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平成23年度富山県民経済計算推計結果について

統計調査課 南保勇治

 

1 はじめに


富山県では平成26年2月に平成23年度の富山県民経済計算の推計結果を公表いたしました。ここでは、今回の推計結果をご紹介するとともに、「県民経済計算」に関する若干のご説明についても併せて行いたいと思います。なお、本文中、意見に関する部分については筆者の個人的見解である旨をお断り申し上げます。

2 富山県経済の概況


まず、平成23年度の富山県経済の概況を前年度と比較し表1で見てみます。

表1

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表
(1)国と比較した富山県経済の概況
平成23年度の本県の県内総生産は名目で4兆4,365億円、実質で4兆7,712億円となりました。我が国のGDPに占める割合は名目で0.94%となっています。人口での本県の占める割合は0.85%程度ですので、1人当たりでみれば経済活動の面では本県は健闘している方であるといえるのではないでしょうか。
(2)経済成長率
経済成長率は名目で2.2%増、実質で4.0%増となりました。国は名目では1.4%減でしたので、平成23年度においては、全国的には景気減退したなかで本県経済は成長を遂げたことになります。
ただ、これは前年度に比しての成長率(又は減少率)ですので、当然、前年度の生産額の如何によって左右されるものです。すなわち、前年度に大きく経済規模が伸びていれば、今年度は引き続き経済成長が続いたとしても伸率としてはそれほど大きくはならないでしょうし、逆に前年度に生産額が大きく落ち込んでいれば多少の回復でも比較的大きな成長率として現れてくることに注意が必要だと思います。
今回の県民経済計算で遡及して計算した平成13年度からの各年度の経済成長率を、国の名目成長率、実質成長率と合わせて表示したものが下図です。
図1

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図

本県の経済成長率は平成14年度から平成20年度までは国の成長率と概ね同じ動きで推移していました。なお、平成20年度の本県と国の成長率の大きな落ち込みは、いわゆる「リーマンショック」によりもたらされた世界同時不況によるものです。翌平成21年度は国と本県では大きく成長率が異なりました。国は、まだマイナス成長だったとはいえ幾分回復傾向を見せましたが、本県の成長率は一段のマイナスを示しています。これは、本県は製造業が県産業全体に占める割合が高い上に、電気機械、化学、一次金属、一般機械など、いわゆるリーマンショックで大きくマイナスの影響を受けた製造分野の比率が高かったためになかなか回復基調に乗れなかったものと考えています。そして、リーマンショックから回復した平成22年度は、過去の落ち込みの反動もあり名目、実質とも国を上回る成長率となっています。


