特集

キトキトくん

大きな成果のあった「スポレクとやま2010」

−開催の概要とアンケート結果に見る来場者の動向−
富山県教育委員会 スポーツ・保健課

1 はじめに

 昨年10月16日から19日の4日間にわたり、「きときとスポレク きてきて富山」をスローガンに、国内最大の生涯スポーツの祭典である第23回全国スポーツ・レクリエーション祭「スポレクとやま2010」が本県で開催されました。

 JR富山駅北口に近い富山市総合体育館と富岩運河環水公園周辺で開催した開会式、特別行事では、富山県の美しく豊かな自然や伝統文化のPR、食の富山ブランド販売など、魅力溢れる「人が輝く元気とやま」を全国に発信しました。

 また、全国初となる県内全市町村で開催した29の種目別大会では、各都道府県の代表選手や韓国の選手らが熱戦を展開するとともに、地域や世代をこえて、多彩な交流を深めることができました。

2 「スポレクとやま2010」の開催概要

(1)祭典参加者数

  開催期間中は、好天にも恵まれ、開会式、特別行事は、延べ11万人、各市町村で開催された種目別大会には、延べ9万9千人の参加があるなど、祭典の総参加者数は21万3千人という大きな規模のイベントとなりました。これは、第15回広島大会(平成14年)以降では、最高の参加者数となりました。

行事別参加者数(延べ人数)
行事名参加者数(人)
213,300
開会式   10月16日(土)8,000
特別行事  10月16日(土)〜17日(日)102,000
種目別大会
10月16日〜19日
都道府県代表参加種目54,000
フリー参加種目45,000
閉会式   10月19日(火)1,800
シンポジウム 9月19日(日)2,000
日韓スポーツ交流事業500

(2)祭典開催の様子 

 各行事の様子を紹介します。

【開会式:富山市総合体育館】

富山に伝わる3つの民謡の演技

富山県選手代表による選手宣誓

参加者全員による
「きときと夢体操」

 開会式は、JR富山駅北口近くの富山市総合体育館で行われ、ブラスバンド演奏やチアリーディング、富山に伝わる3つの民謡(おわら、こきりこ、むぎや)をスポーツ大会らしくアレンジした舞踊などで全国や韓国からの参加者をお迎えしました。

 石井富山県知事の開祭宣言、主催者挨拶などの後に、富山県選手代表による選手宣誓が行われました。式典の最後は、地元ミュージシャンの高原兄さんの歌に合わせて出演者、観客全員で「きときと夢体操」を行い、式典の雰囲気は最高潮に。来場者全員が忘れられない感動と喜びを感じた開会式になりました。

【特別行事:富岩運河環水公園周辺】

富岩運河でのカヌー体験

富山の味覚・ブランドコーナーなど

野外劇場のお楽しみステージ

 富岩運河環水公園周辺で開催された特別行事では、カヌー体験などのニュースポーツ体験コーナーが33種目、食の富山ブランドなどが109店、日頃の活動の成果を発表する県民発表ステージが23団体、お笑いやトークショーなどのお楽しみステージが10ステージなど、多くの出展・出店があり、県外の選手や地元の皆さんで大いに賑わいました。なかでも、富山ブランドや各市町村の地域ブランドの出店では、ますの寿し、シロエビ、地酒など富山ならではの味覚がほとんど完売するほど大好評でした。

【種目別大会:県内15市町村29種目会場】

男女混合綱引(射水市)

トランポリン(立山町)

ウォークラリー(富山市)

 各市町村では、都道府県代表種目のグラウンドゴルフ、男女混合綱引など18種目、誰もが参加できるフリー参加種目のウォークラリー、ビーチボールなど11種目、合わせて29種目が実施されました。

 また、各市町村の会場では、地域の伝統芸能やふるまい鍋、特産品のPRなども行われ、県外参加者から好評を得ました。

【シンポジウム:オーバード・ホール(富山市芸術文化ホール)】

講演会講師:川淵三郎氏

パネルディスカッション

富山県選手団結団式

 祭典の開催1ヶ月前の9月19日にシンポジウムが開催され、川淵三郎氏(〈財〉日本サッカー協会名誉会長)の講演やパネルディスカッションが行われました。また、シンポジウム後には、全国スポレク祭に参加する富山県選手団の結団式が開催されました。

【閉会式:オーバード・ホール】

出演者全員によるフィナーレ

 21万人余りが参加した「スポレクとやま2010」は、祭典旗を栃木県へ引継ぎ、新たな交流と友情の輪をさらに広げることを願って祭典の幕を閉じました。

(全国スポレク祭の記録は「とやまスポーツ情報ネットワーク」HPでご覧いただけます。)

3 経済波及効果について

(1)波及効果の試算

 「スポレクとやま2010」は1万2千人が県外から来県し、県内の来場者数を加えると延べ21万人余りの参加となりました。

 そこで、これらの方々による飲食費、お土産費などの消費支出、県及び各市町村における開催経費による経済波及効果について、平成17年富山県産業連関表を使って試算をしたところ約30億円と非常に大きな本県経済への経済効果があったと考えられます。

 宿泊費や特別行事会場での物産品購入、飲食等の消費支出、県及び市町村の開催経費による直接効果は約20億円で、対個人サービス(飲食店等)や商業を中心に1.5倍の波及効果があったことになります。

