特集

「統計の見方」〜統計調査結果によって異なる
平成24年の富山県における働く人の数〜

統計調査課 宮脇 健一

 


「平成24年の富山県における働く人の数は何人であるか?」

冒頭の問い合わせは、統計調査課へのご質問としては珍しいものではありません。しかし、働く人の数を対象とした統計調査は、統計調査課が関わる基幹統計でも、平成24年は当たり年で、4つもの統計値が公表されています。

○労働力調査 就業者数 554,000人(年平均)
○就業構造基本調査 有業者数 564,800人
○毎月勤労統計調査 常用労働者数 407,787人(年平均)
○経済センサス-活動調査 従業者数 504,000人

さて、上記の人数にはかなりの幅がありますが、冒頭の問い合わせへの回答として、そのままの数値をお答えして良い場合もありますが、「お求めの数値としてそのままでは使用できないが推計用に利用できる」又は「お求めの数値としては使用できない」という場合もあります。

上記の統計調査では、働く人の数を「就業者数」「有業者数」「常用労働者数」「従業者数」と異なる名称を用いて示していることから予想できるとおり、対象としている人や働く場所(地域、事業所規模等)・産業の設定、調査対象が世帯・事業所のいずれであるかなどの違いがあります。

ここで、4つの統計調査の内容をご案内するために、以下のとおり、統計調査課ホームページ「とやま統計ワールド(http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/index2.html)」から目的や対象などの一部の掲載内容を抜き出してみました。

○労働力調査


[目的と利用]
労働力調査は、我が国に住んでいる人の就業・不就業の実態を明らかにし、経済政策や雇用・失業対策などの基礎資料を得ることを目的として実施しています。調査の結果は、雇用・失業問題の現状分析、景気動向の指標として利用されています。
[調査の対象]
我が国の全世帯のうちから選定した約4万世帯に居住する世帯員約15万人(富山県では、約500世帯に居住する約1,500人)
[調査する事項]
月末1週間における就業の有無、就業時間・日数、従業上の地位、勤め先の名称・事業の内容、本人の仕事の内容、企業全体の従業者数など
[調査時期と周期]
毎月末日現在の状態
【とやま経済月報編集注】
労働力調査は、設計上、標本規模が小さいことなどにより、都道府県別結果は精度が十分に確保できないとみられることから、都道府県別結果の利用にあたっては、誤差の大きさなどに注意を要します。
「就業者」とは、「従業者」と「休業者(仕事を持ちながら、調査週間中に少しも仕事をしなかった者のうち、一定の要件を満たす者)」を合わせたものです。
世帯に対する調査であることから、富山県内居住者が県外事業所に通勤している場合も、富山県の就業者数に含まれます。
とやま統計ワールド 労働力調査HP
http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/lib/rodo/index.html

○就業構造基本調査


[目的と利用]
就業構造基本調査は、ふだんの就業・不就業の状態を調査し、我が国の就業構造の実態、就業異動の実態、就業に関する希望などを明らかにすることにより、各種行政施策の基礎資料を得ることを目的としています。
[調査の対象]
我が国の全世帯のうちから選定した約47万世帯に居住する15歳以上の世帯員約100万人(富山県では、約8,500世帯(約24,000人))
[調査する事項]
従業上の地位、就業時間、年間収入、転職希望の有無、就業継続年数、前職の有無、雇用契約期間の定めの有無・1回あたりの雇用契約期間など
[調査時期と周期]
調査日:平成24年10月1日  調査周期:5年
【とやま経済月報編集注】
「有業者」とは、ふだん収入を得ることを目的として仕事をしており、調査日以降もしていくことになっている者及び仕事は持っているが現在は休んでいる者です。
世帯に対する調査であることから、富山県内居住者が県外事業所に通勤している場合も、富山県の有業者数に含まれます。
とやま統計ワールド 就業構造基本調査HP
http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/lib/syugyo/index.html

○毎月勤労統計調査


[目的と利用]
毎月勤労統計調査は、統計法に基づく基幹統計調査として実施され、賃金、労働時間及び雇用について、毎月の変動を明らかにすることを目的としています。 調査結果は、最低賃金の算定、国民所得推計などに利用されています。
[調査の対象]
日本標準産業分類に定める鉱業,採石業,砂利採取業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、運輸業,郵便業、卸売業,小売業、金融業,保険業、不動産業,物品賃貸業、学術研究,専門・技術サービス業、宿泊業,飲食サービス業、生活関連サービス業,娯楽業、教育,学習支援業、医療,福祉、複合サービス事業、サービス業(他に分類されないもの)に属する事業所の中から、5人以上の常用労働者を雇用する事業所約660を抽出
[調査する事項]
現金給与額、労働時間、出勤日数、常用労働者数、労働異動率(入職率・離職率)
[調査時期と周期]
1ヶ月を単位として毎月
【とやま経済月報編集注】
「常用労働者」とは、事業所に使用され給与を支払われる労働者のうち、一定の要件を満たす者で、1日の所定労働時間が一般の労働者より短いパートタイム労働者も含まれます。
ご紹介している4統計で人数が最も少ない理由は、上記のとおり農林水産業や4人以下の事業所、また、「雇われて働いている人」に該当しない人などが対象外であることなどです。
とやま統計ワールド 毎月勤労統計調査HP
http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/lib/maikin/index.html

○経済センサス-活動調査


[目的と利用]
全産業分野における事業所及び企業の経済活動の実態を全国及び地域別に明らかにするとともに、事業所及び企業を調査対象とする各種統計調査の精度向上に資する母集団資料を得ることを目的としています。
[調査の対象]
農林漁業に属する個人経営の事業所、家事サービス業及び外国公務に属する事業所、国及び地方公共団体の事業所を除く事業所・企業
[調査する事項]
従業者数などの基本的な項目のほか、売上高や費用などの経理事項等
[調査時期と周期]
平成24年2月1日
【とやま経済月報編集注】
「従業者」とは、事業所に所属して働いている全ての人(他の会社などの別経営の事業所へ出向又は派遣している人も含まれる。一方、事業所で働いている人であっても、他の会社などの別経営の事業所から出向又は派遣されているなど、事業所から賃金・給与を支給されていない人は従業者に含めない。)です。
ご紹介している4統計で人数が2番目に少ない理由は、上記のとおり農林水産業の個人経営事業所や国・県・市町村の事業所などが対象外であることなどです。
とやま統計ワールド 経済センサス-活動調査HP
http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/lib/keisen/index-katudo.html


各統計調査を比較すると、例えば、労働力調査や就業構造基本調査は全体像を把握するものであるものの抽出調査であること、経済センサス-活動調査は全数調査であるものの対象とする範囲が全事業所ではないことなどがわかります(なお、これらは、各統計調査が、その目的と制約条件(期間・費用等)などを踏まえて企画・設計されていることから生じているものです。)。

また、各統計調査の内容を踏まえた上で冒頭の問い合わせについて、「富山県内にある事業所で働く人」「富山県に居住する人」のいずれが必要であるのか、複数の事業所に雇用される人の取り扱いをどうするのかなどの点で詰めてみてみると、そのまま利用できない可能性も生じてきます。

「とやま統計ワールド」の「統計指標のかんどころ」第1章(統計用語)「1.統計の見方」でもご紹介しているところですが、統計の利用にあたっては、その作成の基盤を理解し、統計データの持つ性質、質的水準を念頭に置くことにより各種の統計解析手法などの適用の有効性が発揮されることに、ご留意下さい。


とやま統計ワールド 統計指標のかんどころHP
http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/lib/kandokoro/index.html
とやま経済月報
平成25年10月号