特集

鉱工業生産指数と電力需要から見た
北陸の産業動向

中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局 地域経済産業室


<はじめに>

 中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局(以下、北陸支局)では、従来から、「北陸地域の鉱工業生産指数」の作成、公表を毎月行ってきておりました。
 平成14年9月からは、地域における経済の動向と産業実態を迅速かつ的確に把握するため、中部経済産業局が作成しております「管内総合経済動向」の北陸地域版の作成を行うべく、各経済関係機関等の御協力を得ながら、鉱工業生産指数を中心に、主要経済指標の大幅拡充を図り、生産、個人消費、設備投資等幅広く北陸地域の経済動向を分析した「北陸地域の総合経済動向」の公表(毎月20日頃 http://www.chubu.meti.go.jp/hokuriku)を行っております。

 今回は、鉱工業生産指数とエネルギー指標の中から電力需要をもとにして北陸の産業動向の分析を行ってみます。


<北陸地域の鉱工業生産指数>

 平成15年1月公表の「北陸地域の総合経済動向」に掲載しました、鉱工業生産指数については、表1、2になります。

表1 北陸地域鉱工業生産指数
平成7年=100
北陸地域鉱工業生産指数
(出所)中部経済産業局、近畿経済産業局、経済産業省
(注1)平成14年11月の数値は、北陸地域、全国とも確報値

表2 北陸地域鉱工業指数業種別

ウェイト 原指数 前 年
同月比
(%)
季節調整済指数 季調済
前月比
(%)
14年
10月
14年
11月
14年
9月
14年
10月
14年
11月
鉱工業 10000 98.5 96.5 9.2 90.9 94.8 93.5 ▲ 1.4
 製造工業 9996.1 98.5 96.5 9.2 90.9 94.7 93.5 ▲ 1.3
  鉄鋼業 176.2 73.1 73.5 7.5 71.7 70.4 71.4 1.4
  非鉄金属工業 287.3 110.5 109.5 21.3 100.1 106.5 106.3 ▲ 0.2
  金属製品工業 1561.3 88.4 89.8 5.5 77.2 83.1 80.9 ▲ 2.6
  一般機械工業 1322.1 77.5 78.3 9.8 76.0 85.1 84.2 ▲ 1.1
  電気機械工業 1458.7 161.1 152.2 27.2 146.9 151.4 144.9 ▲ 4.3
  輸送機械工業 236.9 118.5 117.9 20.1 110.7 120.0 123.5 2.9
  精密機械工業 147.3 78.1 70.0 ▲ 10.7 65.7 74.8 74.4 ▲ 0.5
  窯業・土石製品工業 419.8 89.6 80.7 ▲ 14.6 78.8 80.9 73.1 ▲ 9.6
  化学工業 1132.5 124.0 117.7 15.3 105.5 111.0 111.8 0.7
  石油製品・石炭製品工業 31.6 × × × × × × ×
  プラスチック製品工業 436.1 99.1 102.4 5.6 103.3 96.9 99.9 3.1
  パルプ・紙・紙加工品工業 319.0 95.5 96.6 7.2 90.9 90.2 93.1 3.2
  繊維工業 1529.8 63.1 63.3 ▲ 7.9 63.5 63.0 63.9 1.4
  食料品・たばこ工業 479.7 80.0 82.4 ▲ 4.1 74.6 76.2 75.6 ▲ 0.8
  その他工業 457.8 76.3 74.9 ▲ 1.7 70.8 73.2 72.6 ▲ 0.8
 鉱業 3.9 62.3 56.4 ▲ 33.5 47.3 48.5 46.2 ▲ 4.7
(注)(1)「×」は事業者の数が3未満のため秘匿とした。

 平成7年を100とした鉱工業生産指数(平成7年基準)で、北陸地域(富山、石川及び福井の3県)と全国の動きを平成5年から10年間の時系列で表したものがグラフ1になります。

グラフ1  鉱工業生産指数(季節調整済)
鉱工業生産指数(季節調整済)

