鉛筆のイラストプロフィール

若山先生の写真富山大学人間発達科学部講師 教育学博士
専門分野:幼児造形教育
学歴:平成18年 東京学芸大学大学院教育学研究科(修士課程)学校心理専攻学校心理コース修了
    平成21年 広島大学大学院 教育学研究科 博士課程後期 学習開発専攻修了
職歴:平成21年 富山大学人間発達科学部講師
  ( ※プロフィールは講座開催当時のものです。 )

鉛筆のイラスト講座の内容

▼のイラスト お絵かきのワークショップでのできごと

 先日、お絵かきのワークショップを開いた時のことでした。そのワークショップにはたくさんの親子の方が参加してくださったのですが、その最中にちょっと気になるやりとりを耳にしました。以下にそのやりとりを紹介しましょう。

子ども
お父さん・お母さん
「できた!」(描いた絵を両親に見せる)
「まだここが白いよ。もっとほかにも描いてごらんよ」

子ども
お父さん・お母さん
「(絵を描いている)」
「もっとこうしたほうがいいよ」「ここを赤で塗ってごらん」

 このワークショップには,100組近くの親子の方々が参加してくださったのですが、多くの親子に上のようなやりとりがみられました。親御さんは、日頃から何気なくこのような言葉かけをお子さんにするものだと思います。でも、このような言葉かけは適切なものなのでしょうか?
 今日は、親子のこのようなやりとりをきっかけに、絵を描く子どもに対して大人はどのようにかかわればよいのかを考えてみたいと思います。

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▼のイラスト 子どもはどのようなものを絵に描くのか?

虹のイラスト 絵を描く子どもに対するかかわりを考えるためには、まず、「子どもはどのようなものを絵に描くのか」について理解しておく必要があります。
 ここで、美術教育学者であるローウェンフェルドの言葉を紹介しましょう。彼は、「子どもは自分にとって感情的なつながりの深いものを絵に描く」と話しています。この「感情的なつながりの深いもの」とは、簡単にいえば、子どもが「好きなもの」のことです。つまり、子どもは、お父さんやお母さん、かっこいい電車、飼っている犬、生まれたばかりの弟や妹、お菓子の国…などなど、自分の好きなものや自分にとって大切なもの、憧れるものなどを絵に描くのです。

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▼のイラスト 子どもはなぜ自分の好きなものを絵に描くのか?

ぬいぐるみのイラスト ではなぜ子どもは自分が好きなもの自分にとって大切なもの憧れるものなどを絵に描くのでしょうか。
 太古の昔人は実際には触れたり見たりできない神様を絵に描いて神様と心でつながることを望んできました。つまり自分のあこがれのものや大切なものを心で感じたりその対象について一生懸命考えたりすることができる「描く」という行為を人はずっと昔から大切にしてきたのです。
  こうしたことから「なぜ子どもは自分が好きなもの自分にとって大切なもの憧れるものなどを絵に描くのか?」という問いのこたえは「絵に描くことで,自分の好きなものについて考えることができるから」となるでしょう。この記事を読んでいるあなたももしかしたら子どもの時に好きなアニメのキャラクターや憧れのお姫様の絵を描いたのではないでしょうか。かくいう私も数十年前の子ども時代に大好きなセーラームーンの絵を何度も何度も描いてセーラームーンのかわいらしさに憧れたものです。

勉強しているイラスト このように、子どもが自分の好きなものや大切なものを絵に描いて、そのものについて一生懸命考えたり心を寄せたりしているのであれば、絵を描く子どもに対して、大人はどのようにかかわっていけばいいのでしょうか。「まだここが白いよ。もっとほかにも描いてごらんよ」や、「もっとこうしたほうがいいよ」と声をかけることは適切なのでしょうか。
  私は、こうした言葉かけは適切ではないと思います。紙に白い部分があっても、子どもは小さく描いたその何かに一生懸命心を寄せて、丁寧に描いたかもしれません。つまり、子どもには子どもの「良い」という判断があって、その判断のもとに、その絵が生まれているわけです。そのような子どもに、「まだここが白いよ。もっとほかにも描いてごらんよ」などの言葉をかけることは適切ではないでしょう。
 では、私たち大人は、絵を描く子どもにどのようにかかわっていけばよいのでしょうか?

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▼のイラスト 絵を描く子どもとどのようにかかわるか?

クマのイラスト ここで私の身内の話を例に出しましょう。年末に親戚一同が集まった時でした。家族や親戚が集まる中で私が「おなかすいたなぁ」とぼそっと言うと隣に座っていた5歳の従姪が「それじゃごはん描いてあげる」と言い電話の横に置いてある小さなメモ用紙を持ってきました。
 そのメモ用紙に「くまさんが作るごはんだよ」と言って彼女は最近お気に入りのクマさんと「お子様ライス」を描いてくれました(どうやらクマさんはコックさんのようです)。いじわるな私は「イクヨおねえさんは大人だからそんな小さなお子様ライスだけじゃおなかいっぱいにならないよ」と言うと「むむむっ」という顔をして次々と「親子丼だよ!」「スパゲッティだよ!」と描き足しては「おなかいっぱいになった?」と尋ねます。それに対して相変わらずいじわるな私は「まだまだ」と返すと「それなら,ホットケーキだよ!」「フライドポテトだよ!」と言ってたくさんの料理を描いてくれました(写真1)。そのうちクマのコックさんだけでは大食いのイクヨお姉さんのおなかをいっぱいにするのは大変だということで今度は彼女のお気に入りの猫がウェイトレスさんとして登場し私にご飯を運んでくれました(写真2)。
  ところである美術教育学者は子どもが絵を描いて大人のところにもってきたら大人は子どもと一緒にその絵を使って「おしゃべり」することを推奨しています。自分のやりとりを例として取り上げて説明するのはお恥ずかしいですが私と従姪は彼女の絵を中心にしてたくさんのおしゃべりをしました。これは私にとっても彼女にとっても楽しいひとときでした。

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▼のイラスト 最後に

 子どもは毎日たくさんの絵を描きます。時には解読不能なこともあるでしょう。ですが、子どもはきっと、何かに心を寄せてその絵を描いたのです。子どもが絵を描いた時には、その絵を中心に、親子で色々なおしゃべりをするという、子どもの心の中にある小さなワクワクやドキドキ、ほんわかとした「好き」の気持ちに寄り添う時間が大切なのではないでしょうか。 もしかしたら、お子さんの意外な一面が見えてくるかもしれません。

機関車のイラスト

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