1 乳幼児期は人間発達の基礎である

・乳幼児期の発達のイメージ
★発達段階からみた幼児の行動特徴★
1歳児 「自立の芽生え」
2歳児 「走り回る子ども」(おもしろい年齢)(矛盾する年齢)
3歳児 「何でもする子」(楽しそうな年齢)
4歳児 「発見する年齢」
5歳児 「自信をもつ年齢」

詩集のイラスト

 子どもは生まれてきてから周囲の世界に適応しながら生きていくことを日々学び 、まず最初に基本的な生活習慣を身に付けていきます。 その中で自分というものを意識し始めて、他との交流を図っていく。時にはぶつかりあって交渉していく。そういう中で、自分の能力に自信を持って何にでも挑戦したり、あるいは自分と他者との関わりの中で自分をコントロールしたりする。そうやって協力して生きていく力が芽生え始めるのが、6歳ぐらいの姿ではないかと思います。

 実体験がなくイメージがもてない学生や若い親は、いつ(何か月に)なにができるか、それが早くできるためにまわりの人は何をしたらいいのか?ということに関心があります。「乳幼児期の発達は親の働きかけ次第なので、今、自分は何をしたらいいのだろうか」という考えがあるのではないかと思っています。確かに乳幼児期は人格形成の基礎作りをする大切な時期ではありますが、親の関わり方が一生を左右してしまうというような脅迫的な思い込みがあるのかなという気もしています。
  発達を理解するうえで大切なことをふまえたうえで、子どもの発達を見てほしいなと思います。

・発達を理解するうえで大切なこと
@横や縦の関係で発達している
 発達には、順序性、方向性があります。常に直線的に発達するのではなく、ある時ぽんと発達したり停滞する時期があったりというリズム性もあります。 発達を点としてでなく線としてとらえてほしいと思います。 何かができるようになるためには、その前にできない状態があります。 できない状態は次のできる段階のためにとても大事なことで、それを十分に経験することは次の発達のために必要なことなのです。 早ければいいというものではありません。これが縦の関係です。
 発達というのは例えば言葉だけというものではありません。樹木モデルと言われるように根っこが同じで枝分かれしていくようなもので、言葉が発達するためには、運動能力発達や、知的な部分でも発達しなければいけません。このような横の関係もみていきましょう。
A自ら発達しようとする存在である
  赤ちゃんは、回りからの影響をただ受け止めるだけではないのです。つまり「有能」なのです。

2 有能な赤ちゃん

・環境に自ら働きかける存在としての赤ちゃん
@ 人に引きつけられる存在
 聴覚の選好・・・鳥の鳴き声よりも人の声が好き、何人かの人の声の中でも母さんの声が好き
 視覚の選好・・・人の顔が好き、目にようにみえるものがあるものををじっとみつめる
赤ちゃんは、漠然と寝て、漠然と起きているようですが、ターゲットを絞って自分に必要な刺激を取り入れています。
  人を引きつける
存在
泣き、生理的微笑、まなざしなど生まれながらにして人の気持ちをひきつけるものを持っています。
A探索行動
1歳近くになると、物を投げたりたたいたり落としたりしながら、これはどんなものだろうといろいろ試したりする探索行動が見られます。これも赤ちゃんの有能さの一つの現れだと言われています。
 コンピテンス(できる能力とできるという感覚)
「自分が働きかけるとなにかできる」という有能感、自己効力感は、大人になるまで、学習の基礎になるといわれています。
0歳児は受動的ではなく、自ら環境に働きかける存在なのです。

・独特の行動スタイルを持つ赤ちゃん
気質〜個性の起源
 性格の個人差を心理学では気質と言っています。個性の一番最初のスタイルと言われています。 新生児の時から、お腹が減ったときどれくらい泣くかも違うし、睡眠の規則性、新しい環境でどのような反応をするか、また、それをどのくらい外に向かって出すかということも、一人ひとり違います。環境に働きかけるやり方も個人個人で違います。
  子どもが「扱いにくい」と感じられるときがあります。赤ちゃんは生まれたときは白紙だと思うから、自分の関わり方でこうなってしまったんだと親は思いがちですが、もともと気質という色がかかっているんだと思う方がいいと思います。それをどう受け止めて、どう返していくかということはとても大切だと思いますので、養育が関係ないとは言いませんが、気質による部分もあるということを頭に入れておいた方がいいのではないかと思います。

刺激は興味を引きだすスウィッチ。たくさん与えればいいわけではない。
適切な反応を返してあげることの重要性

 たくさん刺激を与えればいいわけではなくて、親や家族が何に興味をもっているのか、何がうれしいのか、どんなことを自信をもってできるのか、どうすれば不安を取り除くことができるのかというような適切な反応を返すことの方が大切だと思います。

