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更新日:2021年2月24日

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「小さく産んで大きく育てる」は成人病発症のリスクの一つ?

信州大学医学部保健学科 小児・母性看護学講座教授
金井 誠

近年、出生体重が減少している!(低出生体重児の分娩率が増えている)

『小さく産んで大きく育てる』という言葉を聞いたことがあると思います。確かに大きな赤ちゃんの出産は難産になり易く、小さい赤ちゃんの方が出産は楽かもしれません。そこで出生時の平均体重の推移を見てみましょう(図1)。男は2009年以降、女は2005以降横ばいとなっていますが、1975年→2015年の40年間で、男は3.24kg→3.04kg、女は3.15kg→2.96kgと男女ともに約200g減少しています。また低出生体重児(2500g未満)の出生数割合も、近年は横ばいとなりましたが、同じく40年間で男は4.7%→8.4%、女は5.5%→10.6%に増加しています。なお、早産や多胎は小さく生まれる原因となりますが、正期産(いつ生まれてもよい時期)の一人の赤ちゃんでも小さく生まれる赤ちゃんが増えていることがわかっています。すなわち、特殊なお産だけでなく普通のお産全体的に小さく生まれる赤ちゃんが増えたわけですが、これは良いことなのでしょうか?
早産や多胎以外で、赤ちゃんが低出生体重児になる理由としては、お母さんに妊娠高血圧症候群などの合併症があって、胎盤から赤ちゃんへの栄養がうまく供給されなかったりすることなどの特別な病態もありますが、普通のお産全体的に小さく生まれる赤ちゃんが増えた原因の一つとして、若い女性のやせ願望が強くなり、日本の若年女性全体にやせの女性が増えた影響が考えられています。

近年の若年女性はスタイルがよい!

近年の若い女性は、モデルさんのようなやせ型体型に憧れる方が増えています。これはやせ女性の割合の推移を見れば一目瞭然です(図2)。やせとは、体型を表す指標のBMI;体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)が18.5未満の方ですが、1981年12.6%→2011年24.2%と急増しており、特に20~30代女性のBMIが減少していることから(図3)、出産年齢の女性達にやせ体型が増えていることを示しています。健康的にスタイルのよい体型を保つことは問題ないのですが、無理なダイエットや偏食は問題ですし、産後のスタイルを気にして妊娠中まで栄養摂取を控えようと考えるのは大きな問題です。そして、やせ体型の妊婦で体重増加が少ないと低出生体重児となる頻度が高まるため、やせの若年女性の増加とともに、出生体重が減少した可能性が指摘されているわけです。したがって従来は妊娠中の体重増加を10kg以上増やさないようにといった厳しい指導が一律に行われていた時期もありましたが、現在は妊娠前のBMI値によって個別指導することが一般的で、BMI24以上の方は体重増加に注意が必要で5~7Kg程度を推奨し、標準体型なら7~10Kg程度が望ましく、やせ型の方には10~12kg程度むしろ増えていただくことを推奨しています。

小さく産まれた赤ちゃんは、将来、成人病(生活習慣病)になりやすい?

成人病(生活習慣病)とは高血圧・虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症など)・糖尿病などの総称で、成人になって発症することが多いのですが、生活習慣の大きな関与が判明してきたため、生活習慣病と呼ばれるようになりました。生活習慣で大きく影響するのは、喫煙、食生活(高脂肪食)、運動不足などで、肥満はその発症リスクをさらに増加させることは、皆さんご存知のことでしょう。なお生活習慣は環境因子とも呼ばれ、これに加えて遺伝因子(いわゆる家系)も発症に関わっています。
一方で、近年注目されている学説に「成人病胎児期発症説」があります。ご存知でしょうか?。これは「胎児が低栄養の子宮内で育つと成人病になりやすい体質になりやすく、そうした体質の児が、出生後に過量な栄養を摂取したり、過剰なストレスに晒されたり、運動不足といった生活習慣になると成人病を発症しやすい」というものです。すなわち、成人になってからの生活習慣だけでなく、子宮内から子供の頃を含めての環境因子(生活習慣)も成人病発症のリスク因子の1つになりえるということです。子宮内で長期間の低栄養状態であった児は、発育も制限され小さな赤ちゃんとして生まれる可能性が高いのですが、おそらく、少ない栄養でも十分に体に蓄積するような体質(太りやすい体質)を獲得する可能性が高く、こうした体質の児が、出生後に過量の栄養を与えられたり、運動不足であったりすれば、将来成人病の発症リスクが高まるということが推察されるのです。

妊娠前から気を付けたいこと

妊娠中のバランスのよい食事や適度な運動が重要であることは当然です。しかし生活習慣は妊娠してから急に変えられるものではありません。幼少期からの食生活、運動習慣などの重要性を、子供を育てている全ての大人が意識することが大切です。スタイルを気にする方は、健康的なスタイルを目指し、痩せすぎや無理なダイエットは自分自身のみならず赤ちゃんの将来に影響するかもしれないというリスクを知っておきましょう。
また、喫煙者の早産率や低出生体重児の分娩率は明らかに上昇しますし、禁煙も妊娠してすぐにできるものではありませんので、喫煙は妊娠前から勧められません。妊娠・授乳中の夫の喫煙による受動喫煙も問題ですから、女性だけでなく男性の意識改革も大切です。
なお、悪阻のひどい時期にまともな食事が取れないことは多くの妊婦さんが経験します、問題となるのは妊娠期間全体に赤ちゃんへの栄養が届かないことなので、悪阻の時期は点滴などでの適切な治療を受け、悪阻が軽快したらバランスの良い食生活を心掛けることで心配ありません。

妊娠中に赤ちゃんが小さいと言われたり、生まれた子が小さかった場合

様々なことに気を付けていても、ある一定の頻度で小さな赤ちゃんが生まれるのは自然の摂理ですし、小さな赤ちゃんが皆成人病になるわけではありません。むしろ元気に育つ子の方が殆どです。後悔したり自分を責める必要はありません。
その上で、小さく生まれた一部の子は、幼少期の食生活などが将来の成人病発症のリスク因子になる可能性があることを知っていることは大切ですし、妊娠中のご自身の食生活や出生後からの児の食生活は、全ての母親と児にとってとても重要ですから、ご自身の健康とともに、赤ちゃんの健康を考えた生活習慣を身につけましょう。

図1.性別にみた出生時平均体重および2,500g未満出生数割合の推移
(平均29年我が国の人口動態(厚生労働省)

図2.やせ女性(BMI<18.5)の割合の推移
平成28年度国民健康・栄養調査報告(厚生労働省)

図3.日本人のBMIの推移(1947-2015) 社会実情データ図録

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