統計情報ライブラリー/経済県民経済計算
平成26年度県民経済計算の概要  
 県民経済計算とは、本県の1年間(年度)の経済活動の結果を、生産・分配・支出の三面から総合的・体系的にとらえ、県経済の規模や成長率、さらには産業構造などを明らかにしたものである。


1 日本経済の概況

 平成26年度の日本経済は、4月の消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動減や夏の天候不順の影響に加え、輸入物価の上昇などもあり、特に個人消費の落ち込みが大きく、景気の回復力に弱さがみられるようになった。しかし、年末以降は消費者マインドが下げ止まり、景気は緩やかな回復基調となった。また、雇用情勢も改善の動きがみられた。
 この結果、平成26年度の国内総生産は、名目で489兆6,234億円、実質で524兆6,643億円となり、対前年度経済成長率は、名目で1.5%増、実質で1.0%減となった


2 富山県経済の概況

 平成26年度の県内総生産は、名目で4兆4,526億円、実質で4兆6,984億円となり、対前年度経済成長率は、名目で1.9%増(前年度0.8%増)実質で0.5%増(同0.8%増)と、名目、実質ともに2年連続の増加となった。
 これは、総生産の6割強を占める第3次産業が3年ぶりに増加したことや、主力産業である製造業において、円安傾向が続くなか、ウエイトが大きい化学、一般機械、非鉄金属、鉄鋼などで大きく生産額が増加したことなどによる。
 また、県民雇用者報酬、財産所得及び企業所得を合算した県民所得は、3兆4,078億円(前年度比0.1%減)となり、1人当たり県民所得は、3,185千円(同0.5%増)となった。


図1 経済成長率の推移



表1 富山県及び国の状況



3 県内総生産(生産側) (名目、実質)


【製造業 名目 4.1%増(実質 3.8%増)、サービス業 名目 1.0%減(実質 3.4%減)、卸売・小売業 名目 1.0%減(実質 3.9%減)、県全体で 名目 1.9%増(実質 0.5%増)】

●県(国)内総生産
  一 定期間における県(国)内での財・サービスの生産活動により新たに生み出された価値(付加価値)の総額であり、次の式により求める。
県 (国)内総生産=産出額(売上総額)−中間投入額(原材料費、燃料費など)

●名目値と実質値
  市場で実際に取引されている価格で計算した総生産を「名目県(国)内総生産」といい、その増加率を名目経済成長率という。また、物価変動の影響を排除した総生産を「実質県(国)内総生産」といい、その増加率を実質経済成長率という。
  経済成長率は、通常、対前年(度)比、あるいは対前期(四半期)比で示される。


表2 経済活動別県内総生産(名目)


●固定基準年方式と連鎖方式
  固定基準年方式とは、実質県(国)内総生産を計算する場合、基準年を固定し、その年の価格をベースに計算する方式のこと。
  この方式では、基準年から離れるにつれ、経済の実態と乖離するデメリットがある。
 これに対し、連鎖方式とは、基準年を常に前年において計算する方式で、この計算方式により乖離を小さくすることができる。
  県民経済計算では、従来、県内総生産の支出側のみ固定基準年方式により実質化していたが、平成16年度推計から県内総生産の生産側も連鎖方式により実質化 している。
  なお、連鎖方式では加法整合性が成立しない(各項目の集計と合計が一致しない)ため、「開差」欄を設けて差額を表示している。


表3 経済活動別県内総生産(実質:連鎖方式)



図2 経済成長率の産業別寄与度(名目)


(1)第1次産業  名目総生産 367億円(17.6%減)【25年度 名目総生産 446億円(13.9%減)】

<農 業(21.6%減)>

 農業の総生産額の約5割を占める基幹作物である米の作況指数が前年度の「やや良」から「平年並み」となって収穫量が減少し、米価も下落して生産額が減少したことなどから、農業全体では21.6%の減少となった。

