“環日本海地域の中核拠点”富山県とジェトロ富山
日本貿易振興会(ジェトロ)
富山貿易情報センター 所長 宇都木博

1.環日本海と富山県
(1)貿易でみる富山県

 伏木税関支署の平成12年管内貿易概況(平成13年3月)によると、貿易総額は215,881百万円(3年ぶりに増加)で、輸出総額は80,131百万円(大幅増加で過去最高)、輸入総額は135,749百万円(3年ぶりに増加)でした(図1)。通過貨物、他所通関のものもあるので富山県の貿易そのものではありませんが、通関状況から外国との関わりを見てみます。
 地域(国)別に輸出額をみると、韓国(18,452百万円)が最も多く、次いで中国(12,821百万円)、台湾(7,851百万円)、香港(7,742百万円)、米国(7,670百万円)の順となっています。
 輸入額をみると、ロシア(25,404百万円)が最も多く、次いでアラブ首長国連邦(23,147百万円)、中国(17,133百万円)、サウディアラビア(10,564百万円)、ニュージーランド(9,739百万円)の順となっています(図2)。


 貿易の相手国の上位に米国(輸出5位)、アラブ首長国連邦(輸入2位)、サウディアラビア(輸入4位)が入っており、日本の経済が米国や産油国と深いかかわりがあるものの、日本の貿易の相手国シェアと比べると、韓国(輸出1位)、中国(輸出2位、輸入3位)、ロシア(輸入1位)が輸出、輸入額の上位に入っており、環日本海諸国との密接な関係が見られます。


 輸出を品目別にみると、中国、台湾、香港への主要な輸出品である一般機械、その他の雑製品が1、2位を占めている。3位には韓国への電気機器が入っています。
 輸入を品目別にみると、最も多いのは、アラブ首長国連邦、サウディアラビアからの主要な輸入品である原油および粗油であり、次いで2位、3位にはロシアからの非鉄金属、木材が入っています(表)。

表 品目別にみた貿易額
(輸出)
品目 構成比(%)
1一般機械 23.6
2その他の雑製品 15.8
3電気機器 12.4
4元素及び化合物 8.6
5非鉄金属 8.1
(輸入)
品目 構成比(%)
1原油及び粗油 30.2
2非鉄金属 23.4
3木材 10.9
4ウッドチップ 6.4
5非鉄金属鉱 3.1
伏木税関支署「平成12年管内貿易概況 資料」

(2)海外進出企業でみる富山県−アジアでは中国進出が最多
 財団法人とやま国際センターの「富山県企業の海外事業所調査」(平成9年9月現在)によると、富山県企業の海外事業所数は178事業所で、これを地域別にみるとアジアが100事業所で最も多く、次いで北米36事業所、欧州30事業所、南米6事業所、オセアニア4事業所、アフリカ2事業所の順となっています。
 さらにアジア(100事業所)の内訳をみると、中国が22事業所(香港は含めず)と最も多く、次いでシンガポール14事業所、マレーシア12事業所、タイ10事業所の順となっています。

 また、平成10年以降の県内企業の中国への進出状況は、新聞情報をもとにすると、山東省青島市にフルタフーズが、中国で最も経済発展の著しい上海市には川田工業が、江蘇省にはベアリング製造の藤堂工業が進出しています。また、広東省には北陸電気工業、速水発条が進出しています。今後、中国のWTO加盟を見越し市場開放を期待しての進出が増えてくるものと思われます。

(3)中核拠点の富山県
 富山県は、日本海に面し、その中央部に位置するという地理的条件、歴史的背景から、環日本海諸国との交流、協力に積極的に取組んでおり、富山県企業の貿易・投資活動を支援する大きな力となっています。
 環日本海地域は、資源、労働力、技術、資金を相互に補完することにより発展が期待されています。これまで阻害要因の一つであった極東の緊張の場が、急展開した韓国・北朝鮮との緊張緩和で、分断の38度線を越えて鉄道が繋がろうとしています。注)少しずつではあっても環日本海地域の発展の条件は整いつつあります。
注)南北を結ぶ鉄道・京義線(ソウル−新義州)の復旧工事は、2000年9月、韓国側の起工式を終えており、工事が順調に進めば2001年9月に南北の断絶区間24キロが連結され、分断以来56年ぶりに列車が運行されることになる。(2001年2月16日東洋経済日報)


