ホタルイカの生食による旋尾線虫感染症
 
 富山湾の春の味覚、ホタルイカ。
そのホタルイカから皮膚疾患や腸閉塞を起こす寄生虫、旋尾線虫(「せんびせんちゅう」と読む)幼虫が検出されることがあります。
ホタルイカを生で食べる場合は注意が必要です。

旋尾線虫幼虫とは・・・?

 
 線虫の一種。成虫は不明である。体長は1p×0.1mm。
 旋尾線虫幼虫(typeX型)はホタルイカ、ハタハタ、タラ、スルメイカなどの内臓に寄生し、これらの生食により感染する。
  なかでもホタルイカによるものが多い。ホタルイカへの寄生率は約3%である。                                   

ホタルイカから分離された旋尾線虫(typeX幼虫)
東京医科歯科大学大学院国際環境寄生虫病学教室、赤尾信明先生より提供

旋尾線虫感染症
 
症  状

 旋尾線虫感染症は旋尾線虫の幼虫が体内を移行する幼虫移行症で、主に2つの病型がある。

  @皮膚爬行疹型

 

皮膚爬行疹(ミミズばれ)を呈する。爬行疹の出現は腹部を中心に出現し、次第に側腹部に移行することが多い。爬行速度は比較的早く(1日2〜7cm)、水泡を形成することも多い。
ホタルイカ摂食後2週間前後の発症が多い。

爬行疹

  A腸閉塞型

腹痛、心窩部痛、嘔吐などを伴う。ホタルイカ摂食後数時間〜2日後に発症する。

発症時期はホタルイカ漁解禁の3月より8月、なかでも4、5月に多い。

診  断

 ホタルイカ生食の有無を知ることが手がかりになる。
 皮膚爬行症では、切除した組織内で虫体断片を確認し、同定する。
 また、腸閉塞型では、内視鏡による虫体確認や摘出は虫体が極めて小さいため困難である。
  手術適応になったものについては、皮膚爬行症と同様に切除した組織内の虫体を確認、同定できる。
 現在、旋尾線虫typeX幼虫の薄切切片を抗原とする酵素抗体法などの免疫血清診断が行われている。

治  療

 皮膚爬行症では爬行疹の進行先端部の皮膚を切除して虫体を除去する。
 腸閉塞のときは対症療法のみで軽快するものが多いが、重症化して手術が必要な場合もある。

予  防

・ホタルイカは加熱して食べる。

・生で食べたい場合は、冷凍処理を行った旨の表示のあるもの、又は、内臓をきれいに除去する。

・「踊り食い」は絶対しない。

           



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