特集

高岡駅周辺商店街の活性化のために
〜すべての事業はコミュニケーションから〜
末広開発株式会社まちづくり事業部
マネージャー 松浦孝雄


1.はじめに


高岡市の第三セクター、末広開発株式会社のまちづくり事業部は、高岡市・高岡駅周辺の商店街・高岡商工会議所と連携し、

まちなかに人の集まる仕組みを作ること、
元気な商店街と元気な商業者を生み出すこと、
まちなか居住を促進すること、
の3つの視点で活動を展開するため、平成17年4月発足した。

同時に、まちづくりを民間感覚で切り開こうという高岡市長の方針のもと、私は某民間会社からこの第三セクターに派遣されることになった。民間企業においては10数年間、人と接することの楽しさ、面白さの反面、難しさも経験しており、当初は期待と不安でいっぱいであった。



2.すべての事業はコミュニケーションから


まちづくり事業部の事業のひとつに「ラジオ出演依頼」というものがある。中心商店街のお店の方に、高岡市中心商店街を紹介するコーナー「いらっしゃいませ!高岡中心商店街」(*1)に出演してもらい、お店をPRして売り上げを伸ばしていただこうという狙いである。話は簡単そうであるが、なかなかこれが大変である。「新聞はいいがラジオはいやだ。」、「効果がない。」、「はずかしい。」、こんなマイナスの意見が多く、それをかいくぐり毎日出演者を募集していかなければならない。

はじめはこの事業がいやで、投げ出したくなった。しかし、いざ担当し、街を回遊してみるとなかなか面白い。色々な人のまちづくりに対する意見が飛び交う。

店主とのコミュニケーションが取れ、様々な事業に活かせる。徐々にこの「ラジオ出演依頼」が楽しくなり、事業部としてはなくてはならない事業となった。すべての事業はコミュニケーションからであると感じた。


(*1) いらっしゃいませ!高岡中心商店街

コミュニティ放送局ラジオ高岡(FM76.2Mhz)の「こみゅに亭」にあるコーナー。
月曜から金曜日の午後1時15分から(再放送は午後5時20分から)10分間放送。


3.VIVE TAKAOKAとの交流


平成17年4月、高岡商店街の「若者店主」が結集して「VIVE TAKAOKA」(「ビーブ タカオカ」、フランス語で「万歳、高岡」)という団体が立ち上がった。衰退化の目立つ商店街に「若者パワー」を注ぎこみ、活性化を図ろうという趣旨である。20代〜30代の若者10人が思い思いの手法、企画で人が集まるイベントを実施している。

私が赴任してすぐの頃、第1回目のイベント(*2)の開催を企画していた。商店街の再建を考えるならば「やる気のある人物」、「やる気のある団体」を大いに応援し、盛り上げ、一緒になって構築していくのがよいと考え、さっそくこの団体の支援に力を注いだ。補助金(*3)申請の手続き、商店街との連絡調整、協賛金の収集、会場設営の手配などの手伝いをした。行動をともにするうちに「なんて純朴で、街の活性化のために意欲、情熱をもっているんだ。この若者達は時代を担う若者だ。」と感じるようになった。そのパワーと熱意は大いにまちづくりに参考となり、手助けとなった。いつしかその団体と世代を超えた付き合いもしたくなった。(私は当時41歳)現在もその若者達との交流は大事にしている。


(*2) 第1回目のイベント

平成17年7月16日(土) VIVE TAKAOKA!! vol.1
ウイングウイング高岡 広場公園会場
ライブコンサートや手作りオリジナル作品の展示・販売等を行うアートマーケットを開催した。
万葉の社(オタヤセリオ・大和百貨店横)会場
スケートボード用の滑走コースを設置し、プロを招き模範演技や講習会を行った。

平成18年8月にも2回目を開催し、今後も年1回大きなイベントを行う予定。
このほか高岡七夕祭りやなべ祭りでは屋台を出しPR活動をしている。

(*3) 補助金

「がんばる商店街支援事業費補助金」など、県や市が経費の一部を助成


4.高岡駅地下の再生


(1)まちづくりのスタート

18年2月、私にひとつの課題が与えられた。「ステーションビル駅地下をなんとかする」という課題だ。「なんとかする」とは空き店舗を埋めるということである。言葉では簡単かもしれないが、シャッター街(当時はシャッターで閉まっていた店舗が多かった)から賑わいのあるまちへ再建することなど不可能に近いのではと当時は思った。

しかし高岡駅は高岡の顔である。高岡駅の地下街がゴーストタウン状態では、中心商店街全域が衰退のまちと見られてしまうのではないか。平成17年度は高岡市が、”観光元年”と位置づけた年なのに、この有様では観光どころではない。




