特集

家計簿からみた富山のファミリーライフ

統計調査課生計農林係

 

1 はじめに


「富山の人は昆布が好き」。このフレーズを一度は聞いたことがないでしょうか?このように住んでいる地域の嗜好や土地柄を知ることができるのが、「家計調査」です。家計調査の結果は、国民生活の動向を把握する最も基本的な統計として、各種行政施策の立案に幅広く利用されているほか、地方公共団体の広報活動や民間企業などにも利用されています。

今回は、この家計調査からみた富山の暮らしの特徴についてご紹介したいと思います。

2 家計調査のしくみ


家計調査は、世帯の皆様に毎日の家計の収入や支出を家計簿につけていただき、その結果を取りまとめ、国民生活の実態を家計の面から明らかにする調査です。全国168市町村、約9,000世帯を対象に、国が都道府県を通じて行っている基幹統計調査※1です。

富山県では、富山市、射水市、魚津市の区域の中から、統計的な抽出方法により選ばれた約143世帯を対象に調査を実施しています。


※1 基幹統計調査とは、統計法に基づき総務大臣が特に重要として指定した統計を作成するための統計調査をいう。


[調査の目的]
世帯の得た収入がどのようなものにいくら支出されたか、その支出の仕方が収入、世帯人員、年齢、職業など世帯の属性によってどのように異なっているかなど、国民生活における家計収支の実態を把握して、国の経済政策・社会政策の立案のための基礎資料を得ることを目的としています。
[調査の方法]
都道府県知事が任命した統計調査員が、調査世帯を訪問して「家計簿」を配布し、調査世帯が、毎日の収入・支出について「家計簿」に記入します。
このほか、世帯と世帯員及び住居に関する事項は、調査員が聞きとりにより「世帯票」に記入し、過去1年間の年間収入については「年間収入調査票」に、貯蓄及び借入金などに関する事項については「貯蓄等調査票」に各世帯が記入します。
[結果の公表]
調査の結果については、毎月、インターネットなどを通じて公表し、テレビやラジオ、新聞などによって広く報道されます。
富山県では県庁所在市である富山市の結果が主に公表の対象になっております。
[結果の利用例]
調査の結果は政府だけでなく、地方公共団体、民間の会社、研究所などで利用されています。
例:
(1)政府が毎月公表している月例経済報告における利用
(2)都道府県などの広報や町おこし
(3)消費者物価指数(総務省)のウェイトを作成するための資料
(4)勤労者の賃金を決めるための標準生計費などの資料

3 富山市民の家計事情


家計調査は、地域の暮らしぶりがよくわかる調査です。ここでは、富山市民の家計の特徴について全国順位から見ていきたいと思います。

なお、これから出てくる数字は、二人以上の世帯の調査結果です。また、全国順位は、都道府県庁所在市別ランキングです。

(1)家計収入
平成25年の富山市の二人以上の世帯のうち、世帯主が勤労者※2の世帯の実収入※3は、1世帯当たり1か月平均599,995円で、全国3位です。過去5年をみても常に上位に位置しているのは、1世帯当たりの有業人員が全国平均に比べて多く、世帯主の配偶者の収入や他の世帯員収入が多いことが要因ではないかと考えられます。
グラフ
表
イラスト

※2 勤労者世帯:世帯主が会社、団体、官公庁、学校、工場、商店などに勤めている世帯。ただし、世帯主が社長、取締役など会社・団体の役員である世帯は「勤労者以外の世帯」に含める。

※3 実収入:いわゆる税込み収入であり、世帯員全員の現金収入を合計したもの。

※4 可処分所得:「実収入」から税金、社会保険料などの原則として世帯の自由にならない支出を差し引いた額で、いわゆる手取り収入のこと。これにより購買力の強さを測ることができる。

(2)家計支出
平成25年の富山市の二人以上の世帯の消費支出は、1世帯当たり1か月平均323,697円で、全国3位です。
家計調査の1世帯当たり品目別年間支出金額及び購入数量(二人以上の世帯)のデータから、どのような品目でどの程度の地域差があるのかを明らかにするため、品目別都道府県庁所在市別ランキングが集計されています。その中で、富山市が全国1位の品目を、一部ご紹介します。
なお、富山市の調査世帯は少なく、1年ごとの調査結果では数値の変動が大きいため、ここでは3年平均(平成23年〜25年)の数値を用います。
1)食料品
富山市の魚介類への1世帯当たりの支出金額は、常に全国のトップクラスに位置しており、特にぶりは、単年で見ても42年連続で全国1位を占めています。富山湾を臨み、豊富な水産資源に恵まれ、新鮮な食材が手に入りやすいことが、背景にあると考えられます。
魚介類のほか、1世帯当たり年間の支出金額が多いものとして、こんぶがあります。平成24年までは、単年で見ても、53年連続で全国1位となっていましたが、平成25年は、京都市に次いで2位という結果になりました。こんぶの支出金額県庁所在市別ランキングが集計されるようになった昭和35年以来、初めて1位を明け渡したことから、新聞でも大きく取りあげられました。
その他、オレンジの支出金額も、全国1位です。オレンジは意外にも、この10年間で6回1位になっています。富山の特産品に限らず、富山市民の意外な嗜好品がわかるところも、家計調査の面白いところです。
富山市が支出金額で全国1位の食料品目
都道府県庁所在市別ランキング
(二人以上の世帯、品目分類、平成23〜25年平均)
表
2)その他の品目
食料品以外の品目では、感冒薬、自動車購入、テレビゲーム機、シャンプー、祭具・墓石、こづかいなどが支出金額全国1位になっています。
自動車購入費の支出金額が1位なのは、自家用車の保有台数が多いこと(富山県1世帯当たり1.70台、全国2位:国土交通省北陸信越運輸局富山運輸支局「富山県運輸概況」(平成24年度))、道路整備率が高いこと(富山県74.9%、全国1位:国土交通省「道路統計年報」(平成24年))などにより、自家用車が通勤、買い物、レジャー等に多く用いられるためと考えられます。
また、こづかいについてですが、当調査でいう「こづかい」とは、家計から家族へ渡された「こづかい」のうち、その使いみちが不明なもの(使途不明金)をいいます。こづかいの支出金額が多いのは、前にも述べたとおり、1世帯当たりの有業人員が多く、勤労者世帯の1世帯当たりの実収入が、全国平均より高いことが影響していると考えられます。なお、「こづかい」からの支出で家計簿に内訳(酒、たばこなど)の記入がある場合は、それぞれの該当項目に分類されます。
食料品以外で、富山市の支出金額が1位の品目
都道府県庁所在市別ランキング(二人以上の世帯、品目分類、平成23〜25年平均)
表

4 おわりに


昭和21年7月に「消費者価格調査」として始められた家計調査は、調査世帯の皆様を始め多くの方々の協力によって、調査開始以来、今日まで一日も欠かさず続けられてきました。家計調査は、今日では国の最も基本的でかつ重要な統計調査の一つとなっています。

今回の特集では、最新の家計調査結果から、皆様の暮らしに身近な話題を選び、紹介させて頂きました。家計調査への理解を深めるとともに、これからの生活を考えるきっかけとなれば幸いです。

データ出所:総務省統計局(http://www.stat.go.jp
とやま経済月報
平成26年7月号