<林 業(3.4%増)>

 林業の総生産額の約6割を占める栽培きのこ類と約3割を占める育林業などが増加したことなどから、林業全体では3.4%の増加となった。

<水産業(1.4%減)>

 水産業の総生産額の大部分を占める海面漁業において、さんま、さば類などの漁獲量が増加したものの、いわし類などの漁獲量が減少したことなどから、水産業全体では1.4%の減少となった


(2)第2次産業  名目総生産 1兆 5,276億円(4.0%増)【25年度 名目総生産 1兆 4,685億円(3.6%増)】

<鉱 業 (10.2%増)>

 採石業の大部分を占める陸砂利、山土砂採取数量が減少したものの、原材料使用額の減少により生産額が増加したことなどから、鉱業全体では10.2%の増加となった。

<製造業(4.1%増)>

 化学は、医薬品の受託製造や後発医薬品の増加などにより10.9%増加し、県内総生産に占める割合が5.5%と、製造業の中では最も大きかった。電気機械は、輸出用電子部品の減少などにより3.6%減少した。一般機械は、海外向け工作機械、自動車部品関連の需要増などにより14.5%増加した。非鉄金属は、アルミニウム再生地金やアルミニウム合金の増加などにより8.1%増加した。鉄鋼は、工作機械や自動車向けの増加などにより29.8%増加した。
 これらのことから、製造業全体では4.1%の増加となった。


図3 製造業の中分類別総生産額の推移 (名目)



<建設業(3.6%増)>

 建設業の総生産額の約4割を占める公共土木工事が減少したものの、建設業の総生産額の約3割を占める民間建築工事において店舗や工場・作業所関係の工事がともに大きく増加したことなどから、建設業全体では3.6%の増加となった。


(3)第3次産業  名目総生産 2兆 8,466億円(0.8%増)【25年度 名目総生産 2兆 8,248億円(0.6%減)】

<電気・ガス・水道業(14.4%増)>

 電気・ガス・水道業の総生産額の約7割を占める電気事業において、県内火力発電量が減少したものの、燃料費が大きく減少し、県内水力発電量も増加したことなどから、電気・ガス・水道業全体では14.4%の増加となった。

<卸売・小売業(1.0%減)>

 卸売業は、鉱物・金属材料、機械器具などの販売減少など全体の販売額が減少し、卸売業全体のマージン率が下降したことから3.3%の減少となった。小売業は、自動車自転車、家具建具什器などの販売減少など全体の販売額は減少したものの、小売業全体のマージン率が上昇したことから0.7%の増加となった。
 これらのことから、卸売・小売業全体では1.0%の減少となった。

<金融・保険業(1.1%減)>

 金融業は、受取手数料が増加したものの、低金利の影響などにより4.5%の減少となった。保険業は、民間生命保険などが減少したものの、損害保険が増加したことから、2.1%の増加となった。
 これらのことから、金融・保険業全体では1.1%の減少となった。

<不動産業(0.4%減)>

 不動産業の総生産額の大部分を占める住宅賃貸業(持ち家の帰属家賃を含む。)において、住宅床面積が増加したものの、平均家賃が低下したことなどから0.6%の減少となった。また、不動産仲介業は6.7%の増加、不動産賃貸業は2.9%の増加となった。
 これらのことから、不動産業全体では0.4%の減少となった。

● 帰属家賃
 持ち家について、借家や貸間と同様のサービスが生産されるものと仮定し、それを市場家賃で評価したもの。

<運輸業(3.5%増)>

 運輸業の総生産額の約6割を占める道路貨物業が増加したことなどから、運輸業全体では3.5%の増加となった。

<情報通信業(0.9%増)>

 通信業は、情報通信業の総生産額の約4割を占める電信・電話業が増加したことなどから0.3%の増加となった。情報サービス・映像文字情報制作業は、情報通信業の総生産額の約3割を占める情報サービス業が増加したことから1.8%の増加となった。
 これらのことから、情報通信業全体では0.9%の増加となった。

<サービス業(1.0%減)>

 公共サービス業は、介護が増加したものの、医療・保健が減少したことから1.0%の減少となった。対事業所サービス業は、その他の対事業所サービス業が減少したことから1.8%の減少となった。また、対個人サービス業は、娯楽業、飲食店などが減少したことから0.3%の減少となった。
 これらのことから、サービス業全体では1.0%の減少となった。

