北陸3県企業短期経済観測調査について
日本銀行金沢支店



 企業短期経済観測調査(以下、「短観」)は、全国の常用雇用者50人以上(卸売業、小売業、サービス業、リース業は20人以上)の民間企業(金融・保険業を除く)約9,000を調査先とする標本調査です。全国企業短期経済観測調査(以下、「全国短観」)と主要企業短期経済観測調査(以下、「主要短観」)がありますが、調査項目は同一で、「主要短観」の調査先企業は、すべて「全国短観」の調査先企業に含まれています。

 日本銀行では、本店(調査統計局)が「全国短観」と「主要短観」の集計値を公表しているほか、各支店においても、それぞれの管下の調査先企業の集計値(以下、「支店短観」)を公表しています。
 日本銀行金沢支店では、北陸3県(石川、富山、福井)の支店短観を公表しています。平成13年12月調査結果をもとに短観の概要を説明いたします。



1.短観の調査目的や調査項目は何か

 短観は、「国内景気の実態把握」を主目的として、業況等の現状・先行きに関する判断(判断項目;図,表1〜6)や、事業計画に関する実績・予測(計数項目;表7〜10)など、企業活動全般に関する調査項目について、全国の調査先企業に四半期ごとに実施する統計調査です。

 短観の特徴は、企業のマインドを問う判断項目に加えて、売上高や設備投資額等の計数項目をあわせて調査していることです。また、これらのデータについて、最近の判断・実績値に加え、先行きの判断・予測値を調査している点も大きな特徴です。
 なお、短観の集計結果は、日本銀行の景気判断や予測を示すものではありません。

(下の図,業況判断D.I.(全産業)の推移は表1より作成)
グラフ内のシャドーは景気後退局面 数値は業況判断DIのピーク・ボトムを示す
▲画像をクリックすると大きく見ることができます。

2.「全国短観」と「支店短観」の違いは何か

 「全国短観」と「支店短観」の違いは、主に次の2点です。これは、「全国短観」の調査先企業の選定においては、全国ベースの業種・規模のみを基準としており、地域の産業構造を正確に反映した設計を行っていないこと等によるものです。

(1)「支店短観」の調査先企業には、それぞれの地域の経済動向をできるだけ反映させる観点から、「全国短観」が集計対象としていない先が一部含まれていること

(2)集計に当たっては、「全国短観」の計数項目が母集団推計値を算出している(業種・規模区分ごとに母集団推計値を算出し、それらを合計)一方、「支店短観」の計数項目(表2,3,4など)は単純集計値を算出していること


3.DIはどのようにして算出するのか


 判断項目については、調査先企業からの3つの回答(「1.良い」、「2.さほど良くない」、「3.悪い」)を、以下のように算出される「DI」(ディフュージョン・インデックス<Diffusion Index>)という指標に加工・集計して、公表しています。

DI(%ポイント)=「第1選択肢良いの回答社数構成比(%)-「第3選択肢悪いの回答社数構成比(%)

 例えば、表1 業況判断DIは、収益を中心とした全般的な業況に関する判断を示すもので、「1.良い」、「2.さほど良くない」、「3.悪い」という3つの選択肢の中から1つを回答してもらい、それぞれの回答社数の構成比を求めた上で、「1.良い」の社数構成比から「3.悪い」の社数構成比を引いて算出しています。

 2001年12月調査の「製造業」の業況判断(今回)をみると、3つの選択肢の回答社数構成比は、「1.良い」が2%、「2.さほど良くない」が36%、「3.悪い」が62%で、この結果、業況判断DIは、「2%−62%=△60%ポイント」となっています。

