鉛筆のイラストはじめに

竹井先生の写真
 「みて、みてー」「こっち来てー」。
遊ぶ様子を側で見ている筆者に、子どもたちが話しかけてきます。驚きやおもしろさを誰かに伝えずにはいられないといった様子です。筆者は、自然素材を使った遊びの中で、子どもが何に心を動かし、どのように成長するのかについて調査を重ねてきました。このような心の動き、つまり、物事に対する「興味・関心」を持つことこそ、子どもの学びの第一歩であると考えているからです。
では、自然素材を使った遊びの中で、子どもは、何に心を動かすのでしょうか。以下では、身近な自然素材の一つである「水」「土」「風」「火」に関する具体的な子どもの遊びの様子を紹介しながら、その学びについて考えてみたいと思います。

鉛筆のイラストプロフィール

1959年大阪生まれ。
灰谷健次郎、林竹二に影響を受け、大学時代を沖縄にて過ごす。
神戸大学大学院教育学研究科終了後、美作女子大学(現・美作大学)講師、助教授を経て、富山大学人間発達科学部助教授、現在に至る。NHK富山放送局にて子育ての番組を企画・出演中。
 
 専門分野:美術教育、幼児の遊び・造形遊び
 
 主な著書:『伝承おもちゃを作ろう』明治図書(1996)
      『幼児版 伝承おもちゃワークショップ』明治図書(2002)
      『伝承おもしろおもちゃ事典』明治図書(2003)
      『作って遊ぼう エコロジカル工作』メイト(2005) など
※プロフィールは講座開催当時のものです。

鉛筆のイラスト講座の内容

ピンのイラストものをつくることはどうして大切なのですか?

手づくりおもちゃの写真 身近な材料を工夫して使うことで想像力や感性を豊かにすることが出来るからです。
 その豊かさをもとに知性が培われます。

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ピンのイラスト知性と感性の関係はどのような関係ですか?

 知性と感性というのは、非常に連動しています。知性を豊かになってほしいと願うのなら、その前提に是非、子どもたちに感性の豊かさを、身に付けてあげていただきたいと思います。

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ピンのイラスト親子でものづくりをすることはどうして大切なのですか?

父子のイラスト大人は子どもの感性(やアイデア)の豊かさに、子どもは大人の経験や技術に出会い、お互いにちがった面をみることができるから。特に、自然の素材をつかったものづくりをしてほしい。

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ピンのイラスト自然の素材を使ってものづくりをすることはどうして大切なのですか?

ツルピカ土だんごの写真  油粘土と土粘土の話。自然の土(土粘土)は、油粘土のようにいつも子どもの思い通りにはなってくれません。それを使うには、土(土粘土)の特徴をよく知ることが必要になります。つまり、子どもが土(土粘土)という自然に寄り添い、理解を深めることではじ
めて子どもたちの思いに応えてくれます。この自然とのインタラクティブな関係(自然との対話)の中で、子どもは自然環境とどのように関わっていけばいいのかという環境教育の基礎を学んでいきます。

星のイラスト写真は、【ツルピカ土だんご】といいます。
 電球のイラスト作り方のヒントは・・・ぎゆっぎゅっと土でかたい心を作った後に、だんだん粒子の細かい砂や土の粉をまぶし、最後は乾いた粘土の白い粉をかけて優しくこすります。  土と対話しながら、ていねいにていねいに作っていくんですよ。

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ピンのイラスト子どものものづくりにどのように関わればいいのですか?

 まず、表現のきっかけになるテーマや作品をみる体験をすること。
 次に、表現の材料が身の回りにあること。
 そして、出来たものを大人がていねいに受け止めること。

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ピンのイラスト身近な材料を使ったおもちゃの紹介

【廃材を利用した木のおもちゃ】廃材を利用した木のおもちゃ 【ポンポンボール】
ポンポンボール
【いないいないバー人形】
いないいないバー人形
【紙コップを利用したおもちゃ】
紙コップを利用したおもちゃ
【タオル人形】
タオル人形
【お菓子を使って】
お菓子を使って

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ピンのイラスト<自然に学ぶ>

【 水遊びから 
 身近にある水は、子どもが大好きな自然素材の一つです。水遊びというと、プール遊びや水てっぽうなど、活発な遊びがイメージとして浮かびますが、もちろんそれだけではありません。コップに入れるとコップの形に、ペットボトルに入れるとペットボトルの形にと、様々に形を変える水は、子どもにとってとても神秘的な自然素材と言えます。無心に容器に水を注いで楽しむ子どもの姿をよく見かけます。繰り返しコップで水を注ぎ、ペットボトルから水があふれると、その水を別の容器に移してはまた入れ始めるといった様子です。子どもは、この遊びを通じ、知らず知らずのうちに、水の特性や将来の算数、数学に通じる量概念について学びます。
 また、意図せず水に泥土が入ることによって、水遊びから自然と色水遊びに発展するケースもよく見かけます。薄い泥水はジュース、濃いものはコーヒーなど、色の濃さの違いによって、いろいろな見立てが生まれます。

