特集

平成21年度富山県民経済計算と推計結果からみた
富山県経済10年の変化

統計調査課 宮脇 健一

1 はじめに

富山県では、平成24年2月に、平成21年度富山県民経済計算の結果を公表しましたが、その内容は、同月、内閣府が各都道府県の推計結果をとりまとめて公表した全国状況と比較しても、大変に厳しい経済状況が反映されたものでした。

【表1 内閣府公表結果】
表1

これは、平成21年度富山県民経済計算報告書(富山県のHP「とやま統計ワールドhttp://www.pref.toyama.jp/sections/1015/index2.html」に掲載中)の記載にもありますが、

  • 平成21年度の日本経済は、平成20年9月のリーマンショック後の急激な景気後退を経て、前半に、輸出や生産、個人消費の下げ止まりや持ち直しの動きが見られ、半ばからは、経済対策の効果や在庫調整の一巡、新興国を始めとする海外景気の改善を背景とした輸出の増加により、持ち直しの動きが続いたものの、自律的な回復には至らず、生産活動水準が低く、雇用情勢に厳しさが続いた状況であったこと
  • 富山県経済は、主力産業である製造業において、電気機械、化学、一次金属、一般機械などで大きく生産額が減少したことや、前年度末に石油・石炭製品の事業所の廃止があったこと
によるものと考えているところです。

一方で、私たちは、平成21年度富山県民経済計算を実際に推計する過程で、

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経済のサービス化・ソフト化が進んだ現在の産業構造に対して、製造業の影響が大きく評価されすぎてはいないか?
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リーマンショックは平成20年度の出来事で、景気の谷も平成21年3月であることから、平成20年度の富山県における経済成長率(県内総生産(名目)の増加率)▲3.9%の倍以上となった平成21年度の経済成長率▲8.9%は、減少幅が大きすぎるものではないか?
といった疑問が生じましたので、同じような印象をお持ちになった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

例年、とやま経済月報において、報告書とは別の切り口で富山県民経済計算の推計結果をご紹介しておりますが、平成21年度富山県民経済計算については、前半部分として、このことに関して取り上げたいと思います。


また、内閣府の平成22年度国民経済計算確報において基準改定が公表されましたが、富山県民経済計算でも、平成22年度推計からは新しい基準に対応した推計方法を用い、推計期間も平成13年度からを再計算の対象とする予定です。このため、平成8年度からを再計算の対象とすることが、平成21年度富山県民経済計算で最後となりますので、後半部分は、平成8年度当時からの富山県の産業構造の変化について、推計結果を用いてご紹介したいと思います。

【参考】

平成21年度富山県民経済計算の推計においては、平成21年度の県内総生産だけではなく、平成8年度から平成20年度までの各年度も最新の統計情報等により再計算しています。これは、国勢調査のような大規模調査の結果が実施からかなりの期間を経過した後に確定すること、統計によっては年度値を遡って訂正されることなどから、毎年度、最新データ等を反映させているためです。

特に、平成21年度の推計を行った平成23年度においては、平成21年7月に実施された経済センサス‐基礎調査の確報値が公表され、推計のための重要データである事業所数や従業者数などについて、平成18年事業所・企業統計調査以来の最新データを活用することができたので、推計精度の向上を図ることができました。

2 富山県の県内総生産と製造業

(1) 県内総生産に対する製造業の地位と影響
平成8年度から平成21年度までの推計期間については、富山県では、県内総生産(名目)に占める製造業の生産額(付加価値)の割合は、表2のとおり、著しく低下した平成21年度を除き、概ね3割となっており、本県でも、経済のサービス化・ソフト化の進展の結果、第3次産業は製造業の倍以上の割合を占めていたことがわかります。
【表2 県内総生産に占める製造業の生産額の割合の推移】
表2
一方で、県の経済成長率(名目)に関しては、平成21年度富山県民経済計算報告書に、平成21年度と平成20年度の経済成長率に関する各分野の寄与度(※)を掲載してありますが、表3のとおり、平成8年度から平成21年度までの推計期間を通した計算結果(表3のA、B)をみてみると、富山県の場合は、製造業の構成比は概ね3割であるにもかかわらず、製造業の増減が全体の経済成長率に大きく影響している傾向がみてとれるところです。

(※)全体の変化率に対して、内訳である各分野の変化がどの程度影響を与えているかを示すもの。

【表3 県経済成長率への製造業の寄与度の推移】

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表3
【参考】

製造業に関する生産額(付加価値)の推計では、工業統計調査結果や鉱工業生産指数などを用いますが、年度と暦年という期間の異なりはあるものの、県民経済計算における県内生産の定義に近い工業統計調査の付加価値額の対前年増減率(表3のD)は、県内生産のうち製造業の対前年度増減率(表3のE又はF)と近似した水準で推移しています。

(2) 平成21年度の富山県製造業の生産水準
リーマンショック後の製造業の生産水準に関しては、鉱工業生産指数の推移が参考となります。
表4のとおり、四半期別(季節調整済)生産指数でみると、リーマンショク後の製造業の生産水準の低下は、平成21年第1四半期(1月〜3月)が最も深刻な状況ですが、その後の回復の足取りも遅いものであったことがわかります。また、年度単位では、表4の年度試算値でみると、平成22年度に平成20年度の水準にようやく回復した数値となりますので、平成21年度の低水準がよりわかりやすい形となります。
【表4 富山県の鉱工業生産指数の推移】

