特集

誰もがいきいきと働ける社会を目指して
―障害者雇用を応援する取組み―

富山県 商工労働部 労働雇用課



1 はじめに


近年、「ノーマライゼーション」の理念の普及に伴って、障害のある方の社会参加が進み、企業や地域などさまざまな場所で活躍する人も増え、同時に就職を希望する人も多くなっています。

また、地域のネットワークの拡大、企業での一般就労の促進を支援する仕組みの普及、授産施設等での福祉的就労の底上げを支援する取組みなどから、障害のある方の働く場も拡大してきています。

しかし、一人でも多くの障害のある方がいきいきと働き、生活していくためには、事業主やそこで働く人、地域の人々の一層の理解と支援が今後ますます必要となっていきます。

そこで、障害者雇用の推進に向けて、現在、県や国が行っている取組みについて紹介します。



2 企業における障害者雇用の現状


障害者の雇用は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」において法定雇用率が定められています。民間企業の法定雇用率は1.8%であり、常用労働者数が56人以上の企業については、これに基づいて障害者を雇用する義務があります。

本県における障害者の雇用状況は、平成20年6月1日現在の厚生労働省の調査によると、@法定雇用率を達成している企業の割合は59.4%(前年比2.1ポイント上昇、全国6位)、A実雇用率は1.66%(前年比0.05ポイント上昇、全国24位)となっています。

このように、法定雇用率を達成している企業の割合、実雇用率とも昨年度を、また、全国平均を上回る状況となっていますが、@実雇用率が法定雇用率を下回っていること、A法定雇用率達成企業の割合がまだまだ低いことなどから、障害者雇用の推進に向けて、さらなる努力が必要であると考えています。

雇用率・達成企業割合の推移


3 県の取組み


県では障害者雇用の推進のため、大きく分けて(1)就労移行支援、(2)雇用の場の確保・企業への周知啓発、(3)授産施設等での福祉的就労の底上げ、の3つの支援を行っています。

障害者雇用を進めるためには、まず福祉施設等から企業での就職へと結びつけていく必要があり、職場訓練等を通じて就職に結びつける就労移行支援を行っています。また、一般就労するには働ける企業があることが前提となるため、雇用の場を確保するために企業への周知啓発等の働きかけを行っています。

さらに、すぐに一般就労することが難しい方については、移行準備の一つとして授産施設等での福祉的就労がありますが、そうした方の生活の安定につながるよう、工賃水準の向上に取り組んでいます。

具体的には、それぞれ次のような取組みを行っています。


(1) 就労移行支援


@障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターを指定し、就職を希望されている障害のある方、あるいは、在職中の障害のある方が抱えている課題に応じて、雇用、福祉、教育等の関係機関との連携の下、就業支援担当者と生活支援担当者が協力して就業面及び生活面の一体的な支援を実施しています。このセンターは県内3箇所に設置されていましたが、昨年3月、砺波圏域でのセンター指定により、県内4つの障害保健福祉圏域全てに設置されました(全圏域での設置は全国3番目)。

<県内の指定状況>

県内の指定状況

A障害者チャレンジトレーニング事業

事業所での職場実習が、その後の就職に大きな効果をあげていることを踏まえ、平成18年度から「障害者チャレンジトレーニング事業」として、支援センターを通じて、民間事業所での短期の就労体験を実施しています。本年度においては、予算を拡充するとともに、地域ボランティア(障害者就労サポーター)を支援者として活用し、さらにきめの細かい支援に取り組んでいるところです。

<障害者チャレンジトレーニング事業の概要>

障害者チャレンジトレーニング事業の概要

<障害者チャレンジトレーニング事業の実績>

障害者チャレンジトレーニング事業の実績

<障害者チャレンジトレーニング事業の様子>

障害者チャレンジトレーニング事業の様子

また、平成19年度からは、「障害者自立支援対策臨時特例交付金」を活用して「障害者職場実習設備等整備事業」を設け、職場実習受入企業が、その受入れのために企業内の設備更新等を実施した場合に支援しています。


<障害者職場実習設備等整備事業(R〜S)>

補助対象経費:障害者の職場実習を受入れるために実施した事業所内の設備等の整備に要する経費

補助率:定額(10/10)

補助限度額:1事業所当たり5,000千円


B職業訓練の充実

民間訓練機関への委託訓練を実施するなど、障害のある方に対する職業訓練の充実に努めています。


<障害者の態様に応じた多様な委託訓練>

(1)知識・技能習得訓練コース(訓練期間:3か月)

民間教育訓練機関、社会福祉法人、NPO法人等を委託先とする集合訓練

(2)実践能力習得訓練コース(訓練期間:標準3か月、障害に応じて6か月まで延長可)

