統計情報ライブラリー/経済県民経済計算
平成27年度県民経済計算の概要  
 県民経済計算とは、本県の1年間(年度)の経済活動の結果を、生産・分配・支出の三面から総合的・体系的にとらえ、県経済の規模や成長率、さらには産業構造などを明らかにしたものである。


1 日本経済の概況

 平成27年度の日本経済は、国の金融・財政政策や民間投資を喚起する成長戦略を柱とする経済財政政策の推進や原油価格の低下などにより、雇用・所得環境が改善し、緩やかな回復基調が続く状況となった。ただし、中国をはじめとする新興国経済の景気減速の影響などにより輸出は弱含みとなり、また食品価格等の上昇や冷夏・暖冬といった天候要因などを背景に、個人消費は回復に遅れがみられた。
 この結果、平成27年度の国内総生産は、名目で533兆9,044億円、実質で518兆3,372億円となり、対前年度経済成長率は、名目で3.0%増、実質で1.4%増となった


2 富山県経済の概況

 平成27年度の県内総生産は、名目で4兆6,465億円、実質で4兆4,722億円となり、対前年度経済成長率は、名目で2.9%増(前年度1.5%増)実質で1.5%増(同0.5%減)と、名目で3年連続の増加、実質で2年ぶりの増加となった。
 これは、日本経済の緩やかな回復基調を受け、総生産の約6割を占める第3次産業が3年連続で増加したことや、主力産業である製造業において、ウエイトが大きい化学や電子部品・デバイス、金属製品などで総生産額が増加したことなどによる。
 また、県民雇用者報酬、財産所得及び企業所得を合算した県民所得は、3兆5,966億円(前年度比3.4%増)となり、1人当たり県民所得は、3,373千円(同3.9%増)となった。


図1 経済成長率の推移



表1 富山県及び国の状況



3 県内総生産(生産側) (名目、実質)


【製造業 名目 8.9%増(実質 5.6%増)、卸売・小売業 名目 0.7%増(実質 1.3%増)、不動産業 名目 1.1%増(実質 1.7%増)、県全体で 名目 2.9%増(実質 1.5%増)】

●県(国)内総生産
  一 定期間における県(国)内での財・サービスの生産活動により新たに生み出された価値(付加価値)の総額であり、次の式により求める。
県 (国)内総生産=産出額(売上総額)−中間投入額(原材料費、燃料費など)

●名目値と実質値
  市場で実際に取引されている価格で計算した総生産を「名目県(国)内総生産」といい、その増加率を名目経済成長率という。また、物価変動の影響を排除した総生産を「実質県(国)内総生産」といい、その増加率を実質経済成長率という。
  経済成長率は、通常、対前年(度)比、あるいは対前期(四半期)比で示される。


表2 経済活動別県内総生産(名目)


●固定基準年方式と連鎖方式
  固定基準年方式とは、実質県(国)内総生産を計算する場合、基準年を固定し、その年の価格をベースに計算する方式のこと。
  この方式では、基準年から離れるにつれ、経済の実態と乖離するデメリットがある。
 これに対し、連鎖方式とは、基準年を常に前年において計算する方式で、この計算方式により乖離を小さくすることができる。
  県民経済計算では、従来、県内総生産の支出側のみ固定基準年方式により実質化していたが、平成16年度推計から県内総生産の生産側も連鎖方式により実質化 し、平成27年度推計からは支出系列の名目値も連鎖方式により実質化している。
  なお、連鎖方式では加法整合性が成立しない(各項目の集計と合計が一致しない)ため、「開差」欄を設けて差額を表示している。


表3 経済活動別県内総生産(実質:連鎖方式)



図2 経済活動別県内総生産の構成比(平成27年度・名目)

図3 経済活動別寄与度(平成27年度・名目)

(1)第1次産業  名目総生産 439億円(23.1%増)【26年度 名目総生産 356億円(19.1%減)】

<農 業(30.3%増)>

 農業の総生産額の約6割を占める基幹作物である米の作況指数が前年度の「平年並み」から「やや良」となって収穫量が増加し、米価は3年連続して下落したものの、中間投入額が減少したことなどから、農業全体では30.3%の増加となった。

<林 業(11.4%減)>

 林業の総生産額の約5割を占める栽培きのこ類の産出額が減少したことなどから、林業全体では11.4%の減少となった。

<水産業(4.5%増)>

 水産業の総生産額の大部分を占める海面漁業において、まいわし等の漁獲量が増加し、また、さんまやぶり類では漁獲量が減少したものの、販売単価が上昇し産出額では増加となったことなどから、水産業全体では4.5%の増加となった