(3)名目成長率と実質成長率
ところで、名目成長率と実質成長率の違いは何か、との問い合わせを受けることがあります。
名目成長率とは、その年の製造品やサービスの実際に取引された価格(市場価格)に基づいて推計した生産額により計算した成長率です。これには、その年の物価の変動(インフレやデフレ)による価格の変化(値上がりや値下がり)がそのまま計上されて成長率が計算されています。
一方、実質成長率とは、一定の基準年(生産面では前年度)を基準として物価の変動(すなわち貨幣価値の変動)の影響を排除した実質的な生産額を計算し、これに基づいて計算した成長率です。例えば、同じ製造品やサービスで、前年度に比して貨幣価値の下落により価格が上昇すればその価格上昇分を控除し、逆に貨幣価値の上昇により価格が下落していればその下落分を補う(加算する)操作を行って計算しています。このため、この実質成長率は、結果的に物量的な成長率(製造品やサービスの生産量自体の増減)を示しているともいえます。
名目成長率と実質成長率のどちらが重要なのですか、との質問もあります。
これは、どれが重要というよりも、前述したようなそれぞれの成長率の計算方法の違いを踏まえて、使用するのにふさわしい方の成長率を選ぶということになると思います。一般的には、今時点の経済状況を判断する場合には名目成長率が、複数年度にわたった推移等を比較するためには実質成長率が採用されることが多いように思います。なお、内閣府が公表する四半期別GDP速報の成長率を新聞、テレビ等が報道する場合は主に実質成長率が用いられています。
(4)1人当たり県民所得
本県の1人当たり県民所得は、平成23年度は3,055千円となりました。国民経済計算における1人当たり国民所得は2,715千円ですので、これに比べると本県はかなり1人当たり県民所得が大きくなっています。
この「1人当たり県民所得」が個々の県民個人の所得額のように誤解を受けることがありますが、もちろん違います。1人当たり県民所得は、個々人の賃金・給与に加えて企業の所得や金融資産からの利子・配当などの財産所得などからなる「県民所得」全体を県人口で除して求めているものであり、県としての経済の水準を示す一つの指標ではありますが、ストレートに県民個々人の所得水準を示しているものではありません。
一般的に、企業立地の多い県は金額が大きくでる傾向があるほか、県民所得を人口で除して求める計算の都合上、人口が増えている県は1人当たり県民所得の伸びが鈍く、逆に人口が減少している県は1人当たり県民所得が上昇してしまうこともあります。この場合、一般的に人口が増えている県は経済活動も活発になり、人口が減少している県は経済活動も停滞しがちとの我々の皮膚感覚とは逆の統計数値となることに注意しなければならないと思います。

3 経済活動別県内総生産(名目)


本県が公表する県民経済計算は、基本的に、基本勘定表3表、主要系列表7表、付表4表で構成されています。各統計表は本県ホームページ「とやま統計ワールド」http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/index2.html でご覧いただけます。


ここでは、そのうち最も利用されることの多い主要系列表の「経済活動別県内総生産(名目)」をご紹介いたします。

表2

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表
(1)統計表の不連続
この統計表はご覧のとおり、平成13年度から平成16年度までと、平成17年度から平成23年度までの2つに分かれています。これは、これまで推計に使用していた基本的資料である平成12年産業連関表と日本標準産業分類(H5.10改定版)が、平成22年度推計時から平成17年産業連関表と日本標準産業分類(H14.3改定版)へ変更(基準改定と呼ばれ、通常5年ごとに行われます。今回改定された基準は「平成17年基準」と呼ばれます。)され、産業分類の見直しが行われた結果、産業の表章に平成16年度と平成17年度の間に不連続が生じたためです。
具体的には、平成16年度までの「運輸・通信業」が、平成17年度以降「運輸業」、「情報通信業」に分割されたほか、いくつかの細かな産業の分類の変更(入れ替え)がおこなわれています。変更の生じた産業では「対前年度増加率」(とやま統計ワールドの県民経済計算のページに掲示があります。)の表で平成17年度が「−」と表示され、前年度と接続していないことが示されています。ユーザー側からすれば使いにくい形となってしまい、大変心苦しいところです。
ちなみに、すでに平成26年に入っているのに「改定した後の新基準が『平成17年基準』では古くないのか?」との疑問も寄せられそうです。これは、県民経済計算推計において基礎的で最も重要な資料の一つ(GDPを推計する国民経済計算でももちろんそうです。)である「産業連関表」の作成が5年ごとに行われており、いま使用できる最も新しい産業連関表が「平成17年産業連関表」であるためです。なお、現在、次の産業連関表の作成作業が進められており、国の産業連関表については今年度中に「平成23年表」として公表される予定となっています。
(2)統計表の表示年度
この統計表に限らず、県民経済計算の統計表は、平成22年度推計時の基準改定より平成13年度からの表示となっています。これは、内閣府が示している標準様式において、新たな基準(平成17年基準)に基づき使用する資料の収集などの作業を考慮して平成13年度から表章することとなっているためです。新たな基準に使用するのに信頼の足りる資料を収集しなければならない制約上のこととはいえ、これも、ユーザー側からすればもっと長い期間の計数がほしいと不満に感じられる部分と思われ、申し訳なく思います。
なお、富山県の過去のデータとしては、前記の「とやま統計ワールド」内の「富山統計アーカイブス」に県民経済計算のページがあり、ここに昭和50年度からの計数が表示してあります(但し、各基準ごとに分割して表示され、産業の表章も基準ごとに一部異なっていますが)。
必要があって長期系列表を作成しなければならなくなった場合に最も簡単な方法は、この統計表の各基準の最新の数値をそれぞれそのままつないでいくやり方だと思います。この場合、本来は各基準毎の数値の性向、ブレを指数化などにより補正して全体を統合しなければならないのですが、それは、作成する長期系列表の使用目的等に応じていろいろ工夫をこらすということになると思います。
(3)遡及改定
統計表の数値は、毎年度の公表のたびに平成13年度に遡って改定が行われています。これは、県民経済計算の推計には多くの統計調査から得られる様々なデータを用いていますが、使用している統計調査には毎年実施されていないものも少なくなく(国勢調査をはじめ、重要な基幹統計は特にそうです。)、実施されない期間(中間年)はいくつかの統計的手法により推計した数値を使用しています。このため、新しい調査結果が公表されるたびにその最新データを用いて過去に遡って推計し直しているためです。
また、このデータの入替のほか、推計精度向上を目指して、国民経済計算の所管官庁である内閣府からの助言、指導や各県間の情報交換などを通じて絶えず推計方法の見直しを行っており、これによる数値の遡及改定も行われています。
従って、今年度に「県民経済計算」として公表した数値の前年度以前の部分は、以前公表したものと異なっていますので、ご利用にあたっては注意してください。

