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平成25年度富山県民経済計算推計結果について

統計調査課 経済動態係

 

1 はじめに


富山県では、平成28年2月に平成25年度富山県民経済計算の推計結果を公表しました。ここでは、推計結果からみた平成25年度の本県経済の概況をご紹介するとともに、平成25年度推計において実施した統計表の一部変更点についても説明します。

2 富山県経済の概況


平成25年度の富山県経済の概況を前年度と比較した表1を見てみます。

表1

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表

平成25年度の本県の県内総生産は、名目で4兆3,566億円、実質では4兆6,580億円となりました。これは名目・実質ともに、国内総生産の約0.9%を占めています。

また、経済成長率については、名目で1.0%増、実質では0.9%増と、名目・実質ともに2年ぶりの増加となりました。

なお、県民経済計算では、平成25年度値の推計と併せて、平成13年度から24年度までの各年度値についても遡及して推計を行っています。


各年度の経済成長率と国の経済成長率を併せて時系列で示したものが図1です。

図1

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図

本県の経済成長率は、平成14年度から20年度までは概ね国の経済成長率と同じ動きを示していることがみてとれるかと思います。

なお、平成20年度に県・国ともに大きく落ち込んでいるのは、いわゆる「リーマンショック」によりもたらされた世界同時不況によるものです。翌平成21年度は、国は依然マイナス成長ではあったものの、景気は幾分回復傾向を見せていたのですが、本県経済は、さらに一段の落ち込みを示しています。

これは、本県産業における製造業の割合が高いことに加え、その内訳として電気機械、化学、一次金属、一般機械などリーマンショックの影響を大きく受けた分野の比率が高かったことに起因しているものと思われます。


その後、本県経済はV字回復し、翌22年度には名目値で4.6%、実質値では7.1%のプラス成長に、また、23年度も名目値で1.8%、実質値では3.2%のプラス成長となっています。

その反動で24年度の成長は減少し、僅かにマイナス成長となりましたが(名目値▲1.8%、実質値▲2.0%)、25年度は、主力産業である製造業において円安傾向が続いたものの、「海外経済減速」の影響の後退などもあって再びプラス成長となり、国に対して上下に振れ幅が大きかったここ数年の変化も、やや落ち着いてきたかのように思われます。


平成25年度の本県の県民所得は、3兆3,992億であり、2.9%の増加となりました。

この県民所得を、平成25年10月1日現在の県内の総人口(総務省『人口推計』)で除した「1人当たり県民所得」は315万9千円となり、3.6%の増加となりました。

「県民所得」というと、その名称から、よく「家計の所得」と誤解されがちなのですが、この「県民所得」とは、「個人の所得水準の豊かさ」を示すものではなく、むしろ「県の経済力」を示す指標であるということが言えるかと思います。

「1人当たり県民所得」は「県民所得」が多く人口の少ない県(人口が減少傾向にある県)で大きくなります。

3 経済活動別県内総生産(生産側)について


本県が公表する県民経済計算は、基本的に、基本勘定表3表、主要系列表7表、付表4表により構成されています。

各統計表は、本県のホームページ「とやま統計ワールド」でご覧いただけます。

http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/index2.html



ここでは、それぞれの経済活動毎にどれだけの付加価値(生産額)を生み出したかを示した表2「経済活動別県内総生産(名目)」から、平成25年度の各産業別の状況について見てみます。

表2

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表

(1)農業

農業の総生産額の約6割を占める基幹作物である米の作況指数が昨年度の「平年並み」から「やや良」となって収穫量は増加したものの、米価の下落などにより生産額が減少したことなどから、農業全体では17.6%の減少となりました。