(2)第2次産業  名目総生産 1兆 8,035億円(6.1%増)【26年度 名目総生産 1兆 6,999億円(2.8%増)】

<鉱 業 (0.5%減)>

 鉱業の大部分を占める陸砂利の採取量が増加したものの、河川砂利や土砂採取量が減少したことなどから、鉱業全体では0.5%の減少となった。

<製造業(8.9%増)>

 化学は、医薬品の受託製造や後発医薬品の増加などにより17.8%増加し、県内総生産に占める割合が7.4%と、製造業の中では最も大きかった。はん用・生産用・業務用機械は、海外向け工作機械の減少などにより5.2%減少した。一次金属(鉄鋼・非鉄金属)は、アルミニウム圧延製品の減少などにより8.4%減少した。電子部品・デバイスは、海外需要の増加などにより13.3%増加した。
 これらのことから、製造業全体では8.9%の増加となった。


図4 製造業の中分類別総生産額 (名目)の推移



<建設業(6.2%減)>

 建設業の総生産額の約3割を占める民間建築工事や、約1割を占める民間土木工事で増加したものの、約4割を占める公共土木工事が減少したことなどから、建設業全体では6.2%の減少となった。


(3)第3次産業  名目総生産 2兆 7,737億円(1.3%増)【26年度 名目総生産 2兆 7,388億円(0.6%増)】

<電気・ガス・水道・廃棄物処理業(4.6%減)>

 電気・ガス・水道・廃棄物処理業の総生産額の約7割を占める電気事業において、燃料費が減少したものの、県内火力発電量が減少したことなどから、電気・ガス・水道・廃棄物処理業全体では4.6%の減少となった。

<卸売・小売業(0.7%増)>

 卸売業は、鉱物・金属材料、機械器具などの販売減少により全体の販売額が減少したものの、卸売業全体のマージン率が上昇したことなどから6.7%の増加となった。小売業は、小売業全体のマージン率は上昇したものの、飲食料品、家具建具什器などの販売減少により、全体の販売額が減少し、4.1%の減少となった。
 これらのことから、卸売・小売業全体では0.7%の増加となった。

<運輸・郵便業(0.1%増)>

 運輸・郵便業の総生産額の約6割を占める道路運送業で微減となったものの、その他の運輸業、鉄道業などで増加したことなどから、運輸・郵便業全体では0.1%の増加となった。

<宿泊・飲食サービス業(6.1%増)>

 宿泊・飲食サービス業の総生産額の約7割を占める飲食サービス業、約3割を占める旅館・その他の宿泊所がともに増加したことから、宿泊・飲食サービス業全体では6.1%の増加となった。

<情報通信業(0.4%増)>

 情報通信業の総生産額の約5割を占める電信・電話業で減少したものの、情報サービス業、放送業、映像・音声・文字情報制作業で増加したことから、情報通信業全体では0.4%の増加となった。

<金融・保険業(5.4%増)>

 金融業は、FISIM産出額や受取手数料が減少したことなどから3.3%の減少となった。保険業は、民間生命保険、損害保険が増加したことなどから12.4%の増加となった。
 これらのことから、金融・保険業全体では5.4%の増加となった。

<不動産業(1.1%増)>

 不動産業の総生産額の大部分を占める住宅賃貸業(持ち家の帰属家賃を含む。)において、住宅床面積が増加したことなどから1.3%の増加となった。また、不動産仲介業は0.6%の増加、不動産賃貸業は0.5%の減少となった。
 これらのことから、不動産業全体では1.1%の増加となった。

● 帰属家賃
 持ち家について、借家や貸間と同様のサービスが生産されるものと仮定し、それを市場家賃で評価したもの。

<専門・科学技術、業務支援サービス業(2.8%増)>

 専門・科学技術、業務支援サービス業の総生産額の約8割を占めるその他の対事業所サービス業や、約1割を占める物品賃貸サービス業で増加したことなどから、専門・科学技術、業務支援サービス業全体では2.8%の増加となった。

<保健衛生・社会事業(4.0%増)>

 保健衛生・社会事業の総生産額の約6割を占める医療業や、約2割を占める介護で増加したことなどから、保健衛生・社会事業全体では4.0%の増加となった。

<その他のサービス(1.4%増)>

 その他のサービスの総生産額の約2割を占める洗濯・理容・美容・浴場業で減少したものの、約3割を占めるその他の対個人サービス業や約2割を占める娯楽業で増加したことなどから、その他のサービス全体では1.4%の増加となった。


4 県民所得(分配)(名目)

【県民雇用者報酬 1.1%増、財産所得 3.9%増、企業所得 8.1%増、全体で 3.4%増 
  1人当たり県民所得は 3,373千円、3.9%増】

 平成27年度の県民所得は、3.4%増の3兆5,966億円となった。
 これは、製造業や第3次産業の総生産額が増加した状況のもと、県民雇用者報酬が1.1%増加、財産所得が3.9%増加、企業所得が8.1%増加と、いずれも増加したことによる。
 この結果、県民所得(名目)を県人口で割った1人当たり県民所得は、3.9%増の3,373千円となった。



表4 県民所得(分配:名目)



表5 1人当たり県(国)民所得の推移

(注)1人当たり国民所得は、内閣府「平成28年度国民経済計算年次推計」による。
●1人当たり県民所得
 県民所得を総人口で割って求める。県民所得には企業所得も含まれるため、必ずしも個人の賃金・生活水準を示すものではない。


