特集


水と緑の都より
ドイツのくらしと文化〜 ハンブルク生活3年を通しての驚嘆と共感〜


ハンブルク日本人学校教諭 寺島貴幸


 ハンブルク日本人学校への在外教育施設派遣教員として在独してはや3年と4カ月となった。
 ドイツと言えば、環境や福祉に対しての先進的な国。まじめで勤勉な人々の国。ヒトラーのナチスドイツ。アウトバーン。ビール。堅実で重厚な国そして先進的なシステムを開発している国とのイメージを膨らまし、ドイツ生活への不安と期待が交差していた派遣前。実際にこの3年間、日本で伝えられているイメージの実感はもちろんのこと、住んでいるからこそ知りえたドイツがたくさんあった。また、この3年間でドイツ統一の10周年を迎え、EU通貨の流通が始まる歴史的出来事に遭遇するチャンスにも恵まれた。
 ドイツのくらしと文化の様子を感じたままに報告していきたい。

T 街並み

(1)緑豊かな大都市
 ハンブルクは、ドイツ第2の大都市である。(人口は170万人。日本でいえば札幌市ぐらいではあるが。)大都市と言えば、近代的な高層ビルが立ちならび、人々の雑踏をイメージするがハンブルクは違う。緑が本当に豊かだ。街にあふれる街路樹・公園の緑は、人々の心に安らぎを与えてくれる。ベルリンしかり、ミュンヘンもそうだ。メッセの街、2000年万博が開催された国際都市ハノーファーは、街の半分が緑。
 ドイツの都市にはどこも雄大な自然がある。

(2)街の景観を損ねることをしてはいけない
 
ドイツの家々は美しい。建物自体がゴージャスということではない。家の敷地を彩る草花に住人は気を使う。多くが前庭をもち、十分に手入れをされた草花や芝と住居全体の調和が、一軒一軒個性的で目をうばわれることがしばしば。まるで隣人同士が競い合っているように思える。4月のオースターの頃の卵の飾り、ヴァイナハツ(クリスマス)の頃の電飾や窓に描かれた絵。この頃の住宅の街並みはより一段と磨きがかかって美しい。
 洗濯物を見えるように干してはいけない。生垣を剪定しないと文句をいわれる。窓も定期的に磨くように。住居に入ったときによく聞かされたことである。

(3)自分の住居の前の道路(歩道)は自分の責任できれいにしなければいけない
 冬に家の前の雪が原因で、人がすべってけがをした場合、その家の住人の責任となる。家の前の歩道や車道は、住人が管理するのがドイツである。枯葉(緑が多い分、晩秋の枯葉の量も半端ではない。)をかたづけたり、除雪をしたりする労働を惜しまない。(私の家内も冬場、郵便配達人が通行できる最低範囲の除雪は、いつもやっていた。)ドイツの街並みの美しさが保たれる一因であろう。


ハンブルクの象徴 アルスター湖と市庁舎 クリスマスシーズンの民家の装飾

大都市の中に緑が点在 散歩好きのドイツ人  


U ドイツの人々

(1)見も知らぬ人にも笑顔であいさつ
 通勤の朝(自転車での登校時)、ドイツの人々は、よくあいさつをしてくれる。見知らぬ人ともあいさつをかわすのがドイツの人々のようだ。私も通りすがりの人々にあいさつをするのが習慣になった。大人も子供も笑顔であいさつ。ドイツはあいさつから物事をはじめる。たいへん心地よい国である。握手も笑顔で力いっぱいする。(家内はドイツ人との握手に恐怖を感じるという。痛いそうだ。)

(2)ドイツの朝は、はやい
 
これも、通勤の朝よく見かけることだが、まだ、7:30前だというのに道路工事や建設現場で働く人々の額には汗が光っている。パン屋は、夏時間の間は5:30に店が開く。公共の役所や郵便局・銀行も8:00には開く。医者も7:30ぐらいから、登校前に病院による子供達もよくいる。大手のスーパーも8:30には開店。学校で雇う、窓の清掃や芝刈り業者も通勤前には動きはじめている。現地の学校も8:00からは授業開始。とにかくドイツの朝ははやいのに驚かされる。そして、ほとんどの労働者は、午後の4時ぐらいには勤務を終えるようだ。