(2)林業

林業の総生産額の約5割を占める育林業と約4割を占める栽培きのこ類などが増加したことなどから、林業全体では8.4%の増加となりました。


(3)水産業

水産業の総生産額の大部分を占める海面漁業において、いわし類、ぶり類などの漁獲量が増加したことなどから、水産業全体では22.3%の増加となりました。


(4)鉱業

採石業の大部分を占める陸砂利、山土砂採取数量が増加したことなどから、鉱業全体では20.1%の増加となりました。


(5)製造業

化学は、医薬品生産額、製造品出荷額がともに増加したものの、原材料使用額などの価格が上昇したことなどにより5.9%減少しました。電気機械は、電子部品の減少などにより4.5%減少しました。一般機械は、海外向け工作機械、自動車部品関連の需要増などにより14.9%増加しました。

金属製品は、住宅用アルミニウム製サッシ、建築用金属製品の増加などにより4.1%増加しました。非鉄金属は、アルミニウム再生地金やアルミニウム合金の増加などにより13.6%増加しました。鉄鋼は、自動車向けの減少などにより20.6%減少しました。

これらのことから、製造業全体では1.0%の増加となりました。


 

製造業を構成する産業毎の生産額について平成13年度からの推移を示したものが図2のグラフです。

図2

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図

図2をみると、富山県の産業は「製造業」に特化しており、特に、化学(主に医薬品)やアルミの生産額が多いのが特徴であるのが分かります。

4月に公表された平成26年度の「医薬品の生産額」では、富山県は4年連続で過去最高を更新して6,162億円となり、全国順位も前年の3位から順位を1つ上げ、平成19年以来5年ぶりに2位となっています。

これは、薬価の引下げなどの影響で、全国的には生産額が減少したものの、「ジェネリック医薬品」の生産が、国の使用促進策を追い風に増えたことが、本県の生産額を押し上げたものと思われます。


ちなみに、1位の埼玉県は6,417億円で、本県との差は約250億円となっています。

3位は大阪府で5,102億円、4位は前年2位の静岡県で4,834億円となっています。

本県の医薬品は、受託生産やジェネリック医薬品の生産が多いという特徴があり、他県に比べると機械設備が少なく、近年は従業員数も増加しているため、実は「労働生産性」が低いという意外な分析結果もあり、こうしたことも、今後は重要な課題になってくるかと思います。

また、アルミサッシの全国シェアは、37.8%で全国1位となっています。

アルミサッシは金属製品の分野に分類されていて、平成20年頃までは高い生産額で推移して、本県の製造業を牽引していましたが、近年では、その生産額は逓減傾向にあります。

このため、現在では、ジェネリック医薬品の「化学」、「半導体等の電子部品」を扱う「電気機械」、海外向けの生産機械等を扱う「一般機械」の分野が主に本県の製造業を牽引しています。

平成25年度の製造業の割合は25.3%となっており、全国的にはまだ高い方なのですが、かつては30%近くもあったことを考えると、その割合は、近年では緩やかな減少傾向にあります。


(6)建設業

建設業の総生産額の約4割を占める公共土木工事で道路工事、農林水産工事、治山治水工事がともに大きく増加するとともに、建設業の総生産額の約3割を占める民間建築工事において住宅関係の工事が増加したことなどから、建設業全体では11.7%の増加となりました。


(7)電気・ガス・水道業

電気・ガス・水道業の総生産額の約7割を占める電気事業において、県内火力発電量、県内水力発電量がともに増加したことなどから、電気・ガス・水道業全体では14.3%の増加となりました。

本県では、低廉で豊富な水力発電や工業用水、勤勉性に富む労働力などを背景に、工業立地が進み、最近では、県内各地でCO2排出量の削減効果も見込める小水力発電所が多数建設されるなど、県内の発電量の約6割が水力発電となっています。


(8)卸売・小売業

卸売業は、食料・飲料などの販売額が増加し、全体の販売額は増加したものの、卸売業全体のマージン率が下降したことから4.6%の減少となりました。

小売業は、小売業全体のマージン率が下降したものの、飲食料品、自動車などの販売額が増加したことから2.0%の増加となりました。

これらのことから、卸売・小売業全体では0.8%の減少となりました。


(9)金融・保険業

金融業は、受取手数料が増加したものの、低金利の影響などにより2.7%の減少となりました。保険業は、民間生命保険などが減少したものの、損害保険が大きく増加したことから、2.1%の増加となりました。

