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妊婦とインフルエンザ

妊婦とインフルエンザ

富山県立中央病院 産婦人科副医長 炭谷崇義

妊娠におけるインフルエンザの影響

 いわゆるインフルエンザとは、主に冬季流行するインフルエンザウイルスA型B型による飛沫・接触感染症で、1-3日の潜伏期間を経て、急激な発熱(38度以上)・頭痛・関節痛・筋肉痛などの症状を呈します。特徴的な臨床症状はなく、確定診断には迅速診断キット(ウイルス抗原検出)が普及しています。感染しても大多数は治療を要さずとも1週間程で回復しますが、「妊婦では心肺機能や免疫機能に変化を起こし、重症化し易い」ことが知られています。胎児へは直接的な影響よりも、母体発熱による影響が懸念されます。
 

予防法は?ワクチン接種は?

 “妊婦は感染し易い”ことはなく、“妊婦は感染すると重症化し易い”ゆえ注意を要します。流行期には、人混みへの外出を避ける・手洗いやうがいの励行・充分な休息をとるなど、まずは日常生活での取り組みが重要です。「妊婦へのインフルエンザワクチン接種は有効性と安全性が証明されています」。インフルエンザワクチンはウイルスの病原性をなくした不活化ワクチンであり、また“妊婦用ワクチン”という言葉の原因となった含有防腐剤濃度は極少量であり、どちらも妊婦や胎児への影響はありません。
 時期としては、接種後効果出現まで2-3週間、その後3-4ヶ月間の防御免疫能を有するため、「10-11月が理想的」です。以前に妊娠初期は流産や催奇形性回避目的に避けたほうが良いという慎重な意見もありましたが、そんな報告はなく、「妊娠全期間において接種可能」です。
 おまけですが、妊娠28週以降に接種した妊婦からの児は、非接種妊婦からの児に比べ、生後6ヶ月までのインフルエンザを63%減少させ、また母児とも熱性呼吸器疾患を30%減少させたという報告があります。生後6ヶ月未満でのインフルエンザワクチン接種は認められておらず、「妊婦のインフルエンザ接種は母児双方に利益をもたらす可能性」があります。
 

治療法は?抗インフルエンザ薬は?

 上記予防に努めても感染してしまった場合、「発症48時間以内の抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)開始が重症化防止に有効」です。抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)で妊婦や胎児に問題が生じたという報告はありません。
 インフルエンザ感染が疑わしい場合は速やかに医療機関に連絡し、指示を仰いでください。直接来院では、診察待ち時間の延長、他者への感染予防などに不備が生じ、皆が不利益を被る可能性が生じます。ご理解ご協力を賜りますようお願い致します。
 残念ですが、副作用や合併症のない治療はありません。“安全”“影響がない”という表現は統計学的に問題がないということで、全例大丈夫ということではありません。メリット・デメリットを熟慮され、治療を選択ください。

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