特集

地域商業の活性化と魅力あるまちづくりの推進について

富山県 商工労働部 商業まちづくり課

 

1 はじめに


平成27年3月の北陸新幹線開業により、観光・交流人口が拡大し、地域を超えての消費行動が活発になりました。一方、郊外居住化、商業・公共施設等の郊外移転、大型店の郊外出店などにより、中心市街地やまちなかの空洞化が進む中、賑わいと魅力あるまちづくりを進めていくことが重要です。

そこで、中心市街地や県内商業の現状と課題、中心市街地や地域の商店街の活性化に向けた県の施策について紹介します。

2 データからみる中心市街地・県内商業の現状


(1)小売店舗の立地場所の変化

従来、中心市街地は、地域の活力や個性を代表する「まちの顔」となっていましたが、近年の車社会の進展や郊外化、さらに、本格的な少子高齢化・人口減少社会の到来や景気の低迷等により、中心市街地の空洞化や衰退が課題となっています。県内の商業集積地区のうち、駅周辺型や市街地型は平成9年に比べ店舗数が約6割、ロードサイド型においても約2割減少しており、商業集積自体が失われつつあります。

※県内の小売店舗のうち商業集積地区に立地する店舗について、立地場所の類型別に店舗数を指数化し推移をまとめたもの

駅周辺型
駅周辺に立地する商業集積地区をいう
市街地型
都市の中心部(駅周辺部を除く)にある繁華街やオフィス街に立地する商業集積地区をいう
住宅地背景型
住宅地又は住宅団地を後背地として、主にそれらに居住する人々が消費者である商業集積地区をいう
ロードサイド型
主要道路の沿線を中心に立地している商業集積地区をいう
資料
商業統計(経済産業省)
(2)県内の人口集中地区の推移

市街地の広がりを示すものさしとして、人口集中地区※1という指標が用いられています。これによると、県内の人口集中地区(DID)の面積は昭和35年(1960年)に39km2だったのが、平成22年(2010年)には105km2に増加する一方、人口密度は8,342人/km2から3,864人/km2と半分以下に減少しており、県内の市街地が薄く広がっていることが分かります。

*1 人口集中地区(DID):Densely Inhabited District
国勢調査における人口密度4,000人/kuで5,000人以上が集まる地域

(3)中心市街地の歩行者通行量の推移(富山市:休日、高岡市:平日・休日)

富山市、高岡市の中心市街地における歩行者通行量は、横ばいまたは減少傾向にあるものの、北陸新幹線の開業により持ち直しの動きがみられます。

なお、富山市、高岡市では、中心市街地活性化基本計画に基づき、魅力ある商業・業務施設やまちなか居住施設など新たな賑わい拠点の整備が進められています。

※図をクリックすると大きく表示されます

(4)
中心市街地に対する満足度等について(「新幹線開業等消費・商業影響調査・速報値」より)

今年度実施した「新幹線開業等消費・商業影響調査」では、地元商店街(中心市街地を含む)に対する県民(6,300人、有効回答率45.3%)の満足度について、約1割の人が「満足」「やや満足」とする一方で、約3割の人が「大いに不満」「やや不満」としました。不満の理由として、駐車場に関する不満のほか、「買いたい商品があまりない」「街に華やかさがない」などがあげられました。

(5)県内商業をとりまく環境変化について
① 北陸新幹線開業による買物行動の変化について

「新幹線開業等消費・商業影響調査」では、平成27年3月の北陸新幹線開業後、約6割の人が北陸新幹線を利用したと回答しました。

新幹線の利用目的について男女別にみると、どちらも「観光・レジャー」が過半数を占めており、女性のほうが男性に比べ、10ポイント程度高くなっています。また、「買物」・「コンサート・演奏会鑑賞」を目的とした利用では、女性が男性よりも5ポイント以上高くなっています。

新幹線開業による買物行動の変化を尋ねたところ、「変わらない」との回答が多いものの、「東京」、「長野・軽井沢」や「金沢」へ行く頻度が増えたとする割合が他の方面に比べて高くなっています。一方で、「関西方面」では、他の方面に比べ、行く頻度が減ったとする割合が高くなっています。

② インターネット通販サイトの利用について

通販サイトの利用頻度についてみると、5年前と比べ、10歳代から40歳代では約6割が増えたと回答しており、スマートフォンなど日常的にインターネットを利用する機会が多い世代で通販サイトの利用が浸透しています。今後も通販サイトの利用は拡大すると考えられます。

また、購入商品別にみると、「書籍・CD・DVD」が4割以上と最も多く、「日用雑貨」「婦人服」「家具・家電」も3割程度となっています。

新幹線開業やインターネット通販の普及などにより、消費者の買物行動や選択肢が今後さらに複雑化、多様化すると予想され、県内商業をとりまく環境は大きく変化しています。

3 県の具体的な施策


本県の総人口は、国立社会保障・人口問題研究所の推計方法による試算では、2060年には、64.6万人となると推計され、平成22年(2010年)の総人口(109.3万人)と比べ、約4割減少すると見込まれます。こうしたなか、人口減少社会に適応し、利便性が高く、機能的で持続可能な活力あるまちづくりを進める必要があります。

県では、中心市街地や地域の商店街において、地域住民のニーズに応じた商業機能の強化やサービスの提供、空き店舗を活用した開業促進など、商店街の魅力向上を図る取組みや賑わいのあるまちづくりを支援しています。以下、具体的な施策について紹介します。


【賑わい創出】
・がんばる商店街支援事業

自らの努力と工夫により商店街の活性化や、商店街の基盤整備、空き店舗活用事業、イベント実施などの取組みを行う商店街組合等を県と市町村が支援します。


・若手・女性商業者グループ元気プラン支援事業

商工団体の青年部や婦人部などが主導的に企画・実施する、先進的・実験的な商店街活動を県と市町村が支援します。


・外国人旅行者商店街おもてなし事業

県内の商店街における外国人向け多言語マップやPR用動画の作成など外国人受け入れ態勢整備にかかる取組みを実施する商店街組合等を県と市町村が支援します。


【コミュニティ機能】
・買い物サービス支援事業

中山間地等の買い物困難地域を対象に、複数事業者の連携により実施する、宅配サービスや移動販売などの買い物弱者対策に取り組む事業を県と市町村が支援します。


【空き店舗対策・まちづくり】
・商店街空き店舗出店支援モデル事業

地域における中心市街地に商業機能を集約し、効率的で暮らしやすいまちづくりを進めるため、商店街の空き店舗を活用し、生鮮食料品や日用雑貨店など住民ニーズの高い業種の出店に対し県と市町村が支援します。


・若者女性等まちなかオフィス応援モデル事業

中心市街地や商店街を含むまちなかの遊休資産(空き店舗)を活用したシェアオフィスなどを増やし、若者や女性、UIJターン者の開業を県と市町村が支援します。

4 おわりに


北陸新幹線の開業や2020年東京オリンピック開催などにより、交流人口が今後さらに増加すると見込まれる中、国内外から訪れる人にとって、中心市街地は、様々な都市機能が集積し、地域の活力を示す「まちの顔」となります。

商業者をはじめ、NPO、学生、地域住民など多様な主体が連携・協力し、地域商業の活性化や魅力あるまちづくりのための取組みを各種施策を通じて支援していきたいと考えています。

とやま経済月報
平成29年2月号