4 平成23年度の県内総生産額


上記の表2のうち、直近の2ヶ年を抜き出して分かりやすく分析用の表にしたものが下の表3です。これに基づき、平成23年度の本県の生産面からみた県内総生産の状況について、各産業ごとに触れてみたいと思います。

表3

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表
(1)農業
農業の総生産額の約6割を占める基幹作物である米の作況指数が前年度の「平年並み」から「やや良」となって収穫量が増加したものの、畜産が減少したことなどから、農業全体では0.1%の減少となりました。
(2)林業
林業の総生産額の約5割を占める育林業と約4割を占める栽培きのこ類が減少したものの、木材生産が大きく増加したことなどから、林業全体では1.7%の増加となりました。
(3)水産業
水産業の総生産額の大部分を占める海面漁業において、サケ類やカタクチイワシ、えび類などの漁獲量が減少したことなどから、水産業全体では4.2%の減少となりました。
(4)鉱業
採石業の陸砂利採取数量の増加や単価上昇などから、鉱業全体では35.4%の増加となりました。
(5)製造業
化学は、医薬品の受託製造や後発医薬品の増加などにより2.0%増加し、県内総生産に占める割合が4.6%と、製造業の中では最も大きくなりました。一般機械は、海外向け工作機械の増加などにより28.1%増加しました。金属製品は、住宅用及びビル用アルミニウム製サッシの増加などにより9.5%増加しました。非鉄金属は、アルミニウム再生地金やアルミニウム合金の増加などにより30.0%増加しました。鉄鋼は、工作機械や自動車向けの増加などにより20.5%増加しました。
これらのことから、製造業全体では3.3%の増加となりました。
(6)建設業
建築工事で公共施設関係の工事完了に伴う減少があったものの、公共土木工事の治山治水工事が増加するとともに、鉄道軌道工事も高水準のまま推移したことなどから、建設業全体では0.7%の増加となりました。
(7)電気・ガス・水道業
電気・ガス・水道業の総生産額の約7割を占める電気事業において、県内火力発電量、県内水力発電量がともに増加したことなどから、電気・ガス・水道業全体では12.2%の増加となりました。
(8)卸売・小売業
卸売業は、食料・飲料などの販売増加などにより7.0%増加しました。小売業は、飲食料品や自動車などの販売増加などにより6.5%増加しました。
これらのことから、卸売・小売業全体では6.7%の増加となりました。
(9)金融・保険業
金融業は、低金利の影響や受取手数料減少などにより減少し、保険業は、損害保険などで減少したことから、金融・保険業全体では0.9%の減少となりました。
(10)不動産業
不動産業の総生産額の大部分を占める住宅賃貸業(持ち家の帰属家賃を含む。)において、住宅床面積が増加したことなどから、不動産業全体では1.3%の増加となりました。
(11)運輸業
運輸業の総生産額の約7割を占める道路貨物業が増加したことなどから、運輸業全体では2.2%の増加となりました。
(12)情報通信業
通信業は、情報通信業の総生産額の約4割を占める電信・電話業の増加などにより1.3%増加しました。情報サービス・映像文字情報制作業は、情報通信業の総生産額の約3割を占める情報サービス業の増加などにより3.3%増加しました。
これらのことから、情報通信業全体では2.3%の増加となりました。
(13)サービス業
公共サービス業は、医療・保健の減少などにより0.7%減少しました。対事業所サービス業は、その他の対事業所サービス業の減少などにより5.0%減少しました。また、対個人サービス業は、娯楽業、飲食店、旅館・その他の宿泊所の減少などにより2.7%減少しました。
これらのことから、サービス業全体では2.7%の減少となりました。
(14)政府サービス生産者
政府サービス生産者は公務や国公立教育、学術研究などのサービス業の増加などにより0.9%増加しました。
(15)対家計民間非営利サービス生産者
社団法人、財団法人、宗教法人、私立学校などの対家計民間非営利団体の生産が5.0%増加しました。