 鉱工業生産指数は、景気動向指数の一致指数にも採用されており、景気の動向を探るための最も重要な指標の一つとされています。
 グラフ1のとおり北陸地域と全国の鉱工業生産指数では、その大きな動きにおいては、ほぼ現在まで同様のトレンド(動き)を示しています。
 また、グラフには内閣府発表(暫定含む)等の景気の山谷をあわせて示しており、指数の動きが景気の動きとほぼ連動していることがわかります。

 ここで北陸地域と全国で過去の各局面での比較をしてみます。
 グラフ1でみた平成7年基準の鉱工業生産指数は、北陸地域、全国ともほぼ同じ水準で動いていたものが、平成9年5月から平成11年1月までの後退局面では、この間、北陸地域の指数のポイント差が約16低下しており、全国が約10の低下であるのに対し、北陸のほうが大きく低下しております。
 この局面において、各業種ごとの寄与度を比較してみますと(表3)、北陸地域は、一般機械工業、金属製品工業、繊維工業及び化学工業と北陸地域の主要業種が大きく低下に寄与しております。全国では輸送機械工業、一般機械工業、電気機械工業といった業種が大きく低下に寄与しております。北陸地域では、全国の低下に寄与した電気機械工業が上昇へ寄与しており、全国に比べウェイトの小さい輸送機械工業も低下への寄与が小さかった反面、全国に比べ非常にウェイトの大きな主要業種である金属製品工業、繊維工業が大きく低下したことによる全体への寄与が、全国に比べ鉱工業全体として大きく低下したものと考えられます。

表3 下降局面(H9.5〜H11.1)
北陸
鉱工業 -14.9
一般機械工業 -4.22
金属製品工業 -3.38
繊維工業 -2.94
化学工業 -1.18
その他工業 -0.8
食料品・たばこ工業 -0.63
窯業・土石製品工業 -0.55
鉄鋼業 -0.52
非鉄金属工業 -0.48
パルプ・紙・紙加工品工業  -0.42
輸送機械工業 -0.25
精密機械工業 -0.1
プラスチック製品工業 -0.01
鉱業 -0.01
石油製品・石炭製品工業 0
電気機械工業 0.36
全国
鉱工業 -9.70
輸送機械工業 -2.29
一般機械工業 -2.08
電気機械工業 -0.96
鉄鋼業 -0.74
繊維工業 -0.67
その他工業 -0.67
窯業・土石製品工業 -0.60
金属製品工業 -0.54
化学工業 -0.50
プラスチック製品工業 -0.34
非鉄金属工業 -0.18
食料品・たばこ工業 -0.16
パルプ・紙・紙加工品工業  -0.11
精密機械工業 -0.07
鉱業 -0.03
石油・石炭製品工業 0.00

 平成11年1月から平成12年10月(暫定)までの上昇局面では(表4)、北陸地域でのポイント差が約7上昇しており、全国が約9上昇しています。上昇に寄与した主な業種は、北陸地域、全国とも電気機械工業であります。これは平成12年にみられた米国のITバブルの影響が色濃く出たもので、北陸地域、全国とも他の業種に比べ電気機械工業が大きく伸びた結果と考えられます。

表4 上昇局面(H11.1〜H12.10)
北陸
鉱工業 7.6
電気機械工業 6.76
一般機械工業 0.69
化学工業 0.6
非鉄金属工業 0.45
パルプ・紙・紙加工品工業  0.25
輸送機械工業 0.2
プラスチック製品工業 0.11
その他工業 0.05
鉱業 0.01
鉄鋼業 -0.01
石油製品・石炭製品工業 -0.05
窯業・土石製品工業 -0.21
食料品・たばこ工業 -0.21
金属製品工業 -0.22
精密機械工業 -0.28
繊維工業 -0.9
全国
鉱工業 9.10
電気機械工業 6.12
一般機械工業 1.27
輸送機械工業 0.65
鉄鋼業 0.61
化学工業 0.44
窯業・土石製品工業 0.30
非鉄金属工業 0.17
パルプ・紙・紙加工品工業  0.16
食料品・たばこ工業 0.05
プラスチック製品工業 0.03
精密機械工業 0.00
石油・石炭製品工業 0.00
鉱業 0.00
金属製品工業 -0.03
その他工業 -0.19
繊維工業 -0.38

