統計情報ライブラリー/経済県民経 済計算
平成21年度県民経済計算の概要  
 県民経済計算とは、本県の1年間の経済活動の結果を、生産・分配・支出の三面から 総合的・体系的にとらえ、県経済の規模や成長率、さらには産業構造などを明らかにしたものである。


1 日本経済の概況

 平成21年度の日本経済は、平成20年9月のリーマンショック後の急激な景気後退を経て、前半に、輸出 や生産、個人消費の下げ止まりや持ち直しの動きが見られ、半ばからは、経済対策の効果や在庫調整の一巡、新興国を始めとする海外景気の改善を背景とした輸 出の増加により、持ち直しの動きが続いたものの、自律的な回復には至らず、生産活動水準が低く、雇用情勢に厳しさが続いた状況であった。
 この結果、平成21年度の国内総生産は名目で 474兆 402億円、実質で 526兆 7353億円となり、対前年度経済成長率は名目で 3.7%減、実質で 2.4%減となった。


2 富山県経済の概況

 平成21年度の県内総生産は名目で 4兆 966億円、実質で 4兆 5567億円と な り、対前年度経済成長率は、名目で 8.9%減(前年度 3.6%減)、実質で 8.4%減(前年度 2.8%減)と名目、実質ともに前年度に 引 き続き減少した。
 これは主力産業である製造業において、電気機械、化学、一次金属、一般機械などで大きく生産額が減少したことや、前年度末に石油・石炭製品の事業所の廃止があったことなどによる。
 また、県民雇用者報酬、財産所得及び企業所得を合算した県民所得は 2兆 8899億円(前年度比 11.8%減)となり、1人当たり県民所得 は、2,638千円(同11.4%減)となった。


図1 経済成長率の推移



表1 富山県及び国の状況



3 県内総生産(生産側) (名目、実質)


【製造業 名目 26.3%減(実質 26.7%減)、サービス業 名目 3.6%減(実質 4.2%減)、卸売・小売業 名目 6.2%減(実質 3.8%減)、全体で 名目 8.9%減(実質 8.4%減)】

●県(国)内総生産
  一 定期間における県(国)内での財・サービスの生産活動により新たに生み出された価値(付加価値)の総額であり、次の式により求める。
県 (国)内総生産=産出額(売上総額)−中間投入額(原材料費、燃料費など)

●名目値と実質値
  市場で実際に取引されている価格で計算した総生産を「名目県(国)内総生産」といい、その増加率を名目経済成長率という。また、物価変動の影響を排除した 総生産を「実質県(国)内総生産」といい、その増加率を実質経済成長率という。
  経済成長率は、通常、対前年(度)比、あるいは対前期(四半期)比で示される。


表2 経済活動別県内総生産(名目)


●固定基準年方式と連鎖方式
  固定基準年方式とは、実質県(国)内総生産を計算する場合、基準年を固定し、その年の価格をベースに計算する方式のこと。
  この方式では、基準年から離れるにつれ、経済の実態と乖離するデメリットがある。
 これに対し、連鎖方式とは、基準年を常に前年において計算する方式で、この計算方式により乖離を小さくすることができる。
  県民経済計算では、従来、県内総生産の支出側のみ固定基準年方式により実質化していたが、平成16年度推計から県内総生産の生産側も連鎖方式により実質化 している。
  なお、連鎖方式では加法整合性が成立しない(各項目の集計と合計が一致しない)ため、「開差」欄を設けて差額を表示している。


表3 経済活動別県内総生産(実質:連鎖方式)



図2 経済成長率の産業別寄与度(名目)


(1)第1次産業  〜名目総生産 526億円(4.2%減)【20年度 名目総生産 549億円(9.7%増)】〜

農 業(4.1%減)

 生産額の約6割を占める基幹作物である米の作況指数が、前年度の「やや良」から「平年並み」となって収穫量 が減少したことなどにより、農業全体では 4.1%の減少となった。