 これらの遊びはさらに、身の回りの草花による色水遊びへと展開していきます。アサガオやマリーゴールドの花を潰してつくった汁を水に溶かすと、ピンクやオレンジの美しい色水が出来上がります。子どもたちは、これをイチゴジュースやオレンジジュースに見立て、お店屋さんやお家ごっこをしながら、日常生活の追体験をしていきます。色水を太陽にかざして見た時の色彩の美しさ、色水を混ぜた時の混色のおもしろさは、色彩に関する感性を育てることへと繋がります。また、アルカリ性の色水にレモン汁を注ぐと赤色に変わる遊びもあります。色彩の変化に不思議を感じる体験は、将来の科学的関心につながる知的好奇心を芽生えさせてくれるでしょう。

【 泥土遊びから
水の量によって質感が変わる土は、子どもの遊びを豊かにしてくれる自然素材の一つです。水に土を加えていくと、とろとろの泥が出来上がります。さらに土を加えると、少し硬くなり、粘り(粘性)がうまれます。手でぎゅっと押さえると形が出来るように(可塑性)なります。このような変化は、子どもにとって大発見です。例えば、とろとろの泥は、お好み焼きになります。少しかたさを増すとハンバーグになり、葉っぱを巻くとお寿司になります。このように、土は、子どもたちのごっこ遊びの世界を豊かにしてくれる大切な素材なのです。
 しかし、土は、いつも子どもの思いどおりになるとは限りません。その性質を知ることが大切です。そこに、土を通した学びがあります。
 例えば、型抜き遊びでは、水の量、土の種類に気をつかい、思考錯誤しながら、きれいに抜ける土の状態をさぐりあてなければなりません。まず、土に寄り添い、土の性質を知ることによって初めてきれいに型が抜けるのです。いつも同じ堅さで、思いどおり成形できる油粘土とは、大きな違いがあります。このプロセスは、子どもたちに必然的に自然との対話を要求します。このプロセス自体が人間と自然環境との望ましい関わりを教えてくれるエコロジカルな原体験になると言えます。これは、今世紀の最大の課題の一つである環境教育の基礎を培っているといっても過言ではないでしょう。
 写真は、型抜きした土を、石けんの泡クリームと、植物でデコレーションしたアースケーキです。子どもたちは、アースケーキ作りを通じ、土や水の性質、身の回りにあるいろいろな植物のことを学ぶことに加え、如何においしそうなケーキを作るかに想像力をかき立てられ、感性を豊かにしていきます。
 
【 風から 】

凧揚げの写真  風を使った遊びには、いろいろなものがありますが、風車や凧の伝承遊びがその代表と言えるでしょう。このような遊びは、頬をなでる風の心地よさ、季節や自然の躍動を感じさせます。風車を作って遊んでみると、最初は、それがどのようにすれば回るか分からない子どもも少なくありません。風車を逆さまに向けて走ったり、横に向けて振り回したり実にいろいろです。この姿は微笑ましくもありますが、他方、笑えない現状もそこにはあります。しかし、子どもの力は素晴らしいもので、少し遊ぶと友達との回り方の違いに気づき、どうしたらよく回るのか試行錯誤を始め、よく回す方法を見つけます。
子どもたちは、このような体験をもとに風車は前から風を受けて初めて素敵に回るおもちゃであるということを知ります。風車の遊びを通じて、風の存在にも心を傾けるようになるのです。
 風を強く意識する遊びに凧揚げがあります。筆者は、授業で凧作り、凧揚げをよくします。その中で、今も心に残るある学生との関わりがあります。その学生は、凧を器用に作り上げ、すぐに教室の外に出たかと思うと5分もしないうちに教室に戻り、「先生、凧があがった!」と報告しました。運動場にでるだけでも5分はかかるのに、どうしたことかと聞いてみますと、その学生は何と廊下で凧を揚げていたことを告げたのです。私が唖然とし、凧は外で揚げるものであるというと、今度はすぐに運動場で凧を揚げ始めました。その様子を何気なく見ていたら、さらに驚くべき出来事が起こりました。その学生は、何のためらいもなく、運動場にある400mトラックに沿って走り、凧を揚げているつもりになっています。慌てて学生を呼び寄せ、凧は、風を受けて揚力が発生することで揚がるということを説明しました。すると、知識としては知っていましたが、凧揚げの経験はないようでした。知識と実経験とのつながりの脆弱さを感じさせられます。それではと、実際に凧揚げの見本を示し凧揚げの体験をしてもらいました。凧が揚がり、凧糸を通して風のメッセージが学生に伝わります。その学生の表情はみるみるうちに真剣になり、もう自分で出来ると指導を拒まれてしまいました。この体験は、学生の偏向した自然体験を感じる反面、自然体験は眠っている学生達の感性を呼び起こしてくれるのだと感じさせるものです。

【 火の話 】
 自然体験が子どもの感性を呼び起こしてくれる事例はこれだけにとどまりません。最近では、火災の危険があることから敬遠され、めっきり見られなくなってしまった焼き物の体験についても同じことが言えます。燃える木々の中で赤々と作品が色づき、あたかも木々の生命が移るかのような体験を目の当たりにすることで子どもたちの想像力が刺激されます。このような神秘的で、感動的な体験をすることはよく見られることです。

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