特集

発行30版「100の指標 統計からみた富山」からみた富山県

統計調査課  宮脇健一

 

1 はじめに


統計は、世の中を数値で映し出している鏡のようなものです。富山県統計調査課では、統計への関心を高め、統計を合理的な意思決定を行うための基盤としてご利用いただき、また、そのような重要な情報を作成するために実施する統計調査にご理解、ご協力をいただくために、複数の統計冊子を作成しています。

その中には、いわゆる統計書、つまり“生”数値を主体に掲載したものだけではなく、(統計冊子ですので数値中心ではありますが)統計に興味を持っていただくための“工夫”を加えて作成したものもあり、その中の一つに、「100の指標 統計からみた富山」(以下、「100の指標」)という冊子があります。

この「100の指標」は、統計調査課においても、本県の特徴をご紹介するにあたってよく利用する冊子です。ここでは、「100の指標」に掲載されている指標と全国順位を利用して、統計数値を用いずに、社会の変化と富山県の様子をご紹介したいと思います。

2 掲載指標の変遷からみた社会の変化


「100の指標」は、昭和56年3月に、自然・経済・生活環境・福祉・教育・財政等、広い分野から100の指標を選び、指数または実数で全国における本県の位置を表し、過去の流れ等も図表化し、目で見る県勢としてまとめ、わかりやすい統計のハンドブックとして刊行されました。以来、平成23年度版で、昭和59年を除き、31年間(※)で30版と版を重ねてきました。

※発行当初の数年は「暦年」版でしたが、その後「年度」版として発行されています。


この間、指標の多くは、算出方法の調整変更や、近似した定義の指標の採用による変更、名称変更などを経ながらも、概ね同じ定義で残っています。その数は、捉え方にもよりますが、75指標(つまり75%が継続)となっています。世の中をわかりやすく伝えるための指標は30余年を経ても大きくは変わらないということがいえます。

その一方で、類似のものは同じ指標と考えて過去に採用された指標数をみてみると、131指標あります。つまり、残りの掲載25指標の枠内で、131指標から75指標を差し引いた56指標について廃止又は新規採用があったということになります。

ここで、社会の変化という観点から56指標のうち数例をご紹介いたします。


ひときわ時代の流れを感じる指標の廃止・新規採用の例として、ゴミと再利用の関係が挙げられます。実はこの分野は、指標の概念こそ継続していませんが、分野としては、30版の全てに指標があります。当初は「ごみ処理実施率」、その後「ごみ衛生処理率」など、いずれも処理の観点からの指標が採用されていましたが、平成23年度版から「リサイクル率」と資源化・再利用の観点の指標に変更されました。

また、保育所の指標も、当初の「保育所普及率」(保育所定員割り算4歳まで人口)から昭和63年版に現在の「保育所入所率」((6歳以上児在所児数+5歳児在所児数割り算2)割り算翌年小学校1年児童数)と同じ算出方法の同名指標に変更されており、指標の選定において、時代の背景や関心の高まりから検討がなされて変更があったものと思われます。

社会制度の変更に伴う指標の変更もありました。わかりやすい例として、当初から平成11年度版まであった「老人ホーム普及率」(特別養護老人ホーム等の老人ホーム収容定員割り算65歳以上人口)が、平成12年度の介護保険制度の創設を受けて、「特別養護老人ホーム普及率」を経て、「介護保険施設定員」となり、病床も含む指標となっています。

道路関係では、当初からの「道路普及率」(高速・国・県・市町村道の道路部面積割り算県面積)は平成7年度版までとなった一方で、昭和60年版からの「道路整備率」(国・県・市町村道の改良済かつ混雑度1.0未満の延長割り算道路実延長)が平成23年度版まで続いています。ここでは、道路の充実の見方に変化があらわれています。


なお、今回は、目次掲載の指標でみてきましたが、目次からはずれても、関連指標として、全国値と北陸3県(富山県・石川県・福井県)の数値及び順位について掲載し続けているものもあり、その場合にはデータも入手できますので、ご注意ください。「100の指標」では、関連指標を含め、平成23年度版の都道府県編だけでも420以上の指標が掲載されていますので、参考にしたい指標を入手できる可能性は高いと思われます。

【平成23年度版「100の指標」項目一覧】

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平成23年度版 100の指標 項目一覧
黄色は、継続指標。
一部の項目について、「人口1人あたり」や「1事業所あたり」、「名目」などの条件書きを省略してありますので、ご注意ください。

3 各指標の順位の変化からみた富山県


「100の指標」には発行当初より、目次に指標名・ページ番号・本県の順位が掲載してあります。ここでは、30版の目次に掲載された本県の順位を一つの統計として扱い、折れ線グラフによる推移図を中心に、簡単にご紹介いたします。

なお、折れ線グラフでは75指標を一つの図の中で表すと線が多く見づらいことから、「100の指標」で用いているグループ分けである「自然と人口」「産業と労働(※)」「家計と生活環境」「災害と安全」「福祉と医療」「教育と文化」「財政」の別に、ご紹介いたします。

