鉛筆のイラストはじめに

吉見先生の写真 最近、「食育」という言葉をよく耳にするようになりました。でも、この言葉は実は、随分古くから使われていたそうです。昔も今も食べることの大切さは、変わらないものです。ここでは、現在の子どもの食生活とそれを取り巻く生活環境の変化について、お話ししながら、家庭を中心とした食育の意義について考えてみたいと思います。
 みなさんも、毎日の食事について、一緒に考えてみましょう。

 

鉛筆のイラストプロフィール

富山大学人間発達科学部助教授
平成2年3月 愛知県立大学文学部社会福祉学科卒業
平成4年3月 愛知教育大学大学院教育学研究科(幼児教育専修)修士課程修了
その後、名古屋文化学園保育専門学校(専任教員)、県立新潟女子短期大学(講師)を経て、現在、富山大学教育学部家政教育専攻助教授。専門分野は保育学、児童福祉、保育学。主な研究テーマは子育て支援に関する研究。
※プロフィールは講座開催当時のものです。

 

鉛筆のイラスト講座の内容

ピンのイラスト食育ってなに?

給食の写真 食育とは、古くは、明治時代から用いられ、「知育、徳育、体育」そして第4の教育と言われる「食育」が挙げられていました。
 つまりは、食に関する教育全般を指していますが、定義の仕方は、それこそ、いろいろあり、省庁でいえば、厚生労働省は家庭での食生活や食の安全の視点から、文部科学省は、小中学校の給食や教科をもとに生きる力の視点から、そして農林水産省は、地産地消などの農業や食料消費の問題として食育を取り上げています。食育の対象も乳幼児から高齢者まですべての人間を対象としています。また、食事の問題は、食べる、寝る、運動するなどの生活習慣や生活リズムにも大きな関連をもっています。そして、食事を通して家族との触れあいや友人などの人間関係を築く場であったりします。
 このように食育とは、単に栄養価や調理方法など直接的な食に関する知識のみならず、食習慣の知識の修得を含めた生活習慣の見直しや、食卓での団らんを通じた社会性の育成、そして食文化の理解なども含む幅広い教育であると思われます。
 ここのお話では、幼児の食育という点で、家庭を中心とした生活習慣との関係、食べることとコミュニケーションとの関連で考えていきます。

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ピンのイラスト最近の子どもたちの食生活はどうなっているの?

食生活のグラフ 未就学児生活実態調査報告「とやまっ子のすがた」から、平日に子どもと一緒に夕食をとるのは、母親が約9割に比べて、父親は約5割と少なく、夕食を家族の団らんの場とすることが難しくなっていることがうかがえます(グラフ2)。現在、ライフスタイルの個別化で、孤食が深刻化しています。特にお父さんと子どもは生活の時間が合わないのが現状です。そのため、どんどん子どもとふれあう時間が減ってしまいます。たとえば、普段の会話がないのに、問題があったときだけ、父親が何か子どもに言っても、子どもは言うことを聞いたりしないなどの問題が起こると思われます。

朝食のグラフ また、前述の「とやまっ子のすがた」を見ると、基本的生活習慣のひとつである朝食については、8割以上の幼児が毎日食べていることが分かります(グラフ1)。しかし、ちゃんと食べていない子どもも多く、「ひとくちパンを食べて、朝食を終えた。」と答えているケースもあります。一番の問題は、子どもたちの食欲がないことでしょうか。これには、睡眠のリズムの問題も関係しています。起きてから1時間ぐらいしないと食欲はわかないのに、夜遅く寝て、朝遅く目が覚めて30分で準備をして出かけていく。これではちゃんと朝ごはんを食べることができません。朝食の質が問題となっています。
 近年、小児肥満が問題となっていますが、原因は幼児期にある場合が多いと言われています。幼児期の食育がしっかりしていないと、好き嫌いが増え、成長するにつれてどんどん悪い習慣がついてしまう。幼児期にきちんとした食生活を身につけることが必要といえそうです。

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ピンのイラスト食事を通して大切なことは何ですか?

家族で食事のイラスト ライフスタイルが個別化し、家族のきずなが弱くなっている現代だからこそ、家族が一緒に食事をとる工夫が必要であると思います。食事の時間は、ただ栄養を摂取したり、食欲を満たすだけではなく、家族のコミュニケーション、憩いの場として大切です。そして、それを伝えることが食育だと私は考えます。わざわざ家族会議なんてしなくても、食事をしながらだと自然と会話も弾むものです。「今日、保育園でこんなことがあった。」「友だちの○○くんとこんなことをした」など、いろいろな話を子どもから聞くことができます。そうすると、子どもがどんなことに興味があるのかわかったり、食欲の有無で子どもの健康状態もわかります。また、「お父さん(お母さん)は今日こうだった」と話すことも無理なくできるでしょう。昔は「食事中は、口に食べ物を入れてしゃべらないもの」と言われてきましたが、会話しながら楽しく食事をすることは、一家団らんの時間をもちにくい現代の家族では、とても貴重な時間となっているようです。

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ピンのイラスト食育はいつ、どこで教えたら良いのかな?