 赤ちゃんは、生得的プログラムをベースに、日々生きていくための基本的な能力を身につけ、順々に発達している。(小西行郎氏)
 子どもはどんどん成長していると思いがちですが、生まれてくるまでに死んでしまう細胞もある。また、シナプスを多く作るのですが、ある時期にはそれを剪定して次の段階に移っていくと言われています。多すぎるとかえって発達にマイナスの影響を与えるのです。
※シナプス・・・神経細胞を連結するもの

3 乳幼児期の発達のポイントとなること

・愛着関係  特定の人物との間に形成される精神的な絆抱っこのイラスト
        「基本的信頼感」「安全の基地」
不安になった時、信頼できる人に泣いたりしがみついたり、だっこしてもらったりすると不安がなくなり、安心してやる気が出てきます。このような関係を愛着関係といいます。1歳すぎまでに日々の生活の中で育っていきます。特定の人への基本的な信頼感をもち、自分は常に守られている、困ったことがあってもそこにいけば大丈夫と感じられる関係ができることが大切です。

・自己認識  他者との関わりの中で、自分を意識し、自己概念を発達させます。
 3か月頃に自分の手をじっとみること(=自分の体に対する最初の認識)から始まり、2歳までには鏡に映った自分がわかるようになります。

・共同注意  子ども−対象−他者の3者の間での注意のやり取り
 読み聞かせのイラスト       子どもと大人が見つめあう段階から、同じモノ(対象)を見るという段階にうつるということです。
 共同注意は9か月ごろからできると一般的に言われています。例えば、指差した方を見る、欲しいものを指差す、からっぽになった茶碗を見せる、「ちょうだい」「どうぞ」というやりとり、自分が持っているおもちゃをお母さんに見てほしいときにお母さんを見ておもちゃを見るというのも同じような発達からあわられる行動です。

・心の理論 他者の視点に立って、他者の心を理解することをいいます。

4 言語コミュニケーションの育つみちすじ

・6ヶ月頃まで 
共鳴動作・・・お母さんとの一体感があって、お母さんが悲しそうな表情ををすると、子どもも悲しそうな表情をする。
エントレインメント・・・お母さんの話しかけのリズムに合わせて体を動かす。
 コミュニケーションの基礎を作る時期です。コミュニケーションの基礎とは、目を合わせる、番をとる、感情を共有するということです。 番をとるというのは、相手が刺激を出している時は自分は待っている、そのあとに自分が刺激を出して相手が待っているというようなやりとりのことです。家族のイラスト

・6ヶ月〜1歳頃まで
 喃語が出てきて、視線を共有することができ、物のやりとりができるようになる。

・1歳以降
 模倣やイメージすることができたりするようになり、語彙も増えて、会話ができるようになります。
 そして、家庭の中で、お父さんやお母さんが子どもの話をよく聞いて、言葉の足りない部分を補ったり、正しく受け答えすることによって会話のルールを獲得していきます。

5 社会性を育てるということ

・自己主張と自己抑制
 自己主張は2〜3歳ぐらいで伸びが激しいのが特徴といえます。それに引き換え、自己抑制は少しずつ発達していきます。最初は自己主張が目立ちますが、自己抑制はゆっくりとコンスタントに伸びていくのです。バランスをとるためには、少し時間が必要なのです。

・思いやり (向社会行動)
 共感と心の理論から考える。思いやりの心をもつためには、相手の気持ちを自分も同じように感じ取ることと、他者の視点で他者の気持ちを考えることができる必要があります。
 3歳はまだ他者の視点にたって物事を見ることができません。4歳以降で少しずつわかってくるといわれています。
 本当の思いやりの行動は乳幼児期ではなかなか身につかず、実際にはお母さんなど身近な人をモデリングしているといわれています。
 乳幼児期は、子どもの行動を見て、思いやりがあるとかないとかいう時期ではなくて、子どもに対して共感したり、思いやりのある行動を見せる時期ではないかと思っています。

6 乳幼児期の発達の特徴をふまえた関わり

・能動的な存在である
・日常生活の中で成長していく
・当たり前に思うことが当たり前でない
・一人一人の育ちの道筋がある
・応答的な他者の存在が不可欠である

 養育者は子どものもつ能力を最大限に発揮できるように願いながら、育ちの道筋を一緒に作っている存在である。→ 子どもの姿に応じた働きかけが大切です。

 人間は発達し続ける存在であること、また、可塑性があるということを理解し、 乳幼児期には自分に自信をもって、言い換えれば自己肯定感をもって通過してほしいと思っています。