特集

中小企業の経営安定を支える金融支援

富山県商工労働部経営支援課

1 はじめに

本県の経済の現状については、リーマンショック後の世界同時不況から、持ち直しの動きが続いていましたが、本年3月に発生した東日本大震災の影響により、このところ弱い動きがみられ、依然として厳しい状況にあります。先行きについても、国内電力供給の制約やサプライチェーン(原材料等の供給プロセス)の立て直しの遅れ等により、景気が下押しされるリスクがあり、今後の経済情勢に留意する必要があります。

こうした状況を踏まえ、県では、中小企業の資金繰り支援に万全を期すべく、積極的な金融対策に取り組んでいます。

2 東日本大震災の影響とその対策

東日本大震災により様々な影響が懸念されることから、県では5月に県内企業に対する調査を実施しました。この調査のうち、今後の資金繰りの状況については、約3割の企業が「大変苦しい」「苦しい」と回答しており、中でも厳しい現状を回答した割合が大きかった中小企業、小規模事業者の経営への影響が懸念されます。

図1 県内企業の今後半年程度の資金繰りの状況

富山県における農村女性の起業活動への支援体系

(東日本大震災の県内経済への影響調査(平成23年5月実施))

また、地震発生後、金融相談窓口を設置しており、震災の影響を受ける中小企業者から、これまで119件(5月末現在)の相談を受けており、資金繰りを中心に様々な影響を受けていることがわかりました。

相談を受けた事例
☆県の対応

こうした状況を踏まえ、県では、震災発生以降、状況に応じて順次、融資制度の創設・拡充を図り、震災の影響を受ける中小企業者の資金繰り円滑化に積極的に取り組んでいます。

(1)
平成23年3月15日に、「経済変動対策緊急融資」に「東日本大震災特別枠」を創設しました。
(2)
平成23年4月1日に、「経済変動対策緊急融資」に対象要件を追加しました。
(3)
平成23年5月23日に、「東日本大震災特別枠」に対象要件の追加及び融資限度額の拡充を行いました。
○経済変動対策緊急融資 経済変動対策緊急融資

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3 平成23年度の中小企業金融支援策の拡充

(1)世界同時不況からの脱却

図2 資金繰り判断の状況(北陸 短観)

北陸 短観

(「北陸 短観(2011年3月調査)」日本銀行金沢支店調べ)

平成20年9月のアメリカ大手証券会社の経営破綻に端を発した世界同時不況により、中小企業の資金繰りはかなり悪化しました。このため県では、平成20年10月に経済変動対策緊急融資を創設し、また同年12月には借換資金である緊急経営改善資金の対象要件の緩和や融資限度額の拡充など、中小企業の資金繰り円滑化に積極的に取り組んできました。

最近では、景気の持ち直しにより資金繰りは改善傾向にありますが、依然として厳しい状況であり、県では平成23年度予算において、経済変動対策緊急融資と緊急経営改善資金の取扱いを1年間延長するとともに、新規融資枠を平成22年度当初に比べ40億円多い、380億円としました。

また、震災関係の融資制度の創設・拡充に伴い、6月補正において新規融資枠を30億円拡大しました。

経済変動対策緊急融資等
(2)新成長分野への進出支援

県内経済の活性化のためには、将来を見据えた成長分野への進出や設備投資を支援することも重要であると考えており、平成23年度予算において以下の取組みを実施することにしております。

成長分野への支援等

4 融資実績とその効果

緊急融資・借換資金の融資実績は、これまでに18,075件、2,015億円(平成23年5月末現在)の実績がありました。

図3 緊急融資・借換資金の融資実績(年度別)

緊急融資・借換資金の融資実績

緊急融資創設(H20.10)前と後の県内倒産状況

また、県内の企業倒産の状況については、平成20年10月の緊急融資制度創設の前後で比較すると、負債額は約1割減少しています。リーマンショック以降の大変厳しい経営環境を考慮すると、倒産の大幅な増加も懸念されましたが、緊急融資等、県融資制度の拡充が中小企業の経営安定に一定程度効果があったものと考えています。

5 おわりに

本県の経済は、東日本大震災の影響も懸念され、依然として厳しい状況にありますが、今後とも県内経済情勢を見極めながら、国や金融機関、信用保証協会、商工団体、市町村等とも連携しながら、中小企業の経営安定や成長を支援してまいりたいと考えています。

とやま経済月報
平成23年7月号