特集

県民の雇用の安定を目指して
〜現下の厳しい経済情勢を踏まえた雇用対策の推進〜

富山県商工労働部労働雇用課

1 はじめに

本県の雇用情勢は、有効求人倍率が大きく低下し、また、非正規労働者の雇止めや新規学卒者の採用内定取消しの発生、人員整理の増加など厳しさが増しています。

雇用の回復は景気の回復に遅れることから、雇用情勢については、引き続き予断を許さない状況にあると考えています。

このような中、県では、昨年末以降、富山労働局と連携して、国の経済対策を積極的に活用した緊急雇用対策に取組んでいます。今回は、最近の雇用情勢の動向を説明するとともに、現在、県や国が行っている雇用の安定に向けた具体的な取組みについて紹介します。

2 本県の雇用情勢の動向

(1)有効求人倍率

6月の有効求人倍率は0.49倍と、統計を取り始めた昭和38年以降、過去6番目の低い水準となりましたが、2か月連続前月比で上昇しました。(全国は0.43倍と過去最悪)

企業からの有効求人数は11,934人で、前年同月比31.5%減となり、25か月連続で減少しています。一方、職を求める有効求職者数は26,729人で、前年同月比28.8%増となり31か月連続で増加しています。

職種別では、例えば、生産工程・労務の職業で求職者が求人数を上回る(0.23倍)一方、福祉関連職業で求人数が求職者を大幅に上回る(1.92倍)など、求人と求職のミスマッチがみられます。

(2)完全失業率(全国は毎月、都道府県別は四半期毎に発表)

21年1月〜3月期平均の完全失業率は3.5%と、前年同期の3.3%から0.2ポイント上昇しています。(全国は21年6月で5.4%)

(3)非正規労働者の雇止め等(20年10月から21年9月までの見込み)

契約期間満了による「雇止め」、派遣先企業が労働者派遣契約を期間満了前に解除する「派遣切り」、有期契約社員の中途解除など、非正規労働者の雇止め等の状況は7月の調査時点で4,454人となっています。(全国は229,170人)

(4)人員整理数(5人以上の解雇を行った企業の集計)

倒産や事業の縮小などにより企業から解雇された方の人数、いわゆる人員整理数は、20年度で5,795人、19年度の2,416人の約2.4倍となっています。月別の状況をみると、世界的な景気後退の影響を受け、昨年12月以降大幅に増加しています。

(5)新規学卒者の採用内定取消し

本年3月の新規学卒者の採用内定取消し者数は、2社で5人となっています。(全国は427社、2,083人)

(6)雇用に関する県内企業の認識や状況

県が5月に実施した県内企業へのアンケート調査結果では、従業員の過剰感は依然として高く、また、雇用調整を実施・計画している企業の割合も上昇しています。

有効求人倍率(季節調整値)と有効求人数・有効求職者数の推移

※表をクリックすると大きく表示されます

出所:厚生労働省「職業安定業務統計」

事業所及び人員の整理状況(20年4月から21年6月までの推移)

※表をクリックすると大きく表示されます

出所:富山労働局

◇雇用に関する県内企業の認識や状況
区分21年5月調査(前回)21年2月調査増減
従業員の過不足状況
「過剰(過剰・やや過剰)」
50.3%51.8%1.5ポイント減
雇用調整の状況
「既に実施、計画している」
49.1%42.2%6.9ポイント増
※雇用調整では「残業規制、時間外労働の削減」が最も多く、次いで「非正規社員の再契約停止・解雇」が続いています。出所:商工労働部商工企画課「県内経済実態調査」、21年5月に県内企業300社を対象にアンケート調査、回答163社、回収率54.3%

3 県の取組み

県では現下の厳しい雇用情勢を踏まえた緊急の取組みとして、(1)国の交付金を活用した、県及び市町村による雇用創出、(2)離職者等に対する職業訓練の充実、(3)人材不足・担い手不足分野への円滑な労働移動、(4)求職者向け相談体制の強化、(5)新規学卒者をはじめとする若者の就職支援の強化など、雇用の安定に向けた支援を行っています。具体的には、それぞれ次のような取組みを行っています。

(1)県及び市町村による雇用機会の創出

非正規労働者をはじめとした離職を余儀なくされている方々が次の職に就くためには、企業の業績回復が必要ですが、現下の厳しい経済情勢を踏まえ、県及び市町村が、国からの交付金を活用して、本年度から23年度までの3年間、直接雇用や民間等への委託の形で、雇用機会を創出する事業に取組んでいます。