 平成12年10月(暫定)からの後退局面では(表5)、仮に平成14年1月を底とした場合、その間、北陸地域はポイント差で約16低下しており、全国が約15低下しています。低下に寄与した主な業種は、北陸地域、全国とも電気機械工業であり、前述のITバブル崩壊に伴う電気機械工業の大幅減によるものであることがわかります。また、前回の上昇の伸びに比べ一般機械工業、その他業種も落ち込んだことから、鉱工業全体の落ち込みが前の上昇の伸び以上に低下しています。

表5 下降局面(H12.10〜H14.1)
北陸
鉱工業 -15.8
電気機械工業 -8.15
一般機械工業 -1.88
プラスチック製品工業 -1.22
繊維工業 -1.04
金属製品工業 -0.88
その他工業 -0.6
化学工業 -0.54
精密機械工業 -0.38
窯業・土石製品工業 -0.35
鉄鋼業 -0.3
非鉄金属工業 -0.17
パルプ・紙・紙加工品工業  -0.14
食料品・たばこ工業 -0.03
鉱業 -0.02
石油製品・石炭製品工業 0.02
輸送機械工業 0.21
全国
鉱工業 -14.30
電気機械工業 -7.29
一般機械工業 -2.55
その他工業 -0.87
窯業・土石製品工業 -0.70
化学工業 -0.70
金属製品工業 -0.66
食料品・たばこ工業 -0.39
プラスチック製品工業 -0.37
繊維工業 -0.36
鉄鋼業 -0.29
パルプ・紙・紙加工品工業  -0.17
非鉄金属工業 -0.11
精密機械工業 -0.11
鉱業 -0.01
石油・石炭製品工業 0.00
輸送機械工業 0.39

 平成14年1月(仮)を底として平成14年11月までの間(表6)、北陸地域はポイント差で約10上昇しており、全国は約5上昇しています。上昇に寄与した主な業種は、北陸地域では電気機械工業、化学工業、一般機械工業であり、全国では電気機械工業、輸送機械工業であります。平成14年の局面は、北陸地域が全国と比較し、大きく上昇していますが、これはともに電気機械工業が伸びたものの、北陸地域の電気機械工業の伸びがより大きく、また、北陸地域でウェイトの大きな化学工業、一般機械工業、金属製品工業も大きく伸びたことに起因しています。
 北陸地域の電気機械工業は全国に比べ「通信・電子部品」「半導体・集積回路」のウェイトが非常に高く、携帯電話・DVDに代表されるIT機器が好調であり、その部品となる標記品目が国内向け及び好調なアジア地域への輸出向けとして全国より伸びが大きくなったものと考えられます。また、中国等アジア向け輸出で一般機械工業が好調であり、最近の首都圏向けビル需要増から北陸地域でウェイトの大きな金属製品工業も伸びていることから、鉱工業全体としても、北陸地域の伸びが全国に比べ大きくなっていると考えられます。

表6 上昇局面(H14.1〜H14.11)
北陸
鉱工業 12
電気機械工業 5.65
化学工業 1.96
一般機械工業 1.87
プラスチック製品工業 0.92
金属製品工業 0.84
輸送機械工業 0.47
非鉄金属工業 0.32
鉄鋼業 0.22
精密機械工業 0.14
パルプ・紙・紙加工品工業  0.07
石油製品・石炭製品工業 0.06
その他工業 0.01
鉱業 0.01
繊維工業 -0.04
食料品・たばこ工業 -0.22
窯業・土石製品工業 -0.43
全国
鉱工業 5.70
電気機械工業 2.61
輸送機械工業 1.00
一般機械工業 0.58
鉄鋼業 0.40
化学工業 0.40
窯業・土石製品工業 0.23
プラスチック製品工業 0.17
非鉄金属工業 0.13
食料品・たばこ工業 0.11
パルプ・紙・紙加工品工業  0.10
石油・石炭製品工業 0.02
鉱業 0.01
精密機械工業 0.00
その他工業 -0.02
金属製品工業 -0.12
繊維工業 -0.20