(3)ドイツ人は騒音に敏感
 パトカーや救急車、消防車も必要最低限度しかサイレンをならさないという。日常生活においても、午後1時から3時頃まではうるさい音を立ててはいけない時間と常識的に浸透している。特に、土曜の午後と日曜日は静かにしなければいけないようだ。また、夜8時以降も同じである。だから、子供の寝る時間は一般的に8時となっている。あまりうるさくすると警察に通報されることもあるらしい。日本人学校でも、校庭への放送はしてはいけない。運動会すら周りの住宅地に迷惑をかけないよう配慮をする。
 日曜日の街は特に静か。人々はのんびりと休日を過ごしている。日曜日の街は、閉店法により、デパートをはじめほとんどの店はしまっており、飲食店のみ開店している。静かなカフェテラスで・・・街の所々から聞こえてくる様々な楽器の音色を聞きながらカフェを味わうひと時はたまらない。

(4)社会的なマナーがすばらしい
 店のドアを開閉するとき、ドイツの人々の多くは後ろの人や周りの様子を確認する。ドアを開けた時に、次の人が通るまでドアをおさえ待っていてくれる。「ダンケ!」「ビッテ。」このやりとりが微笑ましい。電車やバスでも、きちんと並ぶし、車内ではみんな静かにしている。(唯一、 サッカーの試合後に乗る電車は、別格だが)ドライバーのマナーもよく、クラクションはほとんど鳴らさない。ウインカーをあげると自然に道を譲ってくれる。あたりまえだが道路法規は本当に重視されている。(ヨーロッパの一部国は、道路法規があってないようなものだったもので ・・・)社会的なマナーが身についていて感心する。ドイツの人々は本当に紳士的である。


V 優れたドイツの社会システムと社会資本

(1)ドイツといえばアウトバーン
 いわずとしれたアウトバーン。国内を縦横無尽に走っている。制限速度はなし。(所々の制限はあるが)しかも料金はただ!道幅も広く(多くが4車線)、こんなに走りやすい道路はないであろう。時速200KMで走り抜けるポルシェやBMW。優雅に走るメルセデス。ドイツ生活の最大の魅力だ。しかし、その神話がついに崩壊する。2003年9月より、商業用トラックにはアウトバーンの通行料が課せられることになった。数年後には、乗用車にも・・・という噂もでている。

(2)駅には改札がない

 ドイツの主都市には、市内を走る地下鉄(Uバーン)や中距離電車(Sバーン)が十数本ある。バス路線も充実していて交通の便はかなりいい。驚くのは駅に改札がないことだ。自動販売機でキップを購入し電車に乗るだけでよい。バスも運転手がキップを見ることはない。だから、日本のように改札口が混み合うということはない。 時々、電車内で一斉検札が行われる場合がある(違反者は30EUR(ユーロ)の罰金)が、無銭乗車をしようと思えば簡単なことだ。(しかし、多くの人々はそのような考えをもたないのだろう。)まさに、個人の良心を信頼する社会なのだと感心する。

(3)長期休業は州ごとに日をずらして
 ドイツ校にも長期休業(年4回 春夏秋冬)があるが、州によってその日程が違う。ドイツ国内すべてで休みを統一すると道路もホテルも混雑するからだそうだ。実に合理的な考え方だと思う。

(4)社会をつくる労働者
 労働や商売に関しては、合理的で割り切った考え方をする。労働時間をきちんと守り労働者の権利を主張する。だから、平日の午後6時になると一斉に店のシャッターが下りる。法で規制されているので抜け駆けする商売人もいない。閉店法という法があり、個人経営の飲食店以外は日曜に店は開かない。土曜日は、午後4時までの経営となる。デパートや大型スーパーは金曜の午後や土曜の午前、人がごったがえす。 しかし、2003年の7月より、閉店法の規制が緩和され、月曜から土曜日までの営業が午後8時まで認められるようになった。不況による経済政策らしい。変わりゆくドイツのひとつである。  

(5)事故は原因をつくったほうが悪い
 人身事故は、車だけが100%加害者ではない。歩行者側に落ち度がある場合は、はっきりと歩行者側の責任となる。車道は車が走るためのもの、歩道は人が歩くところというはっきりした考え方にもとづいている。人を救助する義務というものがある。事故を見たら、第1発見者は救助活動を怠ってはいけない。その義務を怠ると罪に問われる事もある。後続車への処置、けが人の救助、警察への通報をし、警察がきたら証人として見たことの報告をしなければならない。