給食の写真 食育を教える場は、社会には無数にあります。家庭はもとより、幼稚園、保育所や小中学校などの集団の場や保健所・医療機関での講習会、公民館や児童館などの体験学習、そしてテレビやラジオ、新聞、雑誌などのマスメディアでも学習する機会は至る所にあります。
 こうした食育の場では、家庭と幼稚園・保育所・学校、地域が連携しながら、食育を行わなくてはいけないと思います。たとえば、3〜4歳頃は、食品に対してまだまだ未知の部分が多く、見たことがないものは食べたがらないのは当然です。でも、集団の場では、友だち同士が刺激となって意外と食べたりするんですね。そこで、最近では学校給食のレシピをホームページで紹介したり、お迎えに来る保護者の方が目にできるように玄関先に、今日の献立が置いてある保育所もあります。そこからヒントを得て、親が給食で出るメニューを家庭でつくってみる。すると、学校や園でそのおかずを食べた経験が子どもに残っているから、苦手なメニューが食べられるようになることもあります。栄養バランスのよいメニューが考えられていたり、みんなでワイワイ食べることで嫌いなものを自然と食べていたり、給食で食育をすれば充分ではないかという意見もあります。しかし、1日3回の食事のうち、給食は1回。あくまでも食事の基本は家庭であることから、家庭で、乳幼児期から、普段の生活の中で食育が進められていくべきだと思います。そして、子どもの食べ残しや好き嫌いなど、食事の様子についても幼稚園・保育所・学校と連携を取りあい、家庭での食事に生かしていきたいものです。

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ピンのイラスト食事を楽しむにはどうしたらいいの?

給食の写真  子どもたちにとって、食事の雰囲気はとても重要。しつけや指導も大切ですが、何よりもまず「食べることは楽しいこと」という思いを子どもにたっぷりと伝えてあげることが大切です。特別なごちそうがなくても、家族みんなでおしゃべりしながら食事をすることだけでも、とても楽しいもの。そのなかで子どもたちのこころもからだも大きく育っていきます。家族の愛情もまたごちそうなのです。
 ここでは、楽しく食べる工夫として、
1 リラックスして楽しく食べる場をつくること
2 食空間についての工夫をしよう
3 無理に嫌いなものを食べさせず、少しでも食べた時は思い切りほめよう
4 食べ物ができるまでの様子をイメージさせよう
5 子ども自身が料理を作って楽しさを味わわせよう
6 普段の生活や遊びの場で、食に対するイメージを育てていこう 
7 外遊びをたくさんしてお腹を充分に空かせよう
 などを提案します。もう少し具体的な内容は別の機会があれば、お話させて頂きますが、皆さんもいろいろと工夫されてはいかがでしょうか。

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ピンのイラスト自分自身の子育てを通して感じていることは何ですか?

料理のイラスト 私の娘(5歳)は野菜嫌いでいつも困っていました。それで、一案して、ベランダでミニトマトを栽培しました。小さいトマトの苗に毎日水をあげておいて、トマトの実がなると娘と一緒に収穫したりしました。そうしたら、少しずつですが、娘もトマトが食べられるようになったんですね。こうした経験をすると子どももおいしく食べることができ、また食べ物を大切に味わう気持ちが自然に生まれると思います。
 また、娘にはよく、食事のお手伝いをしてもらいます。子どもに役割をもたせることで、単に出てきた食事を食べるのではなく、みんなで食事をつくるという意識が生まれ、食事をつくってくれた人への感謝の気持ちも育まれると思います。たとえば、先の調査でも家庭でよく行う「お手伝い」は、食事の準備や後かたづけが一番に挙げられています。私の娘も、おもちゃの後片づけは嫌がっても、料理のお手伝いは率先してやりたがります(逆に時間がかかってしまいますが)。子どもたちにお手伝いをさせることも食育では大切なこと。娘も楽しそうに皿を運んだり、食事をよそったりしています。自分で給仕することが楽しく、その結果、自然と食も進んだりしています。
 食事を食べるというのは最後の結果、そこに至るまでのさまざまな流れや思いを普段の生活の中で少しずつ教えていくことが食育で一番大切なことだと思います。

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鉛筆のイラストお薦めの本

ピンのイラスト 「知っていますか 子どもたちの食卓〜食生活からからだと心がみえる〜」
    足立己幸著、NHK出版、2000年
ピンのイラスト 「こどもの肥満」
    村田光範他著、日本小児医事出版社、1994年
ピンのイラスト 「6歳までの しつけと子どもの自立〜イラストで学ぶ基本的な生活習慣〜」
    谷田貝公昭監修、合同出版、2002年

鉛筆のイラストお薦めサイト

ピンのイラスト i−子育てネット(http://www.i-kosodate.net/index.html)
ピンのイラスト 大学保育・児童福祉研究室(http://www3.toyama-u.ac.jp/~myoshimi/)

鉛筆のイラスト参考資料

ピンのイラスト未就学児生活実態調査報告「とやまっ子のすがた」

富山県教育委員会発行(平成16年3月)
調査対象:県内全域から抽出した幼稚園・保育所に通う3歳児と5歳児の保護者