(表1)業況判断D.I.
回答社数構成比:%、( )内は13/9月調査時予測

  12/12月 13/3月 6月 9月 12月 14/3月まで
の予測
全産業
イ.良    い 11 9 6 3 2 ( 1) 1
ロ.さほど良くない 56 52 52 46 46 ( 48) 40
ハ.悪    い 33 39 42 51 52 ( 51) 59
D.I.(イ−ハ) ▲ 22 ▲ 30 ▲36 ▲ 48 ▲50 (▲50) ▲ 58
全国 ▲ 14 ▲ 22 ▲27 ▲ 36 ▲40 (▲40) ▲ 43
製造業
イ.良    い 16 13 6 3 2 ( 1) 2
ロ.さほど良くない 53 44 50 39 36 ( 36) 32
ハ.悪    い 31 43 44 58 62 ( 63) 66
D.I.(イ−ハ) ▲ 15 ▲ 30 ▲38 ▲ 55 ▲60 (▲62) ▲ 64
全国 ▲ 6 ▲ 19 ▲30 ▲ 43 ▲47 (▲45) ▲ 49
非製造業
イ.良    い 6 6 6 3 2 ( 2) 1
ロ.さほど良くない 59 59 53 53 55 ( 57) 47
ハ.悪    い 35 35 41 44 43 ( 41) 52
D.I.(イ−ハ) ▲ 29 ▲ 29 ▲35 ▲ 41 ▲41 (▲39) ▲ 51
全国 ▲ 20 ▲ 24 ▲25 ▲ 31 ▲34 (▲36) ▲ 40
(現状)
○業況判断D.I.は、全産業で△50%と「悪い」超幅が小幅ながら拡大し、4期連続の悪化となった。
 ― △50%は、11/3月調査(△52%)以来11期振りの水準。
 ― 製造業は△60%と4期連続で悪化、非製造業は△41%と横這い。
(先行き)
○先行きについては、全産業で△58%と「悪い」超幅がさらに拡大する見込み。


4.DIにはどのような利用方法があるか

 判断項目については、「最近(調査回答時点)の状況」および「先行き(3か月後まで)の状況」を調査しており、DIも「今回DI」および「先行きDI」の形で算出。そこで、前回調査における「先行きDI」と今回調査における「今回DI」を比較することによって、企業の先行きに対する見通しが、結果としてどの程度正しかったかをみることができます。

5.個別のDIをみる際にはどのような留意点がある

 製品・サービス需給判断については、当該企業の主要製品(・サービス)の属する「業界」の需給および流通在庫の過不足についての判断を回答して頂く一方、製品在庫水準判断(表7)は、当該「企業自身」の製商品在庫の過不足についての判断を回答して頂くことになっています。
 従って、これらのDIを利用する際には、「企業自身」ないし「業界」という定義の違いに留意しなくてはなりません。


(表2)製品・サービス需給判断D.I.<製造業>
回答社数構成比:%
    12/12月 13/3月 6月 9月 12月 14/3月まで
の予測
北 陸 イ.需 要 超 過 8 4 2 0 1 1
ロ.ほ ぼ 均 衡 44 43 41 37 36 34
ハ.供 給 超 過 48 53 57 63 63 65
D.I.(イ−ハ) ▲ 40 ▲ 49 ▲55 ▲63 ▲62 ▲ 64
(製造業106社、非製造業117社)

(表3)製品在庫水準判断D.I.<製造業>
回答社数構成比:%
    12/12月 13/3月 6月 9月 12月 14/3月まで
の予測
北 陸 イ.過大〜やや多目 20 30 33 40 36 31
ロ.適      正 70 61 63 57 63 65
ハ.やや少な目〜不足 10 9 4 3 1 4
D.I.(イ−ハ) + 10 + 21 +29 +37 +35 + 27

(表4)価格判断D.I.(略)

(表5)雇用人員判断D.I.(略)

(表6)企業金融判断D.I.(略)

