1 家庭教育とは

 子どもが健全な身体と人格に育つように援助する家庭の営みです。
 身体が成長していくのも人格が育っていくのも基本的には本人の力です。家庭や社会にとって、子どもが健康で心の豊かな人格をもてるように、どのように援助していくのかということがポイントになります。

2 人格のしくみ

人格のしくみの図

 この三角形は心がどのように働いているかということを説明するために使っているものです。
 一番下がもっとも大事です。感情の安定ということです。 明るく穏やかな気持ち、生き生きした気持ち、そういったことが心の根っこのところにあります。

 三角形の外側から入っている→が、大人や社会がなすべきことです。感情の安定には大人が共感することが必要です。 ほめてあげることもたいせつです。 それから、スキンシップ、幼い子であれば、抱っこやおんぶ、少し大きい子であれば頭をなでててやるなどですね。 小学校高学年くらいならば、共に遊ぶということですね。小学生くらいまでは子どもは大人と遊ぶことも大好きなんですよ。

 基本的な生活をしっかり充実させることやしつけも大切です。

 これらのことが大人によって援助されていると、明るく穏やかで生き生きした気持ちが生まれ、その結果、三角の上のほう、自主性、つまり自分から進んで物事にぶつかっていく、興味がある、意欲があるとか、最終的には強い意志を持って生きていくということにつながるわけです。

 安定した心と共に、自主的な生活体験の保障もなければいけません。しかし、その自主的な生活体験の中で、人に迷惑をかけたり、物を粗末にしたり、自分の命をおろそかにするようなことがあったら、叱ったり、注意したりというしつけが必要となってきます。

 協調性、つまりみんなと仲良く生きていくという思いやりも、感情の安定がもとになっています。ここには矢印があと二つ入っています。思いやりが生まれるためには、自分で物事をしっかりやっていく力がついていないと人のことまで気が回りません。自主性をしっかり育てることが他への気配り、心配りができるようになるために必要となってきます。もう一つはそれに加えて様々な世代の人たち、様々な年齢の人たちと過ごす機会がたくさんあることです。それによって、いろいろな人の存在を知り、どう付き合っていくかということを学びます。ただし、ここでも人に迷惑をかけるようなことがあれば叱ることやしつけが必要です。

 自主性が育ってくると、その子なりの、心の能力つまり知恵、覚える、考える、作り出すという力、そして体力つまり体が丈夫だとか手先の器用さなどが身についてきます。自分で進んで物事に関わっていくという力がついてこそ、能力が花開いていくという流れになっているわけです。

3 子どもの問題行動の背景にあるもの

・なぜ、最近子どもたちの問題行動が多くなったか?
・なぜ、子どもたちが健全に育たないのか?

 昭和30年代半ばからの高度経済成長をきっかけに、家庭と地域社会が大きく変化したしました。そのことが子どもたちの人格形成に様々な影を落とし、不登校・いじめ・非行などの問題行動を増加させていると考えられます。

●少子化・高齢化
 富山でも昭和40年代始めに富山新港ができました。そこには多くの工場ができ、そこで働く人たちの団地(太閤山団地)もできました。日本各地にこのような新工業地帯が生まれ、農業中心から工業中心の社会へ変わってきました。団地に住む人々は核家族です。住居が狭く子どもの教育費もかさむようになっため、多くの子どもを生み育てることができず、少子化がはじまったのです。

☆昨年度の合計特殊出生率( 一人の女性が一生の間に生む子どもの数 )=1.29人

 人口を維持するためには2.1人ぐらいでなければいけません。
 現在の日本の人口は1億2700万人ですが、45年後推計1億人(2割減)、95年後推計6000万人、対策を講じずに今のまま減少すれば4000万人になるのではといわれています。少子化が急速に進む一方で高齢化が進むことになります。そこで、子どもの育ちに問題が出てきます。年金にも問題が出てきます。世の中のしくみ全体に問題が出てくるのです。

 少ない子どもをたくさんの大人が取り巻いている社会になっています。いつも親から干渉されるので、自主性が育たない、まわりの大人からいろいろ言われるので感情が安定しない、友だち同士の経験が少ないので、協調性が生まれない、こういったことが子どもの様々な問題につながっていきます。

●核家族化・離婚の増加
 
1965年から1995年の30年間で、離婚が4.6倍と増加しました。核家族の問題点は、父母が仲が悪いと子どもに直接そのしわ寄せがくるということです。子どもたちが情緒不安定になる要因となっています。

●地域社会の連帯の弱まり
 
子どもも親も人との関わりについて経験不足な上、地域社会の連帯も弱まっているため、ストレスがたまり、イライラする親が増えています。
☆児童相談所での虐待処理件数(全国) 1990年 1,101件→2003年 26,569件 24倍になっています。

●都市化と自然環境の破壊
 都市化によって子どもたちの遊べる場所が少なくなりました。富山県の子どもたちは全国平均より自然体験が少ないという調査結果があります。富山は河川も道路も整備されて遊べる自然がないという事情があります。

●豊な物資と便利な生活

●遅寝・遅起家庭の増加 
  遅く寝て遅く起きる子が増加しています。いくら、朝、ぎりぎりまで寝ているといっても、学校や会社の朝始まる時間は昔も今も変わりませんから限度があります。結果として、睡眠時間が少なくなっているのです。このことによって子どもの体にいろいろな影響が出ます。
―5歳児の家庭生活の調査(富山県)をもとに―
昭和54年 9時前に寝る子ども 76% H7 25% 今から4、5年前 17〜18%
 朝ぎりぎりまで寝ている親と子の関係が見えてきます。子どもはしっかり目覚めていない状態で朝の支度をしなくてはいけません。親も余裕がなく、「早くしなさい!」などというものですから、朝から子どもはストレスをかかえ、その結果、幼稚園や保育所へ行ってもボーッとしていることになります。朝の状態が良くない子が増えています。これは感情の不安定にもつながります。