(6)環境先進国 ドイツ
@ゴミ問題に対処する取り組み
 ゴミ排出量が増えて、ゴミ処理場を増設する悪循環を断ち切るには、ゴミの減量化が最善策。そして、ゴミの減量化の決め手は、資源ゴミを分別回収してリサイクルすること。日本でもあたりまえの認識だが、ドイツの人々の生活の様子を知っていくとこの認識が確実に根付いているように思う。市民一人一人が徹底的に分別している。リサイクリングホフ(資源ゴミの回収センター。毎日開放されている。)へ行くと、たくさんの人々が、資源ゴミを持ってきている。紙・瓶・粗大ゴミ・建築材・コルクなど置き場所が十数種類にも分かれており、自家用車から下ろしながら次々場所を変えていく。道を歩いていても回収用のコンテナがいたる所に備え付けられている。そのコンテナに瓶や紙を入れている人々の姿を見かけることがよくある。このように生活体験していく中で、環境問題に対するドイツの人々の意識が先進的なのではないかと思える。
 ハンブルクに来てすぐ、「コンビニはないのか?」と思った。日本では「コンビニ」に大変お世話になっていたので、その便利さになれてしまっていたからだ。ある本によると「ドイツではコンビニははやらない。」と書かれてある。一つ一つセロハンで包まれたおにぎり、トレーにのった各種食品が大量にならんでいるコンビニをドイツの人々は「便利だ」と思うよりも「大量のゴミ」と考えるそうだ。スーパーなどの食品にもパッケージされているものは日本より断然少ない。肉・魚・野菜・果物そしてケーキなどの簡易包装には最初戸惑いも感じたが・・・。「環境に悪いものは買わない・使わない」多くのドイツの人々は「環境を守るための行動」「環境を救うための行動」を違和感なくとることができるのだ。また、環境を考えた商品を作っていることをアピールすることで、その商品は売上が増えてくるようだ。ドイツの人々は、環境にやさしい商品づくりをしている企業や商品を支持している。
 環境マークがついている商品を人々は買おうとする。特に学校ではこのマークがついているものを購入している。企業は、このマーク認定のために努力し結果的には環境が守られるようになっているのだろう。今年(2003年)1月から新たに、空き缶にも回収責任(1缶につき25セントの料金が課せられ、購入商店にもどすと返金される。)が加わり、再利用化が推進されている。
(注)セントは補助通貨単位で100セント=1EUR

どこの街角にもあるゴミ回収用のコンテナ 市民に開放されているリサイクリングホフ

過剰な包装は、いっさいない。  

A新時代のクリーンエネルギーの開発
 雄大な平原地には、今やドイツの象徴となりつつある、圧倒される光景がある。ひとつは風車群、もうひとつは菜の花畑である。
 風車は、風力発電の促進のために年々ドイツ全土に設置され、いまや風力発電量は世界一を誇り、世界の風力発電量のおよそ3分の1がドイツで発電されている。50m間隔に50台もの風車が一直線上に並び、それが何列にも構え、風をうけて悠々と廻る姿から爽快感を味わうことができる。
 菜の花畑は、植物油から作るバイオディーゼルの原料として、広大な規模で生産が進められている。5月から6月に、あたり一面の平地が黄色の絨毯を敷き詰められたようになる美しい風景にも心が躍らされる。
 両方とも、連邦政府が整備・強化推進を図っており、関連事業に助成をしている。ドイツ連邦政府は、電力供給全体に占める再生可能エネルギーの割合を高めることを環境政策における大きな目標の一つに掲げており、風力・バイオのほかソーラー・地力・水力のエネルギー生産を促進している。

