特集

働く女性をめぐる富山県の施策について

富山県生活環境文化部男女参画・ボランティア課

 

1 はじめに


少子・高齢化により労働力人口が減少するなか、経済社会を活性化し豊かで活力ある地域づくりを進めるためには、男女共同参画を推進し、性別に関わりなく一人ひとりが能力を発揮し活躍できる社会の実現が必要不可欠です。

このため、富山県では、県の男女共同参画社会の形成を促進するための基本的な計画である「富山県民男女共同参画計画(第3次)」を平成24年3月に策定しました。(計画期間:平成24〜33年度、5年を目途に見直し)

この計画においては、「政策・方針決定過程への女性の参画の促進」「働く場における男女共同参画の推進と女性のチャレンジ支援」などを基本目標として、「女性の登用促進」「女性の能力発揮への支援」「女性のチャレンジ支援」を重点課題に掲げ、女性の管理職への登用促進や人材育成、再就職支援などに取り組むこととしています。

「富山県民男女共同参画計画(第3次)」はこちらをご覧ください。
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1712/kj00005135.html

2 働く女性をめぐる富山県の現状と課題


企業等における女性の活躍は、経営や商品開発に女性の視点が入ることで新たな価値がもたらされるなど業績向上に貢献し、ひいては、経済社会の活性化やその持続性を高めることにもつながると考えられます。近年、経済成長の担い手としての女性への期待が「眠れる資源」「潜在力」「含み資産」といった様々な言葉で語られるようにもなっています。

就業率や平均勤続年数、正社員比率など、就業をめぐるデータ(下記参照)が全国トップクラスであることが示すように、富山県では女性の職場への参画が進んでいるといえますが、女性の管理職への登用が進んでいないという課題があります。

一方で、出産を機に常勤者の3割が離職しているといったデータもあり、その半数近くが、就業継続を希望しながらも「仕事と育児の両立が難しいため離職した」と答えています。

また、結婚・出産、子どもの年齢といったライフステージによって女性の働き方の希望は変化しますが、いったん仕事を辞めても、子どもの成長とともに就業を希望する女性は多い反面、希望に沿った再就職が難しい状況にあります。

<参考>数字で見る富山県の女性の就業をめぐる状況
・女性の就業率
[H22]49.9%(全国47.1%:7位)
・女性平均勤続年数
[H24]11.0年(全国8.9年:3位)
・女性雇用者(役員を含む)に占める正社員の割合
[H24]50.3%(全国41.1%:1位)
・民間事業所を含めた管理的職業従事者に占める女性の割合
(女性の管理職比率)
[H22]5.7%(全国7.3%:44位)
・三世代同居率
[H22]16.1%(全国7.1%:5位)
・共働き率
[H22]54.7%(全国45.4%:5位)

(%) ◆管理的職業従事者に占める女性の割合(雇用者)
グラフ

資料(データ):総務省統計局「国勢調査」

◇女性の管理職比率の目標<富山県民男女共同参画計画(第3次)>
 (管理的職業従事者に占める女性の割合)
H17年 H28年目標 H33年目標
4.8% 8% 11%
※計画改定後にH22結果が公表されました。

3 課題解決に向けた施策の紹介


(1)元気とやま働く女性ネットワーク「煌めく女性リーダー塾」
前述のように、本県では、女性の就業率、勤続年数が全国トップクラスで、女性が働きやすい就業環境にある一方で、管理職への女性の登用が進んでいない状況にあります。仕事をしていくうえでは、様々な経験を積み、新しい業務や責任ある仕事に積極的に挑戦していくことが大切ですが、女性はこれまで、周りに女性の管理職が少ないことや、仕事と家庭の両立等の問題により、そのような機会が男性よりも少ない傾向にあります。
そのため、県では、県内企業等で働く女性の相互交流と自己研鑽を図り、企業等における女性社員の活躍をより一層推進するため、今年度新たに「元気とやま働く女性ネットワーク『煌めく女性リーダー塾』」を開講しました。7月から翌年3月まで、月1回の日程で実施しており、現在、第1期生として県内22事業所から推薦された中堅社員22名の塾生が参加しています。
当塾の特色として、以下の3つが挙げられます。
1
民間企業の女性管理職をアドバイザー、サブアドバイザーに委嘱し、助言を当塾の企画・運営に反映
2
女性活躍推進について事業所内での理解・取組みを深めるため、当塾の活動内容を記載したレポートを事業所へ配布するとともに、参加事業所の経営者や人事担当者にも参加いただく場を企画
3
業種・職種の枠を超え、仕事や生活の悩みを共有できるネットワークの構築(当塾修了後のネットワーク継続を支援)
塾生が、今後この事業で培ったネットワークを活かし、それぞれの職場のリーダーとして活躍することで、男女問わず持てる力を十分に発揮できる社会の実現を目指します。
▽第1期塾生 参加事業所(22事業所)
(株)アイザック・ユー、(株)アイペック、(株)池田模範堂、(株)廣貫堂、(株)コージン、(株)斉藤製作所、三協立山(株)、(株)タカギセイコー、たち建設(株)、とうざわ印刷工芸(株)、トナミ運輸(株)、(福)砺波福祉会、(株)富山第一銀行、富山大学、富山地鉄建設(株)、富山地方鉄道(株)、日本海ガス(株)、富士化学工業(株)、(株)北陸銀行、北陸コカ・コーラプロダクツ(株)、北陸電力(株)、YKK(株) 
中小企業支援
▲煌めく女性リーダー塾第1期生の皆さん
(稲田アドバイザー(前列左から4番目)、宮崎サブアドバイザー(前列左から5番目)を囲んで)
(2)ママたちの再チャレンジ応援塾事業
富山県では、本県女性の高い就業意欲を踏まえ、県民共生センターにおいて、「ママたちの再チャレンジ応援塾」を開講しています。この事業は、結婚・出産を機に一旦離職し再就職を目指す女性が、再就職に必要な知識やコミュニケーション力などの実践的な能力を習得することによって、再就職への不安の解消を図り、子育てをしながら安心して働き続けることができる環境づくりを支援することをねらいとしています。
今年度は、前期、後期それぞれ4回の連続講座とし、対象を前期は「再就職して自分の能力を発揮したい女性」、後期は「子育てしながら仕事を始めてみたい女性」に分けることで、受講者の多様な働き方のニーズに対応できるようにしています。また、各期の全ての回の受講者に「修了証」を交付することで、受講者のモチベーションを高めるための工夫をしています。
<参考>平成25年度ママたちの再チャレンジ応援塾(前期)の概要
テーマ 内容
自分の適性を知る
女性の就業状況・業界動向
自分に合った仕事探し
コミュニケーション力を高める
好感度がアップする話し方・聞き方
プレゼンテーション力をアップ
生活と仕事を両立させる
ライフプランの立て方
タイムマネジメント
先輩女性に学ぶ・交流会
企業の人事担当者や再就職した先輩女性等との意見・情報交換 等
グラフ