具体的には、1雇用期間が原則1年以上の安定的な雇用機会を創出する「ふるさと雇用再生基金事業」、2雇用期間が6か月未満の臨時応急的な雇用機会を創出する「緊急雇用創出基金事業」の2つの雇用創出事業を本年4月からスタートさせています。

21年度の進捗状況(当初予算ベース)は、6月末現在で「ふるさと雇用再生基金事業」が約6割、「緊急雇用創出基金事業」が約5割となっています。さらに、6月補正予算で「緊急雇用創出基金事業」を大幅に拡充し、さらなる雇用機会の創出を図っています。

【県、市町村あわせた雇用創出見込み】
23年度までの3年間で9,000人程度(6月補正で4,600人以上を追加)
21年度で2,600人程度(6月補正で1,000人程度を追加)

【21年度の進捗状況(6月末現在:21当初予算ベース)】
◇「ふるさと雇用再生基金事業」
  → 進捗率63.8%(雇用済・募集中 319人/雇用見込み 500人)
◇「緊急雇用創出基金事業」
  → 進捗率48.9%(雇用済・募集中 533人/雇用見込み 1,090人)
◇雇用創出基金事業の概要

※表をクリックすると大きく表示されます

◇市町村分を含めた具体的な事業計画(分野別、事業内容、開始時期、雇用人数、連絡先)は、県のホームページ(労働雇用課)で広く公開しています。

(2)職業訓練の充実

厳しい雇用情勢の中、職業訓練を拡充し、離職者の再就職支援や在職者の能力開発の推進に取組んでいます。

離職者の職業訓練については、1ものづくりを主とする施設内訓練の定員枠を20年度の約2割増となる439名とするとともに、2委託訓練についても、求人ニーズの高い介護職員やホームヘルパー2級養成コースの増設や警備や調理スタッフコースの新設を行い、B加えて、フル稼働していない企業における施設や熟練技能者を活用した委託訓練の実施も積極的に検討を進めているところであります。

また、在職者訓練については、在職者のスキルアップを図るため、より企業の人材育成ニーズに応じたオーダーメイド型の在職者訓練を拡充しています。

◇求人・求職ニーズに応じた民間委託職業訓練の拡充
区分20年度
(定員)
21年度(定員)備考(6月補正追加分)
当初6月補正
施設内訓練356名439名439名 
委託訓練265名925名173名1,098名・介護・福祉分野 4コース・73名追加
・保安警備、ビルメンテナンス分野など
 5コース・100名追加
合計621名1,364名173名1,537名 
◇技術専門学院における企業在職者訓練の拡充
区分21年度(定員)備考
当初6月補正
企業在職者訓練20コース
(400名)
20コース
(400名)
40コース
(800名)
・ものづくり系20コース(400名)
・建築系8コース(160名)
・品質管理系6コース(120名)
・事務系6コース(120名)

(3)人材不足・担い手不足分野への円滑な労働移動のための支援

介護・福祉や農林水産業などを中心とした人材や担い手が不足している分野への円滑な労働移動のための支援に取組んでいます。

1介護施設等で一定期間雇用するとともに、介護に必要なスキル・能力を身に付けさせ(ホームヘルパー資格の取得)、介護従事者として育成する「介護サービス支援ステーション運営事業」や健康福祉人材センターに配置する「キャリア支援専門員」による介護・福祉人材のマッチング支援

2農林水産分野への就業を支援する体験研修 など
◇農林水産分野への就業を支援する体験研修
区分20年度実績21年度計画内容
農業分野23名77名新 離職者等就農支援事業(定員50名)
希望作物を対象とした農作業体験(3か月)など
林業分野50名50名Iターン等体験林業推進事業(定員20名)
体験林業の実施と各森林組合への就業斡旋(4日間) など
水産分野33名38名漁業体験中期研修(定員18名)
漁業への適正を判断する研修(座学1日、体験乗船4日) など
合計106名165名 

(4)求職者向け相談体制の強化

昨年秋の金融危機を機に、雇止めや人員整理が増加しています。今回の雇用情勢の悪化の特徴は、離職したと同時に住居を失うなど生活基盤を失う方が多いことです。こうした状況に対応するため、生活相談と職業紹介を一体的に提供する「富山県非正規労働者等総合支援センター」を7月1日に開所するとともに、合同労働相談会の開催、市町村への出張労働相談の実施など「非正規労働者雇用安心サポート事業」により、相談体制の強化に取組んでいます。

