特集

伏木富山港 環日本海物流ゴールデンルート構想

富山県 商工労働部 立地通商課

1. はじめに

伏木富山港(伏木地区、新湊地区、富山地区)は、日本海側のほぼ中央部に位置し、ロシア極東や中国東北部と近接するなど恵まれた地理的条件にあります。国内においては主要国道に隣接し、三大都市圏のいずれからもほぼ等距離にあり、平成20年7月の東海北陸自動車道の全線開通に伴い、中京圏からの集荷促進などにより、今後の対岸諸国との経済交流や物流の活性化に向けて大きな期待が寄せられています。

県では、伏木富山港を核とした物流活性化を通じ、地域経済の発展、活性化に向けた取組みを強化しているところです。本稿では、今年度から新たに取り組む「環日本海物流ゴールデンルート構想」についてご紹介いたします。

2. 日本海側の総合的拠点港

近年、中国やロシアなどの環日本海諸国や東南アジアなどの新興国が目覚しい経済発展を遂げる中、これらの国々のグローバルな成長エネルギーを取り込み、富山県の発展につなげていくことが大切であり、そのためにも、伏木富山港を核とした物流活性化を推進していくことが極めて重要な要素となります。

こうしたなか、昨年11月、国土交通省から「日本海側拠点港」の選定結果が発表され、伏木富山港が、「国際海上コンテナ」、「国際フェリー、国際RORO船」及び「外航クルーズ」の3項目で「機能別拠点港」に選定されるとともに、当初の国の公募項目にはなかった、日本海側の各港湾をけん引する「総合的拠点港」にも位置づけられました。

今後、伏木富山港が名実ともに「環日本海の拠点港」としてさらに発展していくためには、伏木富山港の拠点性向上につながる新たな物流ルートを開設し、富山県のみならず、背後の岐阜県や長野県、中京圏や関西圏といった他地域からの伏木富山港に対する潜在需要を強力に取り込む必要があります。

こうしたことから、「伏木富山港新物流ルート開拓研究会」に伏木富山港を核とした物流活性化の具体的な取組みの方向性について議論していただき、本年3月「環日本海物流ゴールデンルート構想の実現に向けて」と題した提言をとりまとめていただきました。

3. 環日本海物流ゴールデンルート構想

将来、伏木富山港を活性化するための3つの重点ルートを「環日本海物流ゴールデンルート」(1伏木富山港〜ロシア極東港(ウラジオストク港)〜シベリア鉄道、2伏木富山港〜中国環渤海港〜中国東北部、3伏木富山港〜上海港〜東南アジア)<図1参照>として旗を挙げ、これらの物流ルートを企業の皆さまから要望の高かった直行航路、寄港頻度、定時性安定の3つの観点から機能を高め、船会社への働きかけや集荷力の向上につなげる取組みを強力に進めることで、魅力ある航路の実現を目指すという趣旨で、「創貨」、「集荷」、「航路拡充」の3つの柱で構成されています。

貨物を創り出す、育てるという「創貨」という観点からは、1ターゲット貨物の絞り込みと輸出入体制の構築、2物流業務施設の誘致強化、3海外進出企業への働きかけと海外進出サポートなどの取組みが今後の課題として位置付けられています。「集荷」という観点からは、4物流ネットワークの活用による物流拠点性の構築、5海外物流事業者との協力提携、6インセンティブ制度を活用した集荷促進などの取組みが掲げられています。「航路拡充」という観点からは、7シベリア鉄道を活用した物流ルート開拓、8環渤海港湾から中国内陸部をつなぐ物流ルート開拓、9上海港から台湾、香港、東南アジアを結ぶ物流ルート開拓、10既存コンテナ航路の見直しという取組みが提案されています。<表1参照>

<図1>

※図をクリックすると大きく表示されます

図1 環日本海流ゴールデンルート「重点3ルート」
<表1>

※表をクリックすると大きく表示されます

表1
ベースカーゴ…1回の航海において、その船舶輸送収入の中心あるいは基礎となる貨物。
ロジスティックパーク…物流業務施設が集中した企業団地。
インランドデポ…内陸におけるコンテナの集配基地。コンテナ船から陸揚げされたコンテナの荷出しや通関等を行う。
トランシップ…本船が貨物の目的地に寄港しないため、途中の港で目的地に寄港する船舶に積替えること。

4. 平成24年度の取組み

県では、今回の提言を具体化するため、今年度、伏木富山港の集荷促進、航路拡充などの各種事業を強化しています。

(1)荷主企業奨励金制度等の拡充強化

県では、荷主企業奨励金制度を平成19年度に創設し、集荷促進に取り組んできていましたが、今年度、「創貨」「集荷」の取組みを強化するため、他の港からのシフト貨物や新規貨物に対して助成額を拡充する「伏木富山港拠点化支援事業(荷主企業奨励金)」<図2参照>を創設しました。

また、新たに伏木富山港の利用を検討している荷主企業が、独自にコストやリードタイムを検証するために試行的に輸送実験を行う場合、その必要経費の1/2、上限100万円の補助金を交付する制度、「伏木富山港拠点化輸送実験利用補助金制度」<図3参照>も創設し、伏木富山港の拠点性向上を支援することとなりました。

リードタイム…出荷から商品の到着までの日数
図2 図3

(2)航路拡充に向けた輸送実験の実施

環日本海物流ゴールデンルート構想を具体化するため、県では今年度2つの輸送実験を計画しています。

一つ目は、「ロシア極東港向けRORO船の定期化運航実験」<図4参照>です。現在、主に中古車の輸送手段となっている不定期のロシア向けRORO船を、非コンテナ貨物を含む様々な貨物の定期的な輸送手段として活用できることや、多頻度、輸入リードタイムの短縮などのメリットを県内外の荷主企業に広くアピールすることで定期運航化につなげていくこととしています。

二つ目は、「東南アジア向け上海トランシップ輸送活性化運航実験」<図5参照>です。本実験では、上海トランシップサービスによる東南アジア向け航路の輸送の安定性、比較競争力のある乗継海上運賃の提示、コストメリットやリードタイム、CO2削減効果などを伏木富山港以外を利用している荷主企業に対してアピールするとともに、船社(船舶代理店)が実施する輸送安定化実験での取り組み(積替時間の短縮、ダイヤ予告、トレース情報の提供)を継続的に実施するよう船会社等に対して強く働きかけることで同便の実質的直行定期便化を目指すこととしています。

図4 図5

5. 終わりに

伏木富山港が環日本海のゲートウェイとしての機能を一層高め、対岸諸国の成長エネルギーをわが国全体に取り入れるためには、伏木富山港を核とした物流活性化の取組みを産業政策としっかり連動させていくことが重要です。県としては、伏木富山港が船会社や荷主企業から「選ばれる港」として、富山県の地域経済、さらには、我が国経済に大きく貢献する港となるよう引き続き努力してまいります。

とやま経済月報
平成24年9月号4158