統計情報ライブラリー/経済県民経済計算
平成22年度県民経済計算の概要  
 県民経済計算とは、本県の1年間(年度)の経済活動の結果を、生産・分配・支出の三面から 総合的・体系的にとらえ、県経済の規模や成長率、さらには産業構造などを明らかにしたものである。


1 日本経済の概況

 平成22年度の日本経済は、21年春頃からの外需や経済対策の効果にけん引された持ち直しの動きが続くなかで、22年夏には猛暑効果も加わったが、急激な円高の進行やアジア経済の変化などにより、秋には足踏み状態となった。その後、23年に入って改善がみられたが、同年3月に東日本大震災が発生し、生産活動の低下や個人消費の減少など大きな影響を受けた。また、雇用情勢も厳しさが続いた状況であった。
 この結果、平成22年度の国内総生産は名目で479兆2,046億円、実質で510兆9,924億円となり、対前年度経済成長率は名目で1.1%増、実質で3.1%増となった


2 富山県経済の概況

 平成22年度の県内総生産は名目で4兆3,704億円、実質で4兆5,841億円となり、対前年度経済成長率は、名目で4.3%増(前年度7.8%減)と7年ぶりの増加となった。また、実質でも6.0%増(同8.3%減)と4年ぶりの増加となった。
 これは、サービス業などの減少により、生産額の7割弱を占める第3次産業は3年連続の減少であったものの、主力産業である製造業において、生産活動水準の回復過程の中で、電気機械、化学、一般機械、非鉄金属などで大きく生産額が増加したことなどによる。
 また、県民雇用者報酬、財産所得及び企業所得を合算した県民所得は3兆1,708億円(前年度比6.9%増)となり、1人当たり県民所得は、2,900千円(同7.3%増)となった。


図1 経済成長率の推移



表1 富山県及び国の状況



3 県内総生産(生産側) (名目、実質)


【製造業 名目 22.1%増(実質 29.9%増)、サービス業 名目 1.1%減(実質 1.0%減)、卸売・小売業 名目 0.9%増(実質 1.3%増)、県全体で 名目 4.3%増(実質 6.0%増)】

●県(国)内総生産
  一 定期間における県(国)内での財・サービスの生産活動により新たに生み出された価値(付加価値)の総額であり、次の式により求める。
県 (国)内総生産=産出額(売上総額)−中間投入額(原材料費、燃料費など)

●名目値と実質値
  市場で実際に取引されている価格で計算した総生産を「名目県(国)内総生産」といい、その増加率を名目経済成長率という。また、物価変動の影響を排除した総生産を「実質県(国)内総生産」といい、その増加率を実質経済成長率という。
  経済成長率は、通常、対前年(度)比、あるいは対前期(四半期)比で示される。


表2 経済活動別県内総生産(名目)


●固定基準年方式と連鎖方式
  固定基準年方式とは、実質県(国)内総生産を計算する場合、基準年を固定し、その年の価格をベースに計算する方式のこと。
  この方式では、基準年から離れるにつれ、経済の実態と乖離するデメリットがある。
 これに対し、連鎖方式とは、基準年を常に前年において計算する方式で、この計算方式により乖離を小さくすることができる。
  県民経済計算では、従来、県内総生産の支出側のみ固定基準年方式により実質化していたが、平成16年度推計から県内総生産の生産側も連鎖方式により実質化 している。
  なお、連鎖方式では加法整合性が成立しない(各項目の集計と合計が一致しない)ため、「開差」欄を設けて差額を表示している。


表3 経済活動別県内総生産(実質:連鎖方式)



図2 経済成長率の産業別寄与度(名目)


(1)第1次産業  名目総生産 510億円(1.1%増)【21年度 名目総生産 504億円(6.5%減)】

<農 業(4.1%増)>

 生産額の約6割を占める基幹作物である米の作況指数が前年度と同様に「平年並み」であったものの、野菜、果実、畜産が増加したことなどから、農業全体では4.1%の増加となった。

<林 業(6.0%減)>

 生産額の5割を占める育林業は前年度並みであったものの、約4割を占める栽培きのこ類が減少したことなどから、林業全体では6.0%の減少となった。

<水産業(12.9%減)>

 生産額の大部分を占める海面漁業において、黒マグロやメバチなどの漁獲量が減少したことなどから、水産業全体では12.9%の減少となった


(2)第2次産業  名目総生産 1兆 3,592億円(17.1%増)【21年度 名目総生産 1兆 1,606億円(19.5%減)】

<鉱 業 (5.0%増)>

 採石業の陸砂利採取数量が回復したことなどから、鉱業全体では5.0%の増加となった。

<製造業(22.1%増)>

 電気機械は、輸出用電子部品の増加などにより42.2%増加した。化学は、医療品について後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進や受託製造の増加などにより22.6%増加した。一般機械は、自動車関連や電子部品関連の増加などにより117.6%増加した。また、非鉄金属は、アルミニウム再生地金やアルミニウム合金の増加などにより73.1%増加した。
 これらのことから、製造業全体では22.1%の増加となった。


図3 製造業の中分類別総生産額の推移 (名目)



<建設業(1.5%増)>

 民間建築工事は横ばいの水準であったものの、公共土木工事が北陸新幹線整備事業による鉄道軌道工事の増加が前年度に引き続き大きく寄与して増加し、また、公共建築工事が病院、学校などの公共施設関係の工事が増加したことなどから、建設業全体では1.5%の増加となった。


