働く女性の活躍推進について 富山県の取組み富山県 生活環境文化部 男女参画・ボランティア課
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1.はじめにいきなりですが、21世紀の日本の最重要課題とは何でしょうか。
今年の洞爺湖サミットで一番注目されたのは環境問題ですし、人口減少や少子高齢化という大きな課題もあります。その他にも、医療、年金、物価の高騰、政府の財政再建等々、現代日本はまさに最重要課題と呼べるものが山積状態です。それでは、「男女共同参画の推進」という課題はどうでしょうか。「男女共同参画社会基本法」では、その前文で「男女共同参画社会の実現を21世紀の我が国社会を決定する最重要課題」と位置付けています。ご存知でしょうか?
一方、平成19年度の富山県の県政世論調査によれば、県政への要望として一番多かったのは「医療の充実」で、以下、2位「景気対策」、3位「高齢者福祉の充実」と続きます。さて、「男女共同参画の推進」はというと、結果は53位で、選択できる項目の数が61項目ですので、かなり下位にあると言っていいでしょう。
法律では最重要課題と掲げられながら、さほど県民の関心は高くない(?)「男女共同参画の推進」は、重要な課題なのでしょうか。 |
2.「男女共同参画の推進」は多くの課題解決のカギ実は、「男女共同参画の推進」は他の多くの課題に係わる大変重要な問題といえるのです。 例えば、県政への要望が一番高い「医療の充実」という課題を見てみると、近年大きく取り上げられるのは医療に携わる人材の不足です。特に小児科医や産婦人科医、看護師の不足が言われていますが、その一因は女性(医師や看護師)の子育て等による離職だと言われています。正に「医療の充実」が働く女性の問題につながっているのです。 医師や看護師に限らず、女性が子育て等によって仕事を辞めざるを得ない状況をどう打開して、働く女性の活躍を推進するか。これは「男女共同参画の推進」の重要なテーマです。
また、2位の「景気対策」という課題については、「景気対策」の範囲には産業構造や就業構造といった問題にも及ぶと言えるでしょう。就業構造を考えた場合、昨今非正規雇用の拡大が注目されていますが、これも働く女性に深くかかわっている問題といえます。一例を挙げれば、子育てや夫の転勤などにより離職を余儀なくされる女性(あくまで、現状です。)にとって、正規雇用での再就職はとても困難な状況にあります。富山県は、雇用者に占める正規職員の割合は全国を上回っているものの、女性は男性に比べ22.1ポイントも低く、ここには、女性の知恵や能力を生産活動の場でどう活かせるかという基本的な課題があると言えるでしょう。(図1)
男女共同参画社会とは、「男女が、互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる」社会のことです(男女共同参画社会基本法前文より)。そのような社会の実現に向けて努力すれば、他のいろいろな課題に対する解決への道筋も見えてくるのではないでしょうか。21世紀は知恵の世紀と言われますが、女性と男性の両方の知恵を活かそうという、「男女共同参画の推進」は、“21世紀の最重要課題”としてふさわしい重みを持っています。 |
3.富山県の課題 − 女性管理職比率の低迷 −ここからは、男女共同参画の推進、特に働く女性の活躍をいかに推進するかということに注目してみたいと思います。
富山県にとって、働く女性をめぐる大きな課題は、管理職に占める女性比率が低迷していることです。公的部門(公務員や教員)においては、女性の管理職等への登用状況は全国平均を上回っていますが、民間部門においてはむしろ全国下位に甘んじています。平成17年度の国勢調査によれば、管理的職業従事者に占める女性割合は、富山県は4.8%で、全国平均の5.6%を下回り、都道府県順位では全国30位という低いものになっています。(図2) ※管理的職業従事者とは、事業経営方針の決定・経営方針に基づく執行関係の樹立・作業の監督・統制など、専ら経営体の全般又は課(課相当を含む)以上の内部組織の経営管理に従事するものをいう。管理的な公務員や議会議員を含む。校長や病院長などは「専門的・技術的職業従事者」に分類されるため、含まない。