 また、北陸地域の最近の鉱工業生産指数を主要業種の時系列でみますと(グラフ2)、右肩上がりで好調に伸びていた電気機械工業も平成12年をピークとして米国ITバブルの崩壊の影響から急激に落ち込み、平成14年に入り大きく上昇しています。ここ数ヶ月を総じてみると、「通信・電子部品」「半導体・集積回路」の寄与により、水準は高いものの、横ばいとなっています(グラフ3)。
 化学工業においては、ぶれが大きいものの、鉱工業生産指数全体の動きとほぼ連動しており、現在は持ち直しの動きがみられます(グラフ4)。
 一般機械工業においては、多少のぶれがあるものの、鉱工業生産指数全体の動きと連動しており、最近は「半導体製造装置」や「繊維機械」など好調なアジア向けの輸出に支えられ緩やかながら持ち直しの動きがみられます(グラフ5)。
 金属製品工業においては、平成8年頃をピークとし、一度急激に落ち込んだものの、最近は好調な首都圏向けのビル需要の増加から緩やかながら持ち直しの動きがみられます(グラフ6)。
 繊維工業においては、中国製品等安い輸入製品に押され右肩下がりに落ち込んでおり、現在は低い水準でほぼ横ばいとなっています(グラフ7)。

グラフ2 主要業種(季節調整済)鉱工業生産指数
主要業種(季節調整済)鉱工業生産指数



グラフ3 主要業種(季節調整済)鉱工業生産指数
主要業種(季節調整済)鉱工業生産指数



グラフ4 主要業種(季節調整済)鉱工業生産指数
主要業種(季節調整済)鉱工業生産指数



グラフ5 主要業種(季節調整済)鉱工業生産指数
主要業種(季節調整済)鉱工業生産指数



グラフ6 主要業種(季節調整済)鉱工業生産指数
主要業種(季節調整済)鉱工業生産指数



グラフ7 主要業種(季節調整済)鉱工業生産指数
主要業種(季節調整済)鉱工業生産指数


 このように北陸地域の鉱工業生産指数は、全国とほぼ同じトレンド(動き)を示し、景気の動きと連動してみることができ、各業種毎の指数をみることで北陸地域の特徴的な動きを分析することができます。


<北陸地域の電力需要>

 次にエネルギー、特に電力量から北陸地域の生産活動をみてみます。表7、8、9が最近の総需要電力量等になります。(ここにある北陸地域の総需要電力量は、北陸電力(株)の販売電力量に北陸支局管内の自家発自家消費電力量を合計したもの。)

表7 総需要電力量
総需要電力量
↑クリックすると大きな表を見る事が出来ます。
(出所)北陸電力(株)、中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局
(注1)「電灯」、「電力等」及び「販売電力計」の各欄は、北陸電力(株)の販売電力量を指す。
(注2)「業務用電力(高圧)」の値は「電力等」の内数で再掲。
(注3)「自家発自家消費」の値は速報値。

表8 大口総需要電力量
大口総需要電力量
(出所)北陸電力(株)、中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局
(注1)「大口」とは、北陸電力(株)販売電力量のうち、契約電力が500kW以上の需要を指す。
(注2)「大口自家発」の値は速報値。

