はじめに

 「睡眠時間8時間」神話は、既に約30年前に崩壊し、私たちの平均睡眠時間は以後だんだん短くなり、現在は7時間23分(平成12年データ)です。生活が夜型化していくなか、睡眠はついつい軽視されがちな状況です。大人にとっても、子どもにとっても生命力の源泉である”ねむり”。そのメカニズムを知り、親子でいっしょにこころとからだの健康を築いていきましょう。

プロフィール

富山大学人間発達科学部教授 学術博士 学校心理士
学歴:1975年奈良女子大学家政学部住居学科卒業、
    1977年奈良女子大学大学院家政学研究科住環境学専攻修了、
    1977〜1980年奈良女子大学研究生、
職歴:1980年富山大学教育学部部講師、1989年富山大学教育学部助教授、1998年富山大学教育学部教授
専門分野:家庭管理学、住居学、睡眠学、睡眠環境学
※プロフィールは講座開催当時のものです。

講座の内容

ピンのイラスト寝る子は育つ

眠りのイラスト 「寝る子は育つ」といわれてますが、この言葉には科学的な根拠があります。
 寝ている間に成長ホルモンが分泌されるんですね。成長ホルモンは骨や筋肉を成長させ、体の免疫力を高めたり、病気の箇所を治したりしてくれます。そして何より脳細胞を点検し、傷んでいるところを修復してくれるのが大きな特徴。食べ物が体の栄養になるように、睡眠は心身の司令塔である脳細胞に栄養を補給してくれるのです。
 思春期を除いて、成長ホルモンは眠っているときにだけ分泌されます。寝入ってから2時間ほどが一番深い眠りとなりますが、そのときに、成長ホルモン分泌のピークがあるんです。そして効率よく分泌されるのが、夜の10時ごろから深夜の2時くらいにかけて。その時間帯にどれだけ深い眠りを多くとっているかが、心身の成長や健康づくりなどのカギを握っているといえるでしょう。

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ピンのイラスト就寝時刻の現状

就寝時刻の図 テレビやゲーム、インターネット、仕事、勉強…と現代人はさまざまな理由から夜更かししがちです。「白夜の中の現代人」ともいうべき、大人のそんなライフスタイルの影響を受け、子どもたちの就寝時刻も年々遅くなっています。未就学児生活実態調査(図1)をみると、午後9時以降に就寝する子どもが90.8%を占め(平成15年データ)、平成7年以降、特に夜更かしの傾向が強まっていることがうかがえます。
国民生活時間調査(昭和35年以来、NHKが5年おきに実施している調査)などによると、富山県は、米どころと呼ばれる地域にしてはやや珍しく、『遅寝県』なんですよ。これは、勤勉で教育県である富山県の特徴かもしれませんね。

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ピンのイラスト就寝時刻が遅くなると・・・

小学生の自覚症状のグラフ 「体内時計」のリズムが崩れ、朝自分で起きられずに午前中は頭がぼんやり。

起床時刻が遅いため、時間の余裕がなくなり、学校に通う子どもは朝ゆっくりと食事もできません。

そうなると排便も不規則になります。

学校ではあくびや居眠り、腹痛などが起こり、ホルモンのバランスも崩れ、イライラして勉強に集中できないことも。

体が疲れているため、日中の活動レベルが低下し体温が上昇せず、寝つきが悪くなり、さらに夜更かしするといった悪循環に陥ってしまいます。

 現に、小学生では、学年が上がるにつれて就寝時刻と起床時刻が遅くなる傾向にあり、日中にあくびや眠気といった症状が表れる子どもも増えています。(図2)
 
 乳幼児期から、年齢が3歳上がるごとにほぼ1時間ずつ就寝時刻が遅くなる傾向にあり、大学生では9割以上が午前0時を超えます。歯止めをかけるためにも、子どもたちに基本的な生活習慣を身につけさせる必要性を感じます。中学生・高校生になってからでは遅く、生後から思春期までには身につけさせたいですね。ここで、家庭教育の役割が重要だと思います。学校や地域と連携し、子どもたちの生活を見守ることも大切になってきます。

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ピンのイラスト眠りにつけない時は・・・

寝かしつけのイラスト なかなか眠りにつかないお子さんをおもちの方も多いと思いますが、生活のリズムの基本である眠りをどのように身につけさせてあげたらよいでしょうか。何か秘訣はありますか。

 きっと共働きのご家庭が多いので、夜に生活時間がずれ込みがちになるのではないでしょうか。そんなときは、次のようなことが参考になるかもしれません。
1 就寝時刻を早めに決めて、そこから逆算して夕食、お風呂の時刻を決めていくとよいですね。未就学児や小学校低学年の子どもは夜9時までに寝かせることができればベストですが、決してあせらないでくださいね。
2 寝つきが悪いときは、就寝前の準備が大切になります。照明を暗くしたり、テレビを消したりと、寝やすいような環境をつくってあげましょう。絵本の読み聞かせや子守唄を歌ってあげたり、背中をポンポンと優しく叩いたりするのも寝つきをよくするには効果的です。添い寝もいいですね。子どもはお母さんの体温を感じながら、安心して眠ることができます。子どもの年齢が小さければ小さいほど、お父さんやお母さんはお子さんが眠りにつくまで付きあってあげることが大事だと思います。
3 そして朝。起床時刻は、前夜何時に寝ていても大幅に変えないことがポイントです。朝、目覚めたら家族でしっかりと朝食をとること。そして太陽の光をいっぱいに浴びて体を動かすことが、体内時計の乱れを調節するには有効です。

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ピンのイラスト子育てはスローライフ

家族で睡眠のイラスト  住宅事情に恵まれている富山では小さなころから個室を与える家庭もあり、1人で寝ている未就学児も稀ではありません。
 個室は、自分で起床したり、掃除したりと自己管理できるようになる小学校中学年からでいいのではないでしょうか。それまではお父さん、お母さんにうんと甘えさせてあげてください。親子が川の字になって寝てもいいし、同室のベットで寝てもいい。 小さなころに思いっきりスキンシップを図ると、子どもの親ばなれが早くなります。安心して親から離れていくのです。子育てはスローライフ。"最初は、子どもにたくさん手をかけて、徐々に柱の陰から目をかけて、見守って、手を離していく"といった子育ての姿勢がいいのではないでしょうか。
 ”ねむり”は生活リズムの基本となる大切なもの。お子さんが安心して眠りにつける環境を整えてあげたいものです。家族みんなで協力しあい、あたたかく見守ってあげられるといいですね。

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ピンのイラスト子ども部屋で思うこと

読み聞かせのイラスト 最近、私は子ども部屋のことを研究しているのですが、最近のお子さんの部屋が、非常に充実して豊かになって、物にあふれてきているという現状があります。昔のように、居間だとか、茶の間にいると暖かかったり、楽しかったりした雰囲気を忘れてしまっているように思います。
 一方、最近のデータでは、夜、寝付きをよくするためには、寝る前に、大好きな人とか、本当に信頼のおける人との優しい会話が、寝つきをよくするというようなことがあります。子どもさんだけに限らず、大人でもそういうデータも出てきていますので、茶の間で、居間で、親子のやさしい会話をして、豊かな気持ちで"おやすみなさい"って言って、部屋に帰って、すぐに眠れるような環境作りも、小さい時は大事ではないかと、最近強く感じています。
 便利が何でもいいということではなく、改めて、”本当の心豊かな環境って何だろうか”ということを、家族で考えてみるのもいいのではないかと思います。

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