特集

富山県鉱工業指数基準改定(平成22年基準)について

統計調査課 岩崎 渉

 

1 はじめに


平成20年のリーマンショック以降、世界的な経済悪化のあおりを受けて、日本経済も急激に減速していきました。さらに、平成23年には東日本大震災が起きるなど日本の経済活動にとって大きな打撃となり、長期間でみれば日本経済は低迷やショックの連続を経験しました。しかし、政権交代を契機に徐々に景気が回復している傾向を示す経済指標が多く見られるようになり、平成26年1月の内閣府発表の月例経済報告では「景気は、緩やかに回復している」とし、平成25年9月以来4カ月ぶりに基調判断を引き上げました。

全国的な景気回復が報じられる中、北陸の経済も緩やかな回復をたどっており、平成26年1月の日本銀行発表の地域経済報告についても「緩やかに回復しつつある」と上方修正されました。富山県においても少しずつ景気回復の傾向に関するニュースが新聞やテレビなどで報じられており、今後も活発な経済活動が期待されています。

本稿では、経済活動を知るための指標の一つである「鉱工業指数」について見ていくとともに、富山県における鉱工業指数の「基準改定」について考えていきたいと思います。

注:本稿は平成26年1月末までの発表や公表を参考としています。

2 鉱工業指数とは


鉱工業指数とは、一定地域内における月々の鉱工業生産量を、「ある時」を基準にして指数化したもので、鉱工業生産活動全体の水準をあらわす数量指数です。鉱業及び製造業の品目ごとに集計され、「ある時」の生産数量(在庫数量)を基準にしてどれだけ増えたか、あるいは減ったかを比率で表します。その基準とした「ある時」のことを基準時、もしくは基準年といいます。現在の基準年は平成22年であり、その年の平均生産量(在庫量)を100としています。

指数という表し方のメリットは、比較・統合のしやすさにあります。鉱工業指数では、計測単位の異なる品目を指数化した上で集計、比較しています。よく利用されるのは時間的な比較で、前年比や前月比といった2時点間の比較はもちろん、連続する各時点での時系列比較にも利用されます。また、品目を統合しやすくなり、業種・財分類ごとなど多様な分類での比較が可能になります。現在では、全国、各都道府県で作成、公表されているため、鉱工業指数を地域ごとで比較する場所的比較も可能となっています。

また、鉱工業指数は経済指標の中でも重要度の高いものとされています。その理由として次の3点が挙げられます。

(1)経済活動に占める割合が大きい
鉱工業生産は、経済活動全体への影響が大きいと言われています。鉱工業製品の流通に密接な関わりを持つ、卸売業、小売業、運輸業などの関連産業を含めると、鉱工業生産に関する活動が経済活動全体の約4割を占めます。
(2)景気動向に敏感である
鉱工業指数は景気に敏感に反応します。一般に景気が上向くと出荷が増加し、在庫が減少するので生産を増やそうとします。景気の状況に応じた動きは、景気の動向や転換点を判断する上で重要となります。
(3)速報性が高い
GDP(国内総生産)や県内総生産は、地域全体の経済活動を総合的に取りまとめた重要な統計ですが、膨大な統計や資料を取りまとめるため、確報公表には約1年の期間(県内総生産は2年程度)を要します。一方、鉱工業指数は、翌月に全国の速報が、富山県では翌々月に確報が公表されます。このため、足元の経済状況を把握する際に有効な景気指標となっています。

3 鉱工業指数の算出方法


鉱工業生産指数は、経済産業省が毎月行っている生産動態統計調査の調査結果をもとに作成される二次統計(加工統計)になり、生産動態統計の中の代表性の高い品目を選び指数化しています。

基準年(西暦年の末尾が0又は5の年)の一ヵ月当りの平均生産量を基準数量として、比較月の各鉱工業製品(品目)の生産数量を指数化し、その各品目の基準時のウェイト(重要度)で加重平均して算出されます。生産指数には、付加価値額ウェイトのものと生産額ウェイトのものがありますが、通常は付加価値額ウェイトのものが用いられます。

鉱工業生産指数

また、生産指数ではラスパイレス算式を用いてウェイトを基準時に固定していますが、この算式では、基準時から比較時点が遠ざかると、品目間の価格差の相対的な変化や非採用品目の生産割合の増加などによって指数値にゆがみ(ラスパイレス・バイアス)が生じ、生産動向の実態を正しく反映しにくくなります。このように、産業構造の変化によってできた乖離を是正するため、5年毎に指数品目、品目ウェイト等を見直す「基準改定」という作業を行う必要があります。

4 鉱工業指数における基準改定について


前述したように、鉱工業指数のような固定基準による指数(ラスパイレス算式数量指数)は経済構造の変化により、基準時から時点が遠ざかるに従って乖離が大きくなるという特性があります。これは比較時と基準時の価格の変化に伴うもので、この乖離によって、指数値にゆがみが生じてきます。

例えば、生産数量が需要増大によって急激に拡大する品目は各企業が量産することによって、次第にその価格が低下する傾向にあります。しかし、基準時を固定し高い価格のまま評価するラスパイレス算式ではこういった品目の指数値が、基準時から離れるに従って高めに算出されてしまうことになります(ラスパイレス・バイアス)。