(表7)売上高前年比
― 北陸は石油製品、電気・ガスを除く計数:%
  12年度実績 13年度計画
  上 期 下 期   上 期 下 期
北 陸 全産業 + 3.5 + 5.1 + 2.1 ▲ 6.8 ▲ 5.7 ▲ 7.9
製造業 + 4.7 + 6.0 + 3.5 ▲ 8.6 ▲ 7.7 ▲ 9.5
非製造業 + 1.7 + 3.5 0.0 ▲ 3.8 ▲ 2.3 ▲ 5.3
全国(全産業) + 2.8 + 3.0 + 2.6 ▲ 3.0 ▲ 2.0 ▲ 3.9
(全産業<除く石油・電気・ガス>)

(表8)経常利益前年比
― 北陸は石油製品、電気・ガスを除く計数:%
  12年度実績 13年度計画
  上 期 下 期   上 期 下 期
北 陸 全産業 +14.9 +31.1 ▲ 0.5 ▲34.3 ▲40.6 ▲26.4
製造業 + 6.2 +32.7 ▲16.5 ▲51.3 ▲58.0 ▲42.1
非製造業 +37.4 +27.6 +49.6 ▲ 0.3 ▲ 1.6 + 1.2
全国
(全産業)
+18.0 +30.0 + 9.4 ▲18.7 ▲17.6 ▲19.6
(全産業<除く石油・電気・ガス>)

(表9)設備投資額前年比
― 北陸は石油製品、電気・ガスを除く計数:%
       設備投資額
(除くソフトウェア)
ソフトウェアを含む
設備投資額
12年度実績 13年度計画 12年度実績 13年度計画
全産業 北陸 + 15.4 ▲ 6.0 + 15.8 ▲ 6.2
大企業 + 25.1 ▲ 7.6 + 25.4 ▲ 8.2
中堅企業 + 12.0 ▲ 8.6 + 12.7 ▲ 6.8
中小企業 ▲ 0.1 ▲ 0.2 + 0.3 ▲ 0.9
全国 ▲ 0.9 ▲ 5.7 ▲ 1.1 ▲ 5.2
大企業 + 1.5 ▲ 6.5 + 1.1 ▲ 5.6
中堅企業 ▲ 4.6 ▲ 3.3 ▲ 4.6 ▲ 3.8
中小企業 + 1.6 ▲ 8.4 + 1.6 ▲ 7.1

   設備投資額
(除くソフトウェア)
ソフトウェアを含む
設備投資額
12年度実績 13年度計画 12年度実績 13年度計画
製造業 北陸 + 20.5 ▲ 5.8 + 21.1 ▲ 6.1
大企業 + 27.0 ▲ 6.2 + 27.5 ▲ 6.9
中堅企業 + 1.8 ▲ 6.2 + 3.0 ▲ 5.3
中小企業 + 23.9 ▲ 0.7 + 23.4 ▲ 0.9
全国 + 10.1 ▲ 7.8 + 9.6 ▲ 7.0
 大企業 + 8.3 ▲ 4.4 + 7.7 ▲ 4.0
 中堅企業 + 12.2 ▲ 11.7 + 12.3 ▲ 10.7
 中小企業 + 15.2 ▲ 16.3 + 15.0 ▲ 15.2

       設備投資額
(除くソフトウェア)
ソフトウェアを含む
設備投資額
12年度実績 13年度計画 12年度実績 13年度計画
非製造業 北陸 + 5.1 ▲ 6.5 + 5.2 ▲ 6.4
大企業 + 9.7 ▲ 19.8 + 8.9 ▲ 20.5
中堅企業 + 47.5 ▲ 14.2 + 45.2 ▲ 10.6
中小企業 ▲ 5.1 ▲ 0.1 ▲ 4.6 ▲ 0.9
全国 ▲ 4.4 ▲ 4.9 ▲ 4.6 ▲ 4.5
大企業 ▲ 2.5 ▲ 7.9 ▲ 2.9 ▲ 6.6
中堅企業 ▲ 6.7 ▲ 2.1 ▲ 6.6 ▲ 2.8
中小企業 ▲ 2.6 ▲ 5.5 ▲ 2.5 ▲ 4.1

(表10)設備投資額前年比(ソフトウェアを除く)各期毎(略)


平成14年2月号