北ドイツ平原に広がる菜の花畑 数キロ先まで続く風車群

菜の花畑に建つ風車  


(7)充実した社会体育
 ドイツには、地域(市・町)ごとにスポーツ団体を統括する機関がある。(日本では、市の体育協会にあたるところでしょう。)自分の好きな競技をするためには、まず地域の団体に加盟する必要がある。統括機関への届け出をしなければならない。そこで入会金を支払い、身分証明証を発行してもらうことからはじまる。その身分証明証が傷害保険加入の証明ともなる。
 私が加盟する(バスケットボール競技に参加)Halstenbeker Turnerschaft(ハルステンベッカートウルナーシャフト)は、1895年に設立され、現在28競技100を超える種別を統括している。バスケットの場合は、15種のチームが編成されており、ヘーレン(成人男性)のチームは4軍(チーム)、成人女性は3軍、他にユンゲン(16才〜20才くらい)は3軍、ミニも年齢構成別にという具合だ。他の競技もこうした種別がたくさんあり、その中から、自分の能力や意欲に合わせ、好きなチームを選べばよい。チームに所属する前にプロビーレン(試行)も好きなだけでき、そのチームの様子を知ることができる。私は、他の地域のスポーツ団体を含め、いくつかのチームにプロビーレンをし、現在のチームをチョイスした。週1回の練習、適度な練習内容・時間、年齢構成が私の条件にあったのだ。(私のチームのメンバーは、30才から50才くらいまで約20名ほど所属している。練習後ビールを飲むのが楽しみという人達の集まり。でも、実力はなかなか。とにかく大きい人達ばかり。)
 地域登録が終われば、年間4回の会費(たいした額ではありません。)をチームにではなく、統括する機関に支払っていく。チームをやめる場合も機関に届け出をすることになる。各スポーツ団体の運営費は機関からチームのトレーナーに支払われるようだ。だからチームによって機関が補助する運営費は多少違っている。バスケの1軍チームは、練習回数や試合が多いのでたくさんの運営費をもらっているらしい。また、こちらの社会体育のすばらしさは、地域のスポーツ団体に登録すれば、いくつもの競技のチームに所属もできることだ。家の息子は、 週1回水曜日に練習をするサッカーのチームに所属していると同時に、週1回月曜日の体操教室にも通っている。加えて、親子で地域のスポーツ団体に登録すると会費が割り引かれる特典つき。だから、時間等の条件さえ自分に合えば、1週間すべて違うスポーツを楽しむことができる。こうして、ドイツの人々は、様々な運動に取り組んでいるようだ。
 統括機関からは、地域の家庭に広報誌が定期的に配布され、各チームの様子や試合結果、 また、定期的な練習時間の変更などがまとめられている。サッカーの場合は、こうした、地域のクラブ以外にも、個人が主催しているクラブや企業が主催しているクラブなどいくつかある。地域のクラブでも、スポンサーがついているチームもある。隣の地域のスポーツ団体のサッカーチームでは2軍の選手にも、スポンサーから選手に手当てがでているらしい。サッカーは本当に盛んで、4才ぐらいから所属できるチームが各地域にあるようだ。4才の子がユニフォームを着て試合をしている様子はいかにもサッカー王国らしい。
 
ドイツでは、2人に1人は、こうしたスポーツ団体に参加しているそうだ。幼児から老人まで、 何らかのチームに所属してスポーツを楽しんでいる。まさに生涯体育においても先進国だと思う。では、なぜドイツでは、この社会体育があたりまえのこととして生活に根付いているのだろうか。それは、やはり歴史があるとともにそれを支える社会システムがあるからだろう。学校は、遅くとも13:30には下校となり、職場も16:00くらいには終わってしまうところが多い。 すなわち、時間的な余裕があることで、国民みんなが自分の趣味に費やす時間をもとうとする。これが、社会体育が充実する大きな要因と考えられる。また、ドイツでは学校教育・家庭教育そして、社会教育の役割をきちんと分別している。このような考え方は,日本とは大きく違う点であろう。

柔道教室は、多くの町で開催 バスケットボールクラブのチームの仲間と

息子はサッカーチームに所属  

(8) 教育事情
 ドイツでは学校教育・家庭教育そして、社会教育の役割をきちんと分別している考えができていることも日本とは大きく違う点であろう。まず、学校は授業をすることだけが役割であり、日本で求められる全人教育とは無縁で、子のしつけは、すべて家庭教育にまかされている。 (それだけ、子と接する時間を家庭がつくっているようだ。)社会全体がそれがあたりまえだという認識をもっている。だから、授業の放棄も個人の責任。教師は、その子を責めないし、また無理に授業を受けさせようとすることはないそうだ。(万一、授業を抜けだし、教師の目がゆき届かない場合は、すぐに保護者を呼ぶそうだ。)服装に関しても、一切、個人責任。ただし、学習の修得には大変シビア。学年最後の進級試験に合格しないと進級できない。学力不足の場合は小学校でも落第がある。ドイツの義務教育は基本的に10年間(州によっては9年間)。小学校(現地では基礎学校=グリュントシューレという。)は4年生まで。4年終了後は、基幹学校=ハウプトシューレ(基礎学力・労働実習を学ぶ。)、実務学校=レアルシューレ(さらに上級学校への進学を考慮した授業を行う。)及びギムナジウム(大学入学資格の取れる学校、5・6年生は観察期間で12年生まで授業を受ける)の3つから個人の能力にあわせ、保護者と本人が決定し進学していくそうだ(途中の学校変更も可能)。基本的に小学校5年生の段階で進路選択をしなければいけない。どの学校へも自分の意志でいけるわけだが、卒業するためには、義務教育といえども卒業試験をパスしなければいけないそうだ。日本の親ならば、すぐにギムナジウムへと考えそうですがドイツは、個人の能力を重視する国であって、学歴はこだわらない風習のようだ。就職には、ほとんどの職種に資格が必要で、最終的には、義務教育終了後2年間は、就職先で実習しながら、資格取得の勉強をする。
 基礎学校(小学校)の日課は午前4時間で放課。基幹・実務学校は、5・6時間があっても、 13:30には放課。(それまで昼食はとらない。ただし15分休みに、おのおのの好きなおやつ(果物なども)をとる。)教師は、児童・生徒の下校後、十分な時間で教材研究に努めるそうだ。
 午後からは、それぞれ地域の社会教育(社会体育を含め、個人の能力を社会全体で伸ばそうという考え。社会教育には音楽・美術関係も多くある。)に参加する。学校教育・家庭教育・社会教育とそれぞれの分担した目的をもってその役割を果たしている。
 ただし、現在ドイツでは、日本のような全日制の学校運営を求める声が多くあがっている。また、2001年に世界的に公表されたOECDによる国際学力比較調査の結果、ドイツの生徒の学力が低レベルにあることが判明し、教育制度の見直しを求める声が高まっている。