 富山県においては、平成11、12年と環日本海に関わる大きなイベントがありました。

NEAR21
 NEAR21は、富山県、日本貿易振興会(以下「ジェトロ」という)、NEAR21推進会議を主催者として平成11年11月に開催された北東アジア経済交流EXPOのことです。平成11年は、中国、モンゴル、韓国、ロシアからの出展者を得た展示商談会、経済交流やエネルギーについてのシンポジウム投資環境説明会、海外事業展開や海外人材育成に関するセミナーなど多彩なプログラムで実施されました。日本では初めての北東アジア地域を対象とした総合的な経済交流イベントで、環日本海地域に富山を大きくアピールしたイベントでもありました。
 このような経済交流イベントは一過性で終わらせること無く、地道に継続していくことが大きな効果を生むという考えのもと、NEAR21事業は平成12年にも開催されています。平成12年開催時には、中国、韓国、モンゴル、ロシアの観光関係者と富山県の観光業者が集まり、観光商談会が開かれました。これをきっかけとして中国側から請われて、遼寧省丹東市に湯の街注)を作ろうとする交流が生まれています。
注)宇奈月温泉を訪れ、露天ぶろや旅館施設に関心を持った遼寧省幹部が、県ホテル旅館環境衛生同業組合に、丹東市の温泉開発、旅館建築への投資や技術指導を依頼したことがきっかけ。丹東市は温泉が豊かで、地形も宇奈月に似ているが、温泉地としての整備が遅れている。(富山新聞)


北陸(日本)・韓国経済交流会議

 平成12年7月に富山市で第1回北陸(日本)・韓国経済交流会議が開催されました。日本側からは北陸4県の自治体、経済団体と経済産業省(当時は通商産業省)、韓国側からは江原道、慶尚北道、蔚山広域市、大邱広域市、経済団体、産業資源部の代表での会議が開催され、民間企業の交流会も開催されました。第1回会議では、パートナーシップの構築、産業技術協力、調査研究の3分野で北陸と韓国の地域間経済協力を行っていくことが決められました。
 平成13年2月には、韓国ソウルにおいて、第2回目の会議が開催され、それまでの成果報告と新しい事業への取組が決められました。平成14年2月には、第3回目の会議が北陸(金沢)で開催されることになっています。
 第2回会議では、ジェトロ、北陸国際投資交流促進会議が主催し、北陸への投資を呼び掛ける「対日本(北陸)投資セミナー」を開催しました。韓国で日本への投資を呼び掛けるセミナーは初めてのことでしたが、当初予想を上回る88名の出席者を得たセミナーとなりました。こうした交流の中から企業誘致、企業間技術提携等が実現し、経済交流が一層実りあるものとなって欲しいものです。


 北陸(日本)・韓国経済交流会議の発足にあたり、参加する方々の基礎資料として利用いただくため、北陸のジェトロ4事務所(新潟、富山、石川、福井)共同で「北陸・韓国ハンドブック」を作成しました(平成12年6月)。このハンドブックの中で、北陸の対韓国進出状況として、新潟14事業所、富山10事業所、石川6事業所、福井4事業所が報告されています(各県の調査時点は98、99年で同一時点ではない)。
 富山県からの進出事業所を業種別にみると、富山県の産業構造をあらわすように、幅広い業種(機械4事業所、その他製造業2事業所、化学1事業所、繊維1事業所、鉄鋼・金属製品1事業所、サービス業1事業所)にわたっています。
 またハンドブックでは、韓国では、マルチメディアなどの情報産業が今後も急成長を続けるものと予想されており、日本での国を挙げてのIT化の進行とあいまって、情報産業における日韓提携がますます進展するものと思われます。

2.世界と富山を結ぶジェトロ富山

 ジェトロは昭和43年(1958年)に設立し、海外との調和のとれた貿易の発展を目指して、海外の経済・貿易動向に関する情報の収集と提供、貿易の斡旋、博覧会・見本市の開催、各種出版物の発行、対日輸入・対外投資・対日投資・技術交流の促進など様々な事業を行っています。近年では、世界経済のグローバル化に対応して、地域経済と中小企業の国際化も支援しています。
 ジェトロ富山では、環日本海地域との密接な関係にある富山県という地域の特性を考慮し、県内企業等の方々に利用して頂くためのライブラリーの資料充実に努めるほか、中国語・韓国語・ロシア語も表示可能なインターネット・コーナーを設置しています。
 また、東南アジア、米国をはじめとして広く世界の各地に情報、ビジネスチャンスを求める企業、団体のために世界と富山を結ぶパイプ役としての事業を実施しています。具体的には、貿易・投資等のための情報提供、貿易・投資相談、ビジネスセミナーや貿易実務講座の開催、対日投資情報提供などを行っています。


ジェトロのホームページ:http://www.jetro.go.jp/
貿易・投資等のお問合せ:日本貿易振興会(ジェトロ)富山貿易情報センター
            TEL:076−444−7901、FAX:076-444-7903