このバイアスを是正するために、「基準時を移動」し、「ウェイト調整」を行う必要があります。

また、鉱工業指数では、すべての鉱工業製品をもって指数を作成しているわけではありません。基準時において、生産動態統計調査の調査品目の中で代表性の高い品目を選んで作成しています。したがって、基準時に採用されていない、新しい品目が登場し市場を拡大した場合や、基準時では非採用であっても需要増によって生産量が上がったりした場合には、最新の生産活動が十分に反映されなくなるため、指数採用品目の代表性を再検討して「採用品目の見直し」が必要となってきます。

これらの「基準時を移動」し、「採用品目の見直し」を行い、「ウェイト調整」をすることを「基準改定」と呼びます。

5 富山県における鉱工業指数の基準改定について


それでは、実際に富山県における鉱工業指数の基準改定では、平成22年基準と平成17年基準とを比較してどのように変化したのかを見ていきたいと思います。

(1)基準時の移動
基準時に関しては、平成17年(2005年)から平成22年(2010年)へと変更しています。平成22年は平成20年のリーマンショックから経済が立ち直ってきた途上の年であり、また、平成23年に発生した東日本大震災の影響はない年になります。
(2)採用品目の見直し
前述したように、最新の生産活動を十分に反映させるためには品目の見直しを行い、指数の代表性を再検討する必要があります。
鉱工業指数の基礎データとしては、経済産業省生産動態統計調査及び本県独自調査によるデータ、他省庁・業界団体のデータを使用しています。そして、代表性の高い品目を選定し、採用品目としていきます。また5年間で生産量が下がり代表性が低くなった品目や調査継続が困難になった品目などは非採用として、新基準においては採用を見送ります。このようにして品目の見直しを行います。
平成22年基準と平成17年基準の品目数の差は表1のとおりです。
表1 品目数の変化
表1

富山県では新規採用や品目廃止、分割・統合などを行った結果、生産指数では平成17年基準に比べて平成22年基準は9品目減少し、187品目となっています(細かい品目選定の内訳は表2を参照ください)。

表2 採用品目の主な変更点

※表をクリックすると大きく表示されます

表2
(3)ウェイト調整
ウェイトとは、それぞれの業種・品目の鉱工業指数全体への影響度のことであり、全体を10000.0として数値で表します。このウェイトは平成22年の鉱工業構造(平成22年工業統計等)により作成しています。
富山県における平成22年と平成17年の業種別生産ウェイトの変化は以下のようになります(表3)。
表3 業種別生産ウェイト
表3

*平成22年基準では産業分類改定により、「一般機械工業」と「精密機械工業」を合わせて「はん用・生産用・業務用機械工業」としています。

富山県では、電気機械工業、化学工業、はん用・生産用・業務用機械工業が全体に占める割合では1,000を超える高いウェイトとなっています。良質な水、安定した電力に支えられている電子部品産業、全国的にも有名な「くすりの富山」の医薬品製造業、自動車部品やそれらを作るためのロボット・産業用機械の製造などにより、それぞれの業種のウェイトが高い水準となっています。また、非鉄金属工業や金属製品工業のウェイトが上位になっているのは、全国でも高いシェアを誇る「アルミ産業」によるものです。

次に、変化について見ていくと、ウェイトが大きく上昇した業種は、非鉄金属工業、プラスチック製品工業になります。また、逆に大きく低下した業種は化学工業、金属製品工業になります。ウェイトは全体に占める構成比なので、平成17年と平成22年で比較した場合に単純に生産の上昇・低下を論ずることはできませんが、産業構造の変化について見ることができます。

(4)指数の比較
1新旧指数(原指数)の差
平成22年基準の原指数と平成17年基準の原指数を比較してみます。指数の推移は概ね同じ動き方をしているものの、平成22年2月頃から乖離しています(図1)。これは、前年同月比で見ても乖離していることが分かります(図2)。これについては、品目定義の変更やウェイトの変更などが原因と考えられます。
図1
図2

2季節調整済指数について

富山県の鉱工業生産指数(季節調整済)についてみると(図3)、リーマンショックの影響が大きく、平成21年の3月に底を打ち、その後は持ち直しの動きとなっています。しかし、平成23年2月をピークに指数は徐々に低下しています。

また、鉱工業生産指数(季節調整済)の前月比についてみると(図4)、平成17年基準に比べて、平成22年の変動幅が比較的小さいことが分かります。

図3
図4

6 おわりに


平成20年のリーマンショック以降、様々に揺れた日本経済でしたが、ここ最近は明るい話題が新聞やテレビをにぎわせており、景気の現状把握や将来予測に用いられる景気動向指数の平成25年11月分改定値も110.7と前月比で0.3%上昇し、3ヵ月連続の改善となっています。北陸に関しても、中部経済産業局は、個人消費や設備投資を含めた北陸経済の平成25年11月分の総括判断について、「一部に改善の動き」から「改善の動き」へと上方修正しており、上方修正は3ヵ月連続となっています。

現在は円安による輸出増や消費増税前の駆け込み需要などが重なり、景気回復の傾向が続いていますが、今後、消費増税の影響による消費減速などのリスクも予測されます。しかし、そういった厳しい状況を乗り越えて、景気回復傾向が続くことを期待しています。

最後に、鉱工業指数は生産動態統計調査や富山県鉱工業指数作成調査などを用いて作成されております。これらの各種統計調査にご協力いただきますようお願いいたします。

とやま経済月報
平成26年2月号1863