図4 サービス業の総生産額の推移(名目)


● 公共サービス
教育 研究 医療・保健 介護 その他の公共サービス

● 対事業所サービス
広告業 業務用物品賃貸業 自動車・機械修理業 その他の対事業所サービス 業

● 対個人サービス
娯楽業 飲食店 旅館・その他の宿泊所 洗濯・理容・美容・浴場業 その他の対個人サービス業


4 県民所得(分配)(名目)

【県民雇用者報酬 0.0%減、財産所得 6.3%増、企業所得 1.6%減、全体で 0.1%減 
  1人当たり県民所得は 3,185千円、0.5%増】

 平成26年度の県民所得は、0.1%減の3兆4,078億円となった。
 これは、財産所得が6.3%増加したものの、県民雇用者報酬が0.0%減少し、個人企業の生産活動水準の下降の動きを受けて、企業所得が1.6%減少したことによる。
 この結果、県民所得(名目)を県人口で割った1人当たり県民所得は、0.5%増の3,185千円となった。


表4 県民所得(分配:名目)



表5 1人当たり県(国)民所得の推移

●1人当たり県民所得
 県民所得を総人口で割って求める。県民所得には企業所得も含まれるため、必ずしも個人の賃金・生活水準を示すものではない。


図5 県民所得金額(名目)の推移


図6 県民所得伸び率(名目)の推移



(1)県民雇用者報酬     0.0%減 (25年度 0.1%減)

 県民雇用者報酬のうち全体の約8割を占める賃金・俸給は、最も大きな割合を占める製造業が給与の増加などにより5.7%増加し、卸売・小売業が1.2%増加し、政府サービスが4.0%増加したものの、雇用者数の減少などにより、サービス業が12.8%の減少、建設業が12.2%の減少となり、全体で0.1%の減少となった。また、雇主の社会負担は、健康保険、年金などの増加により0.2%の増加となった。
 これらのことから、県民雇用者報酬全体では0.0%の減少となった。

(2)財産所得         6.3%増 (25年度 8.8%増)

 家計部門で個人預金残高の増加により、受取利子、受取配当が増加したことなどから、財産所得全体では6.3%の増加となった。

(3)企業所得         1.6%減 (25年度 6.3%増)

 民間非金融法人企業で主力産業である製造業などの企業所得が1.4%増加したものの、個人企業所得が6.5%減少したことなどから、企業所得全体では1.6%の減少となった。



5 県内総生産(支出側)(名目)


【民間最終消費支出 1.8%減、政府最終消費支出 2.6%増、総資本形成 2.0%増、全体で1.9%増】

  平成26年度の県内総生産(支出側)は、4兆4,526億円となった。


表6 県内総生産(支出側名目)



図7 県内総生産(支出側、名目)の推移


図8 県内総生産(支出側、名目)の増加率の推移


(1)民間最終消費支出        名目 1.8%減 (25年度 2.7%増)

 民間最終消費支出は、1.8%減の2兆5,202億円となった。これは、民間最終消費支出の大部分を占める家計最終消費支出において、食料・非アルコール飲料が増加したものの、約3割を占める住居・電気・ガス・水道やアルコール飲料・たばこ、交通、娯楽・レジャー・文化、外食・宿泊など多くの項目で減少したことによる。

(2)政府最終消費支出       名目 2.6%増 (25年度 0.5%減)

 政府最終消費支出は、2.6%増の8,680億円となった。

(3)総資本形成            名目 2.0%増 (25年度 3.2%増)

 総資本形成は、2.0%増の1兆178億円となった。これは、民間住宅や民間企業の設備投資が減少したものの、一般政府の設備投資や民間企業の在庫品が増加したことによる。

(4)財貨・サービスの移出入(純) 

  財貨・サービスの移出入(純)は、1,468億円の移出超過となり、47.6%の増加となった。



図9 県民経済計算の概念と相互関連図