特集

富山県における健康課題と健康づくり施策の取組みについて
−健康寿命日本一の実現を目指して−

富山県 厚生部 健康課

 

1 はじめに


図表

少子高齢化、人口減少社会を迎えるにあたり、本県においては、県民一人ひとりが平均寿命はもちろん、健康で過ごすことができる期間をできる限り長く保つことが大変重要になります。

こうした中、富山県民の健康寿命については、平成25年時点において、男性が70.95歳(全国31位)、女性が74.76歳(同14位)となっており、平均寿命との間に男性で9年、女性で12年ほど差があります。生活習慣病は、個人の生活の質を低下させるだけではなく、医療費の増大を招き、働く世代の負担増にもつながることから、社会全体の問題として健康づくりに取り組んでいく必要があります。

2 富山県の現状と課題


(1)現状

近年、がんや心疾患、脳血管疾患など生活習慣病の増大が大きな問題となっており、本県の死因別死亡割合についても、全体の過半数となる50.5%の方が生活習慣病で亡くなられている状況となっています。特に、本県の死因別年齢調整死亡率(人口10万対)の全国順位では、「胃がん」が男性3位、女性2位となっているほか、「脳血管疾患」が男性12位、女性17位となっています。

県ではこうした生活習慣病を予防するため、塩分摂取の抑制や野菜摂取の促進などの食生活改善、ウォーキング等の運動習慣の定着など望ましい生活習慣・健康づくりを推進し、県民一人ひとりの「健康寿命の延伸」を目指していく必要があると考えています。

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図表

(2)課題

県では、本年3月、県民の健康増進の推進に関する基本的な方向や目標を設定している「富山県健康増進計画(第2次)」(平成25年度に策定)の中間評価を行いました。

この評価対象のうち、「栄養・食生活」や「身体活動・運動」など生活習慣に関する主要項目については、特に20代から50代の働き盛り世代における数値を中心に、計画策定時のベースライン値となる平成22年の調査結果より数値が悪化しているものや、改善はしているものの目標達成のためにはさらなる取組みの推進が必要であるものがあります。


(1日あたりの野菜摂取量)

全国的にはこの10年間で男女とも有意に減少(悪化)している中、本県においても同様に減少(悪化)しています。また、男女とも目標値となる350gに対してそれぞれ男性で55.5g、女性81.9g不足しています。なお、男女とも特に20代から40代の働き盛り世代において不足しています。


(1日あたりの食塩摂取量)

全国的にはこの10年間で男女とも有意に減少(改善)している中、本県においても同様に減少(改善)しています。しかしながら、男女とも目標値となる男性8.0g、女性7.0gに対してそれぞれ男性で3.0g、女性2.1gのさらなる減少が必要となります。

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図表
(1日あたりの歩行数、運動習慣者の割合)

歩行数については、全国的にはこの10年間で男女とも有意な増減は見られない中、本県においては、男女とも減少(悪化)しています。

また、運動習慣者の割合については、全国的にはこの10年間で男性では有意な増減はなく、女性では減少傾向となっている中、本県においては、男女とも増加(改善)しています。しかしながら、特に女性において、目標値となる35%に対し、7.4%の増加(改善)が必要となります。なお、運動習慣者の割合については、野菜摂取量と同様、男女とも特に20代から40代の働き盛り世代において不足しています。

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図表

3 本県の健康寿命の延伸に向けた取組み


(1)社会全体で健康づくりに取り組む機運の醸成

図表

県では、平成28年度から、経済団体をはじめ学識経験者、医療保険者、医療関係者、健康づくりの関係団体、地域や学校、行政の代表者で構成する「富山県健康寿命日本一推進会議」を設置し、地域だけでなく職場も含めた社会全体で健康づくりに取り組む機運の醸成に取り組んでいます。

また、塩分摂取の抑制や野菜摂取の推進といった食生活の改善やウォーキング等の運動習慣の定着など、県民一人ひとりの望ましい生活習慣の確立に向けた県民運動にも積極的に取り組んでいます。