障害のある方の雇用を検討している企業等を委託先とする個別訓練


C特別支援学校生徒の職場体験受入れ

事業所での障害者雇用を一層推進していくためには、行政が率先して障害者雇用を進めていくことも重要であると考えています。特に、職場体験は、就労に大きな効果をあげるだけではなく、障害者雇用への普及啓発にも大きな効果が見込まれることから、県では、平成18年度から特別支援学校の生徒の職場体験を受入れています。


<実績>Q2部署6人、R6部署11人、S11月末 4部署8人


(2)雇用の場の確保・企業への周知啓発


@知的・精神障害者雇用奨励金の支給

知的・精神障害者の雇用が進まないことから、一定数を超えて知的・精神障害者を雇用している事業主に対して雇用奨励金を県単独で支給しています。


<支給額> 1人当たり月額8千円(限度額384千円)

(一定数 → 常用雇用者の3%相当数又は1月当たり2人のいずれか大きい数)


A障害者雇用推進員の企業訪問による求人開拓や障害者雇用の好事例の収集

<企業訪問> Q223事業所、R216事業所

<好事例> 県のHP(労働雇用課のぺージ)で紹介(Q10社、R10社)

※19年度についてはこちらからご覧ください。


このほかにも、県単独では障害者雇用優良事業所の知事表彰、障害者雇用事業所等に対する物品・役務・建設工事の入札発注等の優遇措置に取り組んでいます。また、富山労働局と連携し、経済団体への障害者雇用推進の要請や、障害者合同就職面接会の開催も行っています。


(3)授産施設等の福祉的就労の底上げ

  • ①「福祉の店」設置事業による授産製品の店頭販売やインターネット販売、授産製品等を優先的に発注できる政策目的随意契約制度の活用などによる授産製品の積極的な販売促進
  • ②企業的な経営手法の活用など工賃水準を引き上げるための具体的な方策を定めた「工賃倍増5か年計画」の実施

などにより工賃水準の向上に取り組んでいるところです。



4 国の取組み


国においては、「福祉から雇用への推進5か年計画(平成19年度から23年度)」に基づき、全障害保健福祉圏域での障害者就業・生活支援センターの設置を促進するとともに、次のような取組みにより、障害のある方の就労を積極的に支援しています。


@県内ハローワークで行っている障害者の職業相談や職業紹介


Aジョブコーチによる職場定着支援

障害者が職場に円滑に適用していけるよう、障害者及び事業所の双方に対し、相談・助言等を行う

<本県におけるジョブコーチの配置状況>

20年4月現在 16人(富山障害者職業センターに配置 5名、福祉施設に配置 11名)

Bトライアル雇用

障害者を短期の試行雇用の形で受け入れることにより、事業主の障害者雇用のきっかけをつくり、常用雇用への移行を促進する。事業主への奨励金として、トライアル雇用者1人につき月4万円を支給(3か月を限度)


C職場環境の整備や適切な雇用管理など、障害者の雇用継続のための助成金支給

<助成金>

助成金


5 改正障害者雇用促進法の概要


障害のある方の就労意欲が高まっているなか、@地域の身近な雇用の場である中小企業での障害者雇用は低下傾向にあること、Aまた、短時間労働に対する障害者のニーズに現行制度が対応できていないことなどから、障害者雇用促進法が改正されました。

具体的には、@中小企業の障害者雇用の促進を図るため、障害者雇用納付金制度(納付金の徴収・調整金の支給)の適用対象の範囲を中小企業に拡大すること、A福祉から雇用への移行を促進する観点や高齢障害者等のニーズにあわせ、雇用率制度に短時間労働を雇用義務に加えることなどが改正の内容となっています。

○規模別障害者の雇用状況(平成20年6月1日現在)

○規模別障害者の雇用状況(平成20年6月1日現在)

○障害者の雇用促進等に関する法律の一部を改正する法律の概要

○障害者の雇用促進等に関する法律の一部を改正する法律の概要


6 おわりに


ここまで、障害者雇用を推進する様々な取組みを紹介してまいりました。このように、県・国をはじめとした行政機関だけではなく、福祉施設・企業等、多くの機関が連携して、障害のある方が働くことを応援する流れができてきています。

その背景にあるのは、「働く」ということが、生活を安定させるためというのは勿論のこと、その方の生きがいにもつながる大切なものであるということです。障害のあるなしに関わらず、誰もが自分らしくいきいきと働ける社会づくりが、今後ますます重要なテーマとなっていきます。

県も、そうした社会づくりを担う一員として、一人でも多くの障害のある方が雇用されるよう、富山労働局や関係機関と連携し、積極的に取り組んでまいりたいと考えています。






とやま経済月報
平成21年2月号