※「産業と労働」は指標数が多いため、更に「産業」「労働」に分けてあります。

(注意)
1 順位は、統計資料の訂正等を受けて、過去に遡って変更されるケースがありますが、ここでは発行時点の順位を用いて、グラフを作成しています。
2 「100の指標」に用いられている統計は、必ずしも毎年度作成されるものばかりではないことから、推移図の折れ線グラフでは、この事情により一定期間順位が変わらないものがあります。
3 推移図では、指標の線が重なりにより、線が見えない場合がありますが、
ご容赦ください。

また、ご参考までに、平成23年度版での「100の指標」の各グループの構成比を円グラフで表すと、次のとおりです。

設備投資産業別金額・構成比比較

(※ 図は、全ての指標(指標数100)での構成比(指標数と同数)です。)

【「自然と人口」の指標の全国順位の推移グラフ】

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「自然と人口」の指標の全国順位の推移グラフ

「自然と人口」の指標は、当然とも言えますが順位が平行に近い指標が比較的多くあります。その中で、「人口増減率」と「出生率」の変化が大きくみられます。いわゆる人口ピラミッドの形は、一般的に、第1次ベビーブーム(S22〜S24)世代、第2次ベビーブーム(S46〜S49)世代、第2次ベビーブーム世代の子供の世代の層が膨らんだ形をしていると説明されますが、順位の大きな変動からは、人口ピラミッドの各年齢層の膨らみ具合も都道府県ごとに特徴があることを示唆しています。

【「産業と労働」の「産業」の指標の全国順位の推移グラフ】

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「産業と労働」の「産業」の指標の全国順位の推移グラフ

「産業と労働」の「産業」の指標の中で、ジェットコースターの軌道のように順位が上下している指標は、「経済成長率(実質)」です。景気の動向は地域によって異なりますので、この指標は、どうしてもその地域差が時々の順位に大きく表れるようです。

また、最上位にある「兼業農家比率」の高さは、「100の指標」では関連指標として掲載されている「水田率」(平成23年度版 全国1位)とともに、本県の特徴といえます。

【「産業と労働」の「労働」の指標の全国順位の推移グラフ】

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「産業と労働」の「労働」の指標の全国順位の推移グラフ

「産業と労働」の「労働」の指標は、本県の場合では、「県内就職率(高校卒業者)」と「就業者割合(第2次産業)」の順位が高く、密接に関係しています。

【「家庭と生活環境」の指標の全国順位の推移グラフ】

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「家庭と生活環境」の指標の全国順位の推移グラフ
(※ 「道路改良率」は、昭和60年版から平成7年度版の間に掲載されなかったことから一旦途切れていますが、ここでは継続指標として取り扱いました。)


「家庭と生活環境」では、「勤労者世帯の貯蓄額」の順位が上位から中位に低下したままであることが目を引きます。全体的に、順位が上昇又は(上昇後)安定する傾向が多いことからも、気にかかる動きです。

ところで、「家庭と生活環境」は11指標が継続して掲載されてきたことから、推移図にも11指標名が記載されています。しかし、折れ線グラフにすると、線は10本にしかなりません。どの指標の線が見つからないかといいますと、「住宅専用住宅延面積(1住宅あたり)」です。この指標は、「1住宅あたり」や「1世帯あたり」など微妙な調整変更はありましたが、30版全ての順位が全国1位でした。もうおわかりですね。「持ち家比率」の線の下に30版分とも隠れてしまっている事情によるものです。

【「災害と安全」の指標の全国順位の推移グラフ】

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「災害と安全」の指標の全国順位の推移グラフ
(※ 「有感地震回数」は、昭和63年版に掲載されなかったことから一旦途切れていますが、ここでは継続指標として取り扱いました。)


「災害と安全」は、「火災発生件数(人口1万人あたり)」の順位が圧倒的に低い、つまり、火災が少ない県であることが、際立っています。

【「福祉と医療」の指標の全国順位の推移グラフ】

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「福祉と医療」の指標の全国順位の推移グラフ

「福祉と医療」をみると、「病床数(人口10万人あたり)」と「医師数(人口10万人あたり)」の順位が安定して推移しています。

【「教育と文化」の指標の全国順位の推移グラフ】

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「教育と文化」の指標の全国順位の推移グラフ

「教育と文化」では、「新聞発行部数(1世帯あたり)」や「書籍雑誌購入額(人口1人あたり)」が全国上位となっており、県民性が出ているように思われます。

【「財政」の指標の全国順位の推移グラフ】

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「財政」の指標の全国順位の推移グラフ

「財政」では、「財政規模(人口1人あたり)」と「普通建設事業費(人口1人あたり)」は、順位変動に関係性が強いことが窺えます。

4 おわりに


「100の指標」は、いろいろな角度から富山県の姿をみつめていただく参考に作成されています。今回は、統計数値そのものを使わずにご紹介しましたが、数値をみつめると驚くほど新発見が生まれます。統計調査課では、平成25年3月末に31版となる「100の指標」を発行する予定で編集作業を進めておりますので、皆様には、是非、実物を手にとってご覧ください。


また、「100の指標」は、多くの調査統計を、直接または加工して作成しております。皆様には、社会の重要な情報基盤である公的統計の整備のために、何卒、統計調査での適切な調査票のご記入・ご提出にご協力をお願いいたします。

とやま経済月報
平成25年3月号4090