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八 尾 正 治


氷見市の巻(その2)

 「氷見市民の歌」は、昭和38年8月23日制定された。1郡1市実現10周年を、記念したものである。作詞は地元のベテラン辻本俊夫、作曲は北東稔である。行進曲風の、爽快なメロディが良い。

氷見市民の歌

1)立山の峰を仰ぎて
   新生の誓いもかたく
   見よ ゆるがぬ栄えを目指す
   生気満つる希望のまちよ
   ああ氷見市 われらの氷見市
   若き力 ここにみなぎる

2) 有磯海 遠くかすみて
   胸にわく 思いも深く
   
見よ 世紀の文化は薫る
   人の和のほほえむまちよ
   
ああ氷見市 われらの氷見市
   自治の理想 つねにかがやく

3)野に海に 力あわせて
   生産の調べも高く
   見よ ゆたかなる生活(くらし)を招く
   かぎりなき幸呼ぶまちよ
   ああ氷見市 われらの氷見市
   のぞみ溢れ 永久(とわ)に伸びゆく

氷 見 小 唄

1) 氷見は名所有磯海 真帆や片帆の唐島に
   仇な猫鳥泣きぬれて ねぐらかえりのもやひ舟
   されみなホイノサ 月が出る

2) 春の宵夜さ朝日山 ゴンゴン桜の花が散りや
   まるまげ祭さつき花 青葉若葉の掛舞台
   それ舞えホイノサ 灯がゆれる

3)祇園祭りは夏の花 みこし鈴の音街に咲く
   まねく国府の浜風に 粋な浴衣の初姿
   それひけホイノサ 縁むすび

4)いわし氷見ぶり 江戸好み
   たかくやぐらの 音網かけて
   大漁大漁のトロッペイ 船は千石心意気
   そら漕げホイノサ 勇み肌


桜の朝日山公園

 氷見市は観光地ゆえに、三味線の似合うお座敷歌も多い。「氷見小唄」は、地元の文化人、円照寺住職の菊池現亮の作詞を、村田好一が曲付けしたもの。シットリとした優雅な歌である。
 小唄では、もうひとつ「有磯小唄」がある。昭和29年4月、氷見1郡1市実現を祝って、先に紹介した「氷見市制を祝う歌」と同時に発表された。婦人会などで歌い踊られ、祝賀気分を盛り上げた。氷見観光協会が中心となり選定補作した歌詞を、プロの有名歌手林伊佐緒が作曲した。ムード満点の歌曲である。

有磯小唄

1) 恋の唐島 弁天さまにヨー
   なにを祈るか なにを祈るか
   エー つがい鳥

2)しぶき濡れても 有磯の沖でヨー
   ふたつゆれてる ふたつゆれてる
   エー 船もある

3) 行こうか灘浦 戻ろか島尾ヨー
   なんであと引く なんであと引く
   エー 中の橋

4)見ようか踊ろか ゴンゴン祭りヨー
   好きなお方と 好きなお方と
   エー 肩並べ


弁天をまつる 唐島

 「はやし」と名の付く、賑やかなさわぎ歌もある。「氷見ばやし」は、昭和38年5月、地元のおなじみ辻本俊夫の作詞によるものである。10題もある長いものだが、歌の材料に不自由しない名所旧跡の豊富さを誇っているようだ。
氷見ばやし

1)ハア
   名どこ花どこ 朝日の山は
   咲いた桜に ぼんぼり揺れて
   鐘がかすみの 中で鳴る
   ごんごん祭の ヤンレソレキタ鐘が鳴る

2) ハア
   有磯なぎれば 唐島晴れて
   恋の弁天 つまびく絃に
   白いかもめも 舞い踊る
    沖じや大漁の ヤンレソレキタ花が咲く

3) ハア
   田子の白藤 緑の松の
   影をうつした 島尾の浜は
   派手な水着の パラダイス
   砂に日傘の ヤンレソレキタ花が咲く

4)ハア
   鐘にさそわれ 噂に曳かれ
   見事 大いちょう 貝塚訪えば
   栄枯絵巻が 目に浮かぶ
   胸にしみいる ヤンレソレキタ古代歌

5) ハア
   鮒と鯉呼ぶ 十二町潟の
   招く鬼蓮 眺めてゆけば
   布勢のまる山 松の風
   偲ぶかささぎ ヤンレソレキタ 詩の跡

6)ハア
   見事アーケード 文化の灯り
   北と南を ひとつに結ぶ
   夢も明るい 虹の橋
   街は繁昌の ヤンレソレキタ 人の波

7)ハア
   山車が勇めば 太鼓がはやす
   年に1度の 祇園の宵は
   うれし2人も 宮まいり
   晴れて添う日の ヤンレソレキタ仲頼み

8) ハア 阿尾は古城 岬に立てば
   虹が島から  そよ風吹いて
   合いの海原 帆が揺れる
   眺め千両の ヤンレソレキタ 夢心地

9) ハア
   常磐みどりに 紅葉の彩が
   映えて浮き立ち 錦を描く
   香る茶庭は 光久寺
   旅の鳥さえ  ヤンレソレキタ 皆ほめる

10)ハア
    氷見はよいとこ 夜も日も伸びる
    港 銀波(しろがね)
    田畑は黄金波(こがね)
    野幸 山幸 海の幸
    いつも平和の ヤンレソレキタ灯が点る  

 もう1つ、辻本俊夫の作品に「ちょうちんばやし」がある。これには、中筋国雄の曲が付いている。平成4年7月のもので、子供向きを意識した歌である。

ちょうちんばやし

1) 氷見はゆたかな 海のまち
   今日は祭りだ 楽しいな
   吊るすちょうちん 鯛に鰤
   燃えて心に 灯をともす
   ブリのちょうちん 元気だね
   タイのちょうちん めでたいね

2) 氷見はあかるい 魚のまち
   今日は祭りだ 嬉しいな
   泳ぐちょうちん 鯛に鰤
   ブリのちょうちん 素敵だね
   タイのちょうちん ゆかいだね

氷見音頭

1) ハア
   氷見はよいとこ 朝日に桜 アリヤセ
   なびくかすみの 薄化粧
   雪の立山 アレサ立山 雲の上
   ソレ シャシャントナ ドドントセ
   
氷見は名どころ ヨイト ヨイトナ
   (以下はやし略)

2) 氷見はよいとこ 入船出船
   鴎うたえよ 汽笛が鳴る
   沖は大漁の アレサ大漁のぶり、まぐろ

3) 氷見はよいとこ また誘われて
   君と島尾の 遊園地
   田子の白藤 アレサ白藤  ゆれかかる

4) 氷見はよいとこ お山の屏風
   ひらく港は 魚の山
   街は黄金の アレサ黄金の 花ざかり


わびとさびの 光久寺の茶庭
 氷見は観光地だから、県外県内からドンドン客を呼び込む。おところ自慢の宣伝歌が必要である。まず「氷見音頭」だが、これは観光協会が中央の有名歌謡人に依頼してできたもので、KNB興産でテープになっている。作詞は高橋掬太郎、作曲は大村能章という、豪華コンビである。

−つづく− (富山県郷土史会長)