平成25年度ママたちの再チャレンジ応援塾(前期)の様子(平成25年6月21日)

今年度の前期に開講した塾では、全4回の修了者は29名でした。修了後に実施したアンケートでは、「今の仕事のニーズや資格のことなど、いろいろな人の話が聞けてよかった」「態度や笑顔の大切さを知った」「間近で先輩方の生の声を聞くことが出来て、とても励みになった」などの声が聞かれ、概ね好評でした。
富山県としては、アンケート結果なども踏まえ、より効果的な事業の実施に努め、引き続き、女性の再就職を積極的に支援していきたいと考えています。
(3)とやま女性の活躍応援サイト
富山県では、女性の登用促進や再就職など女性の活躍による経済社会の活性化を促進することを目的に、働く女性を応援するウェブサイト「とやま女性の活躍応援サイト〜あなたがもっと輝くために〜」を昨年6月に開設しました。
このウェブサイトでは、働く女性のみならず企業の経営者や人事担当者等も対象に幅広く女性の活躍を支援する情報を発信しています。上記の「煌めく女性リーダー塾」「ママたちの再チャレンジ応援塾事業」についても掲載するなど、県の事業とウェブサイトの相互の連携を図っているところです。
今後、関係機関とも連携し、より一層掲載内容の充実に努めていきたいと考えています。
「とやま女性の活躍応援サイト」はこちらをご覧ください。
http://www.toyama-challenge.jp/
主なコンテンツ
1
女性の活躍を支援する情報
女性の活躍を支援する情報を就業、キャリアアップ、起業、社会活動など幅広いテーマで掲載し、相談窓口、講座・セミナーの情報も確認できます。
2
ロールモデル
富山県内で働き、活躍している女性のロールモデルを紹介しています。キャリアアップから、家庭との両立の苦労話など、ご本人への取材を通して得た情報を掲載しています。
3
企業の取組み
民間企業における女性の登用や活躍を促進するために、先駆的な取組みを実施している企業を取材し、紹介しています。
また、他にも企業等への働きかけとして、富山県では「男女共同参画チーフ・オフィサー」「男女共同参画推進事業所」「女性が輝く元気企業とやま賞」といった施策についても取り組んでいます。詳細は下記のホームページをご覧ください。
「男女共同参画チーフ・オフィサー」についてはこちら
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1712/kj00003885.html
「男女共同参画推進事業所」についてはこちら
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1712/kj00003253.html
「女性が輝く元気企業とやま賞」についてはこちら
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1712/kj00005476.html

4 おわりに


働く女性をめぐる富山県の施策ということで、働く女性への直接的な働きかけと企業等への働きかけという観点から、県の施策をご紹介いたしました。しかし、女性の管理職への登用や再就職にあたっては、女性本人の意識や企業側の意識が変わっても、家族の理解や協力がなければ、仕事と家庭生活の両立はできません。女性が家族の理解や協力を得ながら働き続けるためには、本県においても未だ根強く残っている性別による固定的役割分担意識を解消していくことも大きな課題です。

従来、職場優先の組織風土の中で長時間労働が多く行われてきましたが、そうした働き方を見直し、男性も家事・育児・介護や地域活動に参画できるような環境づくりや意識改革を行うことが必要です。

また、次代を担う子どもたちが、男女ともに個性と能力を発揮し、将来を見通した自己形成ができるよう、子どもの頃からの男女共同参画の理解促進も必要です。

富山県では、女性も男性もそれぞれの能力や個性を十分に発揮することができる環境づくりが進み、県全体がもっともっと元気になるよう、男女共同参画の一層の推進に努めてまいりたいと考えています。

とやま経済月報
平成25年9月号