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表4

3 富山県経済10年の変化

(1) 県内総生産の規模の変化
県民経済計算では、県内の1ヵ年度の経済活動の結果、新たに生み出された価値(付加価値)について、時系列で比較することができます。ここからは、これを利用して、10年前と直近の富山県の付加価値生産の姿を比較してご紹介します。
ところで、比較には平成21年度富山県民経済計算の推計で得た14ヵ年度の県内総生産(名目)のデータが利用可能ですが、図1のとおり、経済活動は景気変動が反映しているため、単年度の比較ではその影響が大きく出ることとなりますので、ここでは、平成8年度から平成10年度の3ヵ年度の平均値(10年前の3ヵ年度平均値)と、平成19年度から平成21年度の3ヵ年度の平均値(直近の3ヵ年度平均値)を用い、この間8ヵ年度を経過した状態の変化を比較します。

  なお、この「10年前の3ヵ年度」と「直近の3ヵ年度」には、内閣府経済社会総合研究所による景気基準日付では、表5のとおり、ともに中間あたりの時期に景気の山を含みます。したがって、それぞれの3ヵ年度の付加価値生産の平均値は、同様の経済循環における状態を比較することとなります。
【図1 経済成長率の推移】
図1
【表5 景気基準日付(推計対象期間の状況)】
 
第12循環 平成5年10月 9年5月 11年1月
第13循環 11年1月 12年11月 14年1月
第14循環 14年1月 20年2月 21年3月

※内閣府経済社会総合研究所資料より抜粋

さて、県内総生産(名目)の規模の変化を比較したものが、表6です。
富山県の県内総生産(名目)は、約10年間で1割減少したこととなります。デフレ経済が続いた結果が反映したものとみられますが、参考に掲載した国内総生産(名目)の減少が3%減少であったことと比べると、富山県経済はより厳しい10年であったものと考えられます。
特に、金属製品の付加価値生産が10年前の35%になってしまったことが目を引きます。
【表6 県内総生産(名目)の規模の変化】

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表6
(2) 分野別構成比等の変化
次に、各分野の県内総生産(名目)に占める割合の変化を比較したものが、表7です。
ここでは、約10年間で製造業の占める割合が低下し、サービス業で同程度の上昇があったことがみてとれます。
【表7 各分野の県内総生産(名目)に占める割合の変化】

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表7

(※)不動産業は、持ち家についても賃貸サービスの提供があったものとして生産額を推計する県民経済計算上の特殊な取り扱いがあることから、富山県のような持ち家比率が高く、1人当たり住宅延面積の広い県では、高めの数値となるので、注意を要する。


県内総生産(名目)の各分野について、国民総生産(名目)に占める割合の変化を比較したものが、表8です。
これにより、富山県の各産業の成長度合いを全国平均と比較してみると、10年前から割合が上昇した分野は、高い順に、製造業のうち化学、一次金属、電気機械などが相対的に上昇し、特に一次金属と電気機械は平均成長率でもプラスであったことがわかります。
【表8 全国の同分野に占める割合の変化】

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表8
最後に、表7の各分野の県内総生産(名目)に占める割合の変化が、全国の経済構造の変化と比べてどのようなものであったのかをみるために、表8の全国の同分野に占める割合の変化と、重ねて比較しました。
なお、ここでは、縦軸に県内総生産(名目)に占める割合の変化、横軸に全国の同分野に占める割合の変化としました。

 図2からは、大きな産業区分では、この10年での富山県経済は、経済のサービス化・ソフト化の変化は大きかったものの、全国の同分野における割合は若干低下させたもののかけ離れてはいない状態変化であったことがわかります。
【図2 
富山県の各分野の「全国の同分野に占める割合の変化」と「県内総生産に占める割合の変化」の比較図】

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図2
図3は、産業別にみたものです。富山県では、建設業は平成20年度以降、北陸新幹線工事などで付加価値生産は増加したものの、やはり、ここ10年では、全国的な公共事業の減少の中で、同じく減少しています。
なお、製造業については、より細かな分野別のものをみて比較したいと思います。
【図3 産業別の比較図】

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図3
図4は、製造業を分野別にみたものです。これによると、横軸の変化からここ10年で県内では、一次金属、電気機械、化学、パルプ・紙の付加価値生産が全国で相対的に増加し、一般機械、繊維、金属製品の付加価値生産が減少しましたが、縦軸の変化から、金属製品を除き、経済構造上の状態では変化は小さいと考えられます。
【図4 製造業内訳の比較図】

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図4

4 おわりに

さて、ここまで、県民経済計算の推計結果を用いて富山県経済の時間的比較の一例についてご紹介しましたが、このように、県民経済計算は、経済規模や構造を総合的に捉えることができる、様々な分野で有効利用が可能な貴重な社会基盤の一つです。そして、総合的な統計であることから、数多くのデータを、様々な機関からご提供いただかなければ推計できない統計でもあります。

富山県統計調査課では、今後とも基準改定などに適切に対応し推計精度の向上に努めてまいりますので、関係の皆様には、県民経済計算についてご理解の上、ご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

とやま経済月報
平成24年4月号2004