表9 大口総需要電力量

電力量(千kWh) 前年同月比(%)
9月 10月 11月 9月 10月 11月


  鉱   業 26,404 29,891 29,539 7.3 2.7 5.2


食料品製造業 20,176 19,318 17,732 2.5 2.1 0.8
繊維工業 92,256 89,894 89,369 ▲ 9.0 ▲ 9.9 ▲ 8.7
パルプ、紙、紙加工品製造業  106,436 110,693 107,729 ▲ 3.6 ▲ 0.9 12.3
化学工業 155,183 156,203 150,727 3.6 2.9 ▲ 0.2
石油製品、石炭製品製造業 4,682 4,912 4,521 1.7 11.2 4.1
ゴム製品製造業 2,098 2,006 1,829 11.6 8.2 5.4
窯業・土石製品製造業 35,631 36,871 35,943 8.8 0.3 ▲ 2.8
鉄鋼業 51,088 56,422 57,870 3.9 8.0 2.1
非鉄金属製造業 59,543 60,537 61,213 4.4 8.2 10.0
機械器具製造業 241,325 239,519 228,779 11.7 9.5 8.0
その他 122,946 123,666 121,198 0.9 1.3 4.1
製造業計 891,364 900,041 876,911 3.1 3.0 3.6
 鉱 工 業 計 917,768 929,932 906,450 3.2 3.0 3.7


 鉄 道 21,768 22,298 23,260 1.8 1.6 4.6
 その他 51,038 49,599 49,505 7.0 8.3 9.6
 そ の 他 計 72,806 71,897 72,765 5.4 6.1 7.9
 総  合  計 990,573 1,001,830 979,216 3.4 3.2 4.0
(出所)北陸電力(株)、中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局
(注)四捨五入の関係で集計値と合計値が一致しない場合がある。

 総需要電力量は電灯、電力に分けられ、その電力も業務用電力、大口電力等に分類されます。電灯は一般家庭用が主であり、また、業務用電力はビル、商店等で使用されるものとなります。ここでは、総需要電力量の約4割を占める大口総需要電力量についてみることで、鉱工業の生産活動をみることにします。

 大口電力とは販売電力量のうち、主として動力を使用し契約電力が500kW以上の需要を指し、大口総需要電力量(自売計電力量)は、大口電力に大口自家発自家消費を併せた電力量であります。
 大口電力では、自売計電力量の伸び率と大口契約電力の伸び率の変化で、景気の動向をみることができると言われています。
 自売計電力量の伸び率が上昇し始め、大口契約電力の伸び率を上回るようになるときは景気回復局面、逆に、自売計電力量の伸び率が大口契約電力の伸び率を下回ったときは、景気後退局面とされています。
 これは、一般的に景気が良くなると生産が上がり電力使用量が増えていき、その後を追って生産設備の新設、更新等がなされ、それに伴い契約電力が伸びていくためです(景気上昇転換点)。景気がピークに達すると、設備稼働率が落ちるため先に電力使用量の伸び率が低下し、遅れて契約電力(設備投資)が落ち始めるようになります(景気下降転換点)。
 平成5年からの過去10年間の北陸地域での大口契約電力と自売計電力量の伸び率をグラフにしたものがグラフ8となります。

グラフ8 大口電力の契約電力と電力量伸び率
大口電力の契約電力と電力量伸び率

 グラフ8は四半期での数値を用いていますが、グラフの動きはほぼ前述のとおり景気の動きと連動していることがわかります。
 また、契約電力と電力量の伸びが交わる点は景気の山谷とされる基準より約1〜2四半期遅れている場合もあります。
 現在は、平成14年の第1四半期から第2四半期にかけて、契約電力の伸びを自売計電力量の伸びが上回ったことからも景気が持ち直していることがわかります。ただ、平成14年の第4四半期の大口電力の伸びが若干緩やかになっていることが懸念されます。


<北陸地域の鉱工業生産指数と大口総需要電力量について>

 ここで、鉱工業生産指数と大口総需要電力量について比較してみます。鉱工業生産指数と大口総需要電力量を単純に比較するため、平成7年の大口総需要電力量の月平均を100として指数化したものをここで電力指数とし、鉱工業生産指数と併せた図がグラフ9(電力指数、鉱工業指数とも季節調整済指数)となります。
 ここで電力指数は、大口総需要電力量から鉱工業に当たるものだけを抜き出し指数化しています。(公共施設や鉄道等を除いている。)