林 業(2.9%増)

 県産木材や栽培きのこ類の生産量が増加したことなどから林業全体では 2.9%の増加となった。

水産業(7.4%減)

 生産額の大部分を占める海面漁業において、黒マグロやぶり類などの漁獲量が減少したこ となどから、水産業全体では 7.4%の減少となった。


(2)第2次産 業  〜名目総生産 1兆 1945億円(20.8%減)【20年度 名目総生産 1兆 5092億円(7.8%減)】〜

鉱 業 (16.2%減)

 生産額の約6割を占める土石業において陸砂利、山土砂などの採取量が減少し、また、砕石業も原材料使用額の増加などのため生産額が減少したことから、鉱 業全体では 16.2%の減少となった。

製造業(26.3%減)

 電気機械は、自動車用部品や産業用集積回路の需要減などにより 22.7%減少した。化学は、製造品出荷額が大きく減少したことに加え、原材料使用額などの費用が相対的に高いままだったことなどから、 45.8 %の減少となった。また、一次金属は、アルミ地金・合金などの需要減、一般機械は、電子部品製作機械や金型製品などの受注減により、それぞれ、 34.9%、43.1%の減少となった。
 石油・石炭製品は、前年度末に事業所の廃止があったことなどにより、97.6%の減少となった。
 これらのことから、製造業全体では 26.3%の減少となった。


図3 製造業の中分類別総生産額の推移 (名目)



建設業(4.5%増)

 民間建築工事は、新設住宅着工戸数の減少の影響から前年度に引き続き減少したが、公共土木工事が、北陸新幹線整備事業などにより 増加したことから、建設業全体では 4.5%の増加となった。


(3)第3次産 業  〜名目総生産 2兆 9786億円(2.7%減)【20年度 名目総生産 3兆 600億円(2.4%減)】〜

電気・ガス・水道業(0.8%減)

 生産額の約7割を占める電気事業において、発電用燃料価格の下落があったものの、県内発電電力量も減少したこ となどから、電気・ガ ス・水道業全体では 0.8%の減少となった。

卸売・小売業(6.2%減)

 卸売業は、金属・金属材料の販売額が減少し、生産額は 11.5%の減少となった。小売業は、自動車等の販売額が増加したことなどから、生産額は 3.8%の増加となった。
 これらの結果、卸売・小売業全体では 6.2%の減少となった。

金融・保険業(1.6%増)

 金融業は、銀行では県内受取利子が減少した一方で受取手数料がほぼ前年度並みであったことから微減であったが、 その他金融機関での有価証券受取利子の減少などから 3.1%の減少となった。保険業は、民間生命保険や損害保険の保険料等収入の回復などから 12.9%の増加となった。
 これらの結果、金融・保険業全体では 1.6%の増加となった。

不動産業(1.4%増)

 生産額の約9割を占める住宅賃貸業(持ち家の帰属家賃を含む。)が、平均家賃及び住宅床面積の増加などにより、不動産業全体で 1.4%の増加となった。

● 帰属家賃
 持ち家について、借家や貸間と同様のサービスが生産されるものと仮 定 し、それを市場家賃で評価したもの

運輸・通信業(8.0%減)

 運輸業は、道路貨物業や水運業の減などにより 12.2%の減少、一方、通信業は、費用の減少などにより 1.8%の増加となった。
  これらの結果、運輸・通信業全体では 8.0%の減少となった。

サービス業(3.6%減)

 公共サービス は、医療、介護が増加して 4.4%の増加となった。対 事業所サービスは、自動車・機械修理業が増加したものの、その他の対事業所サービス業の減少などにより 9.6%の減少、対個人サービスは、旅館、その他の対個人サービスなど全般的に減少したことなどにより 2.5%の減少となった。
  これらの結果、サービス業全体では 3.6%の減少となった。


図4 サービス業の総生産額の推移(名目)


