統計情報ライブラリー/経済県民経 済計算
平成20年度富山県民経済計算の概要  
 県民経済計算とは、本県の1年間の経済活動の結果を、生産・分配・支出の三面から 総合的・体系的にとらえ、県経済の規模や成長率、さらには産業構造などを明らかにしたものである。


1 日本経済の概況

 平成20年度の日本経済は、前半はアメリカを中心とする金融不安、景気の減速、原 油・原材料価格の高騰などから緩やかな景気の弱まりを示した。その後、9月に発生したリーマン・ブラザーズ証券の経営破綻を発端とした世界 的な金融危機により世界同時不況と呼ぶべき事態に陥ると、外需が大幅に減少し企業部門は急速に悪化した。さらにこの企業部門の悪化が賃金の低下などにより 家計の状況を悪化さ せ、個人消費や住宅投資も減少した。
 この結果、平成20年度の国内総生産は名目で 494兆 1987億円、実質で 541兆 4944億円となり、対前年度経済成長率は名目で 4.2%減、実質で 3.7%減となった。


2 富山県経済の概況

 平成20年度の県内総生産は名目で 4兆 4964億円、実質で 4兆 9672億円と な り、対前年度経済成長率は、名目で 4.0%減(前年度 0.2%減)、実質で 3.4%減(前年度 0.4%増)と名目、実質ともに前年に比して減少した。
 これは主力産業である製造業が、一次金属、化学が堅調であった一方で、電気機械、金属製品、一般機械が大きく減少したことから、12.4%と大幅減となったこと等による。
 また、県民雇用者報酬と財産所得と企業所得を合算した県民所得は 3兆 2474億円(前年度比 6.7%減)となり、1人当たり県民所得 は 2,949千円(同6.3%減)となった。


図1 経済成長率の推移



表1 富山県及び国の状況



3 県内総生産(生産側) (名目、実質)

【製造業 名目 12.4%減(実質 11.0%減)、建設業 名目 2.1%増(実質 0.8%増)、電気・ガス・水道業 名目 10.0%減(実質 9.0%減)、全体で 名目 4.0%減(実質 3.4%減)】

●県(国)内総生産
  一 定期間における県(国)内での財・サービスの生産活動により新たに生み出された価値(付加価値)の総額であり、次の式により求める。
県 (国)内総生産=産出額(売上総額)−中間投入額(原材料費、燃料費など)

●名目値と実質値
  市場で実際に取引されている価格で計算した総生産を「名目県(国)内総生産」といい、その増加率を名目経済成長率という。また、物価変動の影響を排除した 総生産を「実質県(国)内総生産」といい、その増加率を実質経済成長率という。
  経済成長率は、通常、対前年(度)比、あるいは対前期(四半期)比で示される。


表2 経済活動別県内総生産(名目)


●固定基準年方式と連鎖方式
  固定基準年方式とは、実質県(国)内総生産を計算する場合、基準年を固定し、その年の価格をベースに計算する方式のこと。
  この方式では、基準年から離れるにつれ、経済の実態と乖離するデメリットがある。
 これに対し、連鎖方式とは、基準年を常に前年において計算する方式で、この計算方式により乖離を小さくすることができる。
  県民経済計算では、従来、県内総生産の支出側のみ固定基準年方式により実質化していたが、平成16年度推計から県内総生産の生産側も連鎖方式により実質化 している。
  なお、連鎖方式では加法整合性が成立しない(各項目の集計と合計が一致しない)ため、「開差」欄を設けて差額を表示している。


表3 経済活動別県内総生産(実質:連鎖方式)



図2 経済成長率の産業別 寄与度(名目)


(1)第1次産業  〜名目総生産 562億円(11.1%増)【19年度 名目総生産 506億円(10.5%減)】〜

農 業(13.2%増)

 産出額の6割以上を占める基幹作物である米は、作況指数が103の「やや良」となり、さらに価格も上昇したこ と、また、畜産で鶏卵価格が上昇したことなどにより、農業全体では 13.2%増となった。

林 業(9.3%減)

 木材生産の生産量の減少や中間投入比率の上昇などから林業全体では 9.3%減となった。

水産業(9.0%増)

 産出額の大部分を占める海面漁業において、漁獲量、産出額ともに増加したこ となどから、水産業全体では 9.0%増となった。


(2)第2次産 業  〜名目総生産 1兆 4787億円(10.1%減)【19年度 名目総生産 1兆 6457億円(1.8%減)】〜

鉱 業 (8.4%減)

 生産額の約8割を占める土石業において陸砂利の採取量が減少し、また、砕石業も生産額が減少したことから、鉱業全体では 8.4%減となった。

製造業(12.4%減)

 化学は、中心となる医薬品が前年度と同水準、また、一次金属は、非鉄金属が中間投入額が減少したことなどから 3.0%増となったが、電気機械が集積回路の価格低下などにより 19.4 %減、金属製品が住宅用アルミ建材の需要減などにより 31.9%減、一般機械が自動車向けの受注減などにより 25.8%減と大きく減少した。
 これらの結果から製造業全体では、12.4%減となった。


図3 製造業の中分類別 総生産額の推移 (名目)



建設業(2.1%増)

 民間建築工事は、新設住宅着工戸数の減少の影響から昨年に引き続き減少したが、公共土木工事が、北陸新幹線整備事業や入善高波被害の災害復旧事業などに より 増加したことから、建設業全体では 2.1%増となった。


(3)第3次産 業  〜名目総生産 3兆 925億円(1.6%減)【19年度 名目総生産 3兆 1424億円(1.2%増)】〜

電気・ガス・水道業(10.0%減)