(2)商店街における聴き取り調査と目標設定

「高岡駅地下街をなんとかする」この目標に向かって、まずは駅地下をどう思うか、どうすればよいか、ということを重点的にあらゆる商店街の関係者に聴いて廻った。


☆内容をあげてみると
現状の家賃で借りる者は無に等しいであろう。また割安でもこの現状では難しい。(現状のままのシャッター街でぽつんと1店舗OPENするのは皆無ということ)
女性(特に女子高生)をターゲットに絞り、誘致していけばどうか。(女性の集まる場所には人が集まる)
核テナント(ライブハウス等)を誘致し、その廻りには若者をターゲットとしたテナントを誘致してはどうか。(同時多店舗OPENを視野に入れる)
まずトイレ、洗面所をクリーンに改装をしてはどうか。(人が気持ちよく、長くくつろげる空間作りを先に行う)そして、フリーマーケットやイベントの開催、ネットカフェ等の人が長期滞在する要素のテナントを誘致する。
多店舗同時開業が唯一の手立てだ。駅地下大改装グランドリニューアルオープンを目指し、展開してはどうか。(コンセプトをしっかりたて、賛同者を集う)

このようにいろんな意見がでてきた。前向きな意見もあるが、「もうだめだ」という諦めの意見も少なくはなかった。前向きの話を進めなければ私の派遣された意味がない。

そこで、最後の多店舗同時開業の線で話を進めることにした。


(3)出店の募集から開店まで

先ほど触れた「VIVE TAKAOKA」のメンバーにも協力してもらい、この企画に賛同する者、また開業意欲のある者を募った。募集して約1ヶ月、7名が集まった。ほとんどが20代、30代の若者であった。やはりこの非常事態から脱却していくには若い者の力が必要であるということを再認識させられた。

駅地下の管理運営をする株式会社ステーションビルからの説明会では、出店希望者から会社に対し、空調設備の増設や改装費用の負担など要望事項も出てきた。私の役割はお互いの意見を集約し、調整し、開業に向けて前に進むことである。双方ともまちの再生を目指しているとはいえ、当初はそれぞれが負担する費用をなるべく最小限にと、自分の立場に固守した意見も多く、幾度もすれ違いが見られた。

しかし、話し合いを重ねるうちに出店者の意気込み、まちに対する強い思いが会社を動かした。会社は可能な限りの費用負担を受け入れ、出店者側もそれに応じた出店計画を練り直した。

結局7名のうち4名がこの企画に賛同し、ついに7月のOPENにこぎつけた。会社と出店者の努力は大変なものであったが、同時に、お互い、賑わいのあるまちを実現できるという確信を持ったのではないかと感じている。

多店舗同時開業は話題を呼び、多方面から幾度かの問い合わせがあった。4店舗がOPENするとすぐにさらに1店舗が賛同し、計5店舗となった。残念ながら何件か成約に至らず、10店舗全て埋まるには至らなかったが、駅地下全体の再生のスタートラインには立てたのではないかと思っている。




(4)取り戻しつつある賑わい

7月のOPENと同時に夕市も駅地下で開催された。夕市は毎週火、金曜日の午後3時から6時の間、主に卵、りんご、新鮮野菜などの農業特産物を扱うもので、中心街の主婦の憩いの場となり好調である。今後の課題は、夕市の賑わいをどう地下街の他のテナントの売り上げに繋げるかということである。また夕市の開催日が火曜、金曜ということから他の曜日の夕市会場の有効利用も考えなければならない。

11月には富山大学芸術文化学部学生が主催した「ジョイント アート バトル」がタカチカスペースで開催された。12月にも地元アマチュアバンドの箱ライブショーも開催された。単発ではあるがタカチカの利用形態もバラエティになれば、利用頻度も増え、高岡のおもしろスポットとして確立していくのではと期待する。

ただ今後の最も大きな課題は、タカチカスペースに核となる大型テナントを誘致することであり、通年営業の恒久的な地下街の賑わいづくりをめざしていきたい。


5.

高岡駅周辺商店街の活性化と私の役割

駅地下だけでなく、周辺の商店街のいたるところに空き店舗があり、それらの街全体の活性化を考えていかなければならない。

私の役割は、イベントを企画するのではなく、日々の賑わいを取り戻すことである。まずはコミュニケーションを密にしてそこにすむ人、働く人を知る。そして、それぞれのまちづくりへの思いを調整し、コンセプトを明確にしていく。イベントはその実現への手段でもあり、結果でもある。そのまちの人、そこへ来る人が、創り上げていくものだと思う。

コンセプトをしっかり持ち、賑わいのある、よりよいまちを確立していきたい。



 


★末広開発株式会社まちづくり事業部のホームページ「たかおかストリート」はこちらです。
http://www.takaoka-st.jp/
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お問い合わせ先

末広開発株式会社まちづくり事業部
高岡市御旅屋1222-2エルパセオ内
TEL:(0766) 20-0555


とやま経済月報
平成19年2月号