グラフ9 鉱工業
鉱工業

 グラフに示されていますように、鉱工業生産指数と電力指数は非常によい相関を示しています。
 これらを主要業種別にみることにしますが、今回は単純比較をしており、鉱工業生産指数と大口電力ではその業種分類が異なっているものもあり、また同じ業種分類の中でも必ずしも対象となっている事業所が一致していないものもあります。
 そのため、鉱工業生産指数の主要業種中、電気機械工業、一般機械工業は機械器具製造業合計としての比較となり、また、金属製品工業は対象業種区分けが困難なため、比較できませんでした。

 大口電力の機械器具製造業は鉱工業生産指数の電気機械工業、一般機械工業、輸送機械工業等が含まれるため、それらをあわせた鉱工業生産指数と電力指数を比較したグラフがグラフ10です。
 全体に占めるウェイトが大きいことから、全体の指数と異ならず、よく似たトレンドを示しています。ただ、全体の指数と同様に鉱工業生産指数よりも電力指数の方が近年の水準が高くなっております。これは、生産設備に直結しない、空調設備などの電力量が寄与しているものと考えられます。鉱工業生産指数の電気機械工業の最近の動きと同様、電力指数でも機械器具製造業の動きは、ここ数ヶ月高い水準ながら横ばいとなっています。

グラフ10 機械器具製造業
機械器具製造業

 グラフ11の化学工業では鉱工業生産指数の動き幅が大きくなっているものの、同じトレンドを示していることがわかります。

グラフ11 化学工業
化学工業

 グラフ12の繊維工業は、鉱工業生産指数では平成9年から大きく落ち込みはじめていますが、電力指数では平成10年頃から徐々に下がり始めており、その後はほぼ同じ動きとなっています。電力指数でも繊維工業はほかの業種に比べ大きく減少しており、鉱工業生産指数と同様に最近は低い水準でほぼ横ばいとなっています。

グラフ12 繊維工業
繊維工業

 鉱工業生産指数上では主要業種ではありませんが、その差が大きく異なる食料品等について比較してみます。
 グラフ13の食料品については、鉱工業生産指数は徐々に下がり、電力指数は徐々に上がる、正反対の動きを示しています。食料品の鉱工業生産指数が下がる一方で、電力指数が右肩上がりとなっており、生産量の変化よりも電力使用量が年々大きくなっています。これは、熱源を多く必要とする食料品製造業において、生産エネルギーに対する電力化率の上昇が大きく寄与したものと推測されます。

 また、反対に電力化率の高い繊維工業などは、鉱工業生産指数と同じ生産の量に比例しその動きを低下させたものと考えられます。

グラフ13 食料品
食料品

 これまでみてきたように、電力指数では、猛暑等の気候変動による空調需要や、生産エネルギーに対する電力化率の変化等(熱源の電力化や、省エネ等)、生産活動以外の変動要因が影響を与え、大きく動く場合があります。
 また反対に、生産が落ち込んでも、電力は生産設備のみには使用されていないため、一定の電力が使用されており、また、電気機械工業、医薬品工業などに代表されるようなクリーンルームなど常時大きな電力を必要とする設備も増えていることから、鉱工業生産指数ほどの大きなぶれが生じずにトレンドが表れやすくなっている場合もあります。


<まとめ>

 鉱工業生産指数と電力需要をみた場合、それぞれの持つ特性から、指数のばらつき、単月でのぶれや、長期間での水準の差といった違いが出てくるものの、大きなトレンドは同じものとなっており、産業動向をみる場合それらを勘案してみていく必要があります。
 現在の北陸の産業動向は、平成14年からの電気機械工業を中心とした持ち直しの動きが、徐々に緩やかになってきています。


とやま経済月報
平成15年3月号