実務学校の生徒 現地校訪問にて 日本人学校を訪問してきたギムナジウム生徒

交流学習での書道  


(9)EU通貨
 ご存知の通り、2002年1月1日よりEU加盟国の12カ国で、ユーロ共通通貨の使用が始まった。この歴史的な瞬間を直接体験したことは、派遣期間中の最も大きな出来事になったと思う。
 この時を私達は旅先でむかえた。直前まで懸念されていた混乱は、ほとんど見られず、ドイツでは、この年の2月末までにドイツマルクの換金も終了し、自然に浸透していったように思える。(個人としては、導入時、表示額をマルク表示と勘違い(1EUR=約1/2マルク)し、 Kasse(レジ)で恥ずかしい思いをしたことがあったが・・・)通貨の実用性については、私達の生活においては、非常にメリットがあったように思える。
 特に、任国外へ出かけた時に、それまでたいへんわずらわしかった換金の手間がなくなったことに有難さを感じる。ただ、物価的にみるとマルク時代よりも高騰したような気がする。一般消費者も便乗値上げの疑惑を感じているようで、話題となっていた。
 通貨統合から1年半が経過し、マルク時代を懐かしむ声もあがっているようだ。折りしも、現在ユーロが急激に高騰し、ついつい日本円に換算して生活をしている私達にとっては、各国の通貨価値の変動を感じざるをえない。(3年前は、1マルク=現在の50セントは、47円ぐらいだったのが、今は70円。)
 ドイツ国民における、EU通貨のイメージは定かではないが、ドイツ経済においては、EU通貨導入が、経済効果に繁栄されたとは言えないような気がする。なぜなら、ドイツでも景気低迷は長期化しており、政府の苦慮する改善策も効果として表れていないのが現状だからだ。また、国民総生産の成長率はマイナス続きであることや東西統一から上昇傾向にある失業率も未だ改善されず増加傾向にあること、増税の政策が目立つことなどを耳にする。
 ドイツ国民として生活していない私達は、ドイツ経済の悪化の影響をさほど受けてはいないが、ドイツ国民にとっては、景気回復のめどがたっていない憂慮すべき状況であるようだ。


(10)ドイツの商品価格
 最後に、いつも利用している近くのスーパーの広告をもとに、いくつかの品物や製品の価格を紹介するので日本とくらべてみてください。
 1EUR=138円で計算。



豚肉グリル用1kg
2.99EUR=約413円

ゴーダチーズ100g
0.33EUR=約46円

牛肉ブロック100g
0.69EUR=約95円

ソーセージ1kg
2.99EUR=約413円

キャベツ1kg
0.44EUR=約61円

じゃがいも1.5kg
1.29EUR=約178円

ズッキーニ1kg
0.99EUR=約137円

にんじん1kg
1.59EUR=約219円

とうもろこし500g
1.79EUR=約247円





カマンベールチーズ125g
0.89EUR=約123円

洗剤(キッチン)750ml
0.99EUR=約137円

トイレットペーパー8つ
2.79EUR=約385円

ビール1ケース 330ml 24本
10.49EUR(ビン代3.42含) =1448円
(ビン代除くと976円)1本あたり約40円

 


とやま経済月報
平成15年9月号