 なお、試算に用いた来場者の消費支出額は、県内宿泊施設におけるアンケート調査等により算出しました。

(2)前年度開催県(宮崎大会)との比較 

 今回試算した経済波及効果について、先催県の宮崎県(平成21年度開催)と比較すると、22億3千万円に対し、本県はその1.3倍となりました。

参加者数及び経済波及効果等の比較
 参加者数
(延べ人数)
 開催経費経済波及効果
県外からの来県者
(選手・監督等実人数)
富山大会213,300人12,000人3.4億円29.5億円
宮崎大会126,000人8,000人3.8億円22.3億円

実行委員会事務局調べ

 次に、経済波及効果の基礎となった来県者の1人当たりの消費支出額を比較すると、本県の宿泊費は、県外からのアクセスが良いため宿泊日数は2.9日と宮崎大会に比べ約1日少なく、約2万4千円と低くなっていますが、飲食費は、1万5千円と若干高くなっています。また、レンタカーや公共交通機関などの県内での交通費は、ほぼ同じ額となっています。1人当たりの支出総額では、宮崎県の約8万6千円に対し、本県は約7万円と約1万6千円少なくなっています。

来県者の1人当たり消費支出比較

(単位:円)

 宿泊費飲食費お土産費交通費合計
富山大会(平均2.9泊) 24,42715,05424,5105,53469,525
宮崎大会(平均4.0泊) 34,36513,62332,6425,48486,114

実行委員会事務局調べ

 以上のことから宮崎県と総合的に比較すると、開催経費や1人当たり消費支出額は本県が少ないが、県外からの来県者数が1.5倍の1万2千人であったことや、特別行事をJR富山駅に近い富岩運河環水公園周辺で開催したことで交通の利便性が良くなり、宮崎県の4万人に対し、9万9千人と倍以上の多くの来場があったことなどにより、経済波及効果が大きくなったと考えられます。

(3)学会・研究会等との比較

 「スポレクとやま2010」と県内で開催された平成22年度の学会・研究会等の来県者の消費支出額を比較すると、スポレク祭は開催期間が4日間と長いため、平均宿泊数は、1.0泊多く、宿泊費は約2万4千円と高くなっており、それに伴い飲食費も約5千円高くなっています。お土産費では、中高年を対象とした祭典であったことや地域ブランド販売コーナーの充実、スポレク関連グッズの販売などにより3倍以上高くなっています。交通費は全市町村で競技大会を分散して開催したことにより、スポレク祭が若干高くなっています。

学会・研究会等との比較

(単位:円)

 宿泊費飲食費お土産費交通費合計
スポレクとやま2010(平均2.9泊) 24,42715,05424,5105,53469,525
学会・研究会等22年(平均1.9泊) 15,37110,2896,9222,99435,576
21年(平均1.9泊) 15,44911,2208,0424,31539,046

(実行委員会事務局、富山コンベンションビューロー調べ) 

4 アンケート調査から見える来場者等の傾向

 次にアンケート調査から、開会式、特別行事に来場された方や宿泊者の傾向について見てみます。

(1)県内来場者アンケート(回答数:396人)

年代 イベント情報の入手方法
幅広い年代の方が来場され、特に30代の家族連れが多かった。 スポレク祭の情報入手先は、新聞、テレビなどのメディアの他に、家族・友人などからの情報入手でした。
楽しかったイベントコーナー
会場内のイベントで人気が高かったのは、とやまの味覚コーナーやニュースポーツ体験コーナー、お楽しみステージでした。

とやまの味覚コーナー

ニュースポーツ体験コーナー

賑わいのステージ発表

(2)県外来場者アンケート(回答数:328人)

年代 食べた料理・食材
参加した男女比はほぼ半数。
年代別では40代から60代までが約7割を占めました。
参加者が食べた富山の食材として、ホタルイカ、ますの寿し、シロエビが上位を占め、富山ならではの食材に人気が集まりました。

ホタルイカ

ますの寿し

シロエビ

(3)宿泊者アンケート(回答数:1,090人)

年代 来県交通手段
男女比はほぼ半数。
年代別では40代から60代までが約7割を占めました。
宿泊者の来県手段として、高速道路網の充実や高速料金の定額化により、自家用車の利用が最も多く、次いでJRの順でした。
観光した又は観光予定の場所・施設(人)
主な観光先としては、近くて気軽に見学ができる高岡大仏、国宝瑞龍寺などの施設のほか、立山黒部アルペンルート、五箇山合掌造り集落といった富山を代表する観光地にも人気が集まりました。

5 おわりに

 今回開催した「スポレクとやま2010」には、延べ21万人の参加があり、生涯スポーツの振興や地域と年齢の枠を超えた多くの出会いと交流が図られました。

 また、県内外の参加者から「温かいおもてなしに感銘を受けた」「また富山を訪れたい」といった嬉しい手紙などが数多く届き、この祭典で全国の皆さんに「とやまの素晴らしさ」や「元気とやま」を発信することができたと思われます。

 今、観光庁では、スポーツの3つの要素(「観るスポーツ」、「するスポーツ」、「支えるスポーツ」)と旅行・観光をセットにするスポーツ観光を、観光振興や地域活性化などを起爆剤にし、国内外の需要を掘り起こす取り組みが行われています。

 富山県には四季折々が楽しめる観光地や国内有数の山岳地帯などとともに、年間を通じてスポーツ・レクリエーションを実施できる多数のスポーツ施設があり、県外からの受け入れ態勢は十分に整っていると思います。

 「スポレクとやま2010」の開催による経済効果が示すとおり、今後、スポーツ観光という観点での誘客を図っていくことも、本県の地域活性化の一つの方策となるのではないでしょうか。

とやま経済月報
平成23年4月号