更新日:2021年2月24日

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富山県の遺跡(その他3)

いせきのほぞん

遺跡の保存

何故遺跡は保存されねばならないのでしょうか。
土器や石器、鉄器など、人間の積極的な意図によって製作された物やごみとして捨てられた貝殻、獣骨などの残滓までもひっくるめて遺物といい、家・田・墓や足跡・車のわだちなども含めて人間が地面に造りつけたものを遺構といいます。人類の過去を研究する場合はこれらの物質的資料の形態だけでは不十分で、これらの物が占めていた空間的位置関係を把握することも重要です。例えば発掘調査によって今から二千年前の家と食器が発見されその形態が分かったとします。それだけでは研究には不十分でどこに何と一緒にあったかなどが分かれば良い研究ができます。その場合その家が他の家とどのように配置されていたかという大まかな位置関係から、食器が家の床に掘って作られた貯蔵穴の底の隅から発見されたというような微細な位置関係までも問題となります。位置関係のデ-タを欠いた資料は、骨董品や美術品としての価値はあっても研究資料としてはあまり価値がありません。このように物質的資料の形態と位置関係という二つの基本的な着眼点をはっきりさせるため、過去の人間の活動を反映した位置関係を保っている遺物や遺構の総体を「遺跡」と呼んでいます。あちこちの遺物や遺構を切り取って寄せ集めた場所は遺跡ではないのです。この遺跡を構成している遺物や遺構のひとつひとつについては移動することが可能ですが、それらを動かした途端に、遺跡が保っていた位置関係が解体され遺跡は破壊されることになるのです。
遺物・遺構・遺跡を歴史の情報源として利用する場合、分析的に認識することは困難です。これらは漫然と眺めればつかみどころがなく、機械的に分析すれば無数の要素に別れてしまいます。ですからすべてのデータを記録することはできません。また遺物・遺構・遺跡からどれだけの情報を引き出すかは、観察者の問いかけ方にかかっているといえます。ところが問いかけは無限にあり得るので将来提出されるであろうあらゆる問いかけに答え得るような完壁な事実の記録を載せた報告害をつくることも不可能です。
完壁な事実の記録というものがあり得ない以上、どうしても原資料を再点検する必要が生じます。その時、原資料が博物館などに保存されている場合は再点検可能です。しかし遺跡における空間的な位置関係を再点検する場合に遺跡が破壊されてしまった後では、再点検することは不可能です。遺跡を原状のまま保存するという理由の―つはここにあります。
また、遺跡は広い視野から眺め、他の地域や、異なる時代の遺跡との関連性を考えてみると、その土地にあってこそ価値があるといえます。遺跡はその土地に先住した人々がそこに残しておいた物的証拠であり、歴史的環境の中にあってこそその価値があるのです。今かりに科学が進歩して富山県内のある広大な遺跡をそっくり切り取って東京へ移転し得てもその歴史的環境は、富山も東京もおかしなことになります。遺跡が現状のまま保存されねばならない理由はここにもあるのです。
このようにみてくると遺跡が保存されるか破壊されるかは、基本的にはその土地に住む人たち自身が現実と将来の状況を真剣に考えて自分たちの歴史的環境をどのようにしていくかにかかっていると言えるでしよう。


(左上)じょうべのま遺跡の環境整備 (右上)不動堂遺跡の環境整備
(左下)生地台場の環境整備 (右下)串田新遺跡の環境整備


(左上)遺跡の現地説明会 (右上)遺物の公開展示
(左下)公開講座 (右下)体験学習

お問い合わせ

所属課室:教育委員会生涯学習・文化財室 

〒930-8501 富山市新総曲輪1-7  県庁南別館4階   

電話番号:076-444-3434

ファックス番号:076-444-4434

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