(3)第3次産業  名目総生産 2兆9,416億円(0.7%減)【21年度 名目総生産 2兆9,615億円(2.1%減)】

<電気・ガス・水道業(3.5%増)>

 生産額の約7割を占める電気事業において、県内火力発電量、県内水力発電量が共に増加したことなどから、電気・ガス・水道業全体では3.5%の増加となった。

<卸売・小売業(0.9%増)>

 卸売業は、鉱物・金属材料、機械器具などの販売額の増加などにより3.1%増加した。小売業は、飲食料品などの販売額が増加したものの、仕入れ費用との相対的な関係から0.7%減少した。
 これらのことから、卸売・小売業全体では0.9%の増加となった。

<金融・保険業(3.0%減)>

 金融業は、銀行における金利の低下の影響や、証券等における受取手数料の減少などにより5.6%減少した。保険業は、損害保険などで減少したものの、民間生命保険が増加したことなどにより0.7%増加した。
 これらのことから、金融・保険業全体では3.0%の減少となった。

<不動産業(1.2%減)>

 生産額の約9割を占める住宅賃貸業(持ち家の帰属家賃を含む。)において、平均家賃が低下したことなどから、不動産業全体で1.2%の減少となった。

● 帰属家賃
 持ち家について、借家や貸間と同様のサービスが生産されるものと仮定 し、それを市場家賃で評価したもの

<運輸業(3.4%減)>

 前年度に大きく減少した水運業は増加したものの、生産額の約6割を占める道路貨物業が減少したことなどから、運輸業全体では3.4%の減少となった。

<情報通信業(0.1%増)>

 生産額の約4割を占める情報サービス業は減少したものの、同じく約4割を占める電信・電話業が増加したことなどから、情報通信業全体では0.1%の増加となった。

<サービス業(1.1%減)>

 公共サービス は、医療・保健業の増加などにより3.9%増加した。対事業所サービスはその他の対事業所サービスの減少などにより4.2%減少した。また、対個人サービスは、娯楽業の減少などにより3.0%減少した。
 これらのことから、サービス業全体では1.1%の減少となった。

図4 サービス業の総生産額の推移(名目)


● 公共サービス
教育 研究 医療・保健 介護 その他の公共サービス

● 対事業所サービス
広告業 業務用物品賃貸業 自動車・機械修理業 その他の対事業所サービス 業

● 対個人サービス
娯楽業 飲食店 旅館・その他の宿泊所 洗濯・理容・美容・浴場業 その他の対個人サービス業


4 県民所得(分配)(名目)

【県民雇用者報酬 1.0%増、財産所得 8.5%減、企業所得 26.6%増、全体で6.9%増   1人当たり県民所得は 2,900千円、7.3%増】

 平成22年度の県民所得は、6.9%増の 3兆1,708億円となった。
 これは、主力産業である製造業における生産活動水準の上昇の動きを受けて、県民雇用者報酬が1.0%増加、企業所得が26.6%増加したことによる。
 この結果、県民所得(名目)を県人口で割った1人当たり県民所得は、7.3%増の2,900千円となった。


表4 県民所得(分配:名目)



表5 1人当たり県(国)民所得の推移

●1人当たり県民所得
 県民所得を総人口で割って求める。県民所得には企業所得も含まれるため、必ずしも個人の賃金・生活水準を示すものではない。


図5 県民所得金額(名目)の推移


図6 県民所得伸び率(名目)の推移



(1)県民雇用者報酬    1.0%増 (21年度 6.9%減)

 県民雇用者報酬のうち全体の約8割を占める賃金・俸給は、サービス業が1.7%減少し、政府サービスが4.0%減少し、卸売・小売業が1.7%減少したものの、最も大きな割合を占める製造業が雇用者数の増加などにより4.3%増加したことなどから、0.4%増加した。また、雇主の社会負担は、健康保険、雇用保険などの増加により4.1%増加した。
 これらのことから、県民雇用者報酬全体では1.0%の増加となった。

(2)財産所得         8.5%減 (21年度 8.0%減)

 家計の配当(受取)が減少したことや、一般政府の受取利子が減少したことなどから、財産所得全体では8.5%の減少となった。

(3)企業所得         26.6%増 (21年度 19.5%減)

 主力産業である製造業における生産活動水準の上昇の動きを受けて、民間非金融法人企業の企業所得が増加したことなどから、企業所得全体では26.6%の増加となった。



5 県内総生産(支出側)(名目)


【民間最終消費支出 2.3%減、政府最終消費支出 1.5%増、総資本形成 13.8%増、全体で4.3%増】

  平成22年度の県内総生産(支出側)は、4兆3,704億円となった。


表6 県内総生産(支出側、名目)



図7 県内総生産(支出側、名目)の推移


図8 県内総生産(支出側、名目)の増加率の推移


(1)民間最終消費支出        名目 2.3%減 (21年度 2.0%減)

 民間最終消費支出は、2兆4,856億円、2.3%の減少となった。これは、民間最終消費支出の大部分を占める家計最終消費支出において、娯楽・レジャー・文化、通信が増加したものの、住居・光熱水費、食料・非アルコール飲料などを中心に多くの項目で減少したことによる。

(2)政府最終消費支出       名目 1.5%増 (21年度 1.2%増)

 政府最終消費支出は、8,569億円、1.5%の増加となった。


(3)総資本形成            名目 13.8%増 (21年度 15.1%減)

 総資本形成は、9,419億円、13.8%の増加となった。これは、公的部門が北陸新幹線整備事業などにより増加したことや、民間企業の在庫品増加による。


(4)財貨・サービスの移出・移入 (移出 名目 9.4%増、 移入 名目 6.0%増)

 移出は、3兆 1,872億円、9.4%の増加となった。
 移入は、3兆 710億円、6.0%の増加となった。
 なお、移出から移入を差し引いた財貨・サービスの純移出は、1,163億円の移出超過となっている。


図9 県民経済計算の概念と相互関連図