1非正規労働者等総合支援センターの設置(7月1日開所)

【設置場所】◇とやま自遊館2階(富山市湊入船町9−1)
【開所時間】◇9時〜17時15分(月〜金曜日)
【相談・情報提供内容】
◇住宅に困窮している求職者に対する情報提供
  → 雇用促進住宅、公営住宅の空室情報の提供及び入居申請のアドバイスなど
◇求職者が活用できる融資制度、生活支援制度の情報提供
  → 離職者生活安定資金、離職者支援資金貸付、就職安定資金融資など
◇職業訓練に関する情報の提供
  → 訓練科目の概要、訓練期間、受講申込期間、申込場所など
◇職業相談、職業紹介並びに求人情報の提供
【相談体制】◇4名(所長1名、相談員3名)

2非正規労働者雇用安心サポート事業

【休日合同労働相談会】
労働局職員、社会保険労務士、弁護士等の相談員による労働者及び事業主を対象とした労働相談会
◇日時・場所
19月6日(日)10:00〜16:00 富山県民会館
210月3日(土)10:00〜16:00 イオンモール高岡

【市町村への出張労働相談】
労働相談員による労働者及び事業主を対象とした開催希望市町村への出張労働相談
◇開催日程等 → 21年5月から22年3月(月1回程度)、10市町

【「労働ルールブックとやま」の配布】
労働関係法令や労働契約の重要性、各相談窓口を周知するための労働者向けガイドブックの配布
◇概要
 → 働き方のちがい、労働契約、労働条件、社会保険制度、解雇、退職、相談窓口など
◇配布方法
 → ハローワーク、市町村、労働局等での相談窓口や関係機関を通じて、労働者に配布
◇配布部数 → 5,000部

(5)新規学卒者をはじめとする若者の就職支援の強化

若者をめぐる雇用環境は、急激な経済情勢の悪化により、新規学卒者の内定取消しが発生するとともに、求人件数が大幅に減少しています。また、依然として非正規雇用割合が高止まりしています。

少子化を抑制する観点からも、本県の将来を担う若者の雇用の安定を図っていくことが重要であることから、新規学卒者をはじめとする若者の就職支援の強化、非正規労働者の処遇の改善策に取組んでいます。

【新規学卒者対策】
◇労働局と連携した経済団体への求人確保等の要請
◇「ヤングジョブとやま」主催の合同企業説明会の拡充(208回→219回)
◇新たに実施する県内企業への採用ニーズ調査結果の新規学卒者の県内就職を促進するためのセミナー等での活用 など
【非正規労働者対策】
◇「ヤングジョブとやま」における、カウンセリング等を通じたフリーターなどの若者への就業支援
◇「若者サポートステーション」における、NPO等と連携したニート等の若者への自立支援
◇中途採用の導入や社員の能力開発などの人材確保・育成についての企業経営者等への意識啓発 など

4 国の取組み

国においても、昨年末以降、数次の経済対策において、企業の雇用維持に対する助成金の拡充や雇用保険制度の機能強化など緊急雇用対策を大幅に拡充しています。

(1)企業の雇用維持に対する雇用調整助成金等の拡充

休業、教育訓練、出向により従業員の雇用維持を図る企業への助成金の拡充、内定取消し防止のための企業への助成金の創設など、雇用の維持や新規学卒者対策の強化を図っています。

県としては、助成金の利用企業に、単に休業するだけではなく教育訓練を活用していただくよう、技術専門学院の在職者訓練を拡充しています。

※表をクリックすると大きく表示されます
雇用維持・新規学卒者対策

(2)雇用保険制度の機能強化

雇用保険法を改正し、非正規労働者に対するセーフティネット機能や離職者に対する再就職支援機能の強化を図っています。

【雇用保険法改正の概要】〜本年3月31日施行〜
◇非正規労働者の雇用保険適用範囲の拡大(雇用見込み 1年以上→6か月以上)
◇雇止めとなった非正規労働者の受給資格要件の緩和(加入期間 1年→6か月)と給付日数の拡充
◇再就職が困難な方に対する給付日数の延長(60日分)
◇雇用保険料率(労使折半)の引下げ ※21年度に限り0.4%引下げ(1.2%→0.8%) など

5 おわりに

県としては、雇用は県民生活の根幹であるとの認識のもと、今後とも、富山労働局や関係機関と連携し、雇用対策を迅速かつ着実に実施し、雇用の安定が図られるよう全力を尽くしてまいります。

とやま経済月報
平成21年8月号