● 公共サービス
教育 研究 医療・保健衛生、介護 その他の公共サービス

● 対事業所サービス
広告業 物品賃貸業 自動車・機械修理業 その他の対事業所サービス 業

● 対個人サービス
娯楽業 放送業 飲食店 旅館 洗濯・理容・浴場業 その他の対個人 サービス業


4 県民所得(分配)(名目)

【県民雇用者報酬 6.3%減、財産所得 7.1%減、企業所得 27.2%減、全体で 11.8%減   1人当たり県 民 所得は 2,638千円、11.4%減】

 平成21年度の県民所得は、11.8%減の 2兆 8899億円となった。
 これは、厳しい経済状況の影響などを受けて、県民雇用者報酬が 6.3%の減少、財産所得が 7.1%の減少、企業所得が 27.2%の減少と、いずれも減少したことによる。
 この結果、県民所得(名目)を県人口で割った1人当たり県民所得は、11.4%減 の 2,638千円となった。


表4 県民所得(分配:名目)



表5 1人当たり県(国)民所得の推移



●1人 当たり県民所得
 県民所得を総人口で割って求める。県民所得には企業所得も含まれる ため、必ずしも個人の賃金・生活水準を示すものではない。


図5 県民所得金額(名目)の推移


図6 県民所得伸び率(名目)の推移



(1)県民雇用者報酬         〜  6.3%減 (20年度 1.4%減) 〜

 県民雇用者報酬全体の8割超を占める賃金・俸給において、構成比の大きい産業ではサービス業が雇用者数の増加により前年度比 0.6%増加したものの、その他の産業では賃金の低下や雇用者数の減少などにより製造業が18.2%の減少、卸売・小売業が 0.7%の減少、政府サービスが 4.1%の減少、建設業が 5.8%の減少となった。
  これらのことから、県民雇用者報酬全体では 6.3%の減少となった。

(2)財産所得         〜  7.1%減 (20年度 28.3%減) 〜

 家計部門で定期預金金利の低下などから預金受取利子が減少、また、一般 政府も受取利子が減少したことなどから、財産所得全体では 7.1%の減少となった。

(3)企業所得         〜  27.2%減 (20年度 13.3%減)  〜

 民間法人企業所得が、景気後退の影響を受けた製造業など非金融法人企業で大きく減少し、企業所得全体では 27.2%の減少となった。



5 県内総生産(支出側)(名目)


【民間最終消費支出 1.5%減、政府最終消費支出 0.1%減、県内総資本形成 19.2%減、全体で 8.9%減】

  平成21年度の県内総生産(支出側)は、4兆 966億円となった。


表6 県内総生産(支出側、名目)



図7 県内総生産(支出側、名目)の推移


図8 県内総生産(支出側、名目)の増加率の推移


(1)民間最終消費支出     〜   名目 1.5%減 (20年度 0.7%減)  〜

 民間最終消費支出は、2兆 1679億円、1.5%の減少となった。これは、民間最終消費支出の大部分を占める家計最終 消費支出において、住居費、保健医療費が増加したものの、食料費、交通・通信費などが減少したことなどによる。

(2)政府最終消費支出     〜  名目 0.1%減 (20年度 0.2%増)  〜

 政府最終消費支出は、8497億円、0.1%の減少となった。


(3)総資本形成     〜  名目 19.2%減 (20年度 4.7%減)  〜

 総資本形成は、8242億円、19.2%の減少となった。これは、公的部門が北陸新幹線整備事業などにより増加したものの、民間部門が住宅や企業設備投 資の 減などから減少したことによ る。


(4)財貨・サービスの移出・移入    〜  移出 名目 17.1%減、 移入 名目 10.1%減  〜

 移出は、2兆 8439億円、17.1%の減少となった。
 移入は、2兆 7689億円、10.1%の減少となった。
 なお、移出から移入を差し引いた純移出は、750億円(78.6%減)の移出超過となっている。


図9 県民経済計算の概念と相互関連図