特集

にぎわいと魅力あふれるまちづくりへの取組み

富山県 商工労働部 商業まちづくり課

1 はじめに

 平成26年度の北陸新幹線の開業を見据え、観光・交流人口の拡大、地域活性化を図るためにも、にぎわいと魅力あるまちづくりを進めていくことが重要です。

 そこで、県内の中心市街地の現状、課題や、中心市街地や地域の商店街の活性化のための賑わい創出や地域の特色を活かした商店街の魅力の向上など、課題解決に向けた県の施策について紹介します。

2 データからみた中心市街地の現状

(1)小売店舗の立地場所の変化

 従来、中心市街地は、生活、娯楽、交流の場であると同時に、固有の文化や伝統を育んできました。しかし、近年の車社会の進展に伴い、郊外での住宅地開発や大型店の立地などが進んだ結果、ロードサイド型の小売店舗が増加する一方、駅周辺型や市街地型は平成9年に比べ約4割減少しており、中心市街地や商店街の活力が失われてきています。

図1 県内の小売店舗の立地場所の変化(H9=100)

※県内の小売店舗のうち商業集積地区に立地する店舗について、立地場所の類型別に店舗数を指数化し推移をまとめたもの

駅周辺型駅周辺に立地する商業集積地区をいう
市街地型都市の中心部(駅周辺を除く)にある繁華街やオフィス街に立地する商業集積地区をいう
住宅地背景型住宅地又は住宅団地を後背地として、主にそれらに居住する人々が消費者である商業集積地区をいう
ロードサイド型主要道路の沿線を中心に立地している商業集積地区をいう

資料:商業統計(経済産業省)

(2)県内の人口集中地区の推移

 市街地の広がりを示すものさしとして、人口集中地区(DID)*1という指標が用いられています。これによると、県内の人口集中地区の面積は昭和40年(1965年)に43km²だったのが、平成17年(2005年)には101km²に増加する一方、人口密度は7,944人/km²から3,956人/km²と半分以下に減少しており、県内の市街地が薄く広がっていることが分かります。

*1 人口集中地区(DID):Densely Inhabited District
国勢調査における人口密度4,000人/km²で5,000人以上が集まる地域。

図2 県内の人口集中地区の推移

資料:国勢調査(総務省)

(3)中心市街地の歩行者通行量の推移(富山市、高岡市:休日)

 また、富山市、高岡市の中心市街地における歩行者通行量の推移を見ると、富山市の平成21年(2009年)、高岡市の平成20年(2008年)における歩行者通行量は、富山市では昭和61年と比べて約5分の1、高岡市では約7分の1にまで減少しています。

 図1や図2で表れているように、市街地型小売店舗の減少や県内の市街地が広がっていることを裏付けています。

図3 中心市街地の歩行者通行量の推移(富山市:休日)

(注)H10までは、県が実施した商店街等通行量実態調査、H13以降は、富山市・富山商工会議所が実施した歩行者通行量調査による。

図4 中心市街地の歩行者通行量の推移(高岡市:休日)

(注)H10までは、県が実施した商店街等通行量実態調査、H13以降は、高岡市・高岡商工会議所・高岡市商店街連盟が実施した歩行者通行量調査による。 なお、文苑堂書店前は、H13調査までは高岡地方交通前の通行量で、H18は「工房手わざ」前の通行量。

(4)商店街の今後の方向性

 県が平成20年度において実施した消費者動向リサーチでは、消費者の視点から「商店街が将来に向けて力を入れていくこと」を聞いたところ、いずれの地域でも「買い物の場としての商業機能の強化」「空き店舗の解消」が多くなっています。

 これまでみたとおり、ロードサイド型小売店舗が増加するなど、中心市街地の機能は低下しています。しかし、消費者は、中心市街地がこれまでどおり商業機能を持ち活性化していくべきと考えていることが分かります。

図5 商店街の今後の方向性

資料:消費者動向リサーチ(平成20年度 富山県)

3 国や県のこれまでの動き・最近の動き

 少子高齢化の時代を迎えた今日では、郊外拡散型のまちづくりは、高齢者など交通手段を持たない方の生活の利便性を損ねることや、社会基盤整備や維持管理コストが増大することによる、各種公共サービスの低下、環境負荷の増大などの問題の要因になると考えられています。

 このようなことから、国の中心市街地活性化基本計画の認定を受けている富山市・高岡市では、公共交通の充実、まちなか居住などによる「コンパクトなまちづくり」が進められています。

 また、国においても、地域住民の生活の利便性を高める、いわゆる「地域コミュニティの担い手」として商店街を再生することを目的として、平成21年8月に「地域商店街活性化法」が制定されました。

 具体的には、

1 商店街が策定する商店街活性化事業計画を国が認定する

2 認定を受けた商店街活性化事業計画に位置づけられた事業に対し、国が重点的に支援する

ことなどが定められ、宅配・買物支援サービスの実施、高齢者・子育て支援施設の設置や運営、アーケード・広場・街路整備などといった、商店街が地域住民のニーズに応じて実施し、かつ、商店街の活性化も見込まれる取組みについて、国の認定を受けることで、通常よりも高い補助率による支援を受けることができるようになるなど、支援体制の強化が図られたところです。