図5 県民所得金額(名目)の推移


図6 県民所得伸び率(名目)の推移



(1)県民雇用者報酬     1.1%増 (26年度 1.9%増)

 県民雇用者報酬のうち全体の約8割を占める賃金・俸給は、最も大きな割合を占める製造業では給与金額の減少などにより0.8%減少したものの、保健衛生・社会事業では雇用者数の増加などにより2.5%の増加、卸売・小売業では現金給与額の増加などにより4.0%の増加、建設業では雇用者数、給与金額の増加により7.0%の増加となるなど、全体では0.7%の増加となった。また、雇主の社会負担は、健康保険、年金などの増加により2.8%の増加となった。
 これらのことから、県民雇用者報酬全体では1.1%の増加となった。

(2)財産所得         3.9%増 (26年度 13.7%増)

 家計部門で個人預金残高の増加により受取利子が増加したことなどから、財産所得全体では3.9%の増加となった。

(3)企業所得         8.1%増 (26年度 6.0%減)

 民間非金融法人企業において、製造業、不動産業などで営業余剰が増加したことなどにより8.4%増加し、個人企業所得も5.8%の増加となったことなどから、企業所得全体では8.1%の増加となった。



5 県内総生産(支出側)(名目)


【民間最終消費支出 0.2%増、政府最終消費支出 1.3%増、総資本形成 7.8%増、全体で 2.9%増】

  平成27年度の県内総生産(支出側)は、4兆6,465億円となった。


表6 県内総生産(支出側名目)



図7 県内総生産(支出側、名目)の推移


図8 県内総生産(支出側、名目)の増加率の推移


(1)民間最終消費支出        名目 0.2%増 (26年度 1.6%減)

 民間最終消費支出は、0.2%増の2兆4,527億円となった。これは、民間最終消費支出の大部分を占める家計最終消費支出において、食料・非アルコール飲料やその他支出(理美容、葬祭費等)が増加した一方、住居・電気・ガス・水道や交通などの項目で減少し、全体としては同程度の水準にとどまった一方で、対家計民間非営利団体の最終消費支出が8.7%増加したことなどによる。

(2)政府最終消費支出       名目 1.3%増 (26年度 2.4%増)

 政府最終消費支出は、1.3%増の8,493億円となった。

(3)県内総資本形成        名目 7.8%増 (26年度 11.4%減)

 県内総資本形成は、7.8%増の1兆1,357億円となった。これは、一般政府の設備投資が減少したものの、民間企業の設備投資や住宅投資が増加したことなどによる。

(4)財貨・サービスの移出入(純) 

  財貨・サービスの移出入(純)は、4,540億円の移出超過となり、35.0%の増加となった。



図9 県民経済計算の概念と相互関連図


平成27年度推計における主な変更点


1  基準改定の実施
 国民経済計算では、産業連関表、国勢調査などの基幹的統計が5年毎に作成されるのに合わせて、体系基準年(ベンチマークとなる年)の改定(基準改定)がなされています。
 平成27年度富山県民経済計算においても、国民経済計算に合わせて基準年次をこれまでの「平成17年基準」から「平成23年基準」 に改定しています。

2  推計対象期間について
 平成23年基準改定に伴う推計値の遡及改定は、推計に用いる関係資料の入手が可能な平成18年度以降としています。

3  平成23年基準改定における概念の変更等に関する事項(主なもの)
 国民経済計算では、平成23年基準改定において概念の変更や推計方法の見直し等が行われており、県民経済計算においても、国民経済計算に準じ主として以下の推計方法の見直し等を行っています。

 (1)国際基準(2008SNA)への対応
 国民経済計算の推計は、国連で合意された国際基準に基づいて行われており、従前の基準(1993SNA)に代わり、平成23年基準では新たな国際基準(2008SNA)に基づく体系となりました。これに伴い、県民経済計算においても主に次のような見直しを行いました。
   @ 経済活動別分類の変更
 平成17年基準の「産業」「政府サービス生産者」「対家計民間非営利サービス生産者」の区分を取り止めるとともに、サービス業については国際標準産業分類(ISICRev.4)と整合的になるよう、「専門・科学技術、業務支援サービス業」「保健衛生・社会事業」などへの細分化等の見直しを行いました。
   A 研究・開発(R&D)の資本化
 従前の平成17年基準においては、研究・開発(R&D)への支出は中間投入(中間投資)として扱われていましたが、これらは知識ストックを増加させ、新たな応用を生む創造的活動と位置づけ、「総固定資本形成」として扱うこととしました。

 (2)概念・定義等の変更
   @ 生産・輸入品に課される税の範囲の変更
 従前の平成17基準においては、事業税(法人事業税、個人事業税、地方法人特別税)は「生産・輸入品に課される税」として扱っていましたが、その課税標準の大部分が所得であることから「所得・富等に課される経常税」として扱うこととしました。
   A 役員賞与の取扱いの変更
 役員賞与について、「財産所得」の「配当」ではなく、「雇用者報酬」の「賃金・俸給」として扱うこととしました。