富山県人会のすすめ
(株)富山県人社 月刊『富山県人』編集者 高島美奈子

はじめに
 全国には200以上の富山県人会が組織されている。同窓会を含めるとその数は倍近くにもなる。北は北海道から南は九州まで。富山を離れて暮らしている人達が各地で集まり、富山の話題を酒の肴に歓談交流を深めている。昭和58年の富山県置県100年の際には、知事を会長に全国富山県人会連合会が設立されている。

100年以上の歴史を刻む富山県人会
 東京では明治から大正時代、安田善次郎、浅野総一郎氏ら富山出身の著名人が会していた。関東大震災で中断。昭和4年に東京富山県郷友会が設立された。現在、東京の連合会の総会には、首都圏各地やふる里富山から、1000人もの人が集まる。
 多くの開拓者が渡った北海道は、富山県人で集落を形成した地域もあることから、自然と仕事や生活、行事を共にした。県人会と呼んで活動するようになったのは大正に入ってからで、札幌、小樽、函館、旭川…と主要地にはほとんど組織され、昭和24年連合会を結成、現在も2世、3世が受け継いでいる。
 近畿富山県人会は明治26年に誕生。108年目となる今年は秋に第163回目の総会を開催し、脈々と歴史を刻んでいる。設立当時の状況を考えると、北陸本線の金沢―高岡間開業が明治31年、高岡―富山間が32年だから、富山まで鉄道は通じていなかった。ふる里は、今とは比べものにならない程とてつもなく遠い所だったと推し量られる。しかも、身内もいなく、言葉も違う土地である。異郷の地で、富山出身者同士が出会える喜びは、夢のようであっただろう。普段隠している富山弁で気兼ねなく話すことができ、ふる里に帰ったような温かいひとときを持てたに違いない。
 その他、全都道府県とは言えないが、大なり小なり富山県人会が作られている。これらの県人会は、お互いに会って楽しむだけでなく、住んでいる地域で故郷の物産を斡旋したり、富山の観光地を紹介、戦後の集団就職の際には若者の就職を親身になって世話をしたりし、ふる里のために尽くしてきた。
 そして、平成の今も県人会にはふる里を思う温かい感動があり、世代は変わってもその活動は着実に受け継がれている。交通の便が良くなり、ふる里を代表して「おらが町の首長さん」や、友人に会いに出てくる故郷の人も交えて、ますます活発に交流している。

 


表 地方別にみた富山県人会の数
北海道・東北地方 27
 〈出身地別〉 3
東京・関東地方 42
 〈出身地別〉 40
 〈職業別〉 15
 〈趣味別〉 8
中部地方 15
 〈出身地別〉 2
近畿地方 12
 〈出身地別〉 24
 〈職業別〉 8
 〈趣味別〉 1
中国・四国・九州地方 10
外国 8
215
※『富山県人知名録(平成13年版)』より。
※同窓会は除く。

居住地や出身地、趣味別にもある県人会
 東京、神奈川、北海道、近畿などでは、さらに細かく居住している市区町村ごとの単位県人会や、出身地別、趣味別ごとの会が作られている。
 出身地別では、富山市友会、高岡会、新湊会、魚津会、氷見同郷会、黒部会…などと、出身市町村ごとはもちろん、旧町村の水橋会(富山)や東野尻会(砺波)、東加積会(滑川)など、より密接に集まりを持っているところもある。また、越中おわら節保存会のようにおわら節を楽しみながら芸を磨く会、旅行を楽しむ会、大正生まれが集まる大正会、そして昭和会など、趣味や世代別に、色々工夫して様々な会が作られている。最近はますます成熟して、会の数が多い首都圏では特に、隣接県人会と合同で催しを行ったり、友好提携して会同士の交流を図ったり、多様な活動をしている。

県人会の醍醐味
 さて、この県人会は、企画も運営も、お世話しているのは会員の方々。損得勘定抜きで、皆さんに楽しんでもらおう、自分も楽しもう、故郷の発展のために貢献しようと、献身的に活動されている。そして、参加した人もふる里に思いをはせ、会に協力し、歓談交流を楽しみ、みんなで素敵な空間と時間を作り上げている。
 そこには、会社がタテのつながりなら、人と人とのヨコのつながりがあり、学生から米寿を超えたご長老まで幅広い世代間交流ができ、仕事では出会えない異業種間交流もできている。肩ひじ張らずに人と人との付き合いができ、心がリフレッシュする。ときに予期せぬ著名人と接することもでき、人との出会いを楽しめる会なのである。
 「ふる里が富山」というだけで共通の話題を持て、日常とは違う時間を過ごせ、明日からの鋭気を養える。戦後の復興期にも、高度成長の時にも、平成不況の時にも、いつの時代もお互い励まし合い、助け合い、切磋琢磨し、刺激を与え合ってきた素晴らしい空間である。

県人会のすすめ
 現代はストレス社会と言われている。そして核家族化が進み、地域社会のつながりも薄くなってきている。だからこそ、「ふる里を思う」心を持ち、ふる里を共にする者同士が交流できる県人会は、貴重な会だと思う。
 若輩者の私が、何十年もお世話されている諸先輩方を差し置いて、県人会についてウンチクを並べてしまって気が引けるが、ふる里を思い、集まって楽しむことのできる富山県人は幸せだと思う。県人会の楽しみ方は人それぞれ。参加したことのない人は、ぜひ顔を出されてはいかがだろうか。県人会に知った人がいるかしらと不安な人は、友人を誘って一緒に参加されるといいだろう。母校の同窓会から出席してみるのもとけ込みやすいし、同期会を開いても、これまた盛り上がる。
 会では「ふる里を思う気持ち」があれば、どなたでも楽しめる。みんなでつくる県人会。みんなが主役の県人会。何度か顔を出すうちに知り合いも増え、ますます楽しくなるだろう。気心の知れた者同士、にぎやかにふる里を語り合える空間は、心の有りようが取りざたされている今、とても貴重な活動ではないだろうか。

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