特集

富山県のものづくり産業の発展をめざして

富山県商工労働部商工企画課

1 はじめに

富山県は、全国と比較して第2次産業のウェイトが高い「ものづくり県」です。製造品出荷額等の性質別構成比をみると、素材・部品を中心とした業種のウェイトが高い基礎素材型(製造品出荷額の割合:富山57.8%/全国37.2%)であり、日本海側屈指の産業集積を形成しています。なかでも、機械・金属分野については、自動車産業を支える部品メーカーや技術力の高い機械関連企業が立地し、またIT分野ではデバイスメーカーやその部品・加工メーカーが集積するなど、我が国が強みを発揮してきた分野で多くの企業が活躍しています。更に、繊維、化学に加え、今後も成長が見込まれる医薬品産業の集積もあり、全体としてバランスの取れた産業構造を構成しています。しかしながら、経済のグローバル化や国内市場の縮小など大きな構造変化の中で、自動車産業や電気・電子産業分野をはじめとして、国際競争の激化、産業構造の転換が益々進んでおり、富山県の強みである「ものづくり」にとっても、これまでの産業分野の枠を超えた事業展開が、これまで以上に求められています。


製造品出荷額等の性質別構成比(経済産業省「平成21年工業統計」)
【性質別構成比】
性質別構成比
◇基礎素材型

木材・木製品、パルプ・紙、化学、石油・石炭、プラスチック、ゴム製品、窯業・土石、鉄鋼、非鉄金属、金属製品

◇加工組立型

はん用機械、生産用機械、業務用機械、電子部品、電気機械、情報通信、輸送機械

◇生活関連型

食料品、飲料・飼料、繊維、家具・装備品、印刷・同関連品、なめし革、その他

2 富山県ものづくり研究開発センター

富山県の“ものづくり産業”の一層の発展を目指し、産学官が連携して技術開発などに取り組む県内ものづくり産業の振興の拠点として、今年4月に、高岡市にある富山県工業技術センターに隣接して「富山県ものづくり研究開発センター」を開設しました。

この新しいものづくり研究開発センターは、平成19年に本県の科学技術振興を効果的に進めるための中長期の指針である「新富山県科学技術プラン(平成19〜27年)」に掲げられた、「世界の試作品センター」や「ものづくり人材育成」などのプロジェクトからなる「ものづくり拠点構想」に基づいて整備したものです。

県では、ものづくり研究開発センターを企業や大学等に広く開放し、研究開発プロジェクトの推進や異分野・異業種交流の促進、最先端のものづくり技術をもつ人材の育成に積極的に取り組むとともに、産学官連携の共同研究等による新商品・新技術の開発を支援しています。


富山県ものづくり研究開発センターの外観
製造品出荷額等の性質別構成比

このため、ものづくり研究開発センターでは、電波暗室棟、先端研究棟、開発支援棟の3棟から構成し、国際水準の最先端設備を26機器導入、企業や大学等が新技術・新製品開発を行うための企業レンタルスペースや共同研究スペースを備えています。


■電波暗室棟
電子機器などから放出された電磁波の測定や、他製品から放射された電磁波による製品への影響を試験する10m法電波暗室や関連測定機器を整備しています。(10m法電波暗室は、東海北陸地域の公設試験研究機関では初の設置)
■先端研究棟
金属やプラスチックをナノメートルレベル※(注)の精度で3次元形状に加工が可能な「超精密切削加工機」や、次世代の高品位な接合方法として注目されている「2次元摩擦攪拌接合装置」、着心地の良い衣服を開発するため人間と同じ発汗量や皮膚温度に制御できる「発汗サーマルマネキン(全国の公設試験研究機関では初の設置)」など、最先端の設備を整備しています。((注)ナノメートル:10億分の1メートル)
■開発支援棟
企業レンタルスペース(10室)、産学官の共同研究スペース(4室)、研修室(1室)を設けています。研究開発型の企業や産学官の共同研究グループに貸し出しています。なお、中小企業が入居する場合は、入居から3年間に限り入居料の3分の1を減免する制度を設けています。

県ものづくり研究開発センターに整備された主な最先端設備

県ものづくり研究開発センターに整備された主な最先端設備

◎取り組み

○最先端設備の開放

  • 企業、大学等に対して最先端設備を広く開放

○研究開発プロジェクトの推進

  • 共同研究スペースを活用した研究開発プロジェクトを実施
  • 国等の大型研究開発プロジェクトへの提案及び実施

○実践的なものづくり人材の育成

  • 最先端設備による高度技術人材の育成
  • 共同研究方式による企業の若手技術者の育成
  • 大学生、高専生の長期インターンシップの実施

○異分野・異業種交流の促進

  • ものづくりバトンゾーン研究会による異業種交流
  • 先端研究交流拠点等との交流

3 ものづくり産業への支援など

(1)新たな成長分野への支援
県では、10年後、20年後を見据え、今後の成長が見込まれる医薬工連携による新商品開発や次世代自動車産業への参入を支援するとともに、医薬・バイオ、ロボット、航空機産業、環境・エネルギーなど新たな分野への挑戦を積極的に支援しています。

とやま医薬工連携ネットワーク構築事業
医療、福祉、製薬の現場ニーズとものづくり企業の技術シーズとをマッチングさせ、新たな医療・福祉機器、製薬機器等の開発に繋げる。
とやま次世代自動車ネットワーク事業
最新の技術や市場動向に関する情報を共有し、次世代自動車に関連する新商品・新技術の開発を支援する。
航空機産業認証制度取得モデル事業
航空機産業に参入する際の航空機部品の品質保証に有効な認証制度(JISQ9100)の取得に取り組むモデル企業に助成する。
ものづくりバトンゾーン研究会
異業種交流による新しい技術シーズの創出のため5分野10テーマの研究会を設置し、次代を担う最先端の技術セミナーや共同研究開発を実施する。

(2)「富山県ものづくり大賞」の創設
県では、県内産業・文化の発展を支え、豊かな県民生活の形成に大きく貢献してきた「ものづくり」を着実に継承し、さらに発展させていくため、高度な技術開発により県内「ものづくり」の活性化に寄与した企業を顕彰するとともに、ものづくり機運の一層の醸成を図ることを目的として、昨年度に「富山県ものづくり大賞」を創設しました。(本大賞は、県内の企業を対象に、3年以内に開発された技術・製品を表彰)

第1回富山県ものづくり大賞の受賞企業とその製品

第1回富山県ものづくり大賞の受賞企業とその製品

4 おわりに

依然として厳しい経済状況にありますが、これからも「元気とやまの創造」に向け、産学官や異分野・異業種間の交流の推進により、県内の技術基盤を生かした新産業の創出、企業の競争力強化を図り、本県の基幹産業であるものづくり関連企業の技術革新と成長分野への進出を支援していきます。



<問い合わせ先>

とやま経済月報
平成23年10月号