5 経済活動別県内総生産の統計表


次に、最も利用の多い経済活動別県内総生産の統計表に関して、これまでお問い合わせのあったものからいくつかご紹介いたします。


(1)産業の表章について
「産業の表章をみると、製造業は詳しく表章されているが、なぜサービス業などの第3次産業の区分がおおまかなのか。これでは第3次産業の各産業内の分析などはできないのではないか。」とのお問い合わせがありました。
たしかに、総生産に占める各産業の割合をみても、第1次、第2次に比して圧倒的な割合を占める第3次産業の表章はずいぶんあっさりしています。
これは統計製作者側でも問題意識は持っていまして、実はこれでも平成22年度推計からずいぶん詳しく改められています。ちなみに以前の平成21年度推計時点での表章は次のとおりでした。
表4

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表

第3次産業部分は、私が見ても、まったくそっけなく感じます。


もちろん、これには理由がありまして、端的にいうと、特にサービス産業の分野では収集できる統計資料が大変限られており、細分化の作業自体が難しいという事情があるためです。

農林水産業の分野は長い伝統から統計がしっかりしていますし、製造業も大変詳細なデータが広汎に整備されています。これらの産業は農地や工場など生産活動の基盤が外部から認識しやすく活動も恒常的、安定的で統計化しやすい、との事情もあると思います。一方、第3次産業、特にサービス産業分野は時代や環境、社会のニーズで自由に変遷してゆく性質をもっていることなどから、安定的、網羅的な統計の作成が難しく、そもそも短期間で様々に変化していく業種をどのように分類し時系列化するのか判断に迷ってしまうということもあります。


ちなみに、現在のサービス業の表章は「公共サービス業」、「対事業所サービス業」、「対個人サービス業」の3分類となっており、まず、公共によるサービスか、民間によるサービスかにより分割し、さらにこの民間サービスを対象別(事業所向けか個人向けか)に分ける形になっています。また、参考までにいえば、推計作業上はさらに下記の細分類により推計を行っています。


