十二貫野用水
じゅうにかんのようすい 
黒部市

後ろには僧ケ岳(そうがたけ)を仰ぎ、前に日本海を見下ろす十二貫野を潤している十二貫野用水。かんがい面積は220ヘクタールで、黒部峡谷の奥の尾沼谷川から取水し、山を越え、谷を渡り、延々20キロメートル。立山の雪解け水を集めて流れる黒部川の水を川よりもはるかに高い台地に流すという難工事が行われたのは、今から160年以上も前のことでした。

 
 
[作成:平成14年12月]

    ▲椎名道三が活躍した頃の地図


▲椎名道三て、どんなひと?

「道三は“用水づくりの天童”と呼ばれてたんだって」

「17歳の頃に、用水工事で村を救ったそうだよ」

「へえ~、それってすごいカモ!?」


十二貫野湖
「水がもれないよう、ため池の底にシートが敷いてあるんだって」

「遮水工法といって、全国でもめずらしい方法を使ったんだ」
「湖のほとりを散策するのも楽しいね」

「昔は荒れ地だったなんて、信じられない」
「新川育成牧場の牛さんたちも喜んでるみたい」

「この用水は、消雪にも使われているんだ」
「水路をパイプで埋めた管理道をハイキングコースとして利用する人もたくさんいるよ」
「いろんなところで役立ってるんだね」



サイフォンの原理
「うわあ、水が噴き出てる!」
「大地を潤す水だね」

用水工事の知恵 その1
「谷川から流れる水を集めて用水にしてるよ」

「大雨が降っても安心だね」
「土手くずれを防ぐ知恵でもあったんだ」

用水工事の知恵 その2
「15ヶ月で工事を終えるなんて、びっくりカモ!?」

「工事の長さを区切って班を作り、競争させたんだ。仕事が早い班にはごほうびを与えたらしいよ」





大地の救世主、あらわる!

■今から160年ほど前(江戸時代後半)、毎年の洪水で田畑は荒れ、米や作物がとれなくなる大飢饉が発生していました。「十二貫野の大地にも何とか田んぼを」「土地を潤す用水を」。人々の強い願いに応えて立ち上がったのが、椎名道三(しいなどうさん)です。
■十二貫野で一番高いところにある中山は標高250メートル。ここに水を引くには、黒部峡谷にある「ねずみ返しの岸壁」と呼ばれる険しい場所に取水口を作らなければなりません。そこで道三は、黒部川の支流・尾沼谷川
(おのぬまだにがわ)に取入口を設け、崖伝いに用水路を作りました。下流の宇奈月谷と分銅谷にも取水口を作ったほか、宇奈月谷から中山までの間にある29の谷川の水も取り入れています。雪解け水が豊富になる春先には、近い谷からの水を取り入れ、雪解けが進むにつれて、順次上流の谷へ水を求めてさかのぼっていく。そして夏には最上流の尾沼谷川から水を引くのです。これは、長い水路をいかして水を有効利用する知恵でもありました。

知恵とくふうの開拓術

■山あり谷あり、崖もあり。厳しい環境での測量はどんなふうに行われたのでしょう?ちょうちんや菅笠が使われていたという説もありますが、富山市立博物館には、道三が十二貫野用水の工事で使ったとされる望遠鏡のついた大方儀(だいほうぎ)や磁石盤などの測量器が保管されています。
■用水の工事には、様々な知恵が活かされていますが、特に注目したいのは、十二貫野用水の支流にあたる竜ノ口用水
(たつのくちようすい)。谷を越えるために「伏越の理」(ふせごしのり)といわれるサイフォンの理屈を応用し、低いところから高いところに水を流しています。現在はコンクリート管に取り替えられましたが、水を噴き上げるために使われていたのは、石管でした。

命の水で、実りの大地へ

■切り立った崖を削り、トンネルが16カ所もある難工事でしたが、工事の期間はわずか15ヶ月。驚くほどのハイスピードです。これも飢饉で苦しむ人を一刻も早く助けたい一心からでした。また、道三は十二貫野用水だけでなく、越中のほか加賀や能登でも開拓や用水工事に取り組みました。そして、用水ができるごとに人々を住まわせ、工事を手伝わせながら新田を開かせていくという方法で、用水づくりと開拓を同時に進めていったのです。
■かんがい面積220ヘクタール、全受益戸数300戸(うち十二貫野戸数110戸)の「命の水」十二貫野用水。平成13年3月には用水と連結し、水を貯めこむ十二貫野湖(県営中山ため池)が完成しました。実り豊かな大地へと姿を変えた十二貫野。そこには、この地の開拓に心血を注いだ椎名道三の知恵と努力が脈々と息づいています。


 

 

土地改良広辞苑

灌漑【かんがい】
田畑に水を引いて注ぎ、土地を潤すこと。
大方儀【だいほうぎ】
測量する時に、計測地点の方向を定めるために使われた器具。測量に使うコンパスのようなもの。
遮水工法【しゃすいこうほう】
中山ため池の地質は水がもれやすいので、池底はコンクリートの保護層でおおわれています。その下には塩化
ビニールシートを、そして地面と接する場所には天然の粘土鉱物から作られたイギリス製の「ベントナイトシート」を使用。二重のシートで水のもれを防いでいます。