特集

個人企業経済調査からみる北陸における個人企業の状況について

統計調査課 安居伊希子

 

1 個人企業経済調査とは


個人企業経済調査は、個人で「製造業」「卸売業、小売業」「宿泊業、飲食サービス業」又は「サービス業(理容・美容・自動車整備など)」を営んでいる事業所の経営実態を明らかにし、GDP(国内総生産)の推計資料や個人経営事業所等の振興に関する施策立案のための基礎資料などを得ることを目的としています。

調査事業所数は、全国で約4,000事業所、富山県(近年は2市)で概ね40事業所と、基幹統計調査(※)の中では比較的小規模な調査ですが、昭和22年に国民所得の集計資料を得るために行われた調査から発展した半世紀以上の歴史を有する調査でもあります。
(※基幹統計調査…国が作成する特に重要な統計のための調査)
 

調査には「動向調査」と「構造調査」があります。「動向調査」は、個人経営の事業所の景気動向を早く、的確にとらえることを目的としており、3か月(四半期)ごとに事業主による業況判断や、売上・設備投資などを調査しています。「構造調査」は、個人経営の事業所の構造的特質を把握することを目的としており、毎年、開設時期、事業主の年齢、後継者の有無、パーソナルコンピュータの使用の有無、事業経営上の問題点、1年間(暦年)の営業収支、営業上の資産・負債などを調査しています。

(・調査結果の活用事例… 中小企業者についてパソコン等の少額資産の取得促進による事務処理能力・事業効率の向上を図ることを目的として、30万円未満の減価償却資産を取得した場合、当該減価償却資産の合計額300万円を限度に、全額損金算入(即時償却)を認める制度を導入)

調査結果は、総務省統計局から、上記の各産業分類ごとに公表されています。結果報告では、地方別(北陸地方は新潟県、富山県、石川県、福井県)でも集計・公表されていますので、本稿では、構造調査の結果から、担い手や損益の状況を、国勢調査や県民経済計算の北陸4県を集計したものも参考に交えながら、ご紹介したいと思います。

2 個人企業の担い手の状況

(1)事業主の年齢

直近の公表である平成23年結果で、事業主の年齢階級別の事業所分布を産業別に見てみると、「事業主の年齢が60歳以上」の事業所の割合は、全ての産業で高い割合となっており、「製造業」「卸売業・小売業」「サービス業」では、70%を超えています。

また、全国と地方別の割合の比較では、北陸地方は全国に近い分布となっていることがわかります。

北陸における産業別、事業主の年齢階級別分布
地方別、事業主の年齢階級別分布

「事業主の年齢が60歳以上」の割合について、近年の傾向を見てみると、その割合は上昇傾向にあります。

北陸における事業主の年齢が60歳以上の割合の推移

(2)後継者の有無

個人企業経済調査では、後継者の有無についても調査を行っています。近年は、「後継者がいる」とした事業所の割合は、特に製造業とサービス業で低下傾向にあります。

北陸における産業別従業者数、家族従業者数

(3)従業者の状況

1事業所当たりの従業者数は、近年の状況では、ほぼ横ばいで推移しています。また、「従業者」「うち家族従業者」とも、サービス業が他の産業と比較して少ない傾向となっています。

北陸における産業別従業者数、家族従業者数

《参考1》

全国値のみの集計結果からのご紹介となりますが、1事業所当たりの従業者の年間総採用・離職者数の状況をみると、平成23年はすべての産業で、総採用者数が総離職者数を上回っています。特に、宿泊業・飲食サービス業で採用・離職の出入りが大きくなっています。


北陸における産業別従業者数、家族従業者数

《参考2》

就業者の年齢・性別などは、国の最も重要な調査といえる国勢調査においても、より詳しく調査しております。平成22年度の国勢調査の結果から、男女別に従業上の地位、年齢の状況を見てみると、農林水産業も含む結果ですが、自営業主(家庭内職者を含む)の割合は男性、女性ともに年齢が上がるにつれ上昇傾向にあります。家族従業者の割合は、女性は年齢が上がるにつれ上昇傾向にあります。また女性は、下記4区分ではどの区分でも、家族従業者の割合が自営業主の割合を上回っています。

また、国勢調査では産業大分類別に就業者の状況が公表されておりますので、個人企業経済調査の調査対象になっている産業について比べることもできます。


北陸における従業上の地位、年齢、男女別就業者数の割合「平成22年国税調査結果より」

3 営業利益の推移

個人企業1事業所当たりの年間営業利益については、近年減少傾向にあります。また、年ごとのバラつきは大きいものの、第2次産業である製造業の営業利益が第3次産業の営業利益より多かったものが、近年その差が縮まっているように窺えます。

北陸における産業別営業利益の推移

《参考3》

県民経済計算における企業所得を構成する個人企業所得について、北陸地方の各県の推計結果から足し合わせた実数を見ると、下記のようになります。


県民経済計算における企業所得の推移 「北陸地方各県の県民経済計算結果より」

県民経済計算の推計上では、個人企業所得に農林水産業や帰属家賃(実際には家賃の受払を伴わない持ち家住宅について、通常の借家や借間と同様に市場価格で評価した家賃の合計額)が含まれておりますので、上記を除いた年間個人企業所得と、個人企業経済調査の1事業所当たりの年間営業利益と国勢調査結果による個人事業所数(農林水産業などを除く)から個人企業全体の営業利益を試算した額とを比較してみました。

現在、各県では平成22年度県民経済計算を推計しているところですが、下記結果から22年度や23年度の傾向が窺えます。


調査結果を利用した北陸における個人企業の営業利益試算値と県民経済計との比較 (農林水産業と金融・保険業を除くもの)

※個人企業経済調査を利用した試算においては、調査の対象となっていない産業について、 同結果を準用することにより計算している。

4 おわりに

今回は、個人事業主、従業者の状況と営業利益についてご紹介しましたが、このほか、事業主の判断による業況判断(業況、売上の状況、営業利益の状況、製品・商品・原材料の在庫状況、資金繰りの状況、雇用状況)、設備投資等についても、総務省統計局のHPに掲載されておりますのでご覧ください。

総務省統計局HP 「個人企業経済調査」
   http://www.stat.go.jp/data/kojinke/index.htm

また、個人経営の事業所の皆様には、統計調査員がお伺いしましたときには、ご協力をよろしくお願いいたします。

とやま経済月報
平成24年12月号