これらのことから、金融・保険業全体では0.2%の減少となりました。


(10)不動産業

不動産業の総生産額の大部分を占める住宅賃貸業(持ち家の帰属家賃(※)を含む。)において、住宅床面積が増加したものの、平均家賃が低下したことなどから、不動産業全体では1.1%の減少となりました。


(※)実際の住宅賃貸料だけでなく、個人が所有している住宅についても、所有者があたかもその住宅を賃借して借家や借間と同様のサービスが生産されるものと仮定し、それを市場家賃で評価する考え方。


(11)運輸業

運輸業の総生産額の約6割を占める道路貨物業が減少したことなどから、運輸業全体では3.3%の減少となりました。


(12)情報通信業

通信業は、情報通信業の総生産額の約4割を占める電信・電話業が増加したことなどから3.5%の増加となりました。

情報サービス・映像文字情報制作業は、情報通信業の総生産額の約3割を占める情報サービス業が増加したことから2.7%の増加となりました。これらのことから、情報通信業全体では3.4%の増加となりました。


(13)サービス業

公共サービス業は、医療・保健が減少したものの、介護が増加したことから0.3%の増加となりました。対事業所サービス業は、その他の対事業所サービス業が増加したことから1.7%の増加となりました。

また、対個人サービス業は、飲食店などが減少したため3.0%の減少となりました。

これらのことから、サービス業全体では0.3%の減少となりました。


(14)政府サービス生産者

政府サービス生産者は、電気・ガス・水道業、国公立教育、学術研究などのサービス業、公務により構成されますが、それらがともに減少したため、政府サービス生産者全体では2.6%の減少となりました。


(15)対家計民間非営利サービス生産者

対家計民間非営利サービス生産者(※)は、0.4%の減少となりました。


(※)他の方法では効率的に提供し得ない社会的、公共的サービスを、利益追求を旨とすることなく家計へ提供する団体であり、その活動は通常、会員の会費や家計、企業、政府からの寄付、補助金によってまかなわれているもの。財団法人、社団法人、労働組合、政党、宗教団体、私立学校などが該当します。

4 県民所得(分配)について


次に、各産業の生産活動により1年間で生み出された付加価値がどのように家計・政府・企業に分配されるかを示した表3「県民所得(分配)」から、平成25年度の状況について見てみます。

表3

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表

県民所得は、「県民雇用者報酬」、「財産所得」、「企業所得」により構成されています。

平成25年度の県民所得の内訳をみると、全体の約6割を占める賃金・給与等の「県民雇用者報酬」は1兆9,743億6,800万円で前年度比0.1%の減少となったものの、全体の約3割を占め、2番目に構成比が大きい「企業所得」は、1兆1,681億1,300万円で前年度比7.0%の増加となりました。また、金融資産からの利子・配当などの「財産所得」は2,567億5,100万円で前年度比9.0%の増加となっています。

この結果、平成25年度の県民所得は、最もウエイトの高い「県民雇用者報酬」は僅かに減少したものの、本県の主力産業である製造業が好調だった影響を受け「企業所得」が大幅に増加したため、県民所得全体では3兆3,992億円となり2.9%の増加、金額では971億円の増加となりました。


県民所得金額について平成13年度からの推移を示したものが図3のグラフです。

図3
図

図3を見ると、近年では、「企業所得」の総額は僅かに増加傾向にあるものの、「県民雇用者報酬」の総額は横ばいであり、全体的に賃金等は上がっていないことが分かります。

また、平成20年度、21年度の県民所得をみると、「企業所得」と「県民雇用者報酬」が大きく落ち込んでいるのが分かります。前記のとおり、これもやはり平成20年に発生した「リーマンショック」が本県製造業に大きな影響を与えたことが主な要因と思われます。

その後、本県では平成22年度から平成23年度にかけ、製造業を中心に経済状況が大幅に回復したため「企業所得」は回復傾向にあるものの、県民所得の金額全体でみると、まだリーマンショック前の水準までは回復していないことが分かります。