4 親のあり方

(1)やさしさ(感情の安定を育てる) 

@悪い感情に共感する 
  悪い感情が起こっているときにどう接していくかが大切です。しっかりもとの状態=いい状態に戻してやることが必要です。そのためには、悪い感情に共感することが大切です。

A良い点を見つけてほめたり、認めたりする

Bスキンシップ父と子のイラスト親子のイラスト
  スキンシップによって穏やかな気持ちになるので、 スキンシップは大事にしたいものです。

C共に遊ぶ 

D基本的生活の充実 

  1. 食事・・・3食きちんととる。
  2. 睡眠・・・充分に眠る。
  3. 排泄・・・朝の生活の時間帯をしっかり過ごすことで排泄のリズムが作られる。
  4. 清潔・・・歯磨き、洗顔などをきちんと行う。
  5. 着脱・・・時間の余裕があればきちんと着替えることができる。
食事のイラスト 添い寝のイラスト
排泄のイラスト
歯磨きのイラスト
着替えのイラスト
食事
睡眠
排泄
清潔
着脱

E自主的生活体験の保障

(2)きびしさ(しつけ) 

@基本的生活習慣が身につくことを援助する
基本的生活(食事・睡眠・排泄・着脱・清潔) のための習慣が、きちんと身につくように援助する必要があります。
正しい生活習慣は生きる力にもつながります。

A叱るべきことは叱り制限するべきことは制限する
・何を叱るか?人への迷惑
・何を制限するか?物を粗末にすること・自分の健康や命に関わること
・どのように叱り、注意するか?何度も叱ら(注意し)ない・人と比較して叱ら(注意し)ない・大人が寄ってたかって叱ら(注意し)ない
 
叱るときは親自身がいらいらしているので一回怒り出すと止まらないものです。深呼吸をしてから叱るようにしましょう。親のほうが情緒不安定になって、昨日のことやその前のことまで持ち出すのはやめましょう。親自身がの感情をコントロールできることが大事です。

(3)優しさと厳しさの根底にあるもの−親の心のゆとり−
心にゆとりを持つことが大切です。

<心にゆとりをもつために>
@自分自身を振り返る・・・自分のことを振り返る機会を多くもつ。自分のことはよくわかっていないものだということがわかっている人は、他人の言うことに耳を傾けられる。
A心を鍛える・・・マイナスをどのようにプラスにとらえていくことができるか。つらいことや悲しいことに出会ったときに人間は成長する。幸せばかりでは成長はない。つらいことや悲しいことをどう前向きにとらえて乗り越えていくかが大切。
B心を洗う・・・感動する体験をたくさん持ってほしいと思います。心にゆとりをもつようになると、子どものかわいさがよくわかるものです。大人自身が美しいものに触れて心を豊かにしてほしいですね。花を眺めたり、花のよいにおいをかいだり、 きれいな景色、音楽もいいです。あるいは、よい話、よい行いに触れることです。その結果、心にゆとりが出て前向きになれるんです。掃除も大事です。掃除の結果その場がきれいになり、自分の気持ち美しくなります。掃除をすることによって自分がきれいになるのです。

5 これからの家庭と社会に求められていること

・国として少子化についてどのように考えているか?
<先進国の重大な課題>
フリーター 200万人、NEET(Not in Employment, Education or Traning) 50万〜70万人という現実

(1)少子化社会対策大綱(平成16年6月閣議決定)
  大綱策定の目的「(少子化の急速な進行に対する)危機感が社会では十分に共有されてきたとはいえない・・・・子どもが健康に育つ社会、子どもを生み、育てることに喜びを感じることができる社会へ転換することが喫緊の課題・・・子どもたちの健やかな育ちや自立を促し、さらには親自身の育ちを支援し、子育て・親育ての支援社会をつくることを国が最優先課題とすることが求められている。

◎三つの視点

  1. 自立への希望と力『若者の自立が難しくなっている状況を変えていく』 ←製造業の衰退も一因、働く場がなく希望が持てない
  2. 不安と障壁の除去『子育ての不安や負担を軽減し、職場優先の風土を変えていく』 ←育児休業を取得しやすくする
  3. 子育ての新たな支え合いと連帯−家族のきずなと地域のきずな−『生命を次代に伝えはぐくんでいくことや家庭を築くことの大切さの理解を深めていく』『子育て・親育て支援社会をつくり、地域や社会全体で変えていく』

◎4つの重点課題と28の行動 資料@(WORD

(2)子ども・子育て応援プラン(新々エンゼルプラン 平成16年12月) 
資料A−1子ども・子育て応援プランの特徴(URLへリンク
資料A−2子ども・子育て応援プランの概要(URLへリンク

少子化社会対策基本法・次世代育成支援対策推進法(平成15年7月)を受けた「少子化社会対策大綱」の具体的実施プラン

それまでのエンゼルプラン(H7〜H11)新エンゼルプラン(H12〜H16)は、保育所入所児童の解消、保育時間の延長、一時保育、放課後児童対策等の保育事業が中心。子ども・子育て応援プランは若者の自立・教育、働き方の見直し等を含めた幅広いプラン。