 また、これまで商工団体等が経済活動や地域貢献を通じてまちづくりに寄与してきましたが、年々会員数が減少しており、このことが中心市街地や商店街の活力が失われつつある要因の一つとして考えられています。

 そこで、富山県では平成22年6月に「商工業者等によるにぎわいと魅力あるまちづくり推進条例」を制定しました。

 この条例は、

1 商工団体等は、商工業者の積極的な参加を得て「にぎわいと魅力あるまちづくり」に率先して取り組むこと

2 本店を県外に有する商工業者を含め、地域で事業を営むすべての商工業者が商工団体等へ加入すること

を目的としています。

4 県の具体的な施策

 中心市街地が活性化するためには商店街が活気を取り戻すことが不可欠であるため、県では、空き店舗対策・イベントの実施など親子や家族連れなど多くの方が商店街にきてもらえるような賑わいの創出や歴史・文化などの地域の特色や観光資源を活用した店舗・商店街の魅力向上に積極的に取り組んでいます。

 以下、具体的な施策について紹介します。

【補助・支援事業】
  • がんばる商店街支援事業
     自らの努力と工夫により商店街の活性化や、商店街の基盤整備、空き店舗活用事業、イベント実施などの取組みを実施する商店街組合等を県と市町村が支援します。
  • 商店街ファミリーわくわく元気支援事業
     家族が商店街で楽しめるような独自性ある取組みを実施する商店街組合等を県と市町村が支援します。
  • 歴史と文化が薫る商店街モデル事業
     歴史的・文化的資源などの地域資源を活用した商店街活性化の取組みを実施する商店街組合等を県と市町村が支援します。
【空き店舗対策】
  • 商店街「にぎわいサロン」モデル事業

    <にぎわいサロン(砺波市)>
     商店街内の空き店舗等を活用して専任の担当者を配置し、商店街の情報発信や交流・憩いの場を提供しています。展覧会や生鮮品の即売会等様々なイベントを通して、商店街ならではの魅力を伝え、賑わいづくりを推進します。
    (富山市2箇所、砺波市1箇所、黒部市1箇所、上市町1箇所 計5箇所設置)
  • 商店街アンテナショップ「技術・技能デパート」設置事業

    <技術・技能デパート テクテクたかおか>
     商店街の空き店舗を利用して、県内企業の独自性ある製品や優れた技術力をPRしています。(2箇所 富山市中央通り、高岡市末広町)
     製品や先端技術を展示する常設ギャラリーであるとともに、企業同士のマッチングを図る商談の場として、県内のものづくり企業の発展とまちづくりに貢献しています。
  • 「食」を活用した商店街の賑わいづくりモデル事業

    <移動直売所(富山市)>
     県内4市(富山、高岡、魚津、砺波)の商店街において、移動販売車による販売(地場野菜、農産加工品等)やイベント等を実施するなど、地域の食材を活用した商店街活性化モデル事業を実施しています。
  • 空き店舗情報提供事業
     商店街の空き店舗対策として、県内商店街の空き店舗情報やイベント情報等を一元的に管理・情報発信するポータルサイト「富山県商店街情報ネット」を制作・運営しています。
    URL:http://www.toyama-machidukuri.net/
【人材育成】
  • まちの魅力アップサポーター事業
     商工会議所、商工会やまちづくり会社に「まちの魅力アップサポーター」を配置。様々な中心市街地活性化、商業活性化事業の企画・運営に従事しており、商店街で活躍できる人材を育成しています。
    (平成22年8月現在 23団体、41名配置)
  • タウンマネージャー設置事業
     県内商店街の多くは、施設の老朽化や若い世代の不足、高齢化等社会課題への対応等様々な問題を抱えています。
     このため、富山県商店街振興組合連合会に「タウンマネージャー」を配置し、県内全域商店街を対象に、商店街が抱える課題等の解決や商業者の意識改革について指導・助言を行っています。
  • 商店街次世代キーマン育成プログラム事業
     若手商業者等を対象として今後の商店街運営に向けたリーダーの役割等に関する講座を実施し、今後の商店街を担う者の意識改革を図っています。
【新しい買い物サービスの検討】
  • 宅配サービス設置事業

    <お買物代行サービス 楽ちんクラブ>
     少子高齢化が進行する中で、住民の利便性の向上を図り、新たな顧客の確保等商店街の安定的な経営を図るためには、「買い物代行(宅配)」事業が一つの手段となり得るのではないかと考えています。
     このため、日常生活の不便さを解消するとともに、併せて実施状況を分析し、商店街等にとっての新たな販路や顧客ニーズを掘り起こすことを目的として、日常の買物に不便をきたしている高齢者世帯、子育て世帯、共働き世帯等を対象に、商店街等が共同で宅配するサービスをモデル的に実施しています。
【賑わいづくり】

  • <とやまっ子まちなかアート in 商店街 富山会場>
    とやまっ子まちなかアートin商店街2010事業
     親子や家族で商店街に親しむ機会を提供し、商店街の賑わいづくりを推進するため、子どもたちの発表会等を商店街などのまちなかで開催しています。

5 おわりに

 中心市街地は、様々な都市機能が集積する「地域の顔」であることから、中心市街地に立地する商業者をはじめ、住民、行政など幅広い参画を図りながら、魅力ある商業空間の形成や再生のための各種施策を推進していきたいと考えています。

とやま経済月報
平成22年9月号