特集

富山県美術館の開館について

富山県 生活環境文化部 文化振興課

 

1 はじめに


富山県美術館は、3月25日(土)の一部開館以来、3ヶ月余で37万人を超える方々にお越しいただいております。8月26日(土)に全面開館し、「アートとデザインをつなぐ美術館」を目指す富山県美術館についてご紹介いたします。

2 移転新築の経緯


移転新築前の富山県立近代美術館は、世界に誇れる20世紀美術コレクションや、ポスター、椅子といったデザインコレクションにより高い評価を受けていた一方、かねてから、「非常に入りにくい」、「中心市街地から離れている」、「世界的な名画を十分に活かしきれていない」などの声がありました。

また、耐震性の不足や、展示室の消火設備がスプリンクラーで万一誤作動した場合には美術品に甚大な被害が生じること、空調設備が24時間空調を行っていないことなどから美術品の保全に適しておらず、美術品政府補償制度に対応できないため、美術館連携から孤立する恐れがありました。

このため、「県立文化施設・整備充実検討委員会」からの提言を受け、富山駅に近く、景観や水防の面からも適地である富岩運河環水公園西地区に移転新築することとしました。

3 富山県美術館の特徴


(1)アートとデザインをつなぐ美術館

富山県美術館の前身である、昨年12月に閉館した県立近代美術館は、20世紀美術の流れを展望する美術館を目指し、優れた20世紀美術のコレクションの収集・展示に努めるとともに、デザインの重要性をいち早く認め、「ポスター」と「椅子」を収集し、デザインの企画展を開催してきました。

富山県美術館は、この近代美術館の開館当初からの理念を継承し、発展させるとともに、デザインの視点を積極的に取り入れ、美術とデザインとの関係を見直し、両者をつなぐ場とすることを目指しています。

そこで、美術館の名称については、県の美術の拠点であるとともに、将来を見据え、時代の変化に対応でき、様々な展開が可能なものとして、「富山県美術館」としました。


(2)建物そのものも魅力のひとつ

世界有数の20世紀美術コレクションや、世界5大ポスター展のひとつに数えられる「世界ポスタートリエンナーレトヤマ」の開催による1万3千点を超えるポスターコレクションといった、アートやデザインの特徴に加え、富山県美術館は、その建築も大きな魅力のひとつとなっています。

富岩運河環水公園に向かって大きく開かれた建物のファサード(前面部)は、全面ガラス張りでどのフロアからも環水公園と立山連峰の美しい眺めが楽しめます。また、建物のいたるところに、県産材やアルミなどの県産素材が美しく使用されています。

建物外観
3階から環水公園や立山連峰を望む

また、屋上は、美術館が建設される前にこの地にあった「見晴らしの丘」同様、子ども達が遊べる公園として整備しました。見晴らしの丘で大人気だった「ふわふわドーム」をはじめ、グラフィックデザイナーの佐藤卓氏が、擬音語・擬態語を表す「オノマトペ」から発想したオリジナル遊具が並びます。


富山県美術館の内部は、次のとおりです。美術品を鑑賞するだけでなく、創作活動や体を使ったアートを体験できるほか、公園に遊びに行く感覚で気軽に利用できるレストランやカフェなども備えています。

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4 美術館活動について


(1)展覧会

富山県美術館では、県立近代美術館から受け継いだ20世紀美術の貴重なコレクションを「守り、活かし、伝える」よう、展示方法に工夫を凝らし、コレクションのメイン作品を中心に紹介するハイライト展示や、テーマ性を持たせた常設展示など、新しい切り口やテーマ、見せ方で紹介するなど、来館ごとに何かを発見してもらえるような企画を展開することとしています。

また、企画展については、20世紀美術を中心とした展覧会はもちろん、アートやデザインを感じられる様々な企画展を年間6本を基本として開催することとしています。今年度の展覧会のラインナップは、次のとおりです。

<29年度展覧会予定>
【開館記念展Part1】

生命と美の物語LIFE−楽園を求めて

8月26日(土)〜11月5日(日)

古来より、多くの美術作品が「生命(LIFE)」をテーマに生み出されてきました。私たちにもっとも身近で切実な「生命」は、古今東西の芸術家たちにとっても大きな関心事であり続け、作品を通してその本質を明らかにしようとしてきました。本展は、富山県美術館の開館記念展の第一弾として、美術の根源的なテーマである「生命」を「すばらしい世界=楽園」と捉え、国内外の作品に館蔵品を加えた8つの章により構成し紹介します。

【開館記念展Part2】

素材と対話するアートとデザイン

11月16日(木)〜2018年1月8日(祝・月)

木や金属といった工芸の領域で用いられてきたオーソドックスな素材。そこに最先端の技術や新しい解釈が与えられ、あるいは移り変わる社会や暮らしに応えていく中で、素材は技との結びつきとしての工芸だけでなく、デザインやアートの領域をも縦断する表情を見せます。本展では、木や金属から新素材まで、素材とその変容を、4つのセクションを通して、様々な素材が放つ魅力、素材に触発されて生まれる造形の世界を紹介します。

