赤祖父ため池
あかそふためいけ 
井口村

富山県の南西部で砺波平野の南東部に位置し、農地は赤祖父川と干谷川による豊かな扇状地で良質な水稲栽培地帯となっています。村の南側は標高約1000m級の赤祖父山がそびえ、山地の一帯はブナの原生林となっており、その谷間から流れ出る赤祖父川は村を縦断して流れています。この川をせき止めて田んぼを潤しているのが、赤祖父ため池です。

 
 
[作成:平成15年3月] 井口村=現 南砺市


▲ブナの下木としての
ユキツバキ(赤祖父山、山頂付近)





▲緑の森に囲まれた
「赤祖父ため池」

「工事には13年もかかったんだね」
「そうだよ。作業した人も延べ人数にすると13万5千人」
「うっわ〜。びっくり!!」




水を配分する「円筒分水槽」

「昔はどうやって水を分けていたの?」
「時間割で決めていたんだけど、その話し合いをするために何度も何度も寄り合いを開いていたんだよ」

「水争いって、どんなこと?」
「田んぼにとって、水は命だからね。昔のお百姓さんたちは、それだけ水の配分に苦労していたっていうことなんだ」
「大変なことなんだね」




ため池内の取水設備の前で
説明を受ける




ヘラブナ釣りの
スポットとしても有名

「ヘラブナ釣り、おもしろそう」
「毎年、たくさんの釣りファンが訪れるんだよ」

「県外の人もたくさんいるね」

水争いに苦しんだ日々

■赤祖父水郷とよばれた村々では、かんがい用水を赤祖父川や干谷川などの小河川に頼っていました。これらの水源は標高1,000m級の赤祖父山の峰々を頂きとする険しい北斜面の小さな谷でした。その流域には「水源かん養林」としてブナの原生林が広がり、保水性がきわめて高いという特性があったため、村びとはじょうずに水を使っていました。
■しかし、米作りに精を出しているお百姓さんたちにとって、日照りが続く夏は苦しみの日々。赤祖父川の流れが次第に細くなり、用水の量がわずかになると、稲田は干上がり、せっかく育ててきた稲が立ち枯れとなってしまうのです。このような干ばつになると、用水の配分をめぐって水争いも絶えず、少ない用水を順番に田に引き込むために大変苦労していました。

工事には数多くの人が力を発揮

■地区民の願いである水不足を解消するため、昭和6年7月、県営赤祖父築堤期成同盟会を組織して、ため池を作ることにしました。昭和7年3月には赤祖父郷耕地整理組合の設置が認可され、総工事費25万円、負担割合は国費50%、県費20%、地元30%で3カ年の予定で県営事業が始まりました。当時は、今の時代と違って土木建設機械も発達していなかったため、多くの人の力が必要でした。ため池の盛り土には土取り場からの運搬に手押しのトロッコが大活躍しました。
■また、堤防中心部にある刃金土は粘土を突き固めて水もれを防ぐ重要なところです。ここでも、村の女性たちが「タコ」とよばれる道具を使って突き固めました。

全国的にも珍しい「円筒分水槽」

■工事は、用地問題や日中戦争、大平洋戦争による物資や労働力の不足などにより、総工事費47万円、作業員の延べ人数は13万5千人にもおよび、昭和19年8月に完成。赤祖父ため池は受益面積440ha、堤体積198,000m3、総貯水量760,000m3、堤高31,85m、堤長200,2mの規模となりました。
■また、地区ごとに一定水量を分けるために農林技師・遠藤清之輔氏の設計により、全国的にも珍しい「円筒分水槽」が昭和28年に完成。かんがい面積に応じた用水配分がされるようになり、長く続いた水争いが解消されました。

地域の人々に親しまれる憩いの場へ

■また、ため池の完成から50年あまり経過して老朽化が進んだため、平成7年から13年には、堤防からの水もれ防止・取水口の改修工事、ため池内の堆積土砂の排出などの整備をしながら、現在も維持管理をしています。
■ため池には毎年2〜3tのヘラブナを放流し、釣り場を整備して年中楽しめるよう開放しており、5月のヘラブナ釣り大会には県内外から多くの釣りマニアが集まっています。夏には、ふるさとふれあい夏祭り大会が行われています。花火大会やステージショーがあり、華麗な光のショーがため池の水面に映し出されて本当に美しいです。周辺にはパットゴルフ場、芝生広場、バーベキュー広場、遊歩道も整備されています。赤祖父ため池は、農業用水を貯める機能のほか、地域の人々の憩いの場としての役割も担っています。

土地改良広辞苑

水源かん養林【すいげんかんようりん】
森林の土壌はスポンジのようにすき間がたくさんあり、ここで水をたくわえることができる。このような働き持つ森林を水源かん養林という。
刃金土【はがねど】
堤防の芯になる部分に使われる、密度の高い粘土質の土。堤防の強度を高める。
円筒分水槽【えんとうぶんすいそう】
円筒形の水槽のふちを決められた割合でわけ、そこから水をあふれさせて公平に水をわける仕組み。