(2)食生活改善に向けた取組み

図表

富山県では、家庭における野菜摂取を促進するため、8月31日の「野菜の日」を中心に、県内494箇所のスーパーやコンビニ、八百屋等にご協力いただき、「野菜をもう一皿!食べようキャンペーン」を展開しています。

また、外食時における食の健康づくりを支援するため、161店舗の県内飲食店にご協力いただき、野菜たっぷりメニューや減塩メニュー、シニア向けメニューなどを提供する「健康寿命日本一応援店」を募集し、月刊情報誌においてPRを展開しています。

また、富山県パン・学校給食米飯共同組合にご協力いただき、平成28年4月から県内すべての小中学校において、給食パンを15%減塩化し、幼少期からの食の健康づくりにも取り組んでいます。



(3)運動習慣の定着に向けた取組み

図表

県では、毎年、「富山県民歩こう運動推進大会」などのウォーキングイベントを開催し、県民一人ひとりの運動習慣の定着に向けた機会づくりを行っています。また、平成26年度からは、生活習慣病の重症化予防に対する取り組みとして、1泊2日の「健康合宿」を開催しており、平成28年度においては県内6ヶ所で153名の方々にご参加いただきました。

このほか、スマートフォンを活用して楽しみながら健康づくりに取り組む健康ポイント制度(元気とやま かがやきウォーク)の実施や、ウェアラブル端末(IoT端末)を活用し、企業チームの対抗戦として「100日健康運動会」を実施し、25社235名の社員の方々にご参加いただくなど、主に働き盛りの世代に対する新たな事業にも積極的に取り組んでいます。

また、県薬剤師会にご協力いただき、地域の薬局を活用して健康相談を実施する「元気とやま健康ステーション」を設置することや、様々な企業とも連携協力するなど、社会全体で健康づくりを推進する機運の醸成を進めています。

4 「健康経営」の普及に向けて
−企業の「働き方改革」の推進とあわせて−


図表

昨今、企業における労働生産性・価値向上の観点から、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する「健康経営」の普及が進んでおり、各企業においては、医療保険者等と連携し、従業員の健康管理をこれまで以上に行うことが求められています。

こうした中、県では、平成26年度から、従業員に対する健康づくりに関して先導的な取り組みをしている企業に対する顕彰制度として、「のばそう健康寿命!企業大賞」を設けており、これまで18社の県内企業が受賞されております。


図表

また、県では、職場における健康づくりを推進するため、全国健康保険協会富山支部を中心に、健康保険組合連合会富山連合会、本県で構成する「健康企業宣言富山推進協議会」を平成29年6月に設立したところであり、社員の健康診断受診率の向上や生活習慣病予防などに取り組む「とやま健康企業宣言」に参加する企業は162社となっています。

このほか、昨年12月21日には、「とやま健康経営シンポジウム」を開催し、約150名の県内企業の経営層の方々にお集まりいただき、企業における「健康経営」の導入に向けた理解を深める場となりました。


とりわけ、平成29年9月特集記事でも取り上げられた「働き方改革」とは、長時間労働対策、ワークエンゲイジメントの向上、病気の治療と仕事の両立支援など共通する項目が多く、「健康経営」の推進と併行して、それぞれ連携し普及啓発していくことも期待されています。

こうしたことを踏まえ、今後とも、企業における「健康経営」の普及支援に取り組んでいくなど、地域だけでなく職域における健康づくりにもさらに取り組んでいただけるよう支援していきたいと考えています。

5 おわりに


個人のライフスタイルが多様化する中、県民一人ひとりの健康づくりの実践は、一朝一夕で成果に繋がるものではなく、毎日の積み重ねがとても大切となります。

県民の皆様におかれましては、日頃から食生活に「野菜をもう一皿!」食べることや、あと2,000歩(20分)多く歩くよう心がけていただくなど、できることから取り組んでいただき、いつまでもいきいきと健康で長生きしていただけるよう支援していきたいと考えています。

本年3月9日に厚生労働省が公表した2016年(H28)の富山県の健康寿命は、男性72.58歳(全国8位)、女性75.77歳(同4位)となりました。
とやま経済月報
平成30年4月号