統計情報ライブラリー/経済富山県産業連関表
簡単な波及効果分析の方法

製造業に100億円の需要が生じた場合の県内産業への経済波及効果を求める簡単な方法(電卓でできる)は次のとおり。
ここでは13部門の各係数を用いて波及効果を求める。

(1) 県内需要額

通常、需要額の中には県外から移輸入するものも含まれており、これを取り除く必要がある。

まず、製造業の県内自給率を求める。

自給率は1−移輸入率     

 移輸入率は、移輸入額/県内需要額

 (県内需要額=総需要額―移輸出額)

自給率=1−(2,122,524/3,001,891)=0.2930

従って100億円のうち県内製造業に対する需要額は、29.30億円となる。

 

(2) 生産誘発額(直接効果+1次波及効果)

29.30億円の県内需要額による原材料の調達に伴う1次的な生産誘発額(直接効果、つまり当初の29.30億円を含む)を求める。

逆行列係数表の製造業の列の係数を用いる。


農林水産業への波及 29.30億円×0.013240=0.3879億円

鉱業への波及    29.30億円×0.002641=0.0773億円

製造業への波及   29.30億円×1.139569=33.3893億円


全産業       29.30億円×1.401860=41.0744億円

(3) 第2次波及効果

県内産業に新たに生じた生産は雇用者所得の増加をもたらし、これによる消費拡大がさらに生産を誘発する。

雇用者所得 → 家計消費支出 → 消費による生産誘発額

@ 雇用者所得 生産誘発額×各産業の雇用者所得率(雇用者所得の投入係数)
農林水産業  0.3879億円×0.076404=0.0296億円

鉱業 0.0773億円×0.213841=0.0165億円

製造業    33.3893億円×0.189808=6.3375億円


    全産業計              8.8146億円
A 家計消費支出

雇用者所得のうち65%が支出に振り向けられるとする。

       8.8146億円×0.65=5.7294億円 B 消費による生産誘発額 本来は消費額を各部門(農業、製造業など)に割り振る必要があるが、データ収集が困難なので消費パターンを産業連関表中の民間消費支出と同じだと仮定する。

この場合、支出額(5.7294億円)に、生産誘発係数を乗じることによって当該支出による波及効果を求めることができる。

農林水産業への波及 5.7294億円×0.014401=0.0825億円

鉱業への波及    5.7294億円×0.000569=0.0033億円

製造業への波及   5.7294億円×0.097159=0.5567億円


   計      5.7294億円×0.950165=5.4439億円

(4) 3次波及以降の計算

2次波及と同様、3次、4次という具合に、理論的には波及が続くことが考えられるが、在庫処分などにより、生産波及の中断が考えられるので通常は2次波及程度で留置くことが妥当とされる。

(5) 計算結果

100億円の需要によって41.0744億円+5.4439億円=46.5183億円の生産が県内に生じたことになるが、県内への需要に対してということであれば、29.30億円の需要によって、46.5183億円の生産が生じたという言い方ができよう。