国勢調査からのメッセージ
第2回 人口集中地区人口

とやま国際センター研究員  浜松 誠二


人口集中地区(DID)

 前回は富山県の住宅の広さについて見た。今回は、新た な住宅地の形成と関連して、都市地域の動向について見よう。現在、県内では、富山市に向かって人口が集まり、富山市とその周辺に住宅が整備されつつある。

 国勢調査では、都市地域として人口集中地区(DID;Densely Inhabited District)を定義し、統計の集計を行っている。具体的には、国勢調査の調査区を単位として、人口密度4,000人/km2以上で5,000人以上 連なって人が住んでいる区域を指している。なお都市地域としての定義であり、工場地帯等も含むため密度が4,000人/km2を割ることもある。


DID人口の変化

 現在、富山県のDIDについては、砺波市を除く8つの市と6つの町にある。このDIDに住む人口総数(DID人口)は、1995年までは増加を続けてい たが、2000年にかけて減少した。これでは、富山市に向かった人口集中がありながら、またその郊外で住宅地の整備が進んでいるにも拘わらず、新たな都市 地域が形成されていないということになる。
 具体的には、この間にDIDの総面積に変化はなく、DID人口の減少により、DID内の人口密度が低下している。

 実際には、富山県では、国勢調査の定義では都市とされないほどゆったりとした住宅地が形成されつつあることとなろう。厳密にいえば、低い密度というよ り、小規模な住宅地が整備され、一塊の集落の大きさが5,000人未満に留まっているということであろう。
 この結果、それぞれの住宅地では十分な都市機能を持てず、車に頼って生活する社会を出現させている。



各県のDID人口密度の推移

 ここで、各県のDIDの人口密度の推移について見てみよう。
 前回、2000年の国勢調査の結果がインターネットで 一括入手でき便利になったと述べたが、過去の多様な統計については、体系的に整理されCD-ROMに収められたものが流布している。この統計とインター ネットからの新たな統計を接続すれば、膨大な時系列データの利用も容易となる。

 実は、DIDの人口密度については、多くの県で低下し続けているが、富山県の低下速度は特に大きく、2000年では、山口県に次いで低い県となってい る。

 このように、ほとんどの県で一定方向に変化している統計で、富山県の変化速度が一層大きく「なで斬り」となっている統計は他にもあり、次回以降も取り上げて見たい。
 このような動きは、47都道府県の経年変化のグラフを一括して描くことによって浮かび上がり、統計の利用が容易になって始めて、明確に把握できるように なったことである。



総人口の増減との相関

 DID人口の増減については、総人口の増減との相関が予想される。こうした事柄についても、現在ではパソコンを使って容易に確認することができる。

 富山県の場合、過去5年間に総人口が若干減少しているが、DID人口はそれ以上の著しい減少となっている。富山県と同じような結果となっている県のう ち、香川県及び佐賀県については、富山県と同様に平野が広がり、類似した統計指標をしばしば見かける県である。


 富山県を始めとする多くの県では、人口が減少しているにも拘わらず、核家族化の進行により世帯数が増加し、都市での住宅開発が進んでいる。しかし、都心 部の高密度化には向かわず、都市周辺部へのスプロール(拡散)が起こり、農地の蚕食が進むとともに、自動車依存型社会が形成されてきている。
 こうした状況は、地球温暖化、それに伴う食糧危機が予想される中で、極めて危うい土地利用の展開ではなかろうか。


平成14年5月号