特集

雇用情勢を踏まえた職業訓練の拡充について
〜働く人々が、生涯を通じて能力を高め、 発揮できる社会を目指して〜

富山県商工労働部 職業能力開発課

1 はじめに

厳しい経済情勢の中、本県の雇用情勢は昨年5月に有効求人倍率が1倍を下回り、それ以降低下をつづけ、今年4月には0.46倍まで低下し、6月には0.49倍と0.03ポイント上回りましたが、依然として厳しい状況が続いております。

このような状況のなか、再就職のための離職者訓練や在職者のスキルアップのための職業訓練の受講を希望される方が増えており、県では、今年度、国の経済危機対策を活用した緊急雇用対策に取り組んでいます。今回は、県が行っている離職者や在職者を対象とした職業訓練の具体的な取組みについて紹介します。

雇用情勢の動向

資料 富山労働局「労働市場月報」

2 離職者に対する職業訓練の展開

県の職業能力開発訓練は、富山市にある富山県技術専門学院(本校)と黒部市及び南砺市にある新川センター、砺波センター(2分校)でそれぞれ実施しています。

●施設内訓練

《短期課程》

離転職者に対して新たな職業に必要な知識・技能を習得させるため、1年以内の期間の訓練を実施しています。

今年度は受講希望者が多いので、施設設備や指導体制を勘案し、定員の2割までの超過受入を行っております。

○短期課程訓練風景


(金属加工科)


(造園管理科)


( )内の数字は年間延べ定員
※コース:訓練開始時期により異なる

施設内訓練の募集・応募状況
 平成20年度平成21年度
延べ定員356名439名  83名の増
4〜7月の応募倍率1.55倍2.42倍

●民間委託訓練

雇用情勢が厳しさを増す中、職業訓練を希望する方が増加することから、再就職に当たり多様な職業訓練の機会を確保するため、専修学校等の民間教育訓練機関に職業訓練を委託しています。

この訓練では、平成20年度は定員265名で実施しましたが、今年度は、当初の定員を925名とし、さらに6月補正で173名を追加計上して合計1,098名を実施することとしています。

特に今回重点を置いたのは、一般離転職者対象コースの定員を平成20年度の70名から、平成21年度6月補正後には863名と約12倍にしたことであり、雇用情勢にあわせて、職業訓練受講機会の拡大を図っています。

民間委託訓練の定員数の推移 (人)
委託訓練の応募状況
 平成20年度平成21年度
4〜7月の応募倍率0.68倍1.93倍

具体的な訓練内容としては、これまで事務系のパソコン処理や経理等の定型化した分野を中心に実施してきましたが、今年度は、今後雇用の受け皿として期待できる介護(介護福祉士、介護職員基礎研修、訪問介護員2級〔ホームヘルパー〕)、情報処理といった分野を新設しました。

また、より求人ニーズにあった新規の訓練コースとして、保安警備・ビルメンテナンス分野など、関係団体からの要望に応じた訓練コース、販売・調理・サービス分野など、民間業者からの提案による訓練コースなどを予定しており、訓練分野の拡大に努めています。

委託訓練の定員数の職種別内訳 (人)

今後は、ものづくり企業の稼動していない施設や熟練した技能を有する者を活用した「ものづくり企業委託訓練」をはじめ、その他の新規分野への拡大等も検討しています。求人ニーズにあった多様な訓練を切れ目なく実施することにより、求人企業と求職者の雇用のミスマッチを解消し、多くの離職者が早期に再就職できることが重要であると考えています。

また、民間委託訓練の実施にあたっては、離職者が新たな分野の訓練を受ける前に、基礎的な知識取得や体験訓練を実施する「離職者ジョブ・チャレンジ訓練事業」を今年度より実施しており、円滑な職業訓練に結びつけるよう支援しているところです。

離職者ジョブ・チャレンジ訓練事業の概要
 概要
分野OA実務、会計実務、介護実務
開催日数職業訓練コースの募集・実施時期に合わせて、職種毎に1回あたり3日間
回数年10回前後

3 在職者に対する職業訓練の展開

企業で働いている方などを対象にしたスキルアップを図るための職業訓練では、昨年来の厳しい雇用情勢のなか、企業のニーズに対応して行うオーダーメイド型において、雇用調整助成金の教育訓練助成を活用できるコースとして拡充を図っています。

※雇用調整助成金についての詳細は厚生労働省のホームページをご覧下さい。
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/a-top.html

1レディーメイド型

県が企業ニーズをもとに、独自に訓練内容等を企画・立案して実施するもの。

平成20年度実績平成21年度計画
41コース 530名40コース 565名

2オーダーメイド型

県が個々の企業の人材育成ニーズに応じて日程、場所、訓練内容等の調整を行い実施するもの。

平成20年度実績 平成21年度当初計画 →  6月補正以降計画
11コース 188名 20コース 400名 →  40コース 800名

3とやま技能継承塾

熟練技能の円滑な継承を図るため、とやまの名匠等が企業の若手技能者に実技指導するほか、管理監督者等を対象に技能伝承の手法等を教授するもの。

・技能向上コース(若手技能者対象)
実施職種普通旋盤、フライス盤、溶接、機械仕上げの4コース
実施内容ものづくり技の(勘、コツ)をマンツーマンで実技指導
実績H20年度、4コース20名受講 (各コース、4日間)
・リーダーコース(管理監督者対象)
実施職種製造業
実施内容現場リーダーとして必要な技能伝承の手法や指導力向上の演習
実績H20年度、22名受講 (4日間)
○技能継承塾訓練風景


(機械仕上げコース)

※とやまの名匠

県内において、高度に熟練した技能を持ち、技能伝承や後継者育成などに指導者として積極的に活動していただける方で、富山県が認定した方です。

認定は平成14年度から行っており、これまで17職種28名の方を認定しています。

4 おわりに

県としては、職業訓練が雇用のセーフティネットとしての役割が果たせるよう、今後とも富山労働局や関係機関と連携し、雇用情勢に対応した職業訓練を計画し、雇用の安定が図られるよう全力を尽くしてまいります。

※入校案内へのリンク
富山県技術専門学院 http://www.gisen-toyama.ac.jp/

※技能継承へのリンク
富山県職業能力開発協会 http://www.toyama-noukai.or.jp/

とやま経済月報
平成21年9月号