・公共サービス業 教育、研究、医療・保健、介護、その他の公共サービス
・対事業所サービス業 広告業、業務用物品賃貸業、自動車・機械修理業、その他の対事業所サービス業
・対個人サービス業 娯楽業、飲食店、旅館・その他の宿泊所、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の対個人サービス業

統計表の表章は各県の県民経済計算との比較が可能なように、内閣府の指導のもとに共通の様式を使用することとなっており、本県でももちろん各県共通の様式を使用しています。統計調査の精度も年々向上しており、サービス業関連の統計も整備が進んでいますので、内閣府や各県との調整のうえ少しでも詳しく表章ができるようになればいいなと思っています。


(2)サービス業
サービス業という表章についてはもう一つ、「統計表のあちこちに「サービス業」という文字がでてくるが、違いがよくわからないし、だいいちまぎらわしい。」とのご指摘がありました。
たしかに統計表には「(11)サービス業」のほか、政府サービス生産者と対家計民間非営利団体サービス生産者の中にも「サービス業」があり、一見しても違いが明らかではなく、まぎらわしいと感じる方も多いと思います。

各々の「サービス業」で推計の対象となっているのは次のとおりです。

・(11)の「サービス業」   →(前記のとおり)
・政府サービス生産者の(2)「サービス業」
→ 国公立学校、国公立学術研究機関 等
・対家計民間非営利サービス生産者の「サービス業」
→ 財団法人、社団法人、労働組合、政党、宗教団体、私立学校 等