国際北陸工芸サミット「ワールド工芸 100選」

11月16日(木)〜2018年1月8日(祝・月)

文化庁と工芸の一大産地の一つである北陸三県が協力し、KOGEI文化の魅力を世界に発信する広域的な催し「国際北陸工芸サミット」が開催されます。富山県美術館では、国内外から選抜された国際的な工芸作品と併せて「U-50 国際北陸工芸アワード」で選抜された作品を展示するほか、シンポジウム等が開催されます。

START☆みんなのミュージアム

2018年1月20日(土)〜3月4日(日)

学校(School)×富山(Toyama)×アート(ART)=“START”。富山県内の小・中・高・特別支援学校の協力のもと、学校の児童生徒のみなさんが主役の展覧会が「スタート」します。学校と現代アーティストのコラボレーションによる作品展示や、富山密着型のワークショップなど、この冬の富山県美術館にはアートを体感できるしかけがいっぱい。こどももおとなも先生たちも、めざせ☆美術館のスター!

【開館記念展Part3】

デザインあ展

2018年3月21日(祝・水)〜5月中旬(予定)

NHK Eテレで放送中の番組「デザインあ」の展覧会。人と人、人とモノをよりよくつなぐデザインの力に注目し、こどもたちの「デザインマインド」を育むというねらいに基づく、触ったり参加できる体験型作品約30点を展示する予定です。ディレクションや作品制作には、「デザインあ」で総合指導を行なう佐藤卓氏をはじめ、中村勇吾氏、小山田圭吾氏(コーネリアス)ほか、トップクリエーターたちが集結。「見る」「考える」「つくる」ことの豊かさを体感してください。

(2)教育普及活動

富山県美術館では、県立近代美術館にはなかったワークショップ(体験型講座)を開催できるアトリエや、そのワークショップで創作した作品を展示できるギャラリーが整備されています。

こうした新しい機能や、県立近代美術館で培ってきた学校と連携した取組みのノウハウを活かしつつ、また、県内外の作家や大学等の教育機関など幅広い方々と連携・協力を図りながら、親子向けのワークショップや学校単位での団体鑑賞や実技講座などを開催することとしています。特に、県内の小学校5年生を美術館へ招待し、作品を見ながら学芸員等と対話し、その後創作体験を行う、美術館へおいでよ事業にも取り組むこととしています。

アトリエでは、いつでも誰でも気軽に創作を楽しめる講座もあり、気軽に「来て、見て、感じて、つくる」を体験していただきたいと考えています。

今年度のワークショップの予定は、次のとおりです。

<当面のワークショップの予定>
【オープンラボ】
<土・日・祝日のプログラム>
パッとこっぱで動物をつくろう〜スタンディング・アニマルズの世界〜
こっぱ(木の切れはし)を組み合わせて“立つ”動物をつくります。
期間:8月20日(日)まで 場所:3階ラボ(アトリエ内)
対象:どなたでも自由参加(小3以下保護者同伴)
定員:一度に8組まで ※会場が混雑している場合は入場制限あり。
参加費:無料
受付時間:10時〜11時30分/14時〜15時30分
<平日のプログラム>
タングラムで動物あそび
多角形に切り取られた名画カードを組み合わせて、動物をつくります。
期間:8月22日(火)まで10時〜16時 場所:3階ラボ(アトリエ内)
対象:どなたでも自由参加(小3以下保護者同伴)
参加費:無料
※ オープンラボのお休み:7月8日、15日、16日、29日、9月5日
【TADワークショップ(子ども向け)】 【要事前申込み】
中島佑太さんの富山県美術館で行く!見えない旅準備室
美術館内を楽しむ『見えない旅』を計画してみよう。
日時:7月29日(土)10時〜15時 場所:3階アトリエ
対象:旅に関心があり、どこか冒険に出たくてウズウズしている人(小学生以上)
定員:25名(定員に達し次第締め切り) 参加費:無料
申込方法:電話(076−431−2711)かファックス(076−431−2712)にて先着順
【公開制作】
折元立身さんのアーティスト@TAD
国内外で活躍するコンテンポラリーアーティストの折元立身さんが公開制作を行います。完成後はギャラリーで展示されます。
滞在制作期間:8月23日(水)〜25日(金)
滞在制作場所:3階アトリエ(但し、23日は屋上庭園(雨天時中止))
展示期間:8月26日(土)〜9月18日(月・祝)
展示場所:TADギャラリー
お問い合わせ先
 富山県美術館
 〒930‐0806 富山県富山市木場町3−20
  TEL 076‐431‐2711
  FAX 076‐431‐2712

※TAD(タッド)について
富山県美術館 Toyama Prefectural Museum of Art and Design:TAD
ToyamaのT、ArtのA、DesignのDをとり、TAD(タッド)と略称しています。

とやま経済月報
平成29年7月号
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