5 統計表の不連続の解消


県民経済計算では、内閣府が示している標準様式により、平成13年度まで溯って各種の統計表を作成しています。それらのうち、最も利用されることの多い主要系列表の「経済活動別県内総生産(名目)」について見てみます。

県民経済計算では、この統計表において、産業の表章に平成16年度と平成17年度の間に不連続が生じており、この不連続を解消するという課題がありました。

前回公表した平成24年度富山県民経済計算の「経済活動別県内総生産(名目)」を示したものが表4です。

表4
(1) 経済活動別県内総生産(名目)

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表

次に、今回公表した平成25年度富山県民経済計算の「経済活動別県内総生産(名目)」を示したものが表5です。

表5
(1)経済活動別県内総生産(名目)

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表

ご覧のとおり、同じ統計表ではあるのですが、前回公表の表4では、平成13年度から平成16年度までと、平成17年度から平成24年度までの2つに表が分かれているのに対し、今回公表の表5では、1つの表にまとまった形になっています。

では、なぜこれまで統計表が2つに分かれていたのかというと、これは、平成22年度推計時から、県民経済計算の推計に用いる基礎的資料である産業連関表(平成12年表→平成17年表)と日本標準産業分類(平成5年10月改定版→平成14年3月改定版)が変更され、産業分類の見直しが行われたことにより(※)、産業の表章に平成16年度と平成17年度との間に不連続が生じたためです。

(※)基準改定と呼ばれ、通常5年ごとに行われます。現在は、「平成17年産業連関表」等を基礎とした「平成17年基準」が導入されています。なお、平成29年度公表予定の「平成27年度県民経済計算」からは、「平成23年産業連関表」等を基礎とした「平成23年基準」が導入される予定です。


具体的には、前回公表の表4(平成24年度富山県民経済計算)では、平成16年度までは「運輸・通信業」として表章されていたものが、平成17年度以降では「運輸業」と「情報通信業」の2つに分割して表章されています。

これ以外にも、製造業やサービス業の各部門においても、産業分類の見直しに伴ない、それぞれの部門を構成している産業細分類の変更(入れ替え)が行われています。

このため、変更の生じた産業では、平成16〜17年度間の生産額の増減率が表示されておらず、「対前年度増加率」の表では、平成17年度が「−」と表示されるなど、利用者側にとっては、大変使いにくい形となっていました。


それが、今回公表した表5(平成25年度富山県民経済計算)では、内閣府の方針に基づき、平成13〜16年度までの旧基準(平成12年基準)により分類されていた各産業を、現在の平成17年基準による分類にあわせて組み替え、改めて推計し直す作業を行うことにより平成16年度と平成17年度のデータが接続され、断層が解消されました。

6 おわりに


平成25年度富山県民経済計算の推計結果の概況についてご紹介しました。

また、来年度に推計する「平成27年度富山県民経済計算」では、基準年次をこれまでの「平成17年基準」から「平成23年基準」に改定し、推計に用いる基礎資料を今年の3月に公表した「平成23年富山県産業連関表」等の最新の統計データに変更するとともに、国民経済計算が新たな国際基準である「2008SNA(※)」に対応したものとなるのにあわせて、県民経済計算においても、経済・金融環境の変化に伴なった新たな概念の導入や、経済活動別産業分類の変更など、現行からの大幅な基準改定が予定されています。

(※)2009年(平成21年)国際連合で採択された国民経済計算の国際基準。日本の国民経済計算は2000年より1993年(平成5年)に国連で採択された「1993SNA」に基づいた基準により作成されている。



県民経済計算は、県の経済規模や産業構造などを総合的に捉えることができる大変高度で重要な経済指標です。この県民経済計算が、行政や企業、各種団体において、施策立案や経済活動など様々な分野でより一層有効活用されるよう、国の基準改定等に適切に対応し、工夫を重ねながら、今後とも推計精度の向上に努めていきたいと考えています。

とやま経済月報
平成28年6月号973
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