こうした状況を打破するにはどうすればよいのか。これは、富山県民が真剣に考えるべき大きな課題です。県では、働く女性自身への働きかけ(能力及び意識の向上)と企業への働きかけ(女性活躍推進の啓発)の両面へのアプローチが重要であるとの観点から、以下に掲げる取組みを行っていますので紹介したいと思います。
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(1) 働く女性への働きかけ−ビジネスリーダー養成セミナー−
県では、富山県民共生センターにおいて、「ビジネスリーダー養成セミナー」((財)富山県女性財団との共催)を開催しています。これは、県内企業の女性社員が管理監督者として必要な基本的知識を学ぶセミナーで、企業における女性管理職候補者の育成をねらいとしています。
昨年度は5日間の日程で、県内21社から30名の女性が参加しました。今年度の講座も18社36名の参加のもと8月からすでにスタートしており、県内外で活躍されている企業経営者や女性の管理職など、魅力あふれる講師を招いての充実した内容となっています。
受講者の所属企業の業種は、製造業や金融、情報通信、小売業など多種多様で、受講者の役職は、課長クラスの方や、係長やグループリーダー、それに準じるクラスの方もいらっしゃいます。講座内容もさることながら、異業種の仲間とのネットワークが広がるということでも好評を得ています。
当セミナーについては、昨年度の参加者からの感想を紹介することにより、その魅力の一端が伝わると思いますのでいくつか紹介したいと思います。
(※)カリキュラムの中には1泊の研修も含まれています。
県としましても、働く女性同士の交流による相互研鑽、相互啓発は、女性の能力や意識の向上に大きな役割を果たすと考えていますので、働く女性のネットワークについても、今後支援をしていきたいと考えています。 平成20年度のビジネスリーダー養成セミナーの様子(平成20年8月1日)
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(2) 企業への働きかけ−女性が輝く元気企業とやま賞−
次に、企業に対する働きかけについての施策として「女性が輝く元気企業とやま賞」を紹介します。これは平成19年度に県が創設した富山県知事賞で、女性の登用や能力の向上への取組みに積極的で、女性が職場でいきいきと活躍している企業を表彰する制度です。この賞が、企業の男女共同参画への取組みを促すきっかけとなればと期待しているところです。
今年度は、去る6月28日に行われたサンフォルテフェスティバルにおいて、3社が表彰されました。これらの企業における女性活躍推進の取組みは、県内企業の今後の参考になると思われ、紹介したいと思います。
<三協立山アルミ株式会社> (製造・建設業分野)
<株式会社ラポージェ> (製造・建設業分野)
<株式会社富山第一銀行> (商業・サービス業分野)
また、他にも企業への働きかけとして、県では「男女共同参画チーフ・オフィサー」や「男女共同参画推進認証事業所」といった施策についても取組んでいます。詳細は県のホームページでご覧ください。
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4.知恵の世紀に向けて働く女性の活躍推進に関する取組みということで、「働く女性への働きかけ」と「企業への働きかけ」という観点から、県の2つの施策を紹介しました。しかし、これで十分かと言えば決してそうではありません。家庭や地域において、一人ひとりが意識を変えていくことも必要ですし、男女共同参画に関する教育の推進、生涯を通じた女性の健康への支援等々、多面的な取組みの積み重ねが必要となってきます。
県では、富山県民共生センター(愛称「サンフォルテ」)を拠点施設として男女共同参画の推進に取組んでいますが、先にも述べたとおり「男女共同参画の推進」は“知恵の世紀”21世紀のカギとなる重要な課題です。富山県も決してその船に乗り遅れるわけにはいけません。県民の皆様もともに“知恵の世紀”へ漕ぎ出しましょう。
富山県民共生センター
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