 生産額の約7割を占める電気事業において、県内発電電力量が減少し、さらに石炭及び原油価格の上昇により中間投入額が増加したことなどから、電気・ガ ス・水道業全体では 10.0%減となった。

卸売・小売業(5.0%増)

 卸売業は、販売額が減少したもののマージン率の上昇等により生産額は 2.6%増となった。小売業もマージン率の上昇等により生産額が 7.2%増となり、この結果、卸売・小売業全体では 5.0%増となった。

金融・保険業(21.1%減)

 金融業は、資金運用利回りの低下等から利ざやが縮小し、また証券会社では株価の下落から手数料収入が減少するなどしたことから、17.1%減となった。 また、保険業は、財産運用純益の減少などから 29.7%減となった。この結果、金融・保険業全体では 21.1%減となった。

不動産業(1.6%増)

 生産額 の約9割を占める住宅賃貸業(持ち家の帰属家賃を含む。)が、平均家賃及び住宅床面積の増加により生産額が 1.4%増となったことなどから、不動産業全体では 1.6%増となった。

● 帰属家賃
持ち家について、借家や貸間と同様のサービスが生産されるものと仮定 し、それを市場家賃で評価したもの

運輸・通信業(3.2%減)

 運輸業は、道路貨物業、水運業が減少したことなどにより 4.9%減、通信業は、電信電話業の増加により 1.1%増となった。この結果、運輸・通信業全体では 3.2%減となった。

サービス業(0.0%減)

 公共サービス は、介護保険の増加などにより医療・保健衛生、介護が増加したが、その他公共サービスが減少したことなどにより 0.7%減となった。対 事業所サービスは、その他の対事業所サービス業の増加などにより 0.9%増加、対個人サービスは娯楽業の減少などにより 0.7%減少し、この結果、サービス業全体では 0.0%減となった。


図4 サービス業の総生産額の推移(名目)


● 公共サービス
教育 研究 医療・保健衛生、介護 その他の公共サービス

● 対事業所サービス

広告業 物品賃貸業 自動車・機械修理業 その他の対事業所サービス 業

● 対個人サービス

娯楽業 放送業 飲食店 旅館 洗濯・理容・浴場業 その他の対個人 サービス業
   



4 県民所得(分配)(名目)


【県民雇用者報酬 1.9%減、財産所得 34.6%減、企業所得 15.1%減、全体で 6.7%減   1人当たり県民 所得は 2,949千円、6.3%減】

 平成20年度の県民所得は、6.7%減の 3兆 2474億円となった。
 これは、景気の急速な悪化などの影響を受けて、県民雇用者報酬が 1.9%減、財産所得が 34.6%減、企業所得が 15.1%減といずれも減少したことによる。
 この結果、県民所得(名目)を県人口で割った1人当たり県民所得は、6.3%減の 2,949千円となった。


表4 県民所得(分配:名目)



表5 1人当たり県(国)民所得の推移



●1人 当たり県民所得
 県民所得を総人口で割って求める。県民所得には企業所得も含まれ るため、必ずしも個人の賃金・生活水準を示すものではない。


図5 県民所得の推移(名目)



図6 県民所得の増加率の推移(名目)


(1)県民雇用者報酬         〜  1.9%減 (19年度 0.5%増) 〜

 県民雇用者報酬全体の8割超を占める賃金・俸給において、建設業、卸売・小売業、政府サービスなどで賃金が低下したこと、及び退職一時金の減少などから 雇主の帰属社会負担が減少したことなどにより、全体では 1.9%減となった。

(2)財産所得         〜  34.6%減 (19年度 13.1%減) 〜

 家計部門で金利の低下や株価の下落などから受取利子、受取配当が減少した。また、一般 政府も受取利子が減少したことから、受取から支払を差し引いた財産所得全体では 34.6%減となった。

(3)企業所得         〜  15.1%減 (19年度 3.3%増)  〜

 民間法人企業所得が 20.1%減、個人企業所得が 5.8%減となり、全体では 15.1%減となった。



5 県内総生産(支出側、名目)


【民間最終消費支出 名目 1.4%減、県内総資本形成 名目 2.1%減】

  平成20年度の県内総生産(支出側)は、名目で 4兆 4964億円となった。


表6 県内総生産(支出側、名目)



図7 県内総生産(支出側、名目)の推移


図8 県内総生産(支出側、名目)の増加率の推移


(1)民間最終消費支出     〜   名目 1.4%減 (19年度 1.3%増)  〜

 民間最終消費支出は、名目で 2兆 1590億円、1.4%減となった。これは、民間最終消費支出の大部分を占める家計最終 消費支出において、住居費、教養娯楽費が増加したものの、交通・通信費などが減少したことなどによる。

(2)政府最終消費支出     〜  名目 0.7%増 (19年度 1.6%増)  〜

 政府最終消費支出は、名目で 8655億円、0.7%増となった。


(3)総資本形成     〜  名目 2.1%減 (19年度 1.0%減)  〜

 総資本形成は、名目で 1兆 457億円、2.1%減となった。これは、公的部門が北陸新幹線整備事業などにより増加したものの、民間部門が住宅投資の減などから減少したことによる。


(4)財貨・サービスの移出・移入    〜  移出 名目 9.5%減、 移入 名目 3.7%減  〜

 移出は、名目で 3兆 4346億円、9.5%減となった。
 移入は、名目で 3兆 847億円、3.7%減となった。
 なお、移出から移入を差し引いた純移出は、3500億円(40.9%減)の移出超過となっている。


図9 県民経済計算の概念と相互関連図