これについても、ご指摘の通り、表章を見ただけで内容がある程度推測できるような名称を工夫する必要があると思います。


(3)不動産業の「住宅賃貸業」
統計表を見ますと、サービス業のなかの「(8)不動産業 1)住宅賃貸業」の生産額が大変大きくなっています。「富山県の賃貸マンション、賃貸アパート業界はこんなに巨大なのか」との誤解を受けそうですが、もちろんそうではありません。この金額の大部分は、いわゆる「帰属家賃」が占めています。この「帰属家賃」は県民経済計算(国民経済計算)における特殊な概念で、実際には家賃の支払いを伴わない自己所有住宅(持ち家住宅)についても、住んでいる人に対しては通常の借家やマンション、アパートと同様なサービス(効用)が生産されているものと仮定して、それを市場家賃で評価した生産額が計上されているものです。
これは、県民経済計算がモデルとしている国民経済計算において、政府の住宅政策の違いや国民の住居についての性向(賃貸住宅を好むのか、持ち家を志向するのか)にかかわらず各国間のGDPの比較が可能なように、住居については全ての世帯が、賃貸住宅居住者は賃貸料として、持ち家居住者は帰属家賃として住居費を計上することとなっているためです。住居にはほぼ全ての人が居住していますし、例えば、賃貸住宅の支払家賃のみを計上することとすると、国による借家か持ち家かの居住スタイルの違いが大きくGDPに反映し、正確なGDP比較ができなくなるためです。
住居費については金額の規模が大きいため、特にこのように比較可能となるための措置が取られているものであり、国民経済計算をモデルとしている県民経済計算においても同様の推計方法がそのまま取り入れられています。
(4)国民経済計算の経済活動別国内総生産について
「国民経済計算の経済活動別国内総生産を使って全国比較をしたいが、国の統計表は暦年のものしかない。なぜ、国には経済活動別の年度の統計表がないのか。」との問い合わせもありました。
内閣府のホームページをみると、国民経済計算の経済活動別国内総生産は確かに暦年表示のものしかありません。もちろん、詳しくは内閣府に直接問い合わせて頂きたいのですが、おそらく、これは、国民経済計算と県民経済計算の推計方法の違いからきているものと考えています。
国民経済計算の推計では、支出系列、生産系列ともにまず基礎となる産業連関表を用いて推計がなされますが、この産業連関表は暦年表示ですので推計結果は暦年表示の数値となります。また、国ではGDP速報の必要から四半期値も作成しています。理屈の上ではこの四半期値の集計の仕方で暦年値、年度値いずれも作成可能なのではないかと思いますが、国のGDPでは支出系列の推計が優先(こちらの統計がより正確に網羅され、結果的に正しい数値が推計されると判断)とされていますので、支出系列の年度・暦年の統計表作成が優先され、結果的に経済別国内総生産の年度表示の統計表作成までは手がまわっていないのではないかと推測しています。
県民経済計算の推計では、使用する統計資料自体がほとんど年度表示であり、国から提供される各種データもほぼすべて年度表示となっていることから、これらを用いて推計した県民経済計算の統計表は全て年度表示となっています。
県で暦年表示の統計表も作成すれば比較可能になるのに、との声も聞こえそうですが、これまた残念ながら作業量的に対応は難しいと思います。
(5)欄外の加減項目について
「各産業を合計しても構成比が100%にならないのはなぜか。」との問い合わせもあります。これは、産業全体への加減項目として最後に「輸入品に課される税・関税」(加算項目)と「総資本形成に係る消費税」(控除項目)があるためです。
このうち、「輸入品に課される税・関税」とは関税及び輸入品に係る消費税などからなり、これは生産物の付加価値の一部とみなすことになっているため、総生産額に一括加算されます。「総資本形成に係る消費税」とは設備投資や在庫品に係る消費税控除額からなり、まだ費用化(価格に転嫁)されていないため総生産額から一括控除されます。
これらの項目は、本来は各産業ごとにそれぞれ加算控除ができればよいのですが、たとえばある輸入品が最終的にどの産業に使用されたかの特定が困難であるなど、各産業ごとの推計ができないため、やむを得ず、最後に一括して加算控除を行っているものです。
(6)県民経済計算の公表時期について
「どうして県民経済計算の公表時期がこんなに遅いのか。」とのご質問(お叱り)も受けます。確かに、今回の本県の平成23年度県民経済計算を公表したのは平成26年2月でした。推計対象の平成23年度が終了してから1年11カ月が経過しています。なお、国の「平成23年度国民経済計算」の第1次確報の公表は平成24年12月で、年度終了後8カ月でした。
これは、国民経済計算では年度(又は歴年)終了後に順次できあがってくる推計対象年の統計資料をすぐに使用して推計作業にかかれるのに対し、県レベルの推計では、全国値としてこの国民経済計算の推計結果の数値も使用することから、推計開始が国民経済計算推計完了後となり、ほぼ1年遅れとなっていることが主な原因です。ただ、やはり、推計作業に時間がかかりすぎていることは否めないと思いますので、少しでも早期の公表ができるよう努めていかなければならないと考えています。

ちなみに、平成23年度の各都道府県民経済計算の公表時期は次のとおりでした。

公表月 公表都道府県数
H25.11月 3
H25.12月 3
H26.1月 14
H26.2月 13
H26.3月以降 14

6 おわりに


県民経済計算は、推計対象年度の国民経済計算をはじめとした各種統計資料が出揃ってからこれをもとに推計するという制約上、推計対象年度からかなり遅れて公表されます。このため、県民経済計算は、他の経済統計に比較して速報性に欠け、特に、東日本大震災などのような大きな災害や社会変動には即応できない弱点があります。

しかしながら、公表される県民経済計算は、法人、個人を含めた県民の経済活動の諸側面を、県民経済計算の概念に従って加工、組み立てて作成された総合経済指標であり、その結果は地域経済全体を表している唯一の指標といえます。

そして、この県民経済計算を用いれば、時系列での分析、他県との比較や県経済の評価、特徴の把握などが可能であり、これが行政、企業、各種団体などの様々な活動や施策、経済活動を基礎の部分で支えることができるものとなっています。


今後とも工夫と改善を重ね、この県民経済計算がさらに様々な分野でお役に立てるものとなるよう、努力していきたいと考えています。

とやま経済月報
平成26年5月号1364