりません。このため、県はもちろん、調査票情報の提供先に対しても適正な管理義務と守秘義務を課し秘密の保護を図るとともに、その義務違反等に対する罰則を制定・強化しました。

罰則は次表のとおりです。統計法の規定、県の他の条例とのバランスを考慮して定めました。

なお、調査従事者による違反行為には統計法が適用されるため、本条例では規定していません。

事   項 罰   則 条   例
県基幹統計調査に関する「かたり調査」の禁止違反 2年以下の懲役又は100万円以下の罰金 14
守秘義務違反
(調査従事者)
(法第57条第1項第2)
守秘義務違反
(調査票情報の提供を受けた者)
14条第1項第2
不正利益を目的とした情報の提供・盗用(調査従事者) 1年以下の懲役又は50万円以下の罰金 (法第59条第1)
不正利益を目的とした情報の提供・盗用(調査票情報の提供を受けた者) 15
県基幹統計調査に関する報告妨害 6月以下の懲役又は50万円以下の罰金 16条第1
県基幹統計調査従事者による当該統計調査結果の改ざん行為 16条第2
県基幹統計調査に関する報告拒否、虚偽報告、又は立入検査の拒否等 50万円以下の罰金 17

6 おわりに

一人ひとりの県民の皆様が統計調査にご協力いただくことによってはじめて正確な良い統計を作ることができます。調査の依頼がありましたら、ご協力をお願いいたします。

統計調査によって得られた情報(統計)は、県民の共有財産です。この財産は、つくっておしまいというものではなく、行政に活かされ、よりよい県づくりにつながること、さらに、県民の皆様の生活設計、企業の生産・販売計画の策定など幅広く使っていただき、より良い生活や企業運営などに活かされることができてこそ意味があると考えています。

今後、ホームページ「とやま統計ワールド」をさらに使いやすく充実させるなど、統計情報を積極的に提供し、県民の皆様に統計をさらに有効に活用いただけるよう努めてまいります。必要な統計データなどがございましたら、どうぞ気軽に